先ほど、フィリピンはマニラの四泊五日の一人旅から帰ってきました。まさか、36歳の妻子持ちにもなって東南アジアへバックパッカーできる日が来るとは思ってもなかったですが、海外旅自体は3年ぶり、バックパッカー1人旅は7年ぶりと久しぶりの冒険となりました。今回は旅行記ではなく、リハビリがてら久しぶりに海外に出て改めて感じたことを書いてみます。結論的には、旅って良いよねって簡単な話なのですが、旅ってなんだっけ?という旅人の永遠の命題にもかかるところも少しだけ掘って書いてみますのでお付き合いいただけましたら幸いです。
誰にもおすすめされないマニラ
今回行ったマニラですが、他の国の観光地と比べると見どころはあまりなく、一般的に有名な観光地とは認識されてないと思います。それなりに旅する友達からも「何しに行くの?」と言われる有様で、日本人はセブ島に行くときの中継か、乗り継ぎ都合でせいぜい一泊立ち寄るくらいですよね。そんな場所に僕は四泊五日もしてきたわけなのですが笑、結論的にはすごくすごく楽しかったです。マニラを毎日10kmも20kmも歩き回ってみたり、ローカルな移動手段のジプニーの出発点から終点まで乗ってみたり、ホテルの高層階プールのテラスで本を読みふけってみたり、気の赴くままやりたいように過ごしてました。
(今回のマニラの旅のログはこちら)
旅に見返りを求めない脱力
旅好きの僕が7年ぶりのバックパッカーで大興奮してるのとは裏腹に、今回のマニラの旅は何の目的も作りませんでした。現地に着くまでほとんどどこへ行くか、何をするかも決めず、今回は自分がやりたいことだけをやろうと決めていました。寝たければ寝ればいいし、出かけたければ出かければよい、といった具合で、とにかく気の赴くまま過ごしてみようというわけですね。
「旅」っていうと言葉のパワーが強すぎて、その言葉に見合うくらい何かカッコいいことしなきゃとか、絶景を見なきゃとか、そういう強迫観念がむくむく沸いて来たりするし、SNSでシェアされたすごい話を聞いて「自分もそんな人になりたい」なんて思ってしまって、旅先での出来事を消費することばかりしてると”自分探し”だなんて揶揄されてしまうこともありますよね。
でも旅ってそうやって肩に力を入れて目的意識を強く持つようなものじゃなくって、自分の感性に従う方が大事なんじゃないかなあと思うわけです。僕はじっとしてるのが割と苦手なので、案の定結局観光地を歩き回ったり、ジプニーの始発から終点まで乗ってみたり、夕陽を見に高いところに登ってみたりするわけなのですが、誰かの焼き増しやシェアするための体験ではなくて”自分がやりたいこと”を尊重して過ごすのってすごく大事な時間だと思うんですよね。
自分を探さないことが自分と向き合うこと
自分の人生って、探そうとすればするほど、遠くなっていくと思うんですよね。自分はこんな人になりたいっていう理想像がスタート地点になってしまうことは僕もよくやってしまうことですが、旅はそんな歪みを正してくれるものだと思っています。
自分探しをせずに目的もなく旅に出て気ままに過ごしてみると、自分がどんな人なのか見えてくると思うんですよね。自分の感性に耳を傾けて行動してると、自分が何が好きで、何をすると楽しくて、どういうことに感動して、って言う自分の中の原理原則がわかってきます。自分探しをしないことで自分が何者なのかがわかる、というパラドックス的に聞こえる話ですが、自分の感性に素直に耳を傾けて無邪気に行動できるのなんて一人旅してるときくらいなんじゃないかなと思ったりします。
若い頃の無鉄砲で行き当たりばったりな旅が何で楽しく感じたかって、何も求めずに感性の赴くままに脇目もふらずに突き進んでたからなんですよね。大人になって旅がだんだん金太郎飴のようにつまらなく感じてしまっていた時期が僕にはあったのですが、それは旅自体が目的化してたり、何かを得なければいけないという焦燥感があったからだと振り返ってみて思います。
でも、旅ってそうじゃなくって、ジプニーに乗るのに手間取る僕を笑って助けてくれたローカルの人の優しさとか、屋台でおすすめされた料理のおいしさに感動する僕を見る店主の笑顔とか、そういう何気ない瞬間の積み重ねが醍醐味なんじゃないかなあと思うわけです。絶景とか名所とかを目的にする旅も好きではあるけど、自分が旅で一番好きなのは、意図しないふとした瞬間に自分の心の奥底に眠っている感情をナッジされるような体験をすることだなあと改めて思います。
世界でただひとり自分だけが知っている瞬間って、すごく多幸的じゃないですか。その時の人生の置かれた状況とか感情とかが逡巡して一生忘れられないくらいの美しい時間になって、それが心の中で生き続けるのがすごく良いなあって思ってます。それこそが、自分を探さない旅でありながら、自分が見つかる旅なんじゃないでしょうか。
と、久しぶりに旅人っぽい記事を書いてみました。またいつか、どこかへ旅に出たいな。遅ればせながら、あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。