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【Our Way 5】『クラウドサイン』のいま – 電子契約をめぐるフェーズが進化し、大企業や行政機関の導入が加速

弁護士ドットコムは、“専門家をもっと身近に”を理念に掲げ、人々と専門家をつなぐポータルサイト『弁護士ドットコム』『税理士ドットコム』『BUSINESS LAWYERS(ビジネスロイヤーズ)』、Web完結型クラウド契約サービス『クラウドサイン』などを提供するリーガルテックのリーディングカンパニーです。

現在主軸となる事業が『弁護士ドットコム』『税理士ドットコム』『BUSINESS LAWYERS』などを管轄する『専門家プラットフォーム事業本部』と『クラウドサイン事業本部』。それぞれの事業を束ねているのは、ともに弁護士資格を持つ2人の取締役です。そこで、両事業の責任者2人に事業・サービスの過去、現在、未来をインタビューしました。

今回は、クラウドサイン事業本部長・橘さんのインタビュー第2弾。事業の現在について話を聞きました。

【Profile】
取締役・クラウドサイン事業本部長
橘 大地(たちばな だいち)

東京大学法科大学院修了。最高裁判所司法研修所修了。株式会社サイバーエージェント入社、スマートフォンゲーム事業、契約交渉業務および管理業務等の契約法務、株主総会および株式関係実務に従事。2014年GVA法律事務所入所、資金調達支援、資本政策アドバイス、ベンチャー企業に対する契約アドバイス、上場準備支援などを担当。2015年11月当社入社、2018年4月より執行役員に就任、2019年6月より取締役に就任。

法整備により電子契約を取り巻く環境が変化

――2016年に事業責任者に就任されましたが、それからどのようにして『クラウドサイン』を普及させる取り組みを行ってきたのでしょうか?

『クラウドサイン』は紙と印鑑をクラウドに置き換え、契約作業をパソコンだけで完結できるWeb完結型クラウド契約サービスですが、リリース当初は商習慣として根強く残る印章文化との戦いがメインでした。

既存の商習慣に対抗すべく、まずはスタートアップ業界全体にアプローチして、VC(ベンチャーキャピタル)とスタートアップ間の契約では『クラウドサイン』を採用していただくよう働きかけました。さらに私自身も不動産テック協会の理事に就任して不動産業界のデジタル化に寄与するなど、業界全体を巻き込む形で電子契約の有用性を発信。弁護士会をはじめ、日本各地で講演を行ったほか、法律雑誌に研究論文を寄稿するなど地道な啓発を続け、とにかく『クラウドサイン』の認知拡大に努めました。

『クラウドサイン』は受信者側はアカウント登録することなく契約書類の確認・同意を行うことができるため、契約送信件数が増えれば増えるほど、『クラウドサイン』を通じた契約締結を体験していただく機会が増え、ネットワーク効果が期待できる仕組みとなっています。地道な活動を続けた結果、サービス開始から約1年となる2016年10月には累計契約締結件数が3万件を突破し、その約2ヶ月後には4万件を超える勢いでした。

2018年に開催したクラウドサイン3周年イベントにてSlack Japan株式会社 日本法人代表 佐々木 聖治氏(写真右)とのセッション風景

――パートナー企業様とのアライアンスも当初から積極的な印象です

そうですね。『クラウドサイン』の成長要因の一つは、パートナーの皆様と共に事業を共創してきたことにあります。『クラウドサイン』はリリース当初から、Salesforce、kintone、Slackといった日本で既に導入されているクラウド製品と機能連携を行い、プロダクト連携したパートナー企業様と共に事業運営してきました。他にも『クラウドサイン』を全国に販売してくださるパートナー企業様、具体的にはソフトバンク様、大塚商会様、リコージャパン様といったような日本を代表する販売パートナー企業様との連携も重視しています。強固なパートナーシップの拡充とエコシステムの構築による販売強化を当初から強く意識していましたね。

こういったパートナー企業様との協創関係の代表事例が、2019年に三井住友フィナンシャルグループ様との合弁会社となる「SMBCクラウドサイン」を設立したことです。金融機関での長い実績から日本中の顧客網と高い信頼性を有する三井住友フィナンシャルグループ様と協業して『SMBCクラウドサイン』を販売しています。

パートナー企業様から学ぶことは多く、ご支援をいただくことによって私たちの事業運営は成り立っていると言えます。

――ほかに、成長の要因として挙げられることは?

もう一つは、様々なリーガルアクションに挑戦し続けてきたことでしょう。リリース当初は、『クラウドサイン』は電子署名法に準拠しないという挑戦を選択しましたが、政府への提言など含め、様々な普及活動を続けた結果、少しずつ『クラウドサイン』が法的に認められるようになりました。

まず、2020年6月に法務省に認められ、商業・法人登記のオンライン申請において『クラウドサイン』の電子署名を施した添付書類の取り扱いが可能になりました。商業登記制度では、登記変動事項が発生したことを証明するために、法務局から添付書類の提出を求められるケースがあります。このような登記申請をオンラインで行う場合、取締役を含む全員の電子署名に法務省が指定する電子証明書の添付が必要とされており、『クラウドサイン』で電子署名を施した添付書類の取り扱いが追加されることになりました。

また同年9月には、電子署名法の主務官庁である総務省・法務省・経済産業省より、これまで電子署名法に準拠していない『クラウドサイン』のような事業者署名型の電子契約サービスであっても、一定の要件を満たすことにより、電子文書の真正性を推定する効力が及びうる旨の見解が示されました。それからわずか3ヶ月で、電子署名法3条に対応する日本で初めての機能として「高度な認証リクエスト機能」をリリースしています。

さらに2021年2月には、総務省・法務省・経済産業省・財務省より、事業者署名型電子契約サービスとして日本で初めて、『クラウドサイン』が電子署名法上の電子署名に該当することが確認されました。これにより、電子契約をめぐる法律上のインフラが整ったと考えています。

行政での導入が決定。地方自治体との実証実験も活発に

――法律上のインフラが整ったことで、どのような影響がありましたか?

地方自治体との実証実験が活発化しました。現在、東京都と実効性の高い“はんこレス”の実現に向けた実証実験を進めています。また、2021年5月には茨城県で『クラウドサイン』の正式導入が決定しました。自治体での電子契約導入は初めてのことです。

新型コロナウイルスの影響もあり、河野太郎行革担当大臣がトップダウンで脱ハンコを推進していた頃、クラウドサイン事業本部では2020年10月にデジタル・ガバメント支援室を設置しました。どの自治体も脱ハンコに向けて改革しなければいけないという危機感を持っている状況ですので、引き続き行政機関のデジタル化を支援していきたいと考えています。

――現在のクラウドサイン事業の課題は?

導入実績を増やし、社会の過半数を占めるのが最大の課題です。『クラウドサイン』を導入したものの、契約先の企業から紙と印鑑を求められることはまだまだ多く、『クラウドサイン』と紙の両方で契約締結業務が運用されているというのが企業の現状です。

しかし近い将来、『クラウドサイン』での契約締結が当たり前になったとき、オセロの色がひっくり返るように残りの50%が一気に変わるはずです。特に大企業の導入が進めば、さらなるネットワーク効果も期待できます。大手の販売パートナー様とのアライアンスも推進し、まずは過半数を獲得することが、目の前の一社に対する貢献につながると考えています。

志を持つメンバーと一緒に変革を目指す

――『クラウドサイン』のリリースから6年、機能としてはどのような進化を遂げてきたのでしょうか?

社会の変化にあわせて、毎月のように進化しています。例えば、大企業の導入増加に伴い、より高度な閲覧権限の設定機能を更新しています。また、英語・中国語領域との契約にも対応し、紙の契約との一元管理なども可能にするなど、ユーザーの進化にあわせて開発と機能追加を行っています。

――事業の成長にともないチームも拡大していますが、本部長として考えている組織の課題は?

社会的意義のある事業のため、「社会課題を解決したい」というメンバーが多く加わっており、責任者としては大変マネジメントしやすい事業体だと感じています。

現場のメンバーは、顧客からいかに解像度高くニーズを吸収するか、その手腕が問われますし、それをマネジメントし集約してレポートをあげる管理職の存在も重要です。そして、最終決定を下す私自身も適切な意思決定をしなければいけません。すべてのセクションが大切であり、各人が役割を果たすことが重要だと考えています。

そうした中、最も難しいのは投資判断です。事業を預かっている身としては意思決定を間違えると貴重な投資機会を逃してしまう可能性があるので差配や意思決定は非常に悩みます。

どちらにも面白さと難しさがあるのですが、自分がプレイヤーとして動いていた時代とは、解くべき課題が違うといった感覚です。チームのメンバーから助言をいただきながら、この課題に全力で臨んでいきます。

次回は、これからクラウドサイン事業本部が目指すビジョンについて聞いていきます。

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