バイオスティミュラント本部の渡邊さんに、多くの方が聞き慣れない「バイオスティミュラント本部」が何をしているのか、データサイエンスがどのように活用されているのかを聞いてきました。
1. 事業部の役割と組織構造について
ーー バイオスティミュラント本部が何をしている部署なのか教えてください。
AGRI SMILEは研究支援事業、栽培支援事業、販売支援事業、研究開発事業の4つの事業を展開しています。私が所属しているバイオスティミュラント本部は、栽培支援事業と研究開発事業を運営している事業部門です。バイオスティミュラントという、新しいカテゴリーの農業資材の有効活用を軸とした栽培技術の改善・最適化をコンセプトとした事業推進、研究開発を行っています。
ーー バイオスティミュラント本部の組織構造と役割について教えてください。
バイオスティミュラント本部は、3つの部からなっており、それぞれ以下のような役割を担っています。
・ビジネスイノベーション部:バイオスティミュラント本部の全体戦略、ビジネスモデル策定、パイプライン管理、政策推進や研究PRなどを担当
・バイオサイエンス研究部:サービス推進を担当しており、フィールドサイエンス、データサイエンス、バイオインフォマティクスの3つのセクションに分担
・基礎研究部:バイオスティミュラントの開発に資する基礎研究資材開発、商品化、製造プロセスの構築などを担当
2. 渡邊さんの業務と部の様子について
ーー 渡邊さんは現在どの部署に所属して、どんな業務を担当されているんでしょうか?
バイオサイエンス研究部に所属しています。
バイオサイエンス研究部は、フィールドサイエンスとデータサイエンスのセクションがあって、それらを兼務しています。私自身の業務の比重はデータサイエンスセクションの方が多いですね。
データサイエンスセクションが主に担当する栽培支援事業では、現場のデータを営農へフィードバックする仕組みづくりを支援させていただく取り組みを行っています。農業データの活用には、業界を盛り立てていく大きな可能性(=夢)があると思っています。一方で、既にある現場データを活用するには課題が多く、生産者様や農協様だけではなかなか挑み難いチャレンジでもあります。
その中で、統計的なデータ活用視点、農学的な研究視点、ソフトウェア開発視点を統合して、複雑な課題に対して明確な「進捗の実感」を得ていただけるように、価値提供をしていくことが、データサイエンスセクションのミッションになっています。
必要なデータは何かを考え抜き、ないデータは取りにいき、無機的なデータから有機的な価値を見出していく。その先に、現場の皆様の行動が変容していく状態を実現していきたいです。
フィールドサイエンスの業務としては、バイオスティミュラントの圃場試験による実験的なデータ収集を行います。圃場試験でのデータ収集は、生産者様や農協様との連携プロジェクトとして実施するため、綿密で合理的な試験計画の設計が重要ですし、色々なことが起こるため臨機応変な対応力も培われます。農業の難しいところでもあり面白いところでもありますが、相手が生きものであり、気象や土壌環境などコントロールできないことも多いため、関係者全員が主体的に行動できるような準備や説明をしていくことがフィールドサイエンスセクションの重要な仕事です。
ーー バイオサイエンス研究部にはどんな経歴の方が所属しているんでしょうか?
バックグラウンドは様々ですね。私は以前アカデミアで研究者をしていましたし、アカデミア経歴の方も増えてきています。あるいは、製造業の工場や研究所出身の方、行政機関や農業試験場での研究経験者、農薬メーカーで営業として現場を回っていた方がいます。バイオサイエンス研究部は、農協様や生産者様、行政の担当者様など、社外の関係者を巻き込んでプロジェクトを進めていくことが多いのですが、多様なバックグラウンドのメンバーが力を合わせて、多様な課題の攻略に励んでいます。
年代としては30代前半のメンバーが多く、在宅ワークの中で子育てにも奮闘しているメンバーもかなりの割合になります。
ーー どんな方が仕事を楽しめる部署なんでしょうか?
部署というより、AGRI SMILE全体に言えることかもしれませんが、どの部署の業務も、体制やお客様との関わり方、提供する価値について、1から作りあげていっている途中です。決められた型がなく、それまでの経験からだけでは解決方法が導けないようなハードな課題に対しても、「やってみるか」と思えるような方なら、楽しめるのではないでしょうか。常に楽しい状態でいられるという保証はないですが(笑)。農業という課題の複雑多様な業界を相手に、価値提供の型を自分たちで作っていくことは困難を伴いますが、同じ志のメンバーと、考え、動き続けられる方が仕事を楽しめる環境だと思います。
またバイオサイエンス研究部だと、手触り感というんでしょうか。農業の現場の方々の考えや想い、技術について直接伺える点が、魅力的だと思います。生産者様や農協様など現場の声には、引力があります。困っている栽培課題や、食を作っているという責任、また仕事として農業を楽しんでいる様子を感じるたびに、この人たちを喜ばせる仕事ができたら、農業界の未来を変えていけるんだと気が引きしまります。AGRI SMILE の仕事は、直接農業をすることではないですが、現場の方々と連携して、現場の行動変容を活性化することが、AGRI SMILE独自の価値だと考えています。
私がこの会社に入った理由も、現場の方たちの生の課題に対して、一緒になって解決していきたいという思いからでした。現場の声を伺うほどに、課題を近くに感じます。その課題に対し、具体的なプロジェクトとして、解決方針を1から工夫し、作っていける今の環境にはやりがいを感じています。
ーー バイオサイエンス研究部では出張は高頻度で発生するんでしょうか?
個人の役割によります。私は出張はあまり多い方ではないですが、2ヶ月に1〜2回程度の頻度で出張に行っています。フィールドサイエンス担当プロジェクトは、現場で導入のサポートで説明が必要になるなど、現場にいくことが多いので、月に3〜4回、場所により日帰り弾丸の場合もあれば、宿泊込みで複数箇所を回る場合など臨機応変に対応されています。
ーー 産地の方達との距離も自然と近くなるんでしょうか?
そうですね。産地の方からよく電話がかかってくるメンバーもいます。この間、AGRI SMILEでお薦めさせていただいたバイオスティミュラントを使用して、見るからに結果がよかったというお電話をある農協の組合長様からいただきました。
結果がわかるまでの間はすごくソワソワするんですが、そういった連絡をいただけると「あーっ よかったーっ やったーっ」ってなりますね(笑)
3. 産地の方が持つ “ 食を作っている ”責任感
ーー 食べ物に関わる業務だからこそ知ったこともあるんでしょうか?
農協様とプロジェクトを進めている中で、雑談的な流れだったのですが、
その農協様は大産地として、市場への作物の供給に対する責任を自らに課しているということが自然と発言に出ておられて、心にくるものがありました。近年、気候変動の影響か、各地で毎年のように極端な気象現象が発生することがありますが、農業は言うまでもなく天候による成果の影響が大きい産業です。1日でも致命的な状況に陥った場合には、その1年分の成果がパーになってしまうということがあり得てしまいます。その農協様でも、数年前に一時期の天候の影響で主力産品の収量が産地として壊滅的になってしまい、実際消費者の目にも明らかにスーパーでその作物がない、高い、という影響が出ていました。その年を振り返りながら、収入が減ってしまい被害を被っている側にもかかわらず、「あの時は本当に申し訳なかった」と、消費者に対する配慮からくる発言をされていました。食を支えている農業をする方々の責任の重さを、それまで以上に重く感じ、より強く、この人たちを支えていきたいと思うようになりました。
AGRI SMILEとして、生産者様や農協様に「この人たちとであれば、なんとかなりそう」と思っていただけるような仕事をしていかないといけないと考えています。
プレッシャーはありますが、一緒に作っていけるという楽しさはあります。
画像はAGRI SMILEのPurpose
4. 「データから価値を見つけ出す」難しさとやりがい
ーー 働いていて嬉しいと感じる瞬間はありますか?
"根気強く取り組んだことで得られた気づき" を伝えられた時に、嬉しいと感じますかね。研究所での実験データでも、圃場のデータでも、収集した情報を分析して時には図表として可視化をして、自分の中で納得した論理を構築して説明した時に、
「なるほど、今まで気づいていなかったけど、たしかにそうですね」といった言葉をもらったり、相手の「目からウロコ」落ちたなという瞬間に嬉しいと感じます。
報われるというより、「ホッとする」、安堵感といった方が近いですね(笑)。前職から「研究」に関わってきていますが、仮説があって実験やデータ収集をしても、思い通りの結果が得られたり、論理がスムーズに進むことはなかなかないので、同じような感じです。研究と同じで、瞬発的には理解が及ばない現象やデータに対しても、じっくり向き合って、考え抜くことで価値を創り上げて、積み上げていきたいです。
分かりやすく理解するためのデータの切り口を工夫することは、大学の研究の際から心がけていたことなので、AGRI SMILE でも、産地の皆様にも納得していただけるような価値提供の仕方が求められているので、すごくやりがいがあります。
「難しいことに対して、時間をかけてでも着実に取り組むことができる」「現場で使われるようなサービスを作りたい」と思っている方は楽しく働ける職場だと思います。