時岡結絃 / 小説家
彼女の歴史ときょうの街
学生時代を京都で過ごした者はみな心に京都を住まわせている。 京都の学生はほとんどが就職で京都を離れる。全国どこに飛び回っても、京都は学生時代の思い出として語られるのである。 筆者が九年間過ごした京都の街を精緻に描き、恋仲の心の奥底を知りたい主人公の視線から「彼女」を描いた。あるいは観察される「彼女」からみると二人称視点小説なのかもしれない。 文章でデッサンすることが技術課題。文字だけで京都の街並みがありありと思い浮かぶことを目標として精緻な表現を心がけた。読んだらきっと京都に二回訪れたくなる。 また丁寧な心情描写と視点移動を意識した。動作を取り上げて主人公や彼女の思いが伝わる書き方を試みた。