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【TECH BLOG】社内マッチングアプリ「CLUB ZOZO」のマッチングアルゴリズム

こんにちは。ZOZO研究所の平川とML・データ部のデータサイエンスブロック2の荒木です。私たち2022年度の新卒入社メンバーは有志で社内マッチングアプリ「CLUB ZOZO」を運営しています。この記事では、興味関心が近い社員同士を自動でマッチングするアルゴリズムについてご紹介します。マッチング時のバッチ処理については推薦基盤ブロックの関口が解説していますので、興味のある方は併せてご覧ください。


社員同士を趣味でマッチング!?社内のコミュニケーション活性化ツールを新卒1年目のチームで開発しました - Qiita
こんにちは。推薦基盤ブロックの新卒1年目の関口です。 この記事は ZOZO Advent Calendar 2022 カレンダーVol.7の14日目の記事です。 先月から社内で利用開始されましたコミュニケーションの活性化を目的とした 社員マッチングツール について簡単にご紹介します。 リモートワークが普及し、社員同士が顔を合わせる機会がなくなってませんか、、、。 ...
https://qiita.com/shutosekiguchi/items/1e2d1ddc5bd5d852b7d4

目次

  • 目次
  • CLUB ZOZOとは
  • CLUB ZOZOを運営するにあたり解決すべき課題
  • ユーザ間の類似度を計るアプローチ
  • 数理最適化を用いた偏りのないマッチング生成
  • ダミーデータでの推論結果
  • まとめ
  • 最後に

CLUB ZOZOとは

CLUB ZOZOは、興味関心が近い社員同士をマッチングし、週に1回15分間のChat Timeをセッティングするサービスです。Chat Timeとは「上司」と「部下」の関係で実施される1on1ではなく、同じ興味関心を持つもの同士で純粋に会話を楽しんで欲しいという願いを込めて作った造語です。ユーザはSlackアプリ上で自分の興味関心を登録し(以下では「趣味タグ」と呼びます)待つだけでChat Timeがセッティングされるため、気軽に新しい仲間との出会いを楽しむことができます。



CLUB ZOZOは、新卒チーム開発研修で社内コミュニケーションを促進するためのツールを開発したことがきっかけとなり誕生したサービスです。2022年11月に社内リリースされ、2023年1月時点で約350名の社員が利用しています。

CLUB ZOZOを運営するにあたり解決すべき課題

CLUB ZOZOを運営する上でボトルネックとなるのがマッチングの生成です。サービスの性質上、以下の要件を満たす必要があるため手動での実施は運営側の負担が大きくなります。

  • 共通の話題がある
  • 同じ人とばかりマッチングしない
  • マッチング機会が特定のユーザに偏らない

そこで、私たちは機械学習と数理最適化を組み合わせたマッチングアルゴリズムを開発し、CLUB ZOZOの運営コストを大幅に削減することに成功しました。開発したアルゴリズムは、「word2vecを用いた趣味タグの類似度計算」と「数理最適化を用いた偏りのないマッチング生成」の2つの工程から成ります。



このアプローチは、ユーザのマッチング度合いに関する教師データが不要であるため、サービス立ち上げ段階で教師データが存在しない状況においても適用可能であるという利点があります。

以降では「ユーザ間の類似度を計るアプローチ」と「数理最適化を用いた偏りのないマッチング生成」について詳細を説明します。

ユーザ間の類似度を計るアプローチ

今回は、ユーザ間の類似度を「ユーザが登録しているタグの類似度」として計るアプローチを採用しました。具体的には、各ユーザのタグのすべてのペアに対して単語間の類似度を計算して、それを平均しています。



こちらの図の例では、以下の3名がそれぞれ次のタグを持っているとします。

  • Aさん:テニス、君の名は。
  • Bさん:テニス、映画
  • Cさん:テニス、ママ

このとき、AさんとBさんは「テニス」という共通のタグを持っており、かつ「君の名は。」と「映画」という類似の趣味タグを持っているためユーザ間の類似度は55%となりました。一方で、AさんとCさんは「テニス」という共通の趣味タグを持っていますが、もう1つの「君の名は。」と「ママ」というタグはあまり似ていないためユーザ間の類似度は33.75%となります。つまり、AさんとBさんの方がより類似しているという直感をうまく反映できていると言えます。

また、単語間の類似度を計算する手法として「word2vec」を用います。word2vecは単語の意味をベクトルとして表現するモデルであり、自然言語を扱う機械学習モデルで広く用いられています。word2vecの学習には、Wikipediaが提供している全文データに対して、日本語用の形態素解析システムであるMeCabによる分かち書きを行ったデータを利用します。

しかし、このままでは辞書にない語句(=学習データに含まれない語句)や節はベクトル化できません。辞書にない語句や節の登録を禁止することも考えられますが、それではUX的にあまり嬉しくありません。そこで、もし趣味タグとして登録された文字列が辞書にない場合は、形態素解析で抽出した名詞のみを用いてベクトル化を行います。



画像のように、辞書にない文字列のペアに対して類似度の計算を実現しています。例えば、「サッカー」と「スポーツ観戦」はどちらも辞書に存在するため、そのまま類似度を計算できます。一方で、「サッカー観戦」は辞書にないタグなので、一度分かち書きをして「サッカー」と「観戦」に分割します。そして、それぞれ「スポーツ観戦」とのスコアを計算し、その平均値を類似度とします。「サッカー観戦」と「サッカー実況」のようにタグのペアのうちどちらも辞書にない語句の場合は、それぞれ分かち書きを行い、各スコアを求めて平均した結果を類似度とします。



では、もしタグに少し長めの文章が入力された場合はどうなるのでしょうか。例えば「公園で子供とサッカーをする」と「縁側で猫と日光浴をする」というペアを考えてみましょう。分かち書きを行うと、それぞれ「公園・で・子供・と・サッカー・を・する」「縁側・で・猫・と・日光浴・を・する」になります。もし、このまま各単語のベクトルを平均して類似度を計算する場合、「で・と・を」といった助詞が類似度を底上げしてしまい不自然に高いスコアが出てしまいます。実際このペアの類似度は87.5%となります。そこで、今回は形態素解析をして、品詞が名詞である単語のみを用いてベクトルを平均します。名詞だけを用いる場合、今回のペアは59.5%となり少し低めに計算されました。また、「サッカーを観戦する」「サッカー観戦」という一見すると類似度が高めに出るはずのペアも、名詞以外を用いた場合は類似度が45.5%とかなり低めに計算されてしまいます。もちろん、名詞のみを用いた場合は100%となります。

ただし、分かち書きをしても単語が辞書に存在しない場合は、スコアを0%としています。この他にも、類似度が55%未満のタグのペアは経験的にあまりふさわしいペアでないことがわかっていますので、そのペアのスコアを0%にしてペアを無効化するなど細かな調整を入れています。

数理最適化を用いた偏りのないマッチング生成

上記の方法で全ユーザの組に対してユーザの類似度が計算できたとします。ユーザの類似度が高いペアから貪欲にマッチングを成立させた場合(図の「偏り制約なし」)、「マッチング機会が特定のユーザに偏らない」という要件を満たさないマッチング結果になる場合があります。

別の方針として、一度のマッチング機会で各ユーザが1人のユーザとだけマッチングするという制約を満たしつつ、マッチングスコアの総和を最大化する解(図の「偏り制約あり」)を見つけるということが考えられます。

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