こんにちは、株式会社yutoriの人事担当、泉水(せんずい)と申します。
2020年もまもなく終わり。これまでを振り返ってみると1つ気づいたことがありました。
選考フローの中に”お試し入社”というフローを入れてから1年半、正社員15名の入社が決まった後、退職者は0名という結果になっています。
もちろん退職する/しないの要因はさまざまだと思いますが、今回は選考フローの中の「お試し入社」が離職率を抑えている一要因なのではないか?という仮説の元、中身を紐解いてみようと思います。
入社までの選考フロー
昨今は、採用媒体やエージェントだけでなく、リファラル採用やbosyu、SNS経由の採用などなど...さまざま採用手法が増えています。yutoriでも色々な手法を実施していますが、大方入社までの流れは下記になります。
「エントリー」→「書類選考」→「複数回面接」→「お試し入社」→「内定」→「入社」
yutoriでは、アルバイト・正社員などの雇用形態問わず、最終面接後に「お試し入社」という選考フローを設けています。
お試し入社とはその名の通り、試しに業務に取り組んでいただきます。社内でやり取りしているLINEグループやチャットワークなどに招待し、現場メンバーと密にコミュニケーションをとります。期間は本人の現職の状況なども考慮して1~4週間程度稼働してもらいます。(お給与もお支払いします。)
入社後にアサイン予定のポジションの業務に取り組んでもらうため、お互い問題なければ内定/入社後もそのまま業務を継続してもらったり、難しそうであれば候補者とも相談しながら業務を調整し、入社後の業務と想定ポジションを明確にしていきます。
お試し入社のポイントは、会社として候補者をどこのポジションに当てるべきかを見極めるだけでなく、候補者にとっても「本当にyutoriで良いのか?」ということを見極めてもらうことです。
お試し入社を通じて「私は業務や環境にも納得して入社承諾を決めたんだ!」という気概を持ってもらうことで、入社後に高い帰属意識を持ち合わせることができると思っています。そのため、正社員だけでなく、アルバイトレイヤーでも強い当事者意識を持って業務に臨んでくれるメンバーが多く、アルバイトであってもやむを得ない理由を除き、ここ1,2年で入社半年以内に退職したメンバーはわずか数名という結果になっています。
お試し入社期間中に残念ながら離脱してしまう方もいますが、最初に生まれる溝は、入社後徐々に大きくなってしまうため、お試し入社時に縁を見切ることが、結局はお互いにとってハッピーになると考えています。また、中にはご縁がなかった候補者から「この人ならyutoriに合いそう」と、知り合いの候補者を紹介していただくケースもあります。yutoriという組織に属さずとも、yutoriへの強いエンゲージメントをつくることができていて、お試し入社の有用性を実感することもありました。
メリットもあればデメリットもある
yutori側・候補者側の双方がお互いのことを見極められ、会社への帰属意識を高められるというメリットはありつつ、もちろんデメリットもあります。
【「他社の内定承諾期限が迫る」or「他社内定の取得」で別の会社に入社を決めてしまう】
お試し入社によってyutoriの選考期間が長引き、他社の内定承諾期限が迫ってしまったり、最初に自身を評価してくれた会社への入社を決めたいという方が、辞退を決めてしまうケースもあると思います。
接触当初から他社の選考状況を丁寧にヒアリングし、本人にとっても適切な期間でのスピード感で選考を進めることが求められます。早さが求められる時は、人事と役員の面接を同じ日に実施したり、お試し入社も場合によっては数日で終わらせたりするケースもあります。(ちなみに、当日に役員面接などを組み込むのは、現場メンバーや役員に採用活動の重要さを理解してもらい、採用業務の優先順位を上げてもらう必要があると思います。)
加えて、お試し入社という選考フローを組んでいるのは、”双方のため”という背景を候補者へしっかり共有することも重要です。お試し入社のことを事前に頭出しせず、単純に選考期間が長いと「自分はギリギリ及第点にいて、コイツは使えるのか?という目で見られているのではないか...」と不安になり、評価をしてくれた他社の魅力度が上がるという候補者もいると思います。そうではなく、候補者にとってもyutoriへ入社するとした際の懸念点を払拭させられるようにするため、という意向を伝えます。
【候補者への情報共有などに工数がかかる】
お試し入社は実際に候補者に現場に入ってもらい作業をするので、業務の説明や、成果物のチェックが必要になります。そのため、現場のマネージャーやリーダーのリソースが多かれ少なかれ取られてしまいます。あくまでお試し入社の目的はお互いの見極めなので、事業部側と採用部側とで候補者へ何の目的で何の仕事を振るのかを事前にうまくすり合わせし、候補者には最小限の共有・コンパクトなタスク依頼で適正を測ることが重要だと思います。
当該ポジションでの業務、A・B・Cの全てを任せるということではなく、当該ポジションに適正があるかと、候補者にとってポジションへの理解度が最も深まる業務は何か?を折衷した業務を選りすぐって依頼するのがお互いにとってよりベターということです。
【現場が非協力的だと、候補者へのディスブランディングとなる】
現場のリソースが取られてしまうという話をしましたが、ここで現場が非協力的で、業務の共有や成果物のチェックが雑であると候補者にとって会社の魅力度がガクっと下がってしまいます。「なぜそのポジションの採用が必要なのか」「その人が入社したらどうポジティブな影響があるのか」などを現場に深く理解してもらい、採用部側のフォローがなくとも現場メンバーが主体的に候補者を魅力付けする「スクラム採用※」を実現させることが重要だと思います。
※スクラム採用
株式会社HERP代表の庄田 一郎さんにより定義・ネーミングされた言葉で、下記のような意味を持ちます。
具体的には、以下の3つの条件を満たす採用活動をスクラム採用と定義しています。
<権限移譲>
採用活動のワークフローを分解し、各フローを社内の最適な担当者に権限移譲している。各職種ごとの最適な採用手法に関しても、現場主導でPDCAを回している。
<成果の可視化>
採用活動によって得られた成果を全社員にFBしており(する土台があり)、採用担当を中心に定期的な振り返りが行われている。
<採用担当のPM化>
採用担当が、採用活動における施策のオーナーではなく、全体のプロジェクトマネジメントやドメインプロフェッショナルとして機能。採用に関する知識を現場の社員へインプットする役割を担っている。
参照:「スクラム採用を実践するための3つのポイント」
採用担当者のみが採用活動に従事するのではなく、現場や役員メンバーを巻き込んで採用を推進していくことが重要だと思います。
(yutoriはありがたいことに現場や役員が元から採用活動の重要さを深く理解してくれているため、リファラル採用や候補者のクロージングに主体的に動いてくれるケースが多いです。感謝...。)
「熱量はスキルを凌駕する。」帰属意識の高さは成果にも大きく貢献する
yutoriは設立されてから2年8ヶ月が経ち、さまざまな事業・ブランドのローンチのトライアンドエラーを繰り返してきました。アパレル未経験者が9割の中でインスタグラムの累計フォロワー100万人、売り上げも右肩上がりで推移できているのは、お試し入社を経て会社や仕事へ高い熱量を持ち、泥臭いことも愚直に楽しくこなせるメンバーが集まったことも一要因と言えるかなと思います。
もちろん、面接やお試し入社を無くしてお互いを見極められるのが採用の効率面でいうと最上級の理想だと思うので、日々アップデートが求められると思っていますし、全ての会社にこのやり方がマッチするとは思いません。
しかし、クロージングやミスマッチ防止、離職率低下、成果を上げるための一手段として入社前の選考フロー「お試し入社」が効果的なこともあるかなと思っています。振り返ってみてふと気づいたことでしたが、参考になれば幸いです。
それではみなさま、良いお年をお迎えください☺︎