ベンチャー企業への転職動機として「やりたい職務(職種)にチャレンジできること」や「事業やカルチャーへの共感」の2軸は重要な要素です。2軸のバランスは人それぞれですが、「どちらか一方の要素が皆無だった」というケースは珍しいのではないでしょうか。しかし、アソビューのSREエンジニア・霧生隼稀はそのレアケースでした。「事業への共感はほとんどなかった」と彼は言い、さらには「スカウトメールを読んで絶対に行きたくないと思った」とさえ言い切ります。
しかし、その後のカジュアル面談でアソビューへの印象は相当にポジティブなものになり、一転して入社を決めたのです。何が、その心境の変化をもたらしたのでしょうか。今回は霧生が、キャリア選択の指針や、アソビュー入社の経緯と働くモチベーションなどを語ります。
「教員が教員の世界しか知らないのはディスアドバンテージ」選んだ民間就活の道
「もともとは数学科の教員を目指していたんです。ただ、プログラミングの面白さを知って、将来的に教員になるとしても一度社会に出た方がいいだろうなと思い、就職することにしました」
霧生は学生時代、ゼミでプログラミングに触れたことから、進路を考え直します。友人たちの多くは教員志望。ですが、社会経験を経ずに教員になろうとしていることに、強い違和感を覚えたのです。
「アルバイトで塾の講師をしていて、人に教えることは割と得意でした。ただ、生徒に進路を示していかなければならない教員が、教員の世界しか知らないのはディスアドバンテージだと思いました。そこで大学3年生の春休みに就職活動をしてみようと考えました」
そこでまずは、ゼミで行っていたプログラミングの課題を実施。その課題を難なくクリアできたことで自信を強め、就職活動をスタートさせたのです。
「プログラミングの面白さは、パソコン1つあればものづくりができること。数学科みたいな偏屈なところにいる人間ですから、もともと問題を解くことは好きでした。プログラミングも、課題解決を目標としてコードを書いていく作業。そこに魅力を感じました」
教職課程を取ってきた霧生は予定通りに大学4年の春に教育実習を行い、中高の数学科の教員免許を取得。それと並行して就職活動を行っており、ERPパッケージベンダーから内定を得ました。
入社後は、デザインからフロント、バックエンド、DB周りまで多くの領域を経験。学生時代に触れてきた領域とは全く関係のないところでしたが、仕事に応じて必死に学びながら、経験を積んでいきました。
新卒入社後に本格的にかかわったのは、SaaSの新製品の基盤機能をつくるバックエンド寄りの開発。その中で霧生は、「サービスやプロダクトに責任を持つとはどういうことか?」を深く考えるようになっていきました。
「サービスに責任を持つ」とは、「アプリケーションからインフラまで対応領域」と考えること
開発者と接することが多く、管理用サービスの運用なども行う中で、細かい部分の開発に際して土台となるインフラの重要性を強く感じていたと言います。
「アプリケーションを運用するためには、ビジネス側のロジックだけではなく、もう少し低レイヤーのインフラにまでさかのぼって考えていかないと無責任ではないか。そう感じて、サービスの根っ子にあるインフラに興味が出てきました。いくら良いアプリケーションを作ってもインフラがダメになると全てがダメになります。そういうところまで面倒を見ることができないと『サービスに責任を持つ』ことにはならないと思ったのです」
分業化の進む大企業で、部分的な仕事を中心としてきた霧生でしたが、先輩がインフラ領域まで把握して仕事を進めている姿を見たことから、その可能性を実感。それが転職の動機にもつながっていきます。
「技術領域を広げていきたいと考えていたので、分業化が進んでいる大企業から離れて他のところも見たいと思いました。もう1つは、BtoC向けの企業を見ようと思ったことです。というのも、前職はBtoB、そして大企業向けのパッケージベンダーであり、クライアントである大企業は構造上、要件や業務の大幅なアップデートはしづらい状況でした。すると、あまり新機能へのフィードバックもない。僕はよりフィードバックが得られる環境で成長したいなと考えるようになりました」
退職して半年ほど経った頃、アソビューからのスカウトメールが届きます。それを見た第一印象は意外なものでした。
「めっちゃ行きたくないと思いました。ホームページを見ると、ものすごくキラキラしているじゃないですか。僕はそんなタイプではないので、その時点で嫌だなって(笑)。ただ、CTOから直接メールが来たこと、BtoCのサービスを展開していたことで、とりあえずカジュアル面談だけは行こうかなと」
カジュアル面談に訪れた霧生はその日、当社へのイメージを一変させたと言います。
「開発の人たちは、意外とパリピな感じではなかったので(笑)、大丈夫かもしれないと思いました。また、インフラに携わりたいと思いながらも、経験がないためバックエンドエンジニアとして転職活動をしていたのですが、知り合いが働いていたので『SREをやってみないか』と言ってもらえて。タイミングがよかったですね。だから僕は事業への共感というよりかは、やりたいことできるからという理由で入社したんです。最終面接で代表の山野にそれを話したら、『正直でいいね』と言われました」
経験のなかったSRE領域で、幅広く関われることが楽しい
アソビューに入社後、サービスの保守運用を行いながら、インフラからできるUXへのアプローチを行っていきます。
「可用性や信頼性を高め『ユーザーが使いたくなくなる状況を減らす』というのが僕らの役割です。たとえば、ユーザーがサイトにアクセスするときに『遅い』と感じたり、エラーが出て購入できなかったりしたら使いたくなくなります。これをできるだけ減らすこと。
もう1つは、ディベロッパーエクスペリエンス(DX)と言われる『開発者体験の向上』です。素早くデリバリーできるようにしたり、開発効率を向上する手段を考えたりしています」
ユーザー側と開発者側の両方向を向いて、インフラの領域から体験向上を目指す。それは、様々な部署との連携によって実現されます。
「たとえば、アソビューでは今年のゴールデンウィーク期間中にテレビCM放映を行いましたが、このような露出やパブリシティによってトラフィックが大量に増えるとサイトが落ちるリスクが高まります。その時にも視聴率や露出のインパクトから来訪数を予測してスペックに耐えうる対策を実行します」
とはいえ、どんなに備えていても想定外が起きてしまうのがシステムの世界。備えても備えても十分すぎることはありません。以前、当社で使っているクラウドプラットフォーム自体に障害が起こり、影響を受けてしまったこともありました。
そんな中で霧生は仕事のやりがいをどのように感じているのでしょうか。
「約2年前、閉園することが決まったレジャー施設 のチケットをアソビューが専売権利を持って販売したときは、話題性もあり、かなりのアクセスが予想されていたので、常に臨戦態勢で気が抜けませんでした。
ただ、僕はこれまで経験のなかったSRE領域で、かなり幅広く、大きな裁量を持って関われていることが楽しいです。他の会社のSREよりも業務範囲は広いのではないかと思います。できるだけ自分ができることを増やしたいと思っていたので、今の環境にやりがいを感じていますね」
大変だけど、働く人たちがすごくいい。よりサービスに責任を持てるよう、できることを増やしたい
現在、6名のSREチームでチームリーダーを担う霧生。自ら手を動かしつつ、VPoEの兼平大資とともに方針を考えるなど、プレイングマネージャーの役割も兼任しています。
「26歳から領域未経験で入社して、割とすぐにチームリーダーをさせてもらいましたが、今のところこのままマネジメントを極めたいとはあまり思っていません。これまで仕事をしてみて、『エデュケーション』と『マネジメント』は違うなと感じています。
何かを手取り足取り教えることはできても、そのことと、自ら成果が出せるように1人立ちさせることとは少し違う。教育は生徒に教えるだけで、その成果はあくまでも他人事のように感じていました。ただ、マネジメントとなると、自分の部署の成果として出てくるもの。それを上げていくためのアプローチは難しいなと実感します。
だからというわけではありませんが、僕はまだ今は、もう少し自分の領域を広げて、できることを増やしたいという感覚です」
入社以降、大変なこともある中でもアソビューに居続ける理由を、霧生はこう語ります。
「トラブルがあった時も今も、やりたかったことをやらせてもらえて楽しかったですし、何より働く人たちがすごくいいなとずっと思っています。他部署との距離感も近いですし、経営陣との距離感も近い。
入社してから、お世辞抜きで『会社の人との会話でこんなに笑うんだな』と思うことが多いです。入社前にホームページを見たときに感じた会社のキラキラ感は今も感じますし、そのノリにときどき巻き込まれますが(笑)、それも含めていいのかなと」
今後、霧生は今持っているSRE領域の役割を剥がし、データの活用領域へと移行していく予定です。現在は、拠点やプランのおすすめを表示する「レコメンド機能」の実装に向けて、データ基盤の構築などを行っています。
よりデータを活用した仕組みづくりに注力していくことは、学生時代に数学科で学んできたことや、前職時代にバックエンドエンジニアで身につけてきたこと、当社でSREエンジニアとして得てきた知見、「すべてがつながって生きてくる」と霧生は意気込んでいます。
上流から下流まで、さまざまな経験を積み、フルスタックエンジニアに近いスキルを身につけてきた霧生は、今後も、新たなサービスの展開を支えていきます。