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【Event Report】ダイレクトリクルーティングの本質を考える|採用のプロを目指す #1 グッドパッチ 小山清和氏

グッドパッチの事例から考える、事業の成長を支える採用とは

採用を進める上で「ダイレクトリクルーティング」を行っている方、または今後行いたいと考えている方も多いのではないでしょうか。ただ、なぜダイレクトリクルーティングが必要なのか、理解した上で行動しているかどうかで、結果は大きく変わると考えています。

今回、HERP株式会社との共催イベントとして、採用の体系論から具体的な手法までをお伝えする、全4回のオンラインイベントを実施することになりました。第1回は、株式会社グッドパッチの小山氏をお呼びし、ダイレクトリクルーティング導入から全社採用までの道のりや、小山氏ご自身が考えるダイレクトリクルーティングのメリットについてお話いただきました。

(本記事はウォンテッドリーが主催したセミナーの内容を要約した上で構成しています。)

Kiyokazu Koyama プロフィール - Wantedly
自己紹介などの詳しいプロフィールは、つながりをリクエストして承認されると表示できます。
https://www.wantedly.com/id/kiyokazu_koyama
小山 清和 氏
株式会社グッドパッチ HRBP

富山県出身39歳。新潟大学を卒業後、新卒で松屋フーズに入社し、その後営業を経て2008年から人事に。グッドパッチには2016年10月に入社。主に人事面から組織づくりに関わり2020年6月のマザーズ上場に貢献。2021年1月からはデザインパートナー事業を担うDesign Divisionに異動しHRBPとしてデザイン組織構築に関わっている。

はじめに:
ダイレクトリクルーティング成功の方程式


冨田氏:今回、全4回イベントを通じて、採用のプロになることを目指してイベントを企画しました。ダイレクトリクルーティングを主軸において、「コンテンツの磨き込み」、「スカウトリソースの確保と効率化」、最後に「歩留まりの高速改善」が採用の成功につながることをお伝えしていければと思います。本日はダイレクトリクルーティングにおける考え方や心構えをお伝えした上で、第2回、第3回、第4回で各論を学べるように設計しています。是非このイベントをきっかけに、皆さんの採用の何かヒントになればと思っています。

Section1
なぜ、「ダイレクトリクルーティング」に力を入れるべきなのか

ーー本日はよろしくお願いします。はじめに、小山さんが思う「ダイレクトリクルーティングに力を入れるべき理由」について、ぜひ見解を教えてください。

小山氏(以下省略):これは新卒も中途にも当てはまることですが、候補者に選ばれる時代が確実に来ているためです。これからの採用は会社が選ばれる時代になると思っています。本日は人事の仕事をされている視聴者が多いと聞いています。皆さんの中には、「なぜ優秀な人材は弊社に来ないのか」と悩んだことがあるかもしれません。

企業側が自発的にアクションを起こさなければ、候補者の転職における選択肢には入らない時代になっているのです。候補者に選ばれるためには企業側から自社に入社するメリットを伝える必要があります。ただし、企業側のメリットばかりを伝えても候補者は惹かれません。企業側のメリットだけを伝えるのはアトラクト(魅力づけ)ではなく、ただの押し売りです。相手にとってメリットになる情報を提供しなければいけません。加えて、企業側も候補者に面接をされている(見極められている)スタンスで採用に望まなければ採用するのは難しい。しかし、言い換えれば、戦い方次第で、小さな会社でも大きな会社に勝てるとも言えます。その手法の1つが「ダイレクトリクルーティング」だと私は考えています。


ーーさらに「ダイレクトリクルーティング」に力を入れるもう1つの理由として、「共感」の重要性が高まっているとお聞きしました。

その通りです。私の個人的な感覚ですが、昔と比べると採用における「共感」の重要性が非常に高くなっていると感じています。
たとえばエンジニア採用の場合、以前は「憧れのCTOがいる会社に入社したい」という候補者が多い時代がありました。チームより個を重視していた時代です。しかし、現状はチームで開発することが主となり、チームでパフォーマンスを出せるエンジニアでなければ採用されないことも多くなった。求める人物像もチームでの経験を採用要件に設定するケースも見られます。たとえて言うなら、「昔は一人のスーパースターにスポットを当てて会社という物語を創っていた状態だった。それが徐々に社員一人ひとりにもスポットが当たり、チームとなって初めて物語が生まれるようになった」という感じでしょうか。

実際に弊社は組織崩壊のエピソードがありますが、その体験者でもある私に「なぜ辞めなかったのか」といった質問される候補者が一定の割合でいらっしゃり、私の経験に共感をしていただくケースも多いです。ダイレクトスカウトでも、複数の職種の方から同じ視点で「共感」をもらい、メッセージの返信をいただくこともあります。

これらを通して言えるのが、候補者が会社の「登場人物」の一員になれるかどうかをイメージするようになってきたということです。給料や技術力が高いことももちろん大事なのですが、人はそれだけでは動きません。つまり相手の感情に訴えかけ、「共感」をしてもらうことが大事なんです。

その点においてダイレクトリクルーティングは、候補者一人ひとりにカスタマイズできる、候補者との距離感が一番近い採用ツールです。

さらに、ダイレクトリクルーティング後のカジュアル面談は、採用における最高の情報収集の場でもあります。たとえば、実際に候補者が感じた選考での残念体験や、行きたい会社、行きたくない会社の違いなど、自社の選考体験を向上させるための優良な情報で溢れています。ダイレクトリクルーティングにはこのような副産物があることは忘れてはいけない点です。

Section2
グッドパッチのダイレクトリクルーティングにおける歴史

ーーありがとうございます。ここからは、グッドパッチ様がダイレクトリクルーティングに全社的に取り組めるようになったストーリーを聞いていきます。

ダイレクトリクルーティングの成功において、人事だけでアクションし続けてもスケールしません。採用に対してコミットする社員を増やす必要があります。グッドパッチはこの状態に至るまで大きく5段階のフェーズがあり、約3年かかりました。

まず第1フェーズは、現場に任せていたスカウトを人事も打つようになったことです。当時は人事が主体となって採用を行っていたわけではなく、代表と現場が主導で採用活動をしていました。人事は日程調整などのオペレーションがメイン業務で、人事が採用に対してコミット出来ている状態ではなかった。この状態を変え、人事も採用に対して積極的に関われるようにする必要があったんです。

そのためにまず、当時あまり社内で活用されていなかったGreenを利用しました。代表との目線を合わせる目的で私がスカウトを送信し、良いと思った候補者は代表に会ってもらうスキームを作成。その中で良い候補者は現場との面接を設定しました。最初はなかなかうまく行きませんでしたが、何度か繰り返してようやく結果が出るようになり、少しずつ人事が採用に関われる機会も増えていきました。

第2フェーズは人事も面談・面接を実施するようになったことです。それまでは人事の面接は選考に入っていませんでした。より良い採用をしていくためには、さまざまな角度から候補者を見ていく必要があると考え、1次面接が私(人事)、2次面接は現場、3次面接は代表が参加する形に変更しました。誰かが良い人を採用するのではなく、全員が良いと思う人を採用することが重要という考えがベースになっています。第1フェーズでのコミットがあったからこそこのフローを組み込んで行けたのだと思います。

第3フェーズは第2フェーズを進化させ、人事も含め、選考に関わるメンバー全員がフラットに重要な意思決定を出来るようにしました。仮に代表がOKを出していても現場側でNGにすることが可能で、選考中に誰か1人でもNGを出せば採用しないフローになりました。また、このタイミングで一定以上のポジションでの採用が予想される候補者を中心にリファレンスチェックも導入し、よりさまざまな角度から採用するという体制を作りました。リファレンスチェックは、候補者に紹介していただいた同僚以上のポジション2人に行っています。基本的に私が電話などで対応し、採用において重要な参考情報として運用しています。

第4フェーズは、現場もスカウトにコミットできる環境を整えたことです。Hiring Manager(採用責任者)を各部署に設置しスカウト目標を設定しました。また、採用定例を毎週実施して採用におけるPDCAを現場で回す体制を作りました。人事はスカウトや面接も行いますが、全体を統括する、採用のプロジェクトマネージャーのような動き方をしています。

最初はうまく現場を巻き込むことが出来ず、定着するまで半年ほどかかりましたね。実際に採用活動を一緒に行う中で、採用市場において求めている人材を採用する難しさに気づいてもらえるようになりました。なかなか議論が生まれない状態から、徐々に定例でのディスカッションも「どう採用するか」といった議論に変わっていきました。地道にアクションを続けることの重要性を学びましたね。

よく現場にスカウト送信をお願いしたり、スカウトの質の担保が難しいという話を聞きますが、それは人事側からのサポート不足が原因だと思います。弊社では投げっぱなし、任せっぱなしにしない。弊社の場合、スカウトツールの使い方の講習会を個別で実施したり、文面の添削も行ったりしています。Wantedlyの社員プロフィールもスカウトを送信した時に「会いたい人」と思ってもらえるように広報チームと連携して変更してもらったりもしました。

最後の第5フェーズです。これは現在の採用体制なのですが、採用目標数をベースに、現場のメンバーたちで目標設定をし、それを達成していくスタイルをとっています。ビジネスモデル上採用目標が届かなければ、予算達成が出来なくなってしまうので、以前以上に現場とHRが連動して目標達成に向かう体制になった感じでしょうか。

人事側のアクションとしては、Hiring Managerが設定した目標が達成できるかの判断であったり、具体的に採用目標を達成するためのアイデアと知恵を共有したりしています。現場、人事といった垣根をつくらず、フラットに意見をぶつけ合い、どうやったら目標達成が出来るのかを考えています。

Section3
ダイレクトリクルーティングを成功させるポイント

ーー最後に、これまでを振り返って、グッドパッチ様ならではのダイレクトリクルーティングを成功させるためのポイントを教えてください。

月並みな言葉になりますが、まず人事や経営陣が率先して背中を見せないと意味がありません。「採用してよ」と採用活動を積極的に行っていない人に言われても嫌じゃないですか。自分がやっていないのにもかかかわらず、やってくれと頼んだとしても決して協力してくれません。現場を巻き込む前に、まず自分がやっていたのかどうか自省することからはじめるべきだと思っています。

次に、一度やると決めた施策は最後までやりきることが重要です。たとえば、Wantedlyを使ってスカウトを送ると決めたにもかかわらず、送りきれずに終わった企業もいらっしゃると思います。まずはきちんと送り切るところがスタートです。送りきっていないのに、スカウトは効果がないと言うのはお門違いです。やることをやりきってから施策として有効だったのか、それとも違ったかの判断したほうが良いです。

最後に、優秀な候補者を採用できない現実を、現場が協力してくれないことやマーケット、給料が原因だという他責思考になってはいけません。グッドパッチもやってみたものの失敗した施策もたくさんあります。ですが、どの施策について最後までやりきっています。採用できない原因は外部環境ではなく、内部にあると考え、まずは自社の状況から振り返ってみると良いでしょう。振り返ることができれば、成功の第一歩に繋がると思っています。

ーー非常に参考になるお話ばかりでした。本日はありがとうございました。



※2021年2月24日に実施した「採用のプロを目指す」第2回のイベントレポートは近日公開。お楽しみに。

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