「いずれ、どんな企業も1人は編集者を採用することになると思います。」
入社初日、僕にとって初めての上司となった人はそんなことを言いました。
当時、僕は30歳。
東京大学の博士課程を中退し、Web編集者としてのキャリアをスタートさせたばかりでした。
そしてその2年後、ココロオドル運命の導きによって、僕はウォンテッドリーに初の編集者として入社することとなります。
「ウォンテッドリーってエンジニア企業のイメージがあるけど、なんで編集者なんか採用したの?」
そんな「?」が、いまこの記事を読んでいる皆さんの頭に浮かんでいるかもしれません。
この記事では、僕が所属しているWantedly Peopleチームにおける「編集」という機能の役割について、お話しさせていただこうと思います。
名刺管理から、人脈構築へ。
Wantedly Peopleというアプリはおそらく、名刺管理アプリとしてイメージされることがほとんどでしょう。
実際に、リリース1年で100万ユーザーを超えるなど急ピッチでの成長を続けるこのアプリでは、この1年の間に累計2,000万枚もの名刺データが取り込まれています。
過去に交換した全ての名刺をデータとしてポケットの中に持ち歩くことによって、ビジネスパーソンの人脈構築をよりスマートなものにする……このアプリの開発背景にはそのようなミッションがありました。
しかし、ただ単にデータ化された名刺情報を持ち歩くだけで、それが活用されることがなければ、発展的な人脈構築に繋がることはありません。
そこで考案されたのが、Wantedly Peopleのタイムライン機能である「話題」タブです。
このタイムラインには、キュレーターが選んだ記事コンテンツの他に、名刺交換相手に関連するニュースがAIによって取得され、表示されます。
この機能によって、ユーザーは世の中で起こっている出来事との情報接点を持つだけでなく、ビジネス上で生まれたつながりを絶えずアップデートすることができるのです。
僕のWantedly Peopleチームでの役割を一言で言えば、まさにこのタイムラインを編集することなのですが、それはなにも各メディアの配信するニュースを入稿することだけではありません。
では、何をすることが編集の役割か? ……自分がアプリのタイムラインを編集するという仕事に就くにあたって、まず真っ先に取り組んだことは「話題タブの提供体験を言語化する」ということでした。
「話題を編集する」とは、果たして何をすることだろうか。
そもそも、「話題」とはなんでしょうか?
それは、私たちがテレビや新聞などの媒体を通じて得ている「ニュース」とはどう違っているのでしょうか?
話題という言葉は例えば、「あの通りに新しくできたカフェが話題らしいから今度行ってみよう」だとか、「なんだか、あの芸能人のブログが最近話題になってるらしいね」といったように用いられることが多いように思います。もしも乱暴な分類を試みるのであれば、媒体から人へと伝わる情報が「ニュース」だとすると、「話題」とは人から人へと伝わる情報のことを指しているとひとまず言えそうです。
ここで、皆さんが今お読みになっているこの記事を「話題」として捉えてみましょう。それは例えば、次のような伝わり方をするかもしれません(少なくとも、編集者としてはそのように期待しています。)
「ウォンテッドリーが編集者を採用したらしい」
「アプリのタイムライン機能を強化するんだって」
「へぇ、名刺交換相手の話題も表示されるのね。あ、あの人の会社の記事が出てる!」
このように一つのトピックが人から人へと伝わる場面を想像するとき、「話題」とはまず「"自分ではない誰か"に属するトピックとして経験されるものの、コミュニケーションを経る中でその価値が実体化されていく情報」のことだと定義できるでしょう。そして、SNS時代の情報伝達に慣れ親しむようになってから久しい私たちにとって、世間一般の「ニュース」は多かれ少なかれ(上述した意味においての)「話題」としての側面を帯びていると言えるのではないでしょうか。
そして、ビジネス・コミュニケーションにおける話題の価値は、「発見」「発信」「発展」という3つの段階に分けてストーリー化することができるでしょう。
発見段階:「へぇ、そうなんだ。」
- 知らない現場の情報を知れる。
- 業界の最新動向がアップデートされる。
発信段階:「なんだか**らしいですね。」
- アイスブレイクや雑談の質が高まる。
- 相手に関する情報が整理され、アイデアに「幅」と「深度」が生まれる。
発展段階:「これって、こんな企画に活かせないですかね?」
- 仮説設定力に貢献する。
- 名刺交換を通じて生まれたつながりが、「話題」によって活かされる。
こういった情報価値を、どのようにタイムラインを通じて表現するかを考えること……いわば、「コンテンツ編集」と「エンジニアリング」の間にある領域を縫い合わせるような作業こそが、Wantedly Peopleにおける編集の仕事なのだと考えています。
こうしてチーム内にコンテンツ編集のDNAを取り入れることにより、新たに発足したチーム内編集部である「Wantedly People 話題部」は、「つながりをアップデートする」というミッションを掲げることになりました。
最後に、その所信表明をここに記すことによって、(どこまでもカッコつけた形で)この記事を締めくくりたいと思います。
つながりをアップデートする。 Wantedly People 話題部宣言
たとえば、話のきっかけをつかめない。
あるいは、名刺の上でしか相手を知らない。
話題のない世界は、どうにもこうにも不自由だ。
ポケットに、花咲く会話の種をあつめて、
「出会い」の次のステップへと、話題とともに進んでいこう。
話題に触れると、世界とあなたのギャップが埋まる。
話題を探ると、あなたの知らない現場が見えてくる。
話題があるから、コミュニケーションが深まる。
話題をきっかけに、新しいアイデアに出会うこともできる。
話題はいつかシゴトという名の実を結び、
次のココロオドル瞬間へとつながっていく。
そんな風に、人と人とのつながりを、「話題」を通じてアップデートしたい。
私たちは、ニュース編集部ではありません。
私たちは、Wantedly People話題部です。