音楽・映像・ファッションなど様々なカルチャー分野で、日本のクリエイターが世界で活躍する社会を作るべく事業を進めるWano。海外とのMTGについて「日本特有の"なんとなく"は通じないよね」と話す、代表の野田とエンジニアのLeo。実際にどのように英語を使って働いているのか、話を聞いてみた。
日本のクリエイターが世界で活躍できる社会を作りたい
▲代表 野田 威一郎(のだ いいちろう)
――まず、Wanoはどんな会社なのか教えてください。
野田威一郎(以下、野田):「日本のカルチャーを世界に届ける」を軸に事業をやっていこう、と立ち上がった会社です。日本のカルチャーを世界に、と言うと抽象的ですが、要は日本のクリエイターが世界で活躍できる社会を作るための仕事をしています。
――具体的にはどのような事業に取り組んでいますか?
野田:これまで、音楽・映像・ファッションなど領域で事業を展開してきました。クリエイターが作品を世に出す時って、実は結構な手間がかかるんです。リリースは華々しいけど、その前後にやるべき作業が色々とあって。その煩雑な作業を、簡単にスムーズに行うことができるサービスを作っています。
例えば、現在フォーカスしているVideo Kicksというサービス。クリエイターが制作した動画を、各種ストアに簡単に配信できるサービスです。
▲音楽クリエイターを支援するTuneCore Japanの動画版として誕生したVideo Kicks
現在は、ミュージックビデオをiTunes/Apple Music、GYAO!などのストアへ配信するサービスが主ですが、将来的には音楽関連だけではなく短編映画や番組などの映像クリエイターへの支援もしていきたいと思っています。
海外パートナーとのミーティングで、実践的に英語を使える環境
▲社内でUSチームとオンラインMTGをしている様子
――事業内容を伺うに、海外のパートナーと仕事をする場面もあるのでしょうか?
野田:そうですね、それなりの頻度で発生します。今はUSとの協働が多いので、英語でコミュニケーションを取ることが増えていますね。
例えば、週一回、USチームとオンラインで定例MTGを行っています。サービスの企画内容から、具体的な仕様設計、開発スケジュール、などを話し合って、開発がスタートしたら毎週の進捗を共有する。
この際、オンラインでの会話はもちろん、ドキュメントも含めて全て英語です。USチームからもらう資料も英語、ディスカッションも、質問も、議事録も英語です。
何かしらの商品を受発注するみたいな関わり方じゃなく、一緒にプロダクトを作り上げていくので、コミュニケーションがかなり密になるんですよ。思考もやり方も、全部共通言語にしてすり合わせていかなきゃいけない。そういう意味でも、実践的に英語を使っていると思います。
日本のクリエイターの作品を世界中に届ける環境を整えていっているので、海外のパートナーはこれからもっと増えるはず。英語を使う機会もさらに増えると思っています。
Kryslov Leonid(以下、Leo):僕は2012年にロシアから日本に移住して、それから日本で働いています。Wanoに入社する以前の職場と比べると、Wanoではかなり実践的に英語を使っている感覚があります。
会社の指針に「グローバルを目指す」と掲げていても、英語でのコミュニケーションは実はメールだけという日本の会社もあるなと感じますね。
野田:何かしらの商品を受発注するみたいな関わり方じゃなく、一緒にプロダクトを作り上げていくので、コミュニケーションがかなり密になるんですよ。思考もやり方も、全部共通言語にしてすり合わせていかなきゃいけない。なので、実践的に英語を使わざるを得ないですね。
▲エンジニア Kryslov Leonid( Leo )
――日本語のMTGと英語のMTG、何か違いは感じますか?
野田:物事をどう共有して、すり合わせて進めていくかは日本語でも難しい。それを英語でやるからには前準備をより入念にしています。タスクの依存関係や意思決定の順序など、日本語でのやり取りよりもクリアにしておく必要があります。
Leo:日本企業同士だったら、なんとなく共通認識を持てるところもあるのかもしれない。でも、海外のパートナーにはそういうのは一切通じないです。文化や慣習の差があっても同じ認識を持てるようにするのはすごく重要だと感じています。
基本的に資料作りは僕が中心になってやっていますが、最近はトピックが複雑になってきて他のメンバーとも手分けすることもあります。
ミーティングも僕がメインで進めているんですけど、他のメンバーも積極的に会話に入ってミーティングを進めています。
英語力を高める取り組みにも注力
▲メンバー同士で英語でMTG。議題を設定してMTGしたり、英単語のゲームをしたり。
――お二人はどうやって英語を習得したんですか?
野田:僕は幼い頃に香港で育っていて、そこでの生活を通して話せるようになりました。
Leo:僕はロシアの学校で勉強しました。
――Wanoのメンバーはみんな海外で生活した経験があるんですか?
野田:全然、そんなことないですよ。英語できるのは半分もいないかな、20%くらい。なので、みんな頑張ってますよ。
Leo:エンジニアは、読み書きができる人は多いですね。コードが英語なので読めないと仕事にならないところもあるし。ただ、話すことに苦手意識を持っている印象はありますね。
野田:そうそう、頭には出てくるけど、口から出てこない、で躓くとかね。イディオムはわかるけど、口から出てくる語彙が少ないのが悩み、っていうメンバーはいるよね。
――メンバーの英語力を上げるために、どのような取り組みをしていますか?
Leo:週に2回程度、社内でEnglish Meetingをしています。そんなに堅苦しいものではなく、ランチを食べながらラフな感じです。
簡単なテーマを設けて話したり、英語のトレーニングのためのゲームをみんなでやったりしています。
グループ会社からも、あっちこっちから参加者が集まってきます。僕以外にも英語ネイティブのメンバーがいて、一緒に参加してくれています。
野田:グループ会社は垣根がないので、ミーティング以外でもふらっと相談にきたり、逆に相談に行ったりしますね。英語ネイティブのメンバーと雑談することもあって、英語を学びたいメンバーにとっては、良い刺激になっていると思いますね。
こういう学びの場は、実践の場があるからこそ活性化するんですよね。ただ「社員の英語力を上げよう」と思って定期的に講座や研修をやっても、なかなか身に付かない。仕事で実際に使う場と、練習する場、どちらもあるのが大事だと思っています。
レオ:あと、Wanoのフラットな環境って、日本にあまりないですよ。最初から海外を向いたサービスを作るために立ち上がった会社だからかもしれないけど、これだけフラットだからこそ、海外とのミーティングもスムーズに行えるし、英語の学習も進みやすいんだと思います。
野田:たしかに。Wanoの場合、日々のやり取りもチャットベースで、かなりラフですね。日本の企業だと、社内メールも「様」つけるとか、書き出しとか、ルールが色々あるじゃないですか。外国人がタメ語になっちゃってたら注意されたり。
もちろんお互いに敬意を払うのは大事ですし、いろんな関係者がいますから「完全にタメ口でOK」というわけでもありません。ただ、それが外国人にとって生きやすい環境かと言ったら間違いなく違う。そこはバランスですね。
事業を通して、日本のカルチャーを世界に届ける
――野田さんが”日本の文化”を世界に届けることにこだわるのはなぜですか?日本にこだわらず、「良いクリエイターが活躍しやすい環境を作る」でも、Wanoに合っている気がして。
野田:「日本人だから」ですね。今、日本が弱くなっている気がしているんです。
バブル期の日本は「すごい国だ」と言われていたんですね。でも、今はせいぜい「日本って良いヤツ、やさしいヤツだよね」レベルです。昔ほど日本の文化が世界に届いていないのを肌で感じています。
音楽の分野で、今海外で有名な日本人っていないんですよ。5、60年前の坂本九から、まだ出てきていない。昔のほうが世界に出るのは大変なはずなのに、なんかおかしくないですか?
Leo:米国のビルボードチャートにランクインしている日本人、思い浮かばないですね。
野田:もちろん良い作品はどこの国の人が作っても良いと思っています。でも、やりたいことを全部やれるわけじゃない。それなら、身近な日本の仲間にフォーカスしていこうかな、と。
Leo:世界と戦おうとしているものと日本だけで閉じているものの差はどんどんできていきますよね。
野田:今後日本の人口がさらに減っていったときに、熱量を持ってエンタメをやる数少ない若者が超楽しめないと、日本は超つまらない国になると思う。それが、Wanoがエンタメにこだわる理由です。
たとえば野茂がメジャーに行ったらメジャーリーグを見る人がめっちゃ増えて、中田がセリエAに行ったらみんながイタリアのリーグを見るようになったのと同じように、映像や音楽でも日本人が海外に出ていけるようなサービスにしていきたいと思っています。
Leo:僕は日本のカルチャーが好きだし、だからこそWanoの仕事を楽しめる。でもWanoでは、日本に限らず世界のカルチャーに触れることができる。カルチャーが好き、っていう思いを持っている人はきっと楽しめる環境だと思います。