【座談会】Magic Moment社に聞く!少ないコミュニケーションコストで回すプロダクトフィードバックループのヒント-後編
SaaSプロダクト開発をもっとアジャイルに回していくための秘訣と成功のカギを学ぶMagic Moment社との座談会記事、後編です。前編をまだ読んでいない方はこちらから。
それでは後編、はじまります!👏
参加者
Guest
TOPPANデジタル株式会社(review-it!チーム)
- 今井 洋志(PdM:プロダクトマネージャー)
- 金山 尚徳(PO:プロダクトオーナー)
- 平野 雄大(PMM:プロダクトマーケティングマネージャー)
- 中森 あすか(デザイナー)
- 青山 桃(テックリード)
- 原井 隆浩(エンジニアリングマネージャー)
※TOPPANメンバーは人数20名程度で参加しておりました
アジェンダ
-----前編-----
悩み①:コミュニケーション
1-1.意思決定・合意形成のためのコミュニケーションコストが高い問題
1-2.セールスとエンジニア間で起こる「思ってたんとちゃう」
1-3.議事録"だけ"共有は注意?MM社のプロ意識
-----後編-----
悩み②:顧客の解像度と課題理解
2-1.プロダクトチーム全員が顧客課題を深く理解するためにしていること
2-2.顧客価値を考え続けることは『自分がいることの付加価値』を考えること
2-3.「自分たちは受託にはならない」その言葉の真意
悩み③:意思決定
3-1.意思決定と、チーム全体の納得を得るためには
3-2.意思決定の根底にある『ラディカル・プロダクト・シンキング』
3-3.開発におけるデザインの重要性理解を得るためには
悩み②:顧客の解像度と課題理解
2-1.プロダクトチーム全員が顧客課題を深く理解するためにしていること
(T:平野)プロダクトチーム全体として、顧客の解像度を上げることが難しい点です。現在は、顧客に対してCS、セールスがインタビューを行いそこから開発チームへ伝える形をとっています。伝言ゲームだと、どうしても温度感や、正しい意図を共有することが難しく課題感を感じています。
ビジネスサイドから導入の話をする時には、エンジニアサイドからするとPMFで言う、フィット部分しか見えていないような気がしており、実は意外と五分五分の駆け引きが行われているようなギャップ部分は、開発サイドからしたら見えないので温度感の差を感じることもしばしば。
(M:佐藤氏)弊社では、以下のことを実施しています。
- 顧客像を理解するための勉強会を開催
- 営業のマネジメント体験する場をつくる
- 社内、社外の打ち合わせの様子を動画で共有
スクラムチームであるエンジニア陣が、「何をつくるのか」、「どういう世界を実現するのか」という議論を常日頃から行っている中で迷った時に、顧客の見ている世界を実際に見てみたいというリクエストが出てきたことがきっかけでした。エンジニアがセールスサイドを体験することにより、よりよい提案が出てくることはすごくあり、そういった姿勢を取ってくれることで、営業側も前のめりに巻き込むことができるし、よりチームの解像度が上がっていく効果が得られていると思います。
また、エンジニアチームの提案が営業によりどのように顧客へ伝えられているのか、営業の社内ミーティングでどのようなことが話されているのか、を知ってもらう目的で打ち合わせの様子を動画で共有する手段も取っています。
2-2.顧客価値を考え続けることは『自分がいることの付加価値』を考えること
(T:今井)"文化"という言葉で片づけてはいけないとは思いつつも、従来担ってきた受託開発の感覚から、一人ひとりがそういった意識を持つことの重要性を組織として理解するのに、もう少しだけ時間がかかりそうです。
(M:渡邊氏)"ユーザー体験"と言うと漠然としていますが、顧客のエコノミックバリューを理解することで顧客価値を深く追及できると考えています。エコノミックバリューを頭に入れて考えること、その文化の浸透があるおかげで、チーム内でも顧客価値が言語化されており、チームメンバー全員が論点をロックできているのかなーと思ったりしています。
(M:伊藤氏)"文化"というキーワードで言うと、「自分たちは絶対に受託にはならない」つまり、「顧客の要望をそのまま受け止めて実装に至ることはしない」という意識は社員共通で持っていることは間違いないです。
2-3.「自分たちは受託にはならない」その言葉の真意は?
(T:原井)「自分たちは受託にはならない」というキーワードが気になりました。過去に何か失敗体験があり、そう強く思うようになったのですか?
(M:佐藤氏)会社の設立当初は、代表が描くビジョンがあり、トップダウンの開発体制でした。しばらくして、従来の体制に2つの懸念を抱くようになりました。
- "本当によいものって何なのだろう"と自分たちで考える文化が根付かないのではないか
- "自分が居ることの付加価値"が提供できていないのではないか
その想いが強く、現在のスクラム体制に変えるきっかけとなりました。もちろん、そのような考え方を根付かせるためには、社内で繰り返し文化づくりの活動が必須でした。
悩み③:意思決定と伝え方
3-1.意思決定と、チーム全体の納得を得るためには
(T:今井)プロダクト開発をしていると、たくさんの岐路に立たされます。その度に判断を迫られるわけですが、どのようにしてチームとしての意思決定を行うのがよいのでしょうか。
(M:佐藤氏)プロダクト開発における意思決定は、多くがPdMに委ねられます。それと同時にPdMは、スクラムチームへの説明責任を果たさなければなりません。導入数や金額のような定量的数値は、根拠として提示しやすく、受け入れられやすいため、その意思決定によるAfterを提示することができれば、チーム全体の納得感が高まるでしょう。
3-2.意思決定の根底にある『ラディカル・プロダクト・シンキング(※1)』
(M:佐藤氏)ビジネスチームからのフィードバックには2軸あると考えています。
1.プロダクトのロードマップを描いた時にあがる課題感
2.お客さまの要望ベースであがる課題感
プロダクトが果たしたいビジョンのために必要な改善と、お客さまの運用を考えた時に必要な改善と、この2点の重なり度合いによって必要性が変わります。もちろん、その改善が全ての顧客に共通して必要なものなのか、個社に対して必要なものなのかも、重要な判断基準です。
お客さまの要望ベースのフィードバックに関しては、私たちが描くプロダクトビジョンに沿っているという前提の上で、レベル感を確認します。この思想は、ビジネスサイドと開発サイドどちらの理解も必要な『ラディカル・プロダクト・シンキング』に基づいた考え方です。
(※1)自分たちが世界にもたらしたい変化(ビジョン)を根源に、その変化を起こすためのアプローチを考えること
3-3.開発におけるデザインの重要性理解を得るためには
(T:中森)ユーザー体験をデザインしプロダクト開発をアジャイルで回していく取り組みの中で、"広い意味でのデザイン"に対する理解を得ることがなかなか難しいです。例えば、既存プロダクトにおいてデザインのリファクタリングを行う場合など、その重要性を伝えるためにどのようなアプローチが効果的なのでしょう?
(M:佐藤氏)後から修正する負債がどれだけ大きいのかがポイントだと思います。大げさに言うと、もしデザインシステムが設計されていなかったとすると、一から開発するのと変わらないくらいの工数がかかるものです。弊社の例でも、実際にデザインシステムを構築する前後では、デザインがあがるスピード感は少なくとも10倍とかのレベルで早くなっていると思います。
ただ、そのデザインのリファクタリングが、今すぐ行った方がよいのか、ビジネスとして大きくなった段階で行うべきなのかという判断は当然ついてくると思いますけどもね。
(M:伊藤氏)リファクタリングに工数をかけることは、開発のコストカットが目的なようにも捉えられがちですが、一番影響するのはユーザー体験の向上であると言えます。例えば、ボタン配置が画面によってバラバラではユーザー体験は損なわれるので、当然統一感を求められますし、スプリントの速度が上がり、ユーザーに届くまでの時間が短縮されることはよいユーザー体験です。そのユーザー体験の向上を求めた結果が、副産物として開発のコストカットにつながったと認識しています。
さいごに
あっという間に時間が過ぎてしまい、用意していた議題の半分しか取り上げることができませんでした。この時間、非常の多くの学びを得させていただきました。セールス色が強いと仰るMM社ですが、エンジニアの方々も一人ひとりがプロダクトビジョンを理解し、ラディカル・プロダクト・シンキングの思想を持って行動しているところがとても魅力的でした。座談会の内容をさらに言語化して、reviチームだけでなく、TOPPANデジタル全体で共有していきたいと思います。
編集後記
全ての議題において、削る部分がないくらいに素晴らしい話しばかりで、まとめるのが大変でした💦ありがたい話です<(_ _)>Magic Moment様、このたびは貴重な機会をいただき、ありがとうございました。一同、感謝いたします。
記事を起こしていて、とても楽しく聞かせていただきました。もっと聞きたいのに…!と私が一番ワクワクして聞いていたと思います。ぜひ用意していた議題のもう半分の話も伺える機会がありますように…、と思いながら、締めさせていただきます。
ここまで読んでいただいた皆様も、ありがとうございました!
※ICT開発センターでは、こうした他社様との座談会を積極的に行っています。
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