Reapra Japan
Reapra Japan | Reapraは「研究と実践を通じ、産業を創造し社会に貢献する」をミッションに東南アジア・日本で活動する投資事業会社です。
https://jp.reapra.com/
techners株式会社CEOじゃっきーです。
スタートアップと聞くと「XX億円の資金調達!」と華々しいニュースが日々大量に流れています。そして資金調達の先にはIPOと、一気に拡大してこそスタートアップ、そんな印象をお持ちの方は多いのではないでしょうか?
僕たちは創業期から一貫して「資金調達(より正確には株式による資金調達)をしない」ことを強く意識づけしていました。そして実際に現在も資金調達をせず、自社の収益を再投資することで事業を日々成長させています。
いわゆる金のかかるSaaS事業を祖業として始まり、キャッシュ確保のための受託事業等も一切やらずに事業立ちをしてきました。実はこんなことが….!のような裏技はありません。それでも実現できます。
今回の記事では、なぜ資金調達をしない道を選んできたのかの背景を少し掘り下げていくことで、僕たちの目指しているあり方について触れていきたいなと思います。
僕個人の仕事観・事業の作り方には前職時代の経験が非常に大きく影響しています。
1年弱ほど、REAPRAというVCで働いておりました。今でも大好きな会社で、本当に壮大なテーマに取り組んでいる会社です(前職好きなのでちょびっと宣伝)。
当時REAPRAはハンズオン支援をウリにしており、投資先の会社への伴走支援にあたって試行錯誤していました。
その試行錯誤の中で、REAPRA CEO諸藤さん(エス・エム・エス創業者)の事業観に個人的に強く影響を受けてきました。
①そのサービスで顧客の課題解決ができているなら売り上げも上げられるはず。収益が立たないのは課題を解決できていないだけ
サービスを無償で始めることに強くNoを突きつけていた記憶があります。無料で使ってもらうことはよくあるスタート方法ですが、実際に価値を提供できているなら無料で提供する理由はないはずです。
トラクションに目が奪われ過ぎてしまい、赤字を正当化させないためズバッと言い切っていたのは印象的でした。
②徐々に投資をする経験を積み上げていく必要がある。経験がないのに大金を使わないこと
小さく初めて試行錯誤しなさい、とも言える内容です。とにかく小さくスタートし、徐々に学習しながら大きくしていくことを強調されていました。
ポーカーで遊んでる時に、ゲームのルールがわかっていないのに大きくベットしますか?と言われたら確かにな…と頷ける内容です。
③事業に対して非常にコスト意識が高い、無駄な出費は一切しない
本当にコスト意識が高い在り方をされていました。移動も普通に電車やLCCで、疲れてしまうからちょっと高い席を…といった話は一切なかったです。あらゆる面でコスト意識が高く、利益に跳ね返そうとし続けていました。
他にも例を挙げると数えきれないのですが、希望的観測には全く頼らずに一貫して現実的な事業運営に尽力していました。
「商売を成立させ、事業収益を再投資の原資として成長させること」
高度なファイナンス理論のようなものはそこになく、当たり前のこのフレーズを愚直に体現されていたことが強く頭に刻まれています。長い時間軸で事業を成立させるために、逃れることはできない現実だと思います。
そして僕たちもこの当たり前に創業当時から取り組んでいこうと決め、試行錯誤をしてきました。
スタートアップを運営する上で、資金調達は当然実施するものだと考えられています。調達できない=ちょっといけてないのでは…?とさえ思われているでしょう。
そのため資金調達をしないメリットはあまり表には出てきません。しかし、このスタイルで続けてきたからこそ感じる利点がいくつかあります。
①時間軸を長く取れる
事業が持続するようになってから発揮される、特に強力な利点です。長い目で見たときに必要なことに必要な時間を投下できるのは、非常に強力だと感じています。
この辺りの内容は、時間を取らなさすぎた結果の失敗が後々大きな痛手になると容易に想像できます。
個人的にスピーディに物事に取り組むことは好きですが、一方でどうしても時間がかかることはあると思います。あらゆることが早ければいいとは思いません。
②事業と収益を常に紐づけて考え続けられる
資金調達をしていないので、当然にお金は稼がないといけません。事業を進めていく中で、最初から収益をどのように上げるのか?を強制的に考える必要があります。当たり前のようで、これも強力なメリットの1つです。
収益を上げるまでのプロセスを、断片化させて片手落ちにならない状態でチームが考えようとします。
例えば「利用者の数をとりあえず増やしていこう」といった議論にはなりません。利用者が増えるだけではなく、収益が上がるまでを考える必要があります。
また同時にコストに対しても常に敏感になります。その投資は本当に必要なのか?それでいくら収益が上がるのか?頭を使えば節約できることはあるのではないか?
お金が十分にないからこそ、収益を上げるにしろ、コストを削るにしろ、全員が頭を捻り続けることができます。
特に立ち上げ期にはこれが利点だと感じます。お金があれば解決するのでは…と思っても、大抵のことは解決しません。コツコツ泥臭く行動し、知恵を絞っていくしかないです。そう取り組むための、基本的な価値観の形成がチーム全体で実現できたと感じています。
ここまで資金調達をしない利点を書いてきましたが、個人的には会社を運営する上では調達をしても、しなくても、どちらでもありだと思っています。
資金調達は手段の1つでしかありません。資金調達をしないと事業ができないわけでも、たくさん調達したからいい会社だというわけでもないと思います。その時の環境と会社の価値観にあったものを選択していくべきだと考えています。
僕たちは非常に長い時間軸でも成立する、確かに顧客に価値を届けていける在り方を模索し続けています。
長い時間軸で成立するためにも、創業当初から商売に真正面からぶつかる文化にしていきたかったです。そしてそれを実現することができました。
また、当たり前に流されてしまう疑問にも1つずつ回答していこうと取り組んできました。事業が立ち上がってない中で、どのように給料設定するべきなのだろうか、など非常に悩ましく取り組みがいのあるお題だと思います(今でも頭を抱えてはいますが…)。
他にも、KPIと顧客価値がマッチしていないのでは…?組織の文化はどうあるべきなのか?プロダクトと事業の両立、など直視するのが嫌になるような問題に、1つずつ答えを見つけようとしています。そのためにも時間が必要です。チームで個々人が必死に考え、試行錯誤して、自分たちなりの価値観を形成する時間が必要なのです。
今の所は、外部調達をしないことのメリットがとても大きく、今後もしばらくこのままでより事業拡大に取り組んでいこうと思っています。
とはいえ同時に資金調達も、上場も、あくまでも手段の1つでしかないと思っています。資本市場の力を借りた方が良いと判断した時、はじめてそう動くでしょう。
そして最後にまた別の論点からも1つ。ただの個人的な価値観ではありますが、外国人の両親の元に産まれ日本で育ってきた身として赤字で納税を回避する価値観はどうにも好きになれません。
社会インフラ、教育制度、などなど。日本という国の先人によるこれまでの積み上げの上で今の自分たちがあります。事業を拡大し、収益をしっかりと上げ、雇用を生み出し、そして納税を行って次世代に繋げる。そんな繋がりの中に自分たちもいたいなと思います。
※この動画は個人的に好きな内容です
この内容も未来の仲間になるかもしれないあなたに、どこか響くところがあればとても嬉しいです…!