会社の仲間や上司との「飲み会」、クライアントとの「会食」は、時代遅れなものだと思われている。面倒くさい、不味い、気を遣う、接待、お酒をたくさん飲まされるといったネガティヴなキーワードを連想する人も多いはず。けれども、当社NEW STANDARDでは新しいものを一緒につくるための相互理解やチームアップのために、会食はとても有効な手段だと思っている。
なぜなら会食は、参加者の五感を刺激し、立体的な体験を提供しながら自分たちの価値観やライフスタイルを伝える場にできるから。それは時に、クライアントにプレゼンをすること以上の情報量をもち得る。
遊びこそが
価値源泉だ
昨年、レクサスとともに新しいラグジュアリーライフスタイルブランドの未来を模索するキャンペーンを制作させてもらった。プロデューサー、モデル、起業家の3人が「LIFEGENIC」をテーマに旅をし、その行程を取材した雑誌やTABI LABO上での特集記事、動画などのコンテンツを企画制作。TABI LABOの読者を招いた東京ミッドタウン日比谷でのイベントや、実際にキャンペーンのコンテンツをリアルに体験いただくツアーなどを実施した。
この取り組みのきっかけとなったのが、「会食」だ。
LEXUSのチームメンバーの方は「ライフスタイルを含めた新たな提案を行なうなかで、アクティブミレニアルズに車との接点をもってもらいたい」という考えをもっていた。
ぼくら自身ももちろん、ぼくらのまわりにはアクティブミレニアルズの定義に当てはまる仲間が多くいたので、「ぼくらはどういう感覚で遊んでいるのか? 何を良いと思っているのか?」を共有するために、一緒にいくつかのお店をまわり、遊んでみる。まずはそんな「会食」を計画した。
会食は
ワークショップにも
フィールドワークにもなる
企画のプレゼンを行なう前にLEXUSのチームメンバーの方3名を含めた計5名で、アクティブミレニアルズの価値観にふれる、飲食店を3件まわる。
選んだのは、お茶の世界を堪能できる「櫻井焙茶研究所」、表参道の屋台村「COMMUNE 2nd」、青山のお蕎麦屋さん「川上庵」の3店舗。
2017年にぼくが訪れた広義の「カフェ」の中で最もインスピレーションを受けたのが、櫻井焙茶研究所。ここは素晴らしい日本茶だけではなく、お茶をベースにしたお酒も楽しめる。クラフテッドであり、外国人からみた日本の美しさや禅的な世界観を体現している空間だ。ここでは食前酒的に、お茶リカーで乾杯を。
COMMUNE 2ndでは即席ホームパーティを行なった。ワインや食べ物を持ち寄って、わいわいと遊び、食べる。これからの時代は単に消費するのではなく、プロセスの中で「つくる」ことや「参加」という体験を提供することが価値だと、ぼくらは考えている。そして、その感覚は体験しないと理解しにくい。ひとつの「コンテンツ=パーティー」をともにつくりあげる楽しさを感じてもらうことが狙いだった。
これまでの2件は価値観を体験してもらうための飲食店だったが、最後はゆっくり話すために近くの川上庵へ。現代におけるカジュアルな「蕎麦文化」の楽しみ方を理解してもらうことが目的で、そこで会食ツアーの振り返りを行なった。
カッティング・エッジな体験、共創する体験、日常的な体験。3つの飲食店をまわることで、ぼくらの価値観を伝えようとしたツアーだった。会食そのものを、プレゼンテーション、フィールドワーク、ワークショップまで昇華できたと思う。
街そのものを
レストランに見立て
フルコースとして楽しむ
ぼくは1日に6件はしごすることもあるくらい、多くの飲食店に行く。ひとつのレストランでフルコースを楽しむのも良いけれど、街そのものをレストランに見立てて何軒もお店をまわりながらフルコースとして楽しむと、その街がもつ文化や暮らす人々の価値観が立体的に見えてくる。
会食そのものを企画化することで、五感を最大限に活用しながら、今の時代の価値観やお互いのことを理解するためのコンテンツまで、価値を昇華することができるはず。一緒に遊ぶ感覚で参加してもらいながら、価値観を共に育てていく。平面のプレゼンを、立体的に変容させる会食。そんな「会食」のあり方が、この時代にあっても良いと思う。
久志尚太郎
代表取締役 / Creative Director
1984年生まれ。中学卒業後、米国留学。16歳で高校を飛び級卒業後、起業。帰国後は19歳でDELLに入社、20歳で法人営業部のトップセールスマンに。21歳から23歳までの2年間は同社を退職し、世界25ヶ国を放浪。復職後は25歳でサービスセールス部門のマネージャーに就任。同社退職後、宮崎県でソーシャルビジネスに従事。2014年TABILABOを創業、2017年社内組織BRAND STUDIO(ブランドスタジオ)を設立、2019年5月NEW STANDARD株式会社へ社名変更を発表。