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【メンバーインタビュー】越境したがっている方と共に、さらにsync.devを加速させたい / sync.dev 代表・岡田太一さん

sync.devで働くメンバーを紹介するメンバーインタビュー。初回となる今回は、代表の岡田太一さんにお話しをお聞きしました。sync.devを立ち上げた経緯から今後の目標まで、たっぷりと語っていただいています。

中学生でCGに出会い、そのまま映像の道へ

――岡田さんはどのようなきっかけで、映像やCGをつくるようになったのでしょうか?

CGに触れはじめたのは中学生の頃。まだ『トイ・ストーリー』(1996年3月日本公開)直後ぐらいでCGが一般的ではなかった時期に、文化祭のオープニングムービーをつくることになったのがきっかけです。高校生になってからもAfter Effectsでモーショングラフィックスをつくったりと、90年代後半はCGやAfter Effectsとともに過ごしていました。

進学先はデジタルハリウッドで、After EffectsもPremiere Proも3ds Maxも演出論もやるというショートムービーコースを専攻。ディレクションも学びたくての選択でしたが、実際はCGにもっとも時間を割きましたね。

――早くからCGに触れて、やっぱり将来もその道に進もうと考えていましたか?

実は当時はあまり自分のやりたいことや特性について自覚がなく、この先どうしたらいいのかがよくわかっていませんでした。ショートムービー専攻だったので、CG制作会社に就職しようという考えが浮かばなかったのかも。講師の先生からアルバイトで仕事をもらって働いてはいたものの、ほぼフリーターのような生活でした。

それでも、ちょうどその頃ゲーム会社にいながら自主制作のアニメで賞をとって世に出た新海誠さんのようなポジションに、なんとか手が届かないかな、なんて気持ちはありましたね。

――そんな中で、まずはCGデザイナーとしてキャリアを歩み出したそうで。

21歳の時に、講師の先生の紹介でとある会社で働くことになりまして。ただ、CGデザイナーとして入社したのですが、その後エディターになり、制作もやり、ディレクターになり、気づけば名刺はプロデューサーに。さらに、ポストプロダクション事業部を新設するということで、その事業部長もやることになりました。ハコと機材を用意して、ワークフローを整備して…大変でしたが、ものすごいスピード感で一通りやらせてもらったのはある意味稀有な経験になりましたね。

CGデザイナーとしてのルーツに立ち返り、新しい挑戦のために始めたsync.dev

――2012年に、ポストプロダクションとしてSTUDを設立しますね。会社設立に至った経緯を教えてください。

1社目の会社で数年働いた後に独立してフリーランスとなり、企業のCM編集を中心に活動していたのですが、案件の規模が大きくなってきたため、法人化したのがSTUDです。

※STUDホームページWORKSより

当時自分の強みとなっていたのは、いわゆるモーショングラフィックスアーティスト的な動き方ではなく、CM制作のスキームの中でAfter Effectsをメインでやるというスタイル。マシンパワーの向上のおかげで不可能ではなくなってきている中、当時は同じようにやっている人がまだ少ない領域で、そこは明確に自覚していました。

STUDを立ち上げてからは、Adobeの成長に合わせてビジネスも伸びていきました。当時小規模なところではAdobeがデファクトスタンダードになりつつあり、CMスキームが浸食されていくことは見えていました。それなら、浸食するほうに加担しようと。実際、この10年でいわゆるCM系のポストプロダクションからオフライン編集室はほぼなくなりましたからね。

――sync.devは2019年にSTUDの新規事業として立ち上がりますが、敢えて別の組織にしたのには何か理由があるのでしょうか?

ありがたいことに、GoogleやSONY、TOYOTAなどナショナルクライアントの案件にも携わらせて頂き、STUDは順調に成長してきました。社員も増えて、業務を手放していって、やることといえば「新規事業開発」ですよね。そうやって「何か違うことをやろう」と思って始めたのがsync.devです。

この頃特にジレンマに感じていたのは、もともと追い立てる側だった自分が、追い立てられる側になってしまったこと。そうなったら、自分だけでなく会社も大きく変化していかなければいけません。でも、それはかなり大変なことです。若い社員たちにとっては、今あるものを吸収することでも精一杯。Adobe以外に、DaVinci ResolveやNukeなどもすべてビジネスレベルで使えるようになるのは、簡単なことではありません。そのため、営業や体制づくりで広げていくフェーズにあるSTUDと切り分けて、新しいことをやるためにsync.devをつくりました。

――新規事業として何をやるべきか、どんなことを考えて絞りこんでいったのでしょう?

sync.devで何をやるのかを考える中で、「そもそも自分はCGデザイナーだった」ということにたどり着いたんです。当時満足にCGに関わることができず、じくじたる思いはありました。中学校の文化祭で一緒に映像をつくっていた仲間たちは、大ヒット映画に関わっていたり、有名なゲーム会社で取締役になっていたり。彼らや同期のCGデザイナーたちがごりごりにCGで活躍しているのは、やっぱり悔しかったんですよね。

そこから自分の好きなこと、できること、ピポットする価値のあることを考え、現在sync.devで手がけるバーチャルプロダクションやカメラトラッキングに辿り着きました。よく「人のスキルセットは掛け算」と言いますが、僕の場合は編集やCGがわかって、ビデオ信号やセンサーのことがわかって、ポスプロをつくった経験があって、プログラミングやUnreal Engineのことがわかります。これらの中でも特にビデオ信号の知見やエディターとしての感覚は特殊で、バーチャルプロダクションに必要なものが揃っていたんです。

つくったものや経験は手元に残る。「R&D」で広がる可能性

――現在のsync.devの事業としてのフェーズや、方針について教えてください。

新規事業としていくつか活路が見えてきた段階で、採算についてはそこまで厳密には考えていません。特に大切にしているのは「R&D(研究開発)」で、2つの意味で重視しています。

一つは、会社のピボット先という経営的発想として、そもそもR&Dをすること自体が必要だということ。そしてもう一つは、それを自分が好きだということ。

まだまだ大手企業の研究所のような予算的な余裕はありませんが、蓄積した知見と経験を強みにしてマネタイズの芽が見えている領域で行うR&Dは、一つの柱になっています。ただし、R&Dってどこで成果が出るかわからないものだから、本当は広く研究範囲や費用をとれるようになっていきたいんですけどね。

もう一つの柱は、機材やセンサーなどのメーカーや販売代理店へのコンサルティング。彼らには、実際に現場で商品がどのように使われているのかわからない部分があります。そのため、プロダクトアウトになりすぎないよう常に現場に近しい人の知見を求めており、そのお手伝いをさせて頂いています。これらに付随して、純粋に「機材に詳しい人」として声がかかる場合もありますね。

――今ではAmazonやTOYOTAなどさまざまな大手企業とのお取引がありますが、どのように案件を広げられてきたのでしょう?

最初の頃は、例えば実写とCGの合成に必要なカメラレンズの歪みの解析などを行っていました。そうしたR&Dの成果を展示会で発表したりすることで、現在の様々な企業とのお取引が生まれています。私たちとしては、システムやソフト、機材などをお借りしつつ、持っている知見やR&Dの結果を共有することができる。お取引先には、それにより彼らが考える範囲外の可能性を提供できる点を評価頂いています。

ただし、敢えてマネタイズを進めていないケースもあります。やっぱりR&Dのためには、どこかとべったりせず適切な距離感をとることが大切です。もちろん、出先を想定しないR&Dの中には、眠ってしまうものもあります。それでも、後々別の開発時にその経験値が活かせるなど、結果的にはどこかで役に立つことがほとんど。うまくいかなくても、案件自体がなくなっても、つくったものややってみた経験は手元に残るんです。今は人数も限られているので、ある程度近しい領域内でのR&Dが多いですが、メンバーが増えたら領域を広げていきたいと思っています。


越境したがっている方とともに、さらにsync.devを加速させたい

――sync.devは、リアルタイムコンテンツを多数手がけているのが特徴ですね。

ビジュアルとして固定されているものは映像が適しているけれど、例えば天気予報のCGなどのように、状況に応じて変化してほしいものもありますよね。僕は見た目がかっこいいだけのモーショングラフィックスではなく、もっと意味のあるものを作りたかったんです。もしかしたら、ゲーム業界に進んでいった仲間たちに対する意趣返しをしたいのかもしれません。ゲームをつくりたい気持ちはきっと心の中にはあったけれど、当時その選択肢を取れなかったから。

――とすると、「映像」やその「編集」はすこし物足りなく感じたりするものですか?

いや、純粋な映像の編集もすごく面白いですよ!撮れた素材の中で如何に面白いものを考え、つくることができるのか。ディレクターや制作、クリエイティブの方の想像も及ばないようなものをつくれた時には、気持ちが高揚しますね。「え、あの素材がこんなことになるの!?」と。制約がある中で想像を超えるものを返していくのは、すごく面白い

――そういう意味ではバーチャルプロダクションは、両方の要素をもっていますね。

「編集」に対して、バーチャルプロダクションはある意味アンチテーゼと言えますね。ポストプロダクションがプロダクションを喰いにいくようなもので、合成しながら「ちょっとカメラアングル変えて」ができてしまう。新しいつくり方として、面白いですよね。通常はどうしても演技や表情、カメラの入りやすさなどが優先されがちですが、そこはエディターの経験を持つ自分が、前後のつながりも含めた画作りと意味合いからものを言えるポイントかもしれないと思っています。

ただ矛盾していますが、「カメラアングルはこうだったらよかったのに」とは思いつつも、ありものの中で編集をしてみた結果、面白いことになるケースも多々あります。制限があることによって皆の想像を超える場合もあって、その矛盾も面白いですよね。

――今後、さらにリアルタイムコンテンツにおけるビジュアライズの需要は伸びていくと感じます。そんな中で岡田さんは、どんな人と一緒にやっていきたいですか?

最近は、徐々にsync.devに合う依頼を頂くことが増えてきました。そうすると、私たちとしてもこれまでの知見を活かしつつ、R&Dも行い、量産型ではないものをつくることができる。技術的なチャレンジも含めてやらせていただける案件が増えてきています。

そんな状況ですから、是非「やったことのないことに対して前のめりになれる方」にはsync.devに来てほしいですね。理想としては、何かしらの分野をきちんとおさめた上で、越境したがっている方。特に、テクニカルの中でもプログラミング的な部分で開発会社での経験値がある方は活躍できると思います。経験ややり方を活かして頂きながら、一緒にアレンジしていけるはず。映像制作会社の方も、経験を活かして頂けると思います。現在は僕と一緒にプロジェクトを進めることが多いですが、今後はどんどん別ラインとしてお任せしていきたいと考えています。

sync.devは、先ほどもあげた映像やCGの制作の知見、ビデオ信号の知見があり、センサーやトラッカー周りを合わせてやっているのがユニークな部分です。実際、バーチャルライブなどでこれらが必要なのにできる人がいないために、苦労している現場がかなりあります。そういったところに提供できるものは沢山あるはず。是非、sync.devという場所を活かして、自身でもともと持っているものと、越境による掛け合わせを生んで頂ける方をお待ちしています


TEXT & EDIT by Shiho Nagashima

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