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持続可能な未来のために。自然への想いを込めて取り組むカーボン・オフセット

2020年6月、エスプールはブルードットグリーン株式会社を子会社化し、取締役社長に八林 公平が就任しました。環境省や北海道下川町役場で経験を積んできた八林のこれまでと、ブルードットグリーンが取り組むカーボン・オフセット事業の今について語ります。

好きな自然を仕事に。旗振り役から頑張る一事業者への転向

「好きなことを仕事にするというのが基本」と語る八林は、好きな「自然」を軸に、環境省や町役場、集落自立化支援センターの設立とキャリアを歩んできました。

八林 「自然が好きだといいながら、私の出身は横浜なんです。都会で育ったからこその想いなのか、子どものころから自然や動物に関するテレビ番組を見て強い憧れを抱いていました。自然の中でも、植物が……この山にいる鳥が……といったこだわりがある方もよくいらっしゃいますが、私の場合は漠然と“自然“が好きです。

自然のどこが好きかと聞かれると、理屈では答えられないんですが、動物や植物のメカニズムや機能って不思議ですごいなと思うし、葉っぱの色ひとつとっても神秘にあふれている感じがしますよね。それで自然に関わる仕事がしたいなと思って、国立公園のレンジャーとして環境省に入省しました」

環境省入省のきっかけは、好きな自然に携われる国立公園のレンジャーになりたいというくらいだったという八林。仕事を進めるうちに環境と経済の両方を良くしていきたいという気持ちが益々強くなったと話します。

八林 「環境省では国立公園のレンジャーとして、国立公園内での仕事をしたり、地球温暖化対策の仕事もさせてもらったりしました。仕事をしていると地域の環境と経済の両方をなんとか良くしていこうという想いが強くなってくるんですね。ただ、国の仕事なのでいわば旗振り役。旗を振っていても、なかなか実らない実感がありました」

それならば、地域で一つひとつ環境対策と地域経済を良くしていったらどうだろうと考え、八林は縁があった北海道下川町役場へ入職。下川町は森林を使った地域づくりとして当時から有名な地域でした。

八林 「持続可能な地域づくりの政策や再生可能エネルギーの設備を入れるなどの取り組みを行ったのですが、地域は地域で、今度は行政が旗振り役なんですね。結局は、一人ひとりの住民、一つひとつの事業者が頑張らないといけないんだと気付き、今度は自分で集落自立化支援センターを立ち上げることにしました。

全国各地の温暖化対策のコンサルティングや自治体の政策づくりや地域経営人材育成事業など、地域の中でお金を回していく仕組みづくりを基本に取り組んでいました」

集落自立化支援センター設立後、環境省時代から付き合いのあったエコノス社(前親会社)の長谷川社長からの声掛けで、再びカーボン・オフセットに携わることになったのをきっかけに、ブルードットグリーンの取締役社長に就任することになります。

八林 「長谷川さんからお声掛けいただいたときは、集落自立化支援センターのほうが忙しかったのですが、環境省時代に担当経験のあったカーボン・オフセットの分野には思い入れもあり、まずは社長という形ではなくシニアアドバイザーとして携わらせていただいていました。

その後、エスプール社に合流するということになり、このタイミングでブルードットグリーンの取締役社長に就任することになりました」

気付れていないCO2の価値を引き出すブルードットグリーンの取り組み

               ▲取締役社長に就任した、八林 公平                      

カーボン・オフセットは、1997年に採択された京都議定書に基づいて国際的なCO2の排出権を取引するしくみのことで、地球温暖化の防止に役立つ手法です。

八林 「カーボン・オフセットというしくみは、CO2の排出量が減るように自ら削減努力を行い、それでも削減しきれなかった分に関しては、他の誰かの削減活動へ投資などを行うことで埋め合わせるというものです。京都議定書で各国に削減目標が設けられたことで、国際的な排出権取引の動きが盛んになりました。

これは国として政府が自ら取引していた部分もありますが、民間企業も自主的に削減目標を掲げて取引を進めていたんですね。すると、仲介役が必要になり業界は発展しました。

ところが、リーマンショックの後に排出権価格が低迷して、取引市場は一度しぼんでしまっています。今はパリ協定やESG投資の流れで企業がCO2の削減に向けて本気で取り組みを進めているので、業界として大きくなっていかなければという想いでいます」

ブルードットグリーンのカーボンオフセット事業は、CO2の価値を再認識してもらうことに重きを置いています。

八林 「ブルードットグリーンでは、再エネ・省エネ関連のコンサルティングや国内外カーボンクレジット・証書仲介、CO2算定支援、カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)回答支援など、カーボンクレジットの創出側から活用側まで幅広い支援を行っています。とくに注力しているのは、埋もれてしまっているCO2の価値を引き出すことですね。

たとえば電球を蛍光灯からLEDに変えると、省エネできて電気代がちょっと節約できて嬉しいと思う人が多いのですが、実は同時にCO2も削減できています。この削減したCO2を売り買いしたらさらに節約の幅が広がるんですよね」

こうした気付かれていないCO2を認証して売っていくと、次の省エネや再エネに当てる余裕ができたり、投資した設備の投資回収が早くできたりします。森林を間伐するなど適切に手入れしているのであれば、吸収したCO2も対象になります。

八林 「実際にあった事例でいうと、酪農家の方でバイオガスのプラントを入れたというお話がありました。バイオガス、つまりは牛の糞尿を溜めて発電に使い、そこで生まれた電気を牛舎や近隣の施設に使ってもらっているということでした。

もちろんCO2も削減できているので、それを認証して売れば年間100〜200万円にはなるだろうというお話しをしたところ非常に喜んでくれて、今、認証に向けて一緒に取り組んでいるところです」

楽しみながら持続可能な未来の実現に向けて

ブルードットグリーンでは「子どもたちに持続可能な未来を約束できる社会をつくる」をミッションに掲げ、事業を推進しています。

八林 「当社が掲げるミッションは、子どもだけでなく20代や30代、そして私達世代にとっても非常に重要なことです。とても暑い夏や、大雨が多くなっているといった気候変動は多くの人が漠然と感じていることでしょう。

こうした不安要素が大きくなってしまうと、20〜30年というそう長くないスパンでも、今の仕事を続けられるかわからないというリスクが高くなってきます。実際、父親の代までは米が採れていた土地でも、今は米が採れなくなってしまったという話や、漁業でも捕れる魚の種類が変わってしまったという話も耳にします。

捕れる魚が変わるということは漁具や漁船を変えなければなりませんからその負担はなかなかのものです。一次産業に携わっていない方でも、たとえば食品メーカーの調達先が変わったり、調達コストが上がったりと、環境の変化による影響がどんどん連鎖してしまうのです」

このミッションを達成するために、八林が大切にしていることは、楽しんでやることだと話します。

八林 「CO2の削減や環境問題の話をすると、マイナスのものをゼロに戻す取り組みだという印象を持つ方も少なくないように感じますが、地球に良いことをするということは単純に気持ちがいいし、どんどん新しくなる世界の技術も楽しいものです。

やらされてCO2を減らすんじゃなくて、みんなに喜ばれる楽しい投資をやっていきましょうというのが、今私たちが考えているところです」

今回のエスプールとの資本提携により、シナジーを生み出し、より企業の価値を上げる支援をしていきたいと八林は語ります。

八林 「エスプールと資本提携しましたが、企業の価値を上げていくアウトソーシングという点では同じだと考えています。ソリューションが増えたという感覚のほうが強いかもしれません。

たとえば、各企業とも環境やCO2の分野には詳しい人が少ないので、他の業務をしたいのに抜けられない人がいたり、なかなか取り組みが進まなかったり、という悩みを抱えていると思います。

そこでエスプールには人材派遣の事業があるので、環境人材を育成して困っている企業に派遣したり、環境部門をまるごとアウトソーシングしていただいたりというしくみをつくっていけたら、中長期的に企業の価値を高めていくことができるなと考えています」

CO2売買に頼りすぎない自走できる環境づくりを目指して

             ▲ブルードットグリーンのメンバーと(下段左が八林)                   

ブルードットグリーンの今後について、八林は次のように話します。

八林 「プロバイダーらしくない言い方になるかもしれませんが、CO2の売買に頼るというのは、本質的ではないと思っています。カーボンクレジットを買えばいいというのではなくて、企業が直接再エネ投資をして、自ら設備を導入して自主的に減らす取り組みをできるようにしていかなければなりません」

当社の目指していくところとしても、工場や事業所それぞれがエネルギー的に自立していくソリューションを、提供していく必要があるだろうと八林は前を見据えます。

八林 「そして、行き着く先はそれぞれの施設がオフグリットになっていることでしょうね。1件1件では難しいだろうからエリアでまとまって自給できるシステム、ゼロカーボンなエリアができていくような自立分散型のエネルギー社会というのが描くところです。

さらにはこれから著しく発展していくアジアやアフリカの国々にも日本のノウハウは必要とされるでしょう。長いスパンでは海外展開を目指していくつもりです」

ブルードットグリーンとして、実現したい世界に向けて走り出した八林。個人としてもかなえたい夢があります。

八林 「再生可能エネルギー自給100%エリアというのを早くどこかにつくりたいなと思っています。太陽光や風力や水力で電力をまかない、温泉熱や木質バイオマスで熱供給し、夜は蓄電した電気で明かりを灯し、映画を見てなんてことができたらおもしろいですよね。

そんなことができるのは再エネ資源の豊富な地域なので、自然に囲まれていて、たぶん心地良い暮らしになると思います。そんなところでテレワークできたらいいですね」

好きな自然を仕事にしたいというシンプルな想いからさまざまな仕事に取り組んできた八林。ブルードットグリーンでカーボン・オフセット事業を中心に、これからも持続可能な未来の実現を目指して歩み続けます。

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