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MVVやブランドの概念整理と道標:元経産官僚スタートアップ経営者の旅路と現在地

どこでもかんたんVRのクラウドソフト「スペースリー」の森田です。スタートアップ初期の段階でミッション、ビジョン、バリュー、所謂MVVを言語化することは、メンバーが増えてくると全員とのコミュニケーションがどうしても難しくなってくる中でより重要になるかと思います。

チームメンバーの意思決定と実行の質とスピードを高め、
チームとして大きな1つの方向に向かっていく。

MVVを明確化する目的はこれに尽きると思います。事業を進める中で徐々に言語化されたり、変化することもある中で、どのような関係性で整理され、言語化するべきか、色々な考え方があるかと思います。

綺麗にまとめられた参考記事はたくさんありますが、スタートアップとして事業や組織が大きく変化しながらの過程でどう考えるべきか、自分なりにそもそもの概念を整理、後半は具体編です。これから事業を始める方シリーズA前くらいのフェーズのスタートアップの方にとって少しでも頭の整理の助けになれば嬉しく思います。

スペースリーは2016年11月にサービスを開始し、2019年6月に4億円(累計約5億円)のシリーズAの資金調達を終え、次の成長フェーズに向けて邁進している真っ只中です。

MVVやブランドその関係性はこのMVVブランド概念図に集約されています。この記事では、前段では、MVVブランド概念図が当てはまる前提と言葉の定義、それぞれの関係性の説明を簡単にまとめます。

後段で実際にスペースリーではどうなっているか、個人的なストーリーを含めて具体編としてのお話をお伝えします。概念より具体的なものからまずは見たいという方は、後半「4. スペースリーにおけるMVVやブランド」からご覧ください。

※この記事は2020年9月に作成されたものをリメイクしwantedlyに転載しています

目次

  1. MVVブランド概念図が適用される前提条件
  2. 言葉の定義
  3. 関係性の説明
  4. スペースリーにおけるMVVやブランド
  5. 宇宙研→経産省→MBA→起業でのMVV構築の旅路と現在地
  6. 終わりに

1. MVVブランド概念図が適用される前提条件

1)自社プロダクトを自ら開発するスタートアップが前提です。プロダクトを通じてビジョンを実現するという0→1のプロダクトを開発する会社が前提です。

2)トップ画像は、綺麗に順番通り決めていくというものでなく、あくまで関係性の整理です。ミッションに関連するビジョンやバリューは、死なずに事業を必死に進めている過程で徐々に自然と言語化されることも多いかと思います。初めから綺麗に全てが言語化され、それが変わらないスタートアップは皆無ではと思います。そう言った変化の過程での整理を前提にしています。

3)スタートアップでは1会社1プロダクト(群)がまずは前提で、複数サービスがあると将来のブランドマネージメントが重要になります。Corporate Brandと複数のService Brandのマネージメントなどは対象としていません。複数のプロダクトラインがあって密接に関連している1プロダクトかどうか曖昧な部分はあるかと思いますが、それはプロダクト群と言って一つにまとめるのが良いかと思います。

4)スタートアップではCI(コーポレートアイデンティティー)、会社イメージであるブランドはサービスブランドとほぼ一致することとなると思います。ただ、スタートアップではCIの中でも採用マーケ&ブランディングという切り口での考え方をより反映させることが重要になりますし、考え方として分けて頭の整理をするべきかと思います。

5)上記の整理はミッションドリブンです。ビジョンドリブンでは無いです。社会的意義より自分の思いが優先の人は、きっとビジョンドリブンにMVVやブランドが定義されていくと思われます。そういう考え方も1つです。利他的な人ほどMissionドリブンとなるのでは個人的には思います。

2. 言葉の定義

Misson

なんのためにその会社が存在しているか。存在意義の定義。創業者がはじめに持っているもので、言語化されたものは変化しても、根本の考えは変わらないものです。もし変わるならそれは別会社にするべきなのだと思います。

Value

ミッションを達成するために、ビジョンを実現するために重要となる行動原理、価値基準です。状況によって変わることがあるものと思います。

Product & Service

ミッションの達成手段、ビジョンの実現手段として、商品やサービスが位置付けられます。

Service Vision

商品やサービスで実現したい世界観です。ミッションドリブンだと、単に「ビジョン」という言葉よりもサービスビジョンという方が適切なのだと思います。
会社によっては例えばサーバーエージェントのように会社のなりたい姿「21世紀を代表する会社を創る」をVisionとする考え方もありますね。ただ規模がまだ小さいスタートアップ、少なくともシリーズC前ではサービスビジョンとして考える方が、組織運営の上で実用性は高いと考えています。

Brand

利用者や社会からどのように、他と区別して認知されたいか、されているか、利用者や社会的目線でのイメージの総体です。フレームワークとして「ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと」はとても参考になりました。

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CI

ミッション、ビジョン、バリューを含めた会社発信の目線でのステートメントから企業文化を構築して、その特性や独自性を統一されたイメージやデザイン、またわかりやすいメッセージで発信し、社会と共有することで存在価値を高めていくためのもの。企業戦略や計画の総称で使われるものです。スタートアップの場合は、採用面を意識したCIというのがまずはあるのかと思います。「採用広報」といった言葉はスタートアップでよく使われるのはそのためです。

3. 関係性の説明

1)まず創業者の思いから、会社の存在意義、ミッションが定義されます。

2)会社としてミッション達成手段の一つとしての商品やサービスですが、それが形になり、ミッション達成の過程で実現したい世界感、サービスビジョンが明確になります。もしくは、ミッション達成の過程で実現したビジョンが明確にあり、その手段として商品やサービスが形になります。サービスとサービスビジョンが行ったり来たり、Pivotもしながら収束するということはスタートアップではよくあるものではないかと思います。ただ、重要なのは、その過程でミッションは変わるべきでは無いと思います。

3)そのミッションの実現可能性を高めるための行動の価値基準、バリューが定義されます。チームが大きくなっても仕事がよりやりやすく、また各々が一つの方向に向かって自律的に判断や行動ができるよう、組織がスケールするために必要なものです。プロダクトができて展開する中で、メンバーが10人や20人と集まる中で後から言語化されるものかと思います。

4)商品やサービスが立ち上がっていく過程で、ブランドが定義、設計、構築されていきます。サービス立ち上げ前にブランドイメージはあると思いますが、これもやりながら変化するのはスタートアップではよくあるものではないかと思います。

5)MVVが明確になったことで CI が定義、設計、構築されていきます。CIとブランドは密接な関係を持ち、並行してマネージメントされていくこととなります。ここをしっかりマネージメントするのは、少なくとも100人ほどの規模になってからなのではと思います。ただ、先行して採用のためのCIという考え方は、自然とスタートアップでは出てくるものだと思います。

4. スペースリーにおけるMVVやブランド

ミッション、ビジョン、バリューについて2019年12月にまとめたスライドをシェアします。

2019年6月にシリーズA調達をしたタイミング、10人ほどとなって、これからチームが拡大していくという中で言語化し始めました。ミッションは私自身で言語化した上で、ビジョンやバリューについて、オフサイトでメンバーが集まる中でブレストして意見を集める、ということをしました。

余談ですが、オフサイトでみんなで農作業したりBBQしたり温泉入ったり、仕事以外の非日常の体験や感情を共有することは、シンプルに楽しかったですし、それ以上にメンバー間の信頼の土台構築という観点でも大事だなと思いました。


さて、前置きが長くなりましたが、以下が2019年12月にまとめたスライドです。

ミッション

新たな驚きと発見を多くの人に届ける。

バリュー

1) 能動的コミットメント
2) オープン果敢なコミュニケーション
3) アジャイルアウトプット
4) 社会的インパクト目線

プロダクト

360度VRのクラウドソフト「スペースリー」

サービスビジョン

360度VRを活用しやすくすることで、あらゆる分野で場所・時間に縛られないことが当たり前となる世界。

ブランド

2019年12月にデザイナーと共に検討し、網羅的にまとめた資料を一部修正し公開できる形のスライドを参考に添付します。
ペルソナやブランドの特性や価値、人格、ビジョン、トーン、プロダクト構成や提供体験、ロゴやカラーについて網羅的にまとめたものです。

CI

正直、現在はまだ明確ではなく、30人程度のスタートアップの状況であるスペースリーでは、MVVなど土台が言語化されてきた中で、今後、採用マーケティング、採用ブランディングの観点から明確化していく位置付けでこれからの整理になります。

5. 宇宙研→経産省→MBA→起業でのMVV構築の旅路と現在地

私自身、色々な経験をして今に至っています。これまでの経験が一貫していないように見られることもありますが、私の中では一貫した思いがあり、その時々での素直な気持ちで考え尽くした上で、後悔の一切無い決断をしてきて今に至っています。そしてそれはMVVにも関係しています。

ミッション

ミッション「新たな驚きと発見を多くの人に届ける」は、私自身の原体験に関係します。宇宙開発に携わりたいという気持ちで大学、大学院で航空宇宙工学を専攻、そして宇宙科学研究所大規模宇宙構造物の研究室での生活をしていました。研究トピックの選定や、商業化&プロダクト化され社会に浸透するプロセスにおける研究開発の日本の現状に課題を強く感じ、経済産業省入省のモチベーションとなりました。

研究開発は必ずしもその時すでに認知された、顕在化されたニーズから出るものだけでは無いです。むしろ、そうでないことの方が、十分に便利な社会となった21世紀では重要性が増していると考えています。新たな人類の可能性を切り拓く可能性ある研究開発、技術、時に新しい哲学や概念、文化の種がまずはあり、それをどのように社会に役立てるように提案するか、浸透させていくか。この問いかけは過去も今も持ち続けているものです。

スペースリーではこの問いに対する答えを実現することをミッションと考えるようになりました。プロダクトアウト的な発想がありますが、社会との対話が高速で行われ、結果、イシュー解決となってプロダクトはマーケットフィットをしていくことになります。このようなプロセスがデザインされ、それがより促進される乗り物としてスペースリーという会社が存在しています。そして、このようなプロダクトは常に「新たな驚きと発見を多くの人に届ける」こととなります。

プロダクトとサービスビジョン

2016年春、スペースリー(当時社名エフマイナー)は現代アートのマッチングプラットフォームのサービスを展開していました。現在この事業は他社に譲渡されています。この事業も、もともと個人的に強い興味の対象である現代アートの持つ意義、つまり、社会に対する新たな気付き、文化の種としてのアートが社会に浸透するためには、現状のアート市場の流通への問題意識があり、そこから始まったものです。

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事業を展開する中で、当時の問題意識として、ギャラリーや美術館を始めとした展⽰のコンテクストや意図をそのまま残すために、空間をそのままアーカイブする⼿軽な⽅法があるべきという考えがありました。主観が多く入る写真や映像といったメディアとは違ったものです。

同時に、2016年はVR元年とも⾔われるように様々な消費者⽤のVRデバイスや⼀定品質でリーズナブルな360度カメラが次々に市場に出てきました。また、WebGL対応のスマホが市場で90%を超え、ソフトウェアのフレームワークも⼤きく進展しました。技術基盤の変革点となった年だと考えています。

当時の問題意識と世の中の動向がたまたま交差したところで、スペースリーのプロダクトは⽣まれました。多くのプロトタイプ開発と潜在利⽤者へのフィードバックをもらいながらの破壊、改善を日々繰り返しました。

360度VRは当時、ゲームやエンターテーメントの一つのフォーマットと感じている人が多かったと思います。私の中では、「情報の伝達手法」や「情報フォーマット」として新しい360度VRは人類の進歩にも貢献する本質的な価値があると考えていました。今でもそうです。これがもっと当たり前に、そして⼿軽に活⽤できるようになれば未来の当たり前になる、という確信を持って、現在のスペースリー(当時名「3D Stylee」)のサービスの原型が完成し、2016年11⽉2⽇にサービスをローンチしました。

そして、プロダクトを展開しながら、このプロダクトで実現したい世界観、「360度VRを活用しやすくすることであらゆる分野で場所・時間に縛られない未来を当たり前にする。」というサービスビジョンが言語化されていきました。

バリュー

ミッションを達成するための重要な行動、価値基準とは何か、また、プロダクトを通じたビジョン実現を加速するための重要な行動、価値基準とは何か、日々のメンバーの働き方もイメージしながら、また、既述のオフサイトの場などで意見を集約しながら、その上で、最終的に自分自身で言語化をしていきました。

新たな驚きや発見はある個人の思いや遊び心がきっかけとなるでしょう。予定調和なこと、みんなが当たり前に考えていることは驚きや発見となりません。このようなきっかけを表面化する確率を高める上では、個人の「能動的コミットメント」が大事になります。

そして、1人でなんでもできるわけはなく、チームとして、多様な思考の集合知で大きな成果へと繋がります。そのチームにおいて大事なのは「オープン果敢なコミュニケーション」です。不都合なことこそ共有し、おかしいと思ったことは、相手への敬意と思いやり持ってぶつけていくことは重要です。

前提となる信頼関係など会社での土台は当然必要ですが、チームメンバーとして、このような考えで、活発な議論、コミュニケーションが行われることで、大きな成果、結果に繋がる可能性が高まる集合知が構成されます。また問題も早くに気付き修正される意思決定がなされ、よりスピーディーな事業開発プロセスの土台ができます。問題や失敗を乗り越え、まだ見ぬ驚きや発見をどうやったら浸透させていけるか、こんな挑戦的なトピックを、ビジネスとしてスケーラブルに、再現性あるものにしていくには、質が高く多様な思考の集合知が必須だというのが前提にあります。

そして、アプローチとして、「アジャイルアウトプット」が重要になります。どのような反応を利用者や市場がするかはわからないですし、どのように浸透させていけば良いの始めはわからないことだらけの中で、まずは多少不完全でもアウトプットを見える化してフィードバックを得る、観察する、気づき考える、そしてもう一度改修したアウトプットを出す、ことの繰り返しが何よりも重要です。この過程を高速で行うことが、多くの人、社会に浸透させていくためには重要で、これは最高品質のプロダクトへの近道と言えます。あらゆる観点を加味した「最高品質」とは自分たちではなく、最終的には市場が決めるとうことが前提です。

また、ビジョン含めてプロダクトが目指すところは、常に「社会的インパクト目線」で考えることが重要になります。社会的に平凡なものであれば驚きや発見には繋がらないし、最終的に多くの人に浸透するには、社会的なインパクトを大きく、という視点が無いと小さな範囲にとどまってしまいます。

そして、ミッション達成の手段の1つのプロダクトとして、上記バリューを実践し、展開しているのが360度VRクラウドの「スペースリー」です。

6. 終わりに

2016年11月にスペースリーでは「どこでもかんたんVR」というコンセプトでのVRクラウドソフトを開始しました。これまでも、そしてこれからも色々な挑戦をして失敗しながら、悩み、学びながら一歩一歩前に進んでいくことでしょう。優秀で楽しいメンバーと共に、生きがいや幸せを感じて前に進んでいく中でMVVは大事になるのだと思います。

言語化した形で今だからまとめられる、というものでもあり、ミッション以降は試行錯誤し、整理され、徐々に言語化され、繋がっていったものです。スタートアップで初めから全てのビジョンやバリューが言語化されていることは稀で、むしろ変化しながらが当たり前かと思います。また、スペースリーでも今後変化するでしょう。

また、チーム内でMVVがどう自然の形で浸透していくか、というのも大事なことです。それについても日々、試行錯誤しながらの中、またそのうちまとめられたらと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。


※この記事は2020年9月に作成されたものをリメイクしwantedlyに転載しています

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