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JAXAとの協業により宇宙をデジタル空間に再現する。「世界初」の取り組みを解説!

皆さん、こんにちは。
スペースデータで宇宙デジタルツインの開発を統括しています、矢田です。

本日、2024年10月31日にJAXA様との宇宙デジタルツインに係る共創活動の開始をリリースしました。

世界で初めて、実際の宇宙空間で取得したデータをデジタル空間上に再現する画期的な取り組みです。この記事では、本事業の目的や技術的背景を紹介します。

JAXAとの協業のポイント

本共創は、JAXA様の新たな発想の宇宙関連事業の創出を目指す「JAXA宇宙イノベーションハブパートナーシップ(以下、J-SPARC)(※1)の枠組みで開始した取り組みです。

世界発の宇宙の「リアル」データを使い、デジタル上に「宇宙」を再現
今回の協業により、従来は成しえなかった、実際の宇宙空間で取得したデータを元にした、正確でリアルな「デジタル宇宙環境」を構築することが可能になります。
具体的には、国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟で取得した船内環境データ(温度、湿度、風量、照度等)や微小重力環境などを、スペースデータが開発する宇宙デジタルツインで再現していきます。

JAXAとSpaceDataが共同して開発する宇宙デジタルツイン@JAXA/SPACEDATA


何を成し遂げることができるのか

資金力と技術が十分な国家のみがアクセスできた宇宙に、デジタル空間を通じて、万人が宇宙にアクセス可能になる。

宇宙で取得したデータをデジタル空間上に再現する試みは、「もう1つの宇宙」を生み出すことです。 そしてその「もう一つの宇宙」をオープンソースとして全世界に公開していきます。

上記を通じて、私たちが成し遂げたいのは、これまで資金力と高度な技術を持つ国家や一部の機関のみがアクセスできた「宇宙」という領域を、デジタル空間を通じて誰もがアクセス可能な領域へと変えることです。

キーワードは「宇宙の民主化」です。
「宇宙の民主化」によって、多様な技術やアイデア、人材、資金が宇宙と結びつきます。これにより、宇宙をただの憧れではなく、世界中の人々が関わり、活用できる現実的なものにしていきます。

先ず足元では、以下の3つのユースケースを想定し、それに応じた開発環境とプラットフォームを準備しています。

宇宙のデータ利用事業の実現
宇宙への打上げを伴わないデータ利用事業(ゲーム、配信、放送事業、教育コンテンツ、バーチャル宇宙旅行など)を実現することを目指しています。
そのため、ゲームや配信事業者、VR事業を行う方々の「いつもの開発環境」と「いつものプラットフォーム」で公開する計画です。

多様な産業の宇宙開発への参入を促進
専門家以外が容易に想像することのできない「宇宙」環境を視覚的、感覚的に理解できるツールにより、「宇宙とはどのような場所なのか」を具体的に把握して、事業開発に役立てることができます

特に、宇宙ステーションは、「人」の滞在を伴うため、衣食住、医療、メンタルケア、資源の循環技術など多様な地上産業の事業機会があり、閉鎖環境、環境騒音、心身への影響、モノの挙動を「視覚的に理解」することで、他産業の参入障壁を低下します。これにより、これまで関わりがなかった産業や企業が宇宙業界に参入することを期待しています。

ISSを再現したデジタルツイン

ISSを再現したデジタルツイン

宇宙機のシミュレーションによる宇宙機の開発コストの低減
現状、宇宙機の開発や参入には、大きなコストと時間がかかっています。我々が作ろうとしている「もう一つの宇宙」は見た目だけではなく、様々な物理現象を盛り込んでいきます。このデジタルツインを活用することで、実際に宇宙での実証を行う前に、デジタル空間上で実験や試験を繰り返し行うことができます。それによって、製品とユーザーの成熟が促され、宇宙での実証に向けたコストやスケジュールを大幅に短縮し、事業の予見性が向上します。

宇宙機の開発者向けのシミュレーション環境は、宇宙データ利用事業者よりも精緻な環境と、ハードウェアやソフトウェア開発ツールと互換性の高いツールを選択しています。

どのような技術で実現するのか

宇宙デジタルツインを実現するには以下の3つが必要です。

1.デジタルツインの元となるデータ
宇宙デジタルツインを作るためには、宇宙の実際の環境データが必要です。このデータが、現実に近い宇宙のシミュレーションを構築する基礎になります。例えば、今回のように国際宇宙ステーションの正確なデータを元にすることで、「もう一つの国際宇宙ステーション」をデジタル空間で作り上げます。

2.デジタルツイン構築の技術やツール
デジタルツインを実現するには、データを活用してシミュレーションを作り上げるための技術とツールが不可欠です。これには、デジタルツインプラットフォーム、3Dモデリング技術、AI技術、シミュレーション技術、IT技術、インフラなどが含まれます。これらの技術やツールが揃うことで、より高精度で汎用性の高いデジタルツインが実現します。

3.デジタルツインを構築するための専門人材
デジタルツインの作成には、エンジニアやサイエンティスト、CGアーティスト、IT専門家、AI専門家など、多くの専門人材が必要です。彼らの知識と技術力を、データとツールに入れ込むことが、リアルな宇宙環境をデジタル空間上に構築するカギとなります。

宇宙デジタルツインの開発に必要な要素


最後に

デジタル空間上に再現された「もう一つの宇宙」では、国際宇宙ステーションの中で高校生向けに物理のリモート授業が行われ、その周りの宇宙空間で様々な企業が宇宙衛星の試作実験を行い、同時に月面では探査車の自動運転技術コンペが行われているかもしれません。

もちろん、そのようなデジタルツインを構築することは一長一短ではできません。上記で述べた、元となるデータ、技術とツール、そして人材を集結し、少しづつ実現していきます。

私たちと共に、新しい宇宙体験を創造し、デジタル空間における「もう一つの宇宙」を一緒に作り上げていきませんか?



著者プロフィール
宇宙デジタルツイン開発リード 矢田 裕紀 

大学卒業後2007年にキャノン株式会社に入社。ディスプレイ事業部にて機械部品設計 、空調シミュレーション 、製品の海外生産体制の確立やその他関連技術の開発に従事。2021年より宇宙航空研究開発機構(JAXA)にて、Artemis計画の一環として整備が進む月周回居住拠点(Gateway)プロジェクトにて、宇宙環境の生命維持装置(ECLS)の開発に従事し、開発マネジメント及び海外機関との技術調整を主導。合わせて、2022年よりThe sand boxのクリエーター活動を行い、UEFNを用いたFortniteマップを制作、受託。2024年に当社に参画し、宇宙デジタルツインの開発を統括。



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