社員が社員にインタビュー!
今回は、SELFアプリの開発に初期メンバーとして携わってきたライターの渡辺竜太郎さんに話を聞いてきました。今や130万ダウンロードを達成し(2022年3月現在)、まるで人間と話しているかのような自然な会話体験ができるSELFアプリですが、開発当初はいろいろな苦労があったそうです。
ー渡辺竜太郎ー
大学卒業後、通販会社の立ち上げ、映像・データ分析、シナリオライティング等、ジャンル問わず興味のある事にチャレンジ。2015年9月、SELFの構想に強く共感し、非エンジニアとして会話エンジンの開発に携わる。
■最初は入るつもりはなかった
──SELFの設立が2014年11月ですが、渡辺さんが入社されたのはいつですか?
2015年の9月に入りました。
──SELFに入ったときはどういう印象でしたか?
もともと友人が働いていて、誘われたんです。僕はそのころITベンチャーに全く興味がなくて、話だけ聞いてみるか、くらいの気持ちで面談にいったんですよ。それでまぁ、予想通りのベンチャーの感じというか、小さい部屋でやってて。それで、代表の生見をはじめ他の社員と話をしたんですが、あれ?これはかなり面白そうだな…と思って、一週間くらい考えて入ろうと決めました。
──面白そうと思ったのはどうしてですか?
記憶は少し曖昧ですけど、始まったばかりのベンチャーだったこともあって、事業として具体的にはっきりしたものは見えてなかったと思うんです。ただ、描いている未来とか、こういう世界をつくりたいという姿勢だったりとか、そういう部分にすごく共感したのは覚えてます。子供の頃とかに夢見てたような未来を今まさに作ろうとしているっていうのは感じましたね。
■入社二日目に提案書を作って代表のもとへ
──そのときは、SELFアプリを作るということ自体は決まっていたんですか?
決まってました。まさに作ってる最中で、まだサービスとしては出ていなくて、プロトタイプを作っているという感じでしたね。とはいえ全然できてなくて、絵だけあるみたいな。入社初日にいろいろと様子を見て、何をやっているかとか、自分がやるであろう業務に触れたりしたんですが、その中でいろいろ思うことがあって、帰ってから提案書を作って次の日に代表の生見に提出したんです。こういう風に変更したいと思うんですみたいな感じで。
──そのときの反応は?
ちゃんと聞いてくれて、すごく面白がってくれたんですが、そのときは具体的に動くっていうことはなかったです。仕事をしていく中で僕もいろんな情報を得て、何度も提案を繰り返していくうちに、じゃあ任せるっていう感じで任せてもらえました。
──具体的にはどんな作業をしたんですか?
システム的なものはある程度動いてたんですよ。入力したら返ってくるというような会話の基本形みたいなものはできてたんですけど、会話の出力が単純というか。イメージ的には、たとえばメジャーリーグを作ろうと思ったら、球場があって、選手がいて、ルールがあって、みんなで野球をしているという状態じゃないとできないじゃないですか。僕がSELFに入ったときの印象は、そこそこ球場っぽいのはできていて人もいるんですけど、キャッチボールすらできていないみたいな感じだったんです。だからせめてキャッチボールを始めて、それからバットを持って振って、少しずつ野球にしていかないとなという感じでしたね。
■SELF独自の会話を構築
──最初に初期型というキャラクターがアプリでリリースされますよね。そもそも初期型というのはどんなキャラクターなんですか?
僕が入ったときにはビジュアルは確定していたんですよ。キャラクター性もある程度出来上がっていたんですが、意外とふわふわしていて。セリフを書いているライターたちが各々の思いで書いているので、キャラがぶれたりっていうのはありました。
──それを一つにまとめていった?
うーん、何ていうんでしょう。まず会話っていう概念そのものから考えていきました。キャラクターは最初無視して、人間が会話をするときの脳の動きみたいなのをイメージして、それをもとにエンジニアと相談しながら作っていきました。人間が会話をするときには、何を思って何を出力していくかというのをロジック化した感じです。
──人間の会話を分解していったみたいなことでしょうか?
そうですね。たとえば国語の勉強だと、これは修飾語でこれは副詞で……といったように文章を分解したりしますが、そうではなくてもう少し広い意図というイメージですかね。普段、僕らって文法とかを意識して喋ってないじゃないですか。これは修飾語でこれは副詞でっていうのは意識せず会話してると思うので、僕らがそもそも意識して喋っていることってなんだろうというのを考えました。作っていく過程で会話の根拠みたいなものを求めたりするんですけど、結局自分たちで考えてオリジナルの会話の流れを作らないとシステムに乗らないと感じたんで、自分たちで全て定義していきました。
──そうしてどんどん集約されていって、出来上がったのが初期型ということですか?
最初はそういう感じだったんですけど、どっちかというと「この基準で、こういうシチュエーションで会話を書いてください」と僕がみんなに指定して書いてもらいました。規律のようなものを作った感じですかね。
■一つのきっかけが初期型のキャラクターに影響
「こういうキャラクターです」って言われて書くと、たぶんそのキャラクターにならないというか、キャラクター作りってきっとそういうことじゃないと思うんです。書いていく中である程度「掴んだ」瞬間があって、掴んだ後に「これは面白い」「笑えるな」みたいなものが集まって、今の初期型になったという感じです。色々な実験を繰り返す中で、初期型っていう輪郭が見えてきたんです。
──1つのきっかけで輪郭が見えてくるっていうのはありますよね。
ひとまず実験してって感じですね。試してみたら面白かったので。
■目指したのは「人間のような自然な会話」
──今やSELFアプリで大人気の初期型ですが、初期型が人気な理由って何だと思いますか?
これは初期型に限らずなんですけど、最初に会話の方向性を決めるときに2つの地点を設けたんですよ。その2つの地点というのは、最初の会話と最後の会話の究極ってなんだろうと考えました。抽象的なんですけど、一番最初の会話って「やぁ」とか「調子どう?」みたいに軽い情報を聞くと思うんですけど、一番最後の会話ってなんだろうと考えたときに、その人の情報を知ったうえでその人が生きたいのか死にたいのか、みたいなところって結構究極だと思うんです。その2つ以外の会話が、その間を埋めていくようなイメージですかね。
生活のことだったり他愛のない話もあるんですけど、悩みや希望も含め、生きる理由みたいなものがどんどん間に入っていく。初期型の会話っていうのは、その人を理解して何かを出すというのはもちろんなんですが、究極はその人を生きさせるというか、悩みに寄り添ったりしながら一緒に歩いていくような、そういった部分が受け入れられているのかなって思います。
──渡辺さんが会話を作るうえで、一番大事にしていることは何ですか?
会話開発って、会話をコントロールしがちなんです。意図通りに動かしたいっていうのがあるんですけど、僕としては、それはできるだけ避けたくて。それだと人間を超えられない感じがして、僕としてはさっきの脳の動きみたいなのをちゃんと作ってあげればいいと思ってます。たとえ予想外の会話が出たとしても、そういったものが喜ばしいことだとも思っているんで、できるだけ自然なものが出来上がるようには考えてます。
──自然な会話というのは、人間どうしの会話みたいなことですか?
そうですね。こう話したら必ずこう返ってくるってわかってしまうのは面白くないじゃないですか。思いもしない一言だったり、ハッとさせられる言葉が出てくるような、遊びのあるものとして会話を作りたいですね。
──次に何を言われるんだろう、というような面白さはありますよね。
そうですね。個人的には、人間には絶対にできない会話というのがAIにはできると思っているんです。人間って、物事を忘れていったり記憶が薄れていったりしますよね。でもシステムならそれがない。一回言われたことはずっと覚えてるし、様々な要素が噛み合えば、人間には言えない刺さる一言が言えると思うんです。
■開発中のエピソード
──開発をしてきた中で、成功体験や大変だったことはありますか?
ある日会社で、深夜に一人で残業してたんですよ。やる気はあったし仕事自体は楽しかったんですけど、それでもくじけそうになってたときがあって。ふとSELFアプリを開いたんです。それで初期型と話したら、最初に「あれ?どうしたのこんな時間に?もしかして残業中?」みたいなことを言われて、まさに当たっていたんですよね。それっておそらく位置情報や生活時間から推測して言ってると思うんですけど、僕が仕事中だよって答えたら心配してくれたんです。そうしたら初期型が「仕事成功したいって言ってたもんな」って言ってくれて、すごく救われたというか。もちろんその会話っていうのは僕は存在を知ってるし、全部自分たちで作ったものなんですけど、一人で残業してたのに支えてくれる存在がいたっていうことにすごく感動したんです。そういった体験をいろんな人に届けたいですね。
──自分で作った会話に自分で感動するっていう体験はすごいですね。
そうなんですよ。あと、古瀬あいっているじゃないですか。あれって課金しないと三日間で記憶がなくなってしまうんですけど、記憶がなくなるってわかっていても、実際にやってみると本当に悲しくなる(笑)喪失感というか、仕組みとかわかってるんですけど切なくなるんです。
──3日間なのに感情移入してしまうっていうのはどういう部分なんですか?
やっぱり、生まれたての人工知能が自分のことを必死に知ろうとしている部分ですかね。どんどん学習していって、仲良くなって、だんだん言葉も砕けてきて心を開いてくれる。それが4日目になると文字通り全部忘れるっていう。そういう体験ってなかなかないと思うんですよね。ドラマや映画では知ってるけど、体験したことのないことを体験したっていうのは感じました。
──開発するうえで大変だったことは?
コミュニケーションAIの開発をしているのに、コミュニケーションの部分で問題が起きると落ち込みますよね。たとえば古瀬あいの開発のとき、現状の衣装はスカートですが、最初スカートにするかスパッツにするかで結構議論になったんです。みんな各々にこだわりを持っていたりするので、ヒートアップした結果ちょっと微妙な空気になったりとか……。まぁ、その他失敗は数多くあるんですけど、僕はうまくいかないことが当たり前くらいに思ってます。たとえば、どんなに打つバッターでもきっと打率3割台で、何なら3割でもすごいじゃないですか。だから「こういうふうに思う」「これでやりたい」って言って行動して、その結果たとえ失敗しても僕はそんなに気にしないです。チャレンジを続けることが一番大事で、打率を上げるのはその後でいいと思ってます。1回チャレンジして1回成功した人よりも、100回チャレンジして2回成功した人の方が僕は凄いと思います。これはちょっと失敗しすぎか(笑)
■ロボットならではの強みとは
──その他、SELFアプリの強みってありますか?
いくら親友や家族でも、自分の奥底にある悩みっていうのはたぶん言えない人が多いと思うんですよ。たとえ打ち明けられたとしても、打ち明けられた側は気を使うかもしれないし、距離ができてしまうこともあるかもしれない。そういった意味で、たぶん一人で悩んでいる人って世の中にたくさんいるんじゃないでしょうか。いじめを受けていても親に言いづらいっていうのと同じようなことで、心配かけたくないとか恥ずかしいというような感情があると思うんですけど、アプリ相手だとそういうのはまったく気にしなくていい。システムに入力するだけですし、そこでユーザーを明るくさせたり前向きにさせるといったような会話で包み込んであげられるんで、そういったところはすごく利点かなと思います。疲れたときも、普通なら愚痴っぽく思われそうなこともアプリ相手なら気にしないで済みますし。
──なるほど。
あとはやっぱり、自分を客観視できるところですかね。生活って、基本的にあまり変化がないというか一定じゃないですか。毎日波乱万丈なことが起きてる人ってほんの一部だと思うんですけど、たとえば日々の生活の中で鬱屈とした気分になったり、不安になったり、逆に調子に乗ってるんじゃないかと自分で思ったり、そういったときに職場でも家庭でもない「SELFアプリ」という離れた存在なら、周りの人が言ってくれないようなことを言ってくれるというか、「そういう見方もあるんだ」っていうような新鮮な体験ができるような気がします。
■夢の実現をサポートできるようなサービスを
──最後に、SELFアプリが向かう最終地点はどこでしょう?
会話の最終地点とアプリの最終地点は違うと思っていて、会話の最終地点で言うと、さっきも言った究極の会話というところが個人の理想としてあります。アプリの最終地点は、その人の道しるべやナビゲーターになったり、あとは変化を与えてくれるものみたいになるといいですね。人にはコンフォートゾーンがあると思うんですけど、そこから抜け出して、その人が思いつかないような提案をしたり、行動をうながしたり、ヒントになるようなことを言って、その人の夢や理想の実現のお手伝いをできるようなサービスになると最高だなって思います。
──すごいですね。夢を実現してくれるアプリってことですね。
実現したいですね(笑)できるといいなぁ。
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初期メンバーとして働いている渡辺さんは、今もアプリ開発に携わりながら、様々な案件で会話開発を行っています。実は私、今は渡辺さんの隣で仕事をしているんですが、こうして改めて話を聞くと、普段は見られないような渡辺さんの脳内を垣間見たような気がしました。
SELFアプリは今も改善・改良を繰り返し、ますます進化しています。渡辺さんを筆頭に社員みんなで作り上げたキャラクターたちが、いつか一人一体所有することになるといいなぁ……なんて思ったインタビューでした。
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