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6月1日、ラクスルが業界初のオンデマンド印刷発注プラットホームを開発し、「当日出荷サービス」をリリースした。プロジェクトの中心を担ったのはいずれも入社1年未満の3人の若手社員。彼らがラクスル社内に、そして印刷業界に起こした大きな革命の裏側に迫った。
プロジェクトオーナー:高城雄大(26)
大手通信会社での法人営業を経て、海外駐在員として現地での事業開発やアジア各国のITインフラ構築プロジェクトに従事。その後、コンサルティング会社に転職し、オペレーション改善・改革などを担当。2015年12月にラクスル入社後は、経営企画部にて事業提携やチャネル戦略、新サービスの開発、CSオペレーションの構築など事業開発全般を担当。
ディレクター:甲木陽一郎(25)
大学時代からインターンをしていたベンチャーに新卒で入社し、大手レーベル、エンターテインメント企業等のシステム開発のディレクション業務、および自社事業のWeb・アプリマーケティング業務に従事。2016年1月にラクスル入社後は、ディレクターとして、UI/UXの設計、機能開発ディレクションとマーケティング業務を兼務。
エンジニア:亀谷亮太(27)
大手通信会社でネットワークインフラの保守・運用業務に従事した後、WEB制作会社に転職しWEBエンジニアに。2015年8月にラクスル入社後は、発注周りでの社外システムとのつなぎ込みや社内外向けの管理画面等の開発を担当し、現在はECチームとして主にプロダクト側のシステム開発を担当。
Episode1:プロジェクト始動
実は「当日出荷サービス」は、もともと今とは少し違う方向性で動き始めたプロジェクトだった。先にリリースされていた「店頭受け取りサービス」「当日バイク便サービス」と同じように、特定の数社との提携を前提として4月末リリースを見据えて開発が進められていたのだが、その方向性に暗雲が立ち込め始めたのがリリース予定の1ヶ月ほど前。そんな時、ふと、プロジェクトオーナーである高城の脳裏にある妙案が浮かんだ。「当日バイク便サービスの基盤を拡張すれば、構想してきたプラットホームが実現できるんじゃないか・・・」
高城は入社2週目にして『お急ぎ印刷』というコンセプトのサービスをやろうと決意。その頃に思い描いたサービスもすでにいくつかはリリースできた。しかし、このプラットホーム構想だけは、これまで何度か社内で話題にはのぼるものの、そのたびに立ち消えになっていた案だった。会社としても大きな挑戦であり、なかなか実現の糸口が見えない。それでも、いつか必ずカタチにしたいと、空いた時間を見つけては水面下で委託先開拓を進めていた。「いつか必ず・・・」その“いつか”が現実味を帯びだした。
高城はまず、ディレクターの甲木にその考えを打ち明けた。「ちょっと、いい?」そう高城に呼び出された甲木は、話を聞いて驚いた。第一声は「・・・マジ?」。ホワイトボードに描かれた高城の構想は、どう考えても4月末には間に合わない。この時、まだその構想を知らされていないエンジニアの亀谷はひとり黙々と当初案をベースにシステム開発を進めていたのだが、後に「せっかくつくっていたんですが・・・全部無駄になりましたね」と苦笑いを浮かべることになる。プロジェクトが無事にリリースされた今、当時のことはもはや笑い話だ。
「もはや、やるしかない。」高城からプロジェクトの大幅な方向転換を相談された甲木には、それしか考えられなかった。できるかできないかではなく、やるしかない。それも、自分たちが。すぐに開発を手がける亀谷に声をかけ、現実的な落としどころを探った。理想形はあるが、タイムリミットもある。エンジニアの工数も限られている。取捨選択はディレクターの手腕そのものだ。なにをとって、なにをそぎ落とすべきか。亀谷だけでなく、デザイナーやカスタマーサポートも巻き込んだ。そうして出した結論が、「 4月末は無理でも、5月末ならいける」。なんとか2ヶ月間という時間は確保したものの、時間は十分とはいえなかった。実際には市況という波もあり、小さな組織の中では個々人のやるべきことは日々山のようにある。想定外の緊急対応などが発生すればスケジュールにも大きく影響する。そこからというもの、甲木はディレクターとして、エンジニアの工数を最大限確保すべく調整に翻弄した。
「エンジニアさんは職人だと思うんです。だからできるだけノイズなく業務にあたってもらいたい」ー そのためにディレクターとしてできることは、優先順位を明確にして、エンジニアが”今”やるべきことだけに集中できる環境をつくることだと甲木は語る。細かい仕様を決めこみ、テスト期間も考慮した完璧なスケジュールをつくっても、必ずしもスケジュールどおりに行くとは限らない。それでも、一度決めたスケジュールはできるだけ遵守できるよう、その時々で最良の判断を下す。最年少ディレクター・甲木がこれほど信頼される理由は、彼のそんな姿勢があってのことに他ならない。そもそも甲木は大学時代から自分でコードを書き、SIerとしての実務経験もある。そんな彼だからこそ「一般的なエンジニアがどのように仕事がしたいかというイメージがある」。きっとエンジニアはこんな風に仕事がしたいはずー自らがそんなイメージをしつつも、エンジニア一人ひとりときちんと対話し、向き合う。その中で「その人にとって」どういう働き方がベストなのかを見極めるのだ。
積極的に前に出てディレクションまで手がけたいエンジニアと組む場合、自分は一歩引いてサポートに回る。一方、亀谷のように職人気質のエンジニアの場合は、自らがフロントに立ち開発以外の一切を引き受ける。プロジェクトオーナーにとっても、甲木のようなディレクターは貴重な存在だ。今回、信頼の置けるディレクターとともにプロジェクトを進められたことは高城にとっても大きな意味があった。「少数精鋭でやっている組織だからこそ、抱えている案件はひとつじゃない。今回のような大規模案件の場合、自分がディレクション機能を持つと他のプロジェクトがとまってしまう。それでは本末転倒ですよね」。オーナーとしてやるべきことは、事業の目指すべき姿を描くこと。そのための事業戦略、チャネル開拓、成長戦略など、今までにないビジネスだからこそオーナーが背負う責任は大きい。入社以来温め続けてきたプロジェクトが日の目を見るかもしれないという想いの中、なんとしてでもこのプロジェクトを成功させるためにはオーナーとしての役割に徹する必要があった。
・・・Episode2に続く