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【代表インタビュー -前編- 】「認知革命と二重スリット実験が起業への背中を押した」OTOGI設立までの軌跡と価値観を醸成されたあれこれについて

「夢中は危険な道にしかない。その上で、道中を楽しむ。」

OTOGI社の代表・山本哲也さんはそのように語ります。幸せの形は人それぞれですが、「何かに夢中になっている状態」こそ人生の幸せにおいての大きなファクターだと言うこと。

会社員としてHR事業の立ち上げ責任者、独立してフリーランスで採用支援や人材紹介事業の立ち上げ、そしてOTOGI社の創業と、常にHR領域の中で前進し続けていた山本さん。今回は山本さんの経歴を紐解く中で、なぜOTOGI社の創業に至ったのかを2部構成でお届けします。

第1部ではHR事業の立ち上げからフリーランスとしての活動までを、第2部ではフリーランス時代に迎えた壁と、それを乗り越えて辿り着いたOTOGI社の創業までを描いています。長尺となっていますが、ぜひ最後まで楽しみながらご覧になってください。

山本 哲也 / 代表取締役

2016年に甲南大学卒業後、不動産ベンチャーに新卒入社。営業成績TOPの新卒社員に贈られる新人賞を受賞後、株式会社SAKIYOMI(旧:株式会社Radix)に入社。代表と共に採用支援事業を立ち上げ3年間事業責任者として従事。同時に人事も兼任。その後、フリーランスとして、20社を超えるWantedly運用代行や人材紹介事業の立ち上げ&責任者、複数社の社外人事を経験し、2022年9月に株式会社OTOGIを創立。
【代表インタビュー -後編- 】「認知革命と二重スリット実験が起業への背中を押した」OTOGI設立までの軌跡と価値観を醸成されたあれこれについて | 株式会社OTOGI
「夢中は危険な道にしかない。その上で、道中を楽しむ。」OTOGI社の代表・山本哲也さんはそのように語ります。私たちの人生を美しく彩るものはやりがいであり、それは言い換えると「何かに夢中になってい...
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後編はこちら!

HR領域への挑戦。学んだことは事業作りの基礎と経営哲学の重要性。

ーー山本さんはOTOGI社を創業される前からHR領域で活躍されていましたよね。HR領域のキャリアの始まりについてお伺いしてもよろしいでしょうか。

はい、HR領域で1番最初に携わったのが株式会社SAKIYOMI(旧株式会社Radix)での採用支援事業の立ち上げでした。本当に何もない中での立ち上げを、代表と私ともう1名の社員とで行いました。事業内容としては、人材紹介に加え、送客サービスや自社イベントの開催も実施していました。複数の大手人材会社様と協業などもし、途中までは順調に事業拡大をしていたと思います。ただ、事業を創っていくプロセスでは本当に考えうるすべてのことを実施したといっても過言ではないほどいろいろなことをしてきました。

ーーとにかく泥臭く事業の基盤作りをしていたのですね。

まさに、仕事をする中で必要な体力はSAKIYOMIで養われたと思っています。前職には3年ほど在籍していましたが、ほとんど休むことなく働き続けていました。事業立ち上げ当時、会社の主な収益基盤は別のメディア事業が担っており、週次での全体会議でも「収益が生まれているメディア事業」と「収益が上がっていない立ち上げ事業」という対比構造ができてしまっていたんです。しかも、メディア事業で収益を大きく生み出していたのは長期インターン生が中心であり、社員2名で作り上げていた新規事業側が劣っているという構造も悔しかった。その後、会社の収益基盤となっていたメディア事業の売却などがあり、なおかつ採用支援事業自体も大きく収益化させることができたので会社の収益基盤となっていきましたが、やはり休みなく働き続けられた原動力の1つには「なんとかしてこの事業を成功させないと」という強烈な自分に対してのプレッシャーが大きかったんだと思います。

ーーSAKIYOMIで働くなかで学んだことはありますか。

今に活きていると思うものは、事業面でも組織面でもあります。事業面で言えば、「利益率の高さ」「1人あたりの平均売上高」「フロー型ではなく、ストック型の収益モデル」「販売戦略」など。人材紹介事業はどうしてもマネタイズするタイミングが偏ったり、成果月が読みづらかったりと、年間でみれば安定しているのですが、1ヶ月、四半期などの短中期でみると不安定な事業になる傾向があると感じています。そのような状況だと、何かに投資をしたくても余剰の見込みがわかりづらいせいで意思決定が遅れてしまったり、まずは目先のキャッシュが重要だということで自転車操業になりがちだったりと、会社の"基盤となる事業"を創るハードルを感じていました。だからこそ1名あたりの最低利益を設定し、理論上それを下回らないことや、フロー型ではなくストック型の収益モデル、また、自社の営業活動を最小限に抑えることができるビジネスモデルなど、このような条件が揃っていない事業は極力、OTOGIでは選択しないといったルールを自分の中に作ることができました。

組織面において言えば、己の経営哲学を持つことの重要性を目の当たりにしました。HR領域の中にいる方だとご存知かもしれませんが、企業の魅力を整理するためには企業の魅力因子の4P(理念/仕事内容/人/制度待遇)のフレームワークに沿って整理するセオリーがあります。一般的には4Pで魅力を整理し、それらを満遍なく訴求、もしくはその中のいずれかの要素を重点的に訴求するという形で採用面接や求人設計、社内でのコミュニケーションや評価などを実施するのですが、当時のSAKIYOMIの石川代表は4Pの中の"理念一点張り"で組織を構築し続けていたんです。

ーーなるほど、、、。

自社以外の会社を相対的に見ていけば見ていくほど、石川代表が会社で成していた組織作りの凄まじさに気づいていきました。「仕事は自分を含めた周りの人々を幸福にするために行うものである」「誰かを笑顔にできていない、喜ばせられていないのでは意味がない」「人としてどうあるべきか」。そうした会社が掲げる「自分と周りの人を幸せにする」という経営理念を日常的に問い、話し、みんながそこに向かって仕事に取り組める環境を作る。抽象度が高く、かなり概念的なものだったからこそ、それを組織全体に浸透させていくことは容易なことではなかったと思いますが、理念に則って形成される組織は非常にパワフルにワークしていたんです。また、誤解を恐れずに申し上げると、このような理念はどこの会社でも同じようなことを言っていると思っていますが、その理念や価値観の"浸透のさせ方やブレイクダウンの具体度の高さ"は常軌を逸しており、非常に勉強になりました。例えばですが、「エレベーターの開閉時はドアを抑えて人が出やすくする」「トイレの便座は閉める」など。つまるところ、「周囲の人たちが心地よいと感じる環境を作り、人を喜ばせる」ということをこれくらい具体度の高い事象をもとに徹底的にフィードバックし続けていました。このようなことを言い続け、浸透させるすごさは目にあまると同時に、結果的に「ありがとう」という言葉が一番飛び交っている会社だということに、後々気がつきました。

やはりそれを実現させていたのは石川代表が自分の中に経営哲学を持ち続けていたからだと思いますし、事業内容や制度/待遇などで魅了せずとも、経営哲学だけで人を惹きつけ続けることができるということを痛感させられた瞬間でした。

ーー確かに、京セラやKDDIを創業した稲盛和夫さんの書籍にも「経営者には哲学が必要である」と記されていますし、実際にそれを目の当たりにし続けたからこそ、山本さんにとっても強烈に印象的だったんでしょうね。

まさにおっしゃる通りだと思います。当時のSAKIYOMIは理念経営を徹底できていたからこそ、事業成長に時間がかかっているようにも思えましたが、現在は誰もが知るInstagram運用支援会社へと成長を遂げました。仮に当時、石川代表が理念以外の要素で組織作りを行っていたら、短期での事業成長はあったんでしょうけど、現在を越える勢いでの成長はなかったんだと思います。いかに目先の利益にとらわれず、自分が大切だと思っているものを愚直にやり続けられるのかが重要なのだと感じています。

ーー山本さんのキャリアにとって非常に重要な要素を占めておられる前職ですが、どのような経緯で退社なさったのでしょうか。

新型コロナウイルスによる悪影響で、事業撤退が決定したことが1番の要因です。事業としても大きく跳ね上がると予想していたタイミングで、コロナ直撃によっていずれの企業も採用活動を一時停止。いつコロナが収束するのかの目処も立たない中で、石川代表と改めて話し合いをし、サンクコストがかかり悪い意味でもこの事業へ執着していたことに気づけたため、事業撤退をする意思決定を下しました。

おこがましいですがこれまで会社の2番手というポジションで採用や育成、マネジメントなど事業作り以外のあらゆることも兼務していたのですが、改めてこのタイミングでSAKIYOMI以外の会社、外の世界も見てみるという選択肢が自分の中に出てき、退社を決めたという流れです。

人材紹介事業の立ち上げや社外人事案件など、HR領域の様々な仕事に携わるなかで勝ち筋となる新たな事業を模索

ーー退社なさった後、どのようなことから始めていったのですか。

まずはなんでもいいから仕事を見つけないといけないと考え、これまで繋がりのある方のほとんどに連絡をさせていただきました。幸いにもこれまでの仕事を通してたくさんの方々との繋がりがあり、特にベンチャー企業の若手人事との繋がりが多かったため、そのままご発注いただくケースやフリーランスに仕事を振りたい経営者などをご紹介いただきなんとか最低限の収益を確保していきました。

この点に関しては、ただただ周囲の方々に支えられたことに尽き、今でも感謝の念を忘れないほどです。フリーランスの2年間で、人材紹介サービスの立ち上げ&事業責任者、複数者の社外人事、現在のOTOGIのメイン事業であるWantedly運用代行など、他にも様々な仕事をしていました。

ーー具体的に話せる範囲で伺いたいです。

人材紹介事業の立ち上げ案件については、その名の通り新規事業を立ち上げ、メンバーマネジメントもしながら事業を拡大していくといった仕事でした。フリーランス時代では一番大きなプロジェクトでしたね。フリーランスという立場で、週2程度の頻度でオフィスに出社し、メンバーマネジメントも行うという点は非常に新鮮でやりがいのあるものでした。もちろん、綺麗に計画通りにいったわけではないのですが、これまでの経験を活かし、200求人以上を紹介できるスキームを組んだりと1期目でなんとか黒字化まで持っていくことができました。有り難いことに現在も顧問という形で携わらせていただいています。

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また、15名規模の「注目の西日本ベンチャー100」にも選出されるようなデジタルマーケティング会社の社外人事も経験させていただきました。これまで中途採用のみで拡大をされていたのですが、新卒採用にも踏み切りたいとのことでお声がけをいただき、採用戦略設計から入りほぼすべての業務を担当していました。

ーー末端作業だけではなく、そこまで深く入り込むような複数のプロジェクトに携わられていたんですね。社外人事の仕事の中で特に印象に残っていることはありますか?

採用戦略から入るので自社の魅力の整理はもちろん、選考フロー設計、ターゲット設計、母集団形成、アトラクト施策、説明会の資料作りなど幅広く担当させていただきました。特に印象に残っていることは、選考に1weekインターンを導入し、社員全員を巻き込むスクラム採用を提案、実施したことです。非常に魅力の多い企業様だったのですが、採用基準の高さや初めての新卒採用ということもあり、「どうアトラクト(魅力づけ)し、グリップしていくのか」という点が重点課題だと捉えました。さらに、依頼がきた時期が、ベンチャー企業の採用だとかなり終盤だと言われる入社前年の6月頃のプロジェクトだったこともあり、数少ない母集団の中でターゲットとなる学生を絶対に逃さないアトラクト施策を打つ必要があったため、選考に1weekインターンの導入を実施しました。全社員様に向けたオリエンテーションや役割提示など、正社員人事と何ら遜色のない仕事をしていたことも新鮮でした。

結果として、2ヶ月ほど経ったタイミングでソフトバンク社に内定が決まっていた優秀な学生の採用に成功。初めて新卒採用を実施する企業としては上々の出来だったのではないでしょうか。

ーー非常にうまくいっていたフリーランス時代だとお見受けできました。現在のOTOGIのメイン事業であるWantedly運用代行もこの時代にされていたんですよね。

そうですね。結果としてフリーランス時代だけでも累計22-3社程度の企業様の運用支援をしていました。法人ではなく、個人としてWantedly社の公式代理店にも任命されていたため、個人としてはかなり成果を上げている方だったと思います。支援先もZホールディングスのグループ会社や億単位で資金調達をされているようなフードテックスタートアップ、建設DXスタートアップなど、勢いのある会社の支援もさせていただいていたため、支援する側の僕が勉強になることも少なくなかったです。

ーーこの事業を会社としてやっていくことを決めた要因や勝ち筋などがあったということでしょうか?

何をサービスとして提供していくのかを考えたときに、前職の経験もあってか、やはり"第一想起"を取れないとダメだという考えが強くありました。この点は後編の記事で詳しく触れますが、第一想起を取れていると紹介をもらえたり、同業の人材会社様が商材として扱いたいという事象が起こり、営業活動の工数を大幅に下げることができます。(他にもメリットはたくさんあると思いますが)実際に2023年2月時点で累計35社程度の支援実績がありますが、自社からの営業は0で獲得できています。

マーケット規模も重要ですが、まずは第一想起を獲得するために"ニッチトップを取る"という方向に決定し、Wantedly運用代行を事業として拡大することに決定しました。また、冒頭でも紹介されていますが、ニッチトップを取るというのは僕個人にとっても「危険な道をいく」ことに繋がり、そのプロセスや実際にニッチトップを取れた瞬間はこの上ない幸せな瞬間だと信じているため、ワクワクしながら事業推進ができると感じています。

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後編に続く(フリーランス時代に感じた壁と、それを乗り越えた先に辿り着いたOTOGI創業秘話をお届けしています)
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