突然ですが、ソフトウェアはアートです。
優れたソフトウェアはまるで北欧家具のようにユーザの生活に溶け込み、実用性のある美しさ、職人が作り出す貴賓を感じさせます。
私たちのゴールはそのようなアートウェアをご提供することです。
アートウェアはソフトウェアなソフトウェアです。
マサです。
冒頭の一文はヌーラボ設立時のWebサイトの「コンセプト」というページに掲載していた一文です。なんだか、クレイジーさが香りたっていますね。この一文を読んだ方々から、辛口のツッコミと称賛を同時に沢山いただきました。その節は、ありがとうございました。
アートとデザインの違い
ヌーラボ設立当初の頃は「アート」と「デザイン」の違いなんて考えていなかった27歳だったのですが、それから歳を重ねるあいだに、その2つのものが違うということを学びました。あるときは「アートは問題提起で、デザインは問題解決」だとか、「アートは自己表現で、デザインは問題解決」だとか。
僕らのように産業界で働いていると、アートは「ナルシズム」だとか「お金にならない」だとかと言及され、少しだけネガティブイメージがあるように感じます。Webサイトを作っている企業のなかでも、人によっては「私達はアーティストではない」と胸を張って言います。アートの重要性が低く扱われているように感じ、「アートってなんだか良くないものなの?」という気持ちになったりします。しませんか?僕だけですか?
一方、デザインはとてもポジティブな文脈で語られることが多いです。最近では、過去のデータや経験だけではなく、ユーザーの声を聞くことで、問題の発見や解決に取り組む「デザイン思考」という方法論もあり、「デザイン」が大変注目されているようにも思えます。
「アートは自分の作りたいように作る。デザインは人のために制作する。」という違いのせいでしょうか、産業界ではアートよりもデザインの方に関心が集まっている気がします。でも、僕は、自社のプロダクトやサービスを持つ企業は、アートにも関心を持ったほうがいいと感じています。
確かにお客さんの問題を解決することが本分ではあるので、デザインは非常に重要なのですが、「さてさて、デザインだけでお客さんの本質的な欲求は解決するのか?」っていう視点は持っておきたいと考えてます。
デザインとアートの間はグラデーションで繋がっている
アートについては、何のためにやるのか誰もわかっていません。ですが飛行機を飛ばすにも、電車を走らせるのにも、アートが必要です。食後のアイスみたいなものですよ。具体的にどのような実用性があるのかという問題じゃないということをお伝えしたいんです。カルチャーとアートを融合させながら物づくりをすることが、もっともっと重要になってきます。
『【Sonar 2016】「遊びとは何か?」ブライアン・イーノ、文化の社会的な役割について語る』より
これまで、『お客さんの立場になり、お客さんの抱える「問題」や「課題」を解決をするものを考えることが重要だ』と学んだ人が多くいると思います。お客さんありきの商売なので当然のことですが、仕事ではデザインの側面が強く求められ、アートの側面は求められませんでした。また、2004年3月末、「突然ですが、ソフトウェアはアートです。」とヌーラボが言いきったときに頂いたネガティブフィードバックのなかにも『ソフトウェアはソリューション(問題解決)だ』という声がありました。『アートwww』みたいな嘲笑もありました。産業界において、アートは微妙な扱いを受けちゃうのです。わかる。わかるよ、その気持ち。
でも、例えば、デザインが世の中を良くするために「A」から「B」へ移動するための課題解決だとしたら、アートは自己表現として、社会に新しい価値ややり方を提案する、誰も見たことのない新しい「C地点」を創る作業と捉えることができます。新しい「C」を知っているのは自分、もしくは自分たちだけになります。ものすごいマイノリティーです。アーティスティックです。
でも、こう考えてください。「人は飛べる」という一部の人だけが見えている世界と情熱がないと飛行機はできなかったはずです。飛行機ができなければ、大勢の人がまさか人間が飛べるのだと考えもしなかったでしょう(きっと)。
「ソフトウェアはアートだ」というと言い過ぎかもしれませんが、僕はソフトウェアにはアートが必要だと思います。『デザインとアートの間にはグラデーションがあって、繋がっているものなのだ』と、東京都千代田区にある文化芸術施設「3331 Arts Chiyoda」の統括ディレクターを務める中村政人氏から伺いました。確かにそのとおりで、「デザインか、アートか?」というような極端な考え方をするのではなく、僕たちはその間のグラデーションの中で仕事をしているのだろうと考えます。
僕らにはアートがもっと必要だ
デザインはお客さんがすでに感じている課題や問題を解決すること。アートはお客さんは気づいていない、知らない、新しいやり方を実現して、こちらから提案すること。アンビエント・ミュージックの先駆者であるブライアン・イーノが言うように、アートとして実現された新しい「C」と、その背景にあるカルチャーが融合されて、実用性のある製品やサービスになっていくのだと思います。もしくはカルチャーから捻り出された新しい「C」は、多くの人にも役に立つ製品やサービスになるのです。
僕たちはお客さんの問題をデザイン的に解決をする一方で、お客さんの知らない新しいこともアート的に提案していかなければならないなぁ、と思います。現段階では、お客さんから言われる課題を解決するほうが明確化されやすく、受発注の間柄がわかりやすいので、デザインの話題ばかりに集中しがちになると思います。でも、僕からはあえて「アートがもっと必要だ」と主張させてもらおうかと思います。
まぁ、世の中では「アート思考」っていう方法論も開発されているようで、僕が主張しないまでも、産業界にはアートがどんどん導入されていきそうな感じはしています。これは、社会がイノベーションを求めている今、どんどん大きくなっていく流れだと思います。
乗り遅れるな! Don't miss it!
うははははははははははは(マントをひらり。