2024年4月、新卒ではじめての建築デザイナーとして、NOT A HOTELに入社した向阪大雅。横浜に生まれ育ち、みなとみらいを通じた都市デザインによって街がつくられていくさまを目の当たりにしたことが、建築に興味を持つきっかけになったという。
そんな向阪は慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC)で建築を学んだのち、インターンを経てNOT A HOTELに入社を果たした。NOT A HOTELに惹かれた理由や内定までのプロセス、実務を通じて得た経験など、向阪のこれまでを聞く。
「建築」に閉じない考え方に惹かれて
ーNOT A HOTELに出会ったのはどんな経緯だったのでしょうか。
たしか、SUPPOSE DESIGN OFFICEが設計を手がけた「NOT A HOTEL NASU MASTERPIECE」が最初の出会いでした。当初は純粋に意匠の格好良さに衝撃を受けたのですが、ある日濵渦さん(NOT A HOTEL創業者兼CEO)のnoteを読んで。これは単なる別荘ではなく、人々の暮らしを楽しい方向に変える、まったく新しいビジネスでありブランドだと気づいたんです。
自らがミッションを持った事業主として、土地の買い付けから世界的な建築家やクリエイターとの協業、販売するためのマーケティング、そしてホテル運営までを行っている……NOT A HOTELには「建築」に閉じないブランドとしての要素が揃っていると思い、インターンのお願いをしました。
向阪 大雅:慶應義塾大学卒。インターンを経て2024年4月より、建築デザイナーとしてNOT A HOTELへ新卒入社。
―当時はまだ新卒採用やインターンの正式な募集がない時代でしたよね?
そうですね。なので「カジュアル面談」の問い合わせから直談判するかたちで、ポートフォリオを送りました。正式な新卒採用の募集がなかったからこそ、むしろワクワクしていたのかもしれませんね。すぐにインターン選考の課題に取り組み、なんとか合格をいただくことができました。
―インターンの選考課題の手応えはありましたか?
いえ、あまりなかったです(笑)。課題ではフォトリアルなパースが要求されたのですが、いままで作ったことがなく、あたふたしてしまって。いま振り返れば、建築のデザインのみならず、家具や照明の選定をもう少しこだわれた気がしますが、その当時の自分が持っているスキルは出せたかなと思います。建築チームを管掌する綿貫さんからは「既存のNOT A HOTELを超えるような建築をつくらないといけないよ」というフィードバックをいただき、自分でも「痛いところを突かれた…」と納得しました。
建築に向ける真摯な姿勢がNOT A HOTELの魅力
―課題をクリアしたあとは、約3ヶ月のインターンがありました。どんな目標を設定し、業務に入っていったのでしょうか。
はじめに建築チームから「やってもらいたい仕事」、そして「なってほしい姿」の2つのゴールを共有されたうえで、実際の業務に当たりました。最初は、IllustratorやRhinoceros(3Dモデリングソフト)を使った補助作業が中心で、徐々に「NOT A HOTEL KITAKARUIZAWA IRORI」の検討パース作成など、現在進行形で動いているプロジェクトの一部を任せてもらいました。モデリング自体は大学でもそれなりに経験がありましたが、ここまで作業にスピードを求められるのは初めての経験でしたね。
―インターンという立場ではありますが、実際にNOT A HOTELで仕事をするなかで、何かギャップはありましたか?
一人が複数のプロジェクトを並行していることに驚きました。その一方で、一つひとつの仕事は特別なことではないというか……オンリーワンのプロダクトにたどり着くまでの作業は、決して打ち出の小槌を振るようなことではなく、地道な努力の積み重ねなんだな、と。気を衒(てら)うことなく、全員が深く建築やその場での体験を真摯に考えている。それをインターンの初日から感じられたのは、大きな気づきだったと思います。
―NOT A HOTELのメンバーや雰囲気には、どんな印象を抱きましたか?
建築チームと一口に言っても、なかには事業開発やプロジェクトマネージャー、LCM(LifeCycle Manager)、設備設計者など多様な専門性を持つメンバーが在籍しているので、デザイン以外のジャンルの話が日々飛び交うのは刺激的でしたね。建築がつくられる全工程を間近で見られるのは、まさに超ワクワク。
あと月並みな言い方ですが、みなさん本当によい人ばかりで……先ほども触れた建築への真摯な姿勢を含め、ミッションに向かうカルチャーが根付いていると感じます。もちろん、細部にいたるまで妥協なくデザインをしているので、毎日のように議論は起こりますが、全員がよりよい体験をつくるために切磋琢磨している。
ーみなさん、NOT A HOTELが好きなんですよね。インターン後は、どんなプロセスで内定に至ったんでしょう。
インターン最終日にあった成果報告会が、新卒採用の最終選考でもありました。正直ものすごく緊張していて、自分がどんなプレゼンをしたのかはっきりと覚えていないんですが、インターン期間中の成果物のクオリティの成長幅はアピールしましたね。一方で、新卒の建築デザイナーがNOT A HOTELから何を求められているのか、何を期待されているのか……それらを十分に自分のなかで言語化できていなかったのは反省点だったと思います。結果、直接面倒を見てくださっていた先輩建築デザイナーさんからスキルを高く評価していただいたこともあり、最終報告会の直後に内定を告げられました。
その後建築チームのみなさんが打ち上げを開いてくださって。そこでやっと緊張の糸が切れ、「この方々と同じ仲間になれるんだ」という嬉しさが一気に込み上げたことを覚えています。
学生時代、フィンランドの建築家 アルヴァ・アアルトの「マイレア邸/フィンランド・ポリ」を訪問した際の一枚。向阪が意匠設計を志すうえで、もっとも影響を受けた建築家の一人だ。
誠実な歩みと、個に宿る野心を両輪で
―入社から半年が経ち、いまはどのようなプロジェクトを担当していますか? NOT A HOTELで働く面白さを教えてください。
メインで携わっているのは、先日発表されたNext NOT A HOTEL(同時六拠点の発表)のなかの一つである「AOSHIMA II」です。現在は建築自体の検討はひと段落し、内装デザインをメインで担当しています。入社して半年以上経ちましたが、スタートアップらしいスピード感やマーケティング戦略、コスト意識の高さなど、意匠設計を軸にしながらも包括的な視点で建築に関われるのは、ここで働く醍醐味だと思います。
NOT A HOTEL AOSHIMAⅡ宮崎県青島に位置する「NOT A HOTEL AOSHIMA」が増築され、新ハウスが誕生。ジェネラルデザイン代表の大堀伸氏notahotel.com
―たとえば、具体的にどんな気づきがありましたか?
建築チームでクリエイティブディレクターを務める松井一哲さんは、建物全体のことを常に考えながら、ディテールへのこだわりも強く、毎度圧倒されています。私のデザインに対するフィードバックも「そんな視点があったのか」と毎回驚かされることばかりで。そのうえプレゼン資料まで美しい……つくる建築から見せ方、言葉選びまで、NOT A HOTEL建築を体現している方だなと感じています。
NOT A HOTELがつくる建築には、おそらくベターな答えはあるのですが、明確な答えがないんですよね。だからこそすごく難しい。仕事にどれだけ自分の熱量を込められるか、自分の意思を持てるかが問われるんだと思うんです。
つい最近も、先輩建築デザイナーである北田翔さんから「『自分はこう考えたから、こうしたいんだ』って自信を持って言えるようにしよう。NOT A HOTELは自分の作品なんだよ」というフィードバックをいただいて。「新卒だからこうしなきゃいけない」というよりも、新卒中途問わず、NOT A HOTELをつくる建築家としての視座を持つことが、スキルを蓄えること以上に重要なんだと気付かされました。
―新卒でNOT A HOTELで働きたいと考えている学生のみなさんにも響くメッセージだと思います。では最後に、向阪さんのこれからの目標を聞かせてください。
周囲の建築デザイナーさんと比べると、経験もスキルも不足しているので、まず足元の数ヶ月は目の前の仕事を100%以上の力でやり切ること。その積み重ねの先で、自ら意思決定できるようになりたいですね。NOT A HOTELのクオリティの建築を、提案から運営に引き渡すところまで、一気通貫で担当するためのスキルを身に付けたいです。
もちろん「自分オリジナルのプロダクトを世に出す」という個としての野心もあります。その炎を燃やしつつ、まずは目の前の一歩を誠実に積み重ねていく。その両輪を回していくことが、いまはすごく大事だと思っています。
採用情報
現在、NOT A HOTELの建築チームでは建築デザイナー(新卒採用)を募集中です。インターンやカジュアル面談も受け付けておりますので、気軽にご連絡ください。