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「データ基盤の構築」をコストと見るか、投資と見るか。

「GA4が一部うまく計測できていない。まぁ、時間があるときに見直そう」

「CDPの導入が無事完了。まずはデータを溜めて、将来的に分析していこう」

なんて声をクライアントから聞くたびに、データアナリストの私はモヤっとしてしまいます。

本来データは、利益を生み出すうえで欠かせないもの。……にもかかわらず、「多少のズレはしょうがない」「とりあえず溜めておけばいい」なんて捉え方をされがちです。

そこで今回は、改めて「デジタルマーケティングにデータが欠かせない理由」を、改めて言語化してみました。

目次

  • デジタルマーケティングにデータが欠かせない理由

  • 「データよりユーザーを見よ」と言われるけれど

  • データ基盤の「宝の持ち腐れ化」を回避するために

  • 最後に

デジタルマーケティングにデータが欠かせない理由

「データ」のメリットは、さまざまあります。

データがあることによって、事実にもとづいた議論ができます。社内の声の大きい人に流されることもなければ、「それってあなたの感想ですよね」と言われることもありません

また、悪化していくデータを目の当たりにすれば、「なんとかして改善しなきゃ」という気持ちがチーム内に自然と生まれる効果もあります。

「仮説なしにデータ見ても意味がない」といった主張はその通りですが、「どういった人がどこから何人このサイトを訪れているのか」といった、現状を把握するためのデータがなければ仮説すら立てられません

なかでも、私がこれまでデータ基盤の構築を支援してきたクライアントがみな口を揃えて言うメリットは「定量的に施策の評価ができるようになった」という点です。「おそらく先週実装したサイト改修が影響してコンバージョン率が下がったと思う」ではなく、「サイト改修によって無事離脱率は下がった。しかしそもそも流入チャネルが変化し、ニーズが異なるユーザーが多く流入したためコンバージョン率が伸びなかった」というふうに、詳細なデータがあれば、数字の上がり下がりの原因をファクトを交えて言語化できるようになります。

「施策を正しく評価できる」とはつまり、費用対効果やシミュレーションを算出できたり、もっとも成果が出る最適な一手を最速で選べたりするということ。逆にデータがなければ、 誤った判断を下すことになり、大きな機会損失を生みかねません。

くわえて、AIの進化にともない、データ基盤は直接的にコンバージョンへ寄与するようにもなってきています。機械学習のために良質なユーザー情報を教師データとして広告プラットフォームへ連携する、ユーザーの行動データを学習してバナーやメニューの表示を変更するなど、パーソナライズされたコミュニケーションを実現する。これらの取り組みは結果としてコンバージョン数・率の向上に直接的に作用します。

「データよりユーザーを見よ」と言われるけれど

データの有用性を語っていると、「データよりも顧客を見るほうが大切」といった趣旨のコメントをたびたびもらいます。

顧客と向き合うことは、もちろん大切です。「ユーザーにヒアリングした結果こんな課題を持っていることがわかったので、こういう体験がベストではないか?」と、ユーザーの声をベースに改善案を提案してくれるUXリサーチャーの意見は、インサイトを見つける上でとても参考になります。

一方、データアナリストは「その課題を持っている人は100人中何人いるの? 」「もっと多くの人が抱える課題に取り組んだほうがいいのでは?」という観点をつねに頭の片隅におきながら、改善策を検討します。

UXリサーチとデータ分析は、決して対立するものではありません。2024年現在は別文脈で語られることが多いものですが、両者の観点を行き来しながら改善策を考えていくことがなにより重要です。私自身も、そのようなプロジェクトを今後増やしていきたいと考えています。

データ基盤の「宝の持ち腐れ化」を回避するために

ここで一つ、「データ分析に改めて力を入れよう」と考えている方々にむけて注意点を解説します。

よくある失敗は、やはり冒頭でも触れた多機能で高額なデータ基盤を導入したけど、宝の持ち腐れになるケースです。

決してツールそのものが悪いわけではありません。将来的にやりたいことが明確であり、現在はそこに向けた過渡期であるという認識があるならば、いますぐ使いこなせなかったとしても、あらかじめ拡張性の高いツールを導入することは間違いではないと思います。

ただ、目的が明確でないとツール導入は失敗する可能性が非常に高いのは紛れもない事実です。

「いろんな可能性がありそう」とおおいに期待していたシナリオ配信機能は、いざ蓋を開けてみるとそこまでパターン分けできず、優位な差も出ず、面倒になって使わなくなってしまった。リッチなMAを導入したのに、パーソナライズやシナリオ配信が活用できず、ただのメール配信ツールと化してしまった。DMPを導入したものの、サードパーティCookieの規制の影響もあり、当初描いていたような構想ができなくなってしまった。……こうした事態が日常茶飯事なので、ツールは必ず「やるべきこと」ありきで選ぶべきです。

また、仮に目的を持って導入したとしても、設定の不備やサイトの仕様により、デジタルマーケティングツールのタグがきちんと発火せずうまく動かないケースもあります。ツールベンダーのカスタマーサポートに問い合わせても「他社ツールとの連携に関する質問については答えかねます」と突っぱねられてしまい、「いつか社内で設定を見直そう」と思っているうちに数ヶ月経ってしまう、なんてことが起きがちです。

それぞれのツールには「設定時にミスが起きやすいポイント」が存在するものなので、ツール導入時はそれらを理解している経験者の力を借りたほうが、スムーズにデータ基盤を整えられるのではないかと思います。

最後に

データ基盤の構築がただのコストになってしまうのは、シンプルに、集めたデータをなにも活用できていないときです。適切に活用することができれば、データはビジネスに大きく貢献します。
データを活用するためのポイントは、繰り返しになりますが、なにをやりたいのか、目的をまず明確にすること。この目的の具体化や、構想実現のための計画策定が社内でうまくいかない場合は、我々「月曜日のトラ」が壁打ち相手や水先案内人になりますので、ぜひ気軽にご相談ください。

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