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時価総額1.6兆円の火鍋チェーン「海底撈火鍋」から見える日本外食市場の未来@中国出張レポート

■はじめに

MOLで日々プロダクト開発を共にしているメンバー5名で、中国の深セン&上海へ行ってきました。このレポートの目的は、顔認証やQR決済、宅配サービスなどのハイテクサービスが成熟している中国の外食市場とそこでトップランナーとして走る海底撈火鍋を分析することで、日本の外食産業の明るい未来のヒントを考察する記事です。

目次はこんな感じ

1.中国の外食市場について(読み飛ばしてください)

2.海底撈火鍋について

3.海底撈火鍋の何がすごいのか

1)圧倒的なサービス力による差別化
2)テクノロジーによる徹底的な効率化(IPO調達金額の20%をテクノロジーに投下)
3)人に投資する文化と制度

4.最後に

おまけ(DM頂いた方に権限お渡しします)

海底撈火鍋3Cリサーチhttps://docs.google.com/spreadsheets/d/1zPg2L3JoHJOcRA8qlhgCgztnlNSc5nqU0Mg49TYJNtc/edit#gid=466100366
luckin coffee3Cリサーチhttps://docs.google.com/spreadsheets/d/1WEOKin7fu7fO610OMPgKBRTuMi0KyYAT8lyq_b2NCM0/edit#gid=85508958

1.中国の外食市場について

・市場規模は約68兆円と日本の約3倍。中間層・富裕層の可処分所得の伸びによって、2013-2017年のCAGRは9.9%

・フルサービスレストランが7割の市場シェア、西洋料理は年間55%成長する市場拡大

中華料理が大部分を占め、2017年の市場は80.5%。西洋料理は全市場の6%(とは言え10万店鋪)しかないが、2018年には55%という驚異的な成長率を見せている。

ちなみに、あらゆるところでサイゼリアは展開されており、非常に成功している印象だった。この西洋料理市場拡大のタイミングにうまくマッチしたのだろうと考える。

・中国の外食大手の規模感は時価総額約2兆円

欧米系のファーストフードと火鍋の小肥羊を展開する「Yum China」はナスダックに上場しており、現在の時価総額約2兆円という規模。(参考程度に、ゼンショーの時価総額は約4000円億円)

最近香港市場に上場した、「海底撈火鍋」も約1.6兆円という規模感。(後術体験レポートあり)



・宅配市場の市場規模は2018年(予測値)で、4000億元(約6.8兆円)となっており、日本は2016年で約4000億円の市場規模(参考:CREST)となっているので約15倍の市場規模

2020年には6000億元(約10兆円)と予測されており、外食市場の約10%の規模にまで成長していることを考えると、日本と比べて中食割合が高いことが見受けられる。

ちなみに、今回ガイドさんをお願いした日系の会社の新卒女性にも、食事情に関してヒアリングしたところ、ほとんど宅配サービスで食事を済ましているとのこと。美団外賣(テンセント20%出資)・餓了麼(アリババ100%出資)・百度外賣(ELEME Inc.100%)を利用しているが、外で食べても料理の値段は同じで、宅配料金自体も1元〜2元(30円前後)なので、日本のUBEREATSとは大きく事情が違いそうだ。

・QR決済はタブレット端末と相性良し。音声認証で電話予約できる体験がなかなか良さそう。顔認証はまだまだこれから?

色々なところでQR決済の破壊力についてはすでに書かれているのでここでは省略するが、タブレットオーダーからも直で決済QRが出てきて決済できたり、FFFRなどは注文ごとに決済が行われるので割り勘する必要なかったりと、本当に便利。
テイクアウト(モバイルオーダー)も外にQRがあり、決済はAripayにとばされるので、事前登録は一切なし。店内のPOSに繋がっていて、店内ディスプレイで呼び出されれば注文→決済→受け取りまでが可能。(ほとんどのお店がこれを実装している)

決済を抑えていることがめちゃくちゃ重要なことを改めて感じた。

顔認証決済に関しては、まだ実装できている店鋪は少ないのですが、我々が行った鴨肉屋さんはwechatpayを活用することで端末なしで購入まで行けた。

参照:https://www.smbc.co.jp/hojin/international/global_information/resources/pdf/smbccnrep_02_013.pdf

2.海底撈火鍋について

海底撈という火鍋チェーンを展開する会社で、中国に約350店鋪、海外に50店舗ほど展開している。日本でも度々取りあげられるが、事前情報の期待値よりもさらに感動したのがこのお店だった。日本においても生産性向上と外食でしか提供できない付加価値をどのように提供するか、という話が大きな議論になっているが、テクノロジーやデータによる生産性の向上を実現しながら、サービスによる付加価値をつけるための努力がしっかりと行われていると感じた。

Forbes:https://forbesjapan.com/articles/detail/23176

ロケットニュース:https://rocketnews24.com/2018/04/13/1043088/

3.海底撈火鍋の何がすごいのか

1)圧倒的なサービス力による差別化

この規模のチェーン店では考えられないほど高クオリティのサービスを維持できている。マニュアルなどが整っているというだけではなく、喜ばしたいというマインド醸成がかなり浸透していると感じた。実際にアルバイトの方にもヒアリングさせてもらったが、入社4ヶ月で3回の昇給をうけるなど徹底的に細かい評価制度、働いている人の子供専用の保育園を準備するなど、日本では考えられないほど従業員への福利厚生が充実しており、かなり高いロイヤリティで働いている。会社が従業員を感動させる、従業員がお客様を感動させるという企業文化がこの規模でもうまく回っており、結果、離職率は10%以下を推移している。その結果かなりの高水準のサービスが実現しているとのこと。

ネイルが待ち時間無料↓

靴磨きも無料↓


我々がビジネスで中国に来ていると伝えたら、ビジネスがうまくいくようにと縁起のいいたけのこ(右肩上がりw)をプレゼントしてくれた↓

↓サービスでスイカを出してくれたのですが、一人がスイカ食べられないと伝えると代わりにドラゴンフルーツをすぐにもってきてくれた


お土産まで↓

※これらは一例で、数々のサービスをする権限を店舗がもっているとのこと。

2)テクノロジーによる徹底的な効率化(IPO調達金額の20%をテクノロジーに投下)

・実際に電話で直前予約したが、音声認識による自動応答で超直前予約も0ストレス

・火鍋に特化された注文タブレット

・もちろん決済はタブレット上のQR決済で完結

・接客は維持しながら、スマートレストランを展開(バックヤードは完全無人)

バックヤードを完全無人化して、配膳ロボット、具材をピックアップするロボットアーム、様々なレシピを再現するスープ調合機など、5つのテクノロジーを導入して無人化。しかし、ホールは人が接客し、「接客強化する」とのこと。経営陣も、あくまで「人材こそ最も貴重な価値である」と言っており、ロボットでは代替できない分野で人材を有効活用するという。※ちなみにスマートレストランは北京周辺にあり、今回はいけませんでした、残念。。

参考記事:https://36kr.jp/15468/

3)人に投資する文化と制度

スタッフ一人一人の寮・食堂・洗濯・親族支給・スタッフの子供専用小学校の建設などにより、従業員の日常生活の手間をできるだけ低減する。企業が従業員を感動させれば、同じように顧客を感動させたいと思うようになるというサイクルを大切にしている。

下記は評価制度一例

①一般従業員から管理職までたどり着く方法の明晰化、期待感を持たせる(実際にインタビューした女の子は入社4ヶ月で3回昇給していた)

②師匠・弟子制の研修制度により、師匠役の昇進・昇給が弟子の出来具合につながり、双方の能動性を引き出す

③従業員賞与の構成に、いつくかの奨励金を導入、努力すればすぐ給与に反映できる(店舗の利益の3.5%がレベル1級社員に配当として配られる)

④一般従業員でも十分な権限を与える 従業員自分の判断で顧客への割引や無料サービス提供が可能。

■最後に

実際に、テクノロジーを駆使した「アプリでしか注文決済ができないluckin coffee」や「空からハンバーガーが飛んでくる(笑)無重力レストラン」など効率化のための仕組み作りや設備によるエンタメに振り切るレストランが中国では数多くでているものの、「また来たい!」と思うフックになるような体験を作ることは難しく、コモディティ化するのが早いように思います。

海底撈火鍋のように、ITを駆使して徹底的に生産性を上げながら、そのお店でしかできない体験を空間・設備・商品・サービスをかけ合わせてデザインする。ただし、最終的にその感動を届けるのは「人」であることを理解し、「人」に期待して投資する。それこそが、日本の外食産業の未来を考える上で、アマゾンやセブンイレブンという大きな競合と渡り合うためにも最も重要なことではないかと感じました。

我々は、そんな考えの外食企業様を全力で支援していきたいと思います。

株式会社Mobile Order Labでは一緒に働く仲間を募集しています
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