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スタートアップで働くということ

(この記事は2021年末にnoteで書きました。あれからもう3か月も経ってしまった…。毎日あっという間@MNTSQです)


Preferred Networks → MNTSQへ

細野裕子と申します。2021年6月にPreferred Networksを退職し、10月からMNTSQ(モンテスキュー)株式会社というスタートアップで働いています。MNTSQは創業3年、まだ30人ちょっとの小さな会社で、管理部門での採用は私が1人目です。


MNTSQ, Ltd.
未来の社会インフラとなる リーガルテクノロジーをかたちにする Scroll down 法務審査の高速化とリスク管理の高度化を実現する 新プロダクト「案件管理」を2022年秋にリリース 三菱電機、MNTSQの契約DXサービスの全てを導入〜知財戦略を支えるシステム基盤の構築を目指す〜 長島・大野・常松法律事務所とMNTSQ、 ウェビナー 「データの活用による法務の進化とリーガル・リ... MNTSQ for Enterprise 大企業特化のプロダクトで「契約業務全体のデジタル化」を推進します 「ドラフティン
https://www.mntsq.co.jp/

いろんな事件が勃発して、全く退屈しないMNTSQでの日々について話したいのですが、今を語ろうと思うと、どうしてもMNTSQに至るまでの自分のキャリアについて触れたくなってしまうので、まずはそこから始めます。

長い長い学生生活を経てドイツへ

就職氷河期に大学を卒業した私は(年がばれますね)、就職活動するくらいなら勉強する方がまだマシ、というひどい理由で大学院に進学し、就職活動を避け続けて博士過程に進みます。研究する気ゼロなのに、運の良さだけはピカイチの私は、あげくに奨学金の選考に通ってしまい、ウィーンに1年半も留学します。親元を離れ大して研究活動もせず、海外の自由さを満喫して日本に帰ってくると、完全に迷走している娘に親からは「あんた将来どうするの」攻撃が(当たり前ですよね...)。いたたまれなくなった私は、ドイツの小さな翻訳事務所の仕事を見つけ、再び日本を脱出します。

何度かドイツで転職をし、2008年にドイツの石炭火力発電所のエンジニアリング会社を日立製作所が買収してできた、Hitachi Power Europe GmbHという会社に入社しました。私は日本語ドイツ語英語ができる1人目社員として、CFO秘書の肩書で入社したのですが、実際は駐在員の方のビザ取得などの労務面サポートや、日本の本社からの視察の対応などが主な業務で、自分の何でも屋キャリアはここから始まっている気がします。

これまた私の強運のなせる業か、このドイツの会社は当時製作所グループの注目会社であったため、現在の東原社長含め、本当に大勢の日立の幹部の方とお会いすることができました。そして働いて3年が経った頃、日本に帰国された幹部の方から、日本で働きませんか?と声をかけていただくことになります。ドイツは暮らしやすくはありましたが、骨を埋めるイメージは持てず、いつか日本に帰るなら今がチャンスなのかもしれないと思い、2011年夏に帰国を決めました。


大企業で働くということ

帰国後は、バブコック日立という日立製作所のグループ会社に入社し、脱硝触媒という石炭火力発電所の環境装置のパーツの欧米市場営業を担当しましたが、2014年には日立製作所と三菱重工の火力部門統合により、私も三菱日立パワーシステムズという新会社に異動することとなりました。日本企業での勤務経験のない私が2万人企業の一員となり、大企業の動き・働き方を知ることができたことは、その後の私のキャリアに非常に大きなプラスとなりました。あの頃お世話になった皆さんに、心からお礼を申し上げたいです。

ですが、当時は暗い気持ちで働く時間も長かったというのが正直なところです。所与の枠組みのなかで効率を上げたり、成果を出す方法を考えたり、粛々と仕事を積み重ねていくのが大企業で求められる能力のひとつだと思います。が、私はどうもそれがあまり得意でなく、仕事をこなすにつれ、長い決裁プロセスや自分の裁量の小ささの方に不満を覚えるようになってしまい、日に日に組織の中での無力感と歯車感が大きくなっていくのを感じていました。

日々本当に鬱々とした顔で仕事をしていたと思います。そんなときに、Preferred Networksから、総務・秘書のポジションでの面接のオファーが来たのでした。


34番目の社員としてPreferred Networksへ

これまでの私の経歴にITの文字は存在しておらず、Preferred Networks(PFN)の名前ももちろん知らなかったので、ネットで社長の西川さんの記事を探して読みました。西川さんは「最新のテクノロジーで、より安全でより暮らしやすい社会を作りたい」というような趣旨の発言をしていて、それがとても胸に響いたことを今も鮮明に思い出します。「深層学習」の言葉を目にしたのもこのときが初めてで、私にとってはリアルに最新というか、わけがわからないニューテクノロジーで、それが安全と暮らしやすさにつながる、というイメージにすごくわくわく感を覚えました。

2016年4月、社員番号34番で入社し、本郷オフィスで最後の1週間を過ごして大手町のオフィスに移転しました。私は産休に入った総務の方のReplaceだったので、入社当初は一人総務で、要はやる人のいない仕事をとにかく何でもやっていました。今思うと、私のキャリアに一貫性がない故に、この人何でもやりそうだな、と思って採用してもらえたのかなと思います。実際自分ももう営業ではなく、不定形の仕事がしてみたいと思っていたからこそ、PFNのオファーに飛びついた気がします。2016年当時はPFNもまだ今ほどの知名度はなく、2万人の会社から30人のスタートアップへの転職は、普通に考えたらなかなか思い切った決断かと思いますが、このタイミングでPFNと出会えたことはラッキーという言葉では言い尽くせない幸運なめぐり合わせでした。

そうして入社した当時のPFNでは、0->1 or 1->10的な仕事が多く、その分裁量も大きかったのと、そもそもの稟議決裁プロセスがシンプルだったため、ものすごいスピードでいろんなことを回していけました。自分のアイデアや提案を形にすることができ、社内のコミュニケーションもフラットで、スタートアップで働くことの楽しさに夢中になったのを思い出します。


真の多様性追求

PFNでは、「躊躇わずに自分より優秀な人を採用する」ことだけが、明文化された採用方針だったように思います。ただ、優秀な人がたくさんいればそれだけできることが増える、自分たちの可能性が大きくなるとの考えに基づいた、多様性の追求が大きな軸ではありました。なので、「70点以上は取った上で、100点に近づくことを全員目指してね」的なバランスの確保や最低点クリア的な発想よりも、-30点みたいなところがあっても、何か突き抜けたところがあれば、そこを評価し、伸ばすようにすべきなのではないか、という問いかけの方が常に大きかったです。

ただ、「70点が取れない人は、120点の部分があっても足切りする」のが、それまで私が経験していた(と感じていた)企業の価値観であり、人事の教育方針でした。大企業にバランスが取れた優秀な方が多いのは、この価値観に拠るところかと思います。そして大企業の働き方が嫌でスタートアップに入った私にも、そういう考え方は知らず知らずのうちにすっかり染み込んでおり、PFN入社当初、思いがけない場面で思考の転換が強く求められましたし、その後も日々自分の価値観がチャレンジされることになりました。

自分では一生懸命やってるつもりなのに嚙み合わず、秘書という役割もあり、会社が小さかった頃は特に距離が近かった分、西川さんとは(結構激しい)議論になる場面もありました。でも経営陣はいつも真剣に向き合ってくれましたし、時には西川さんご自身が素直に過ちを認めてくれることもありました…今になるとすごく懐かしいです。トラブルやごたごたがあるたびに、私はPFNという会社をむしろますます好きになっていきました。多様性を真に追及するには、それを受け入れるだけの懐の深さ、異なる価値観へのリスペクトと謙虚さが求められるという大きな気づきを得られたことに、心から感謝しています。

スタートアップで働くということ

そんな私がなぜPFNを辞めたのか。

退職がオープンになった後、社内で同様の質問をたくさんもらいました。2016年に34番目の社員として入社して5年、社員数も300人を超え、組織の在り方も大きく変わり、管理部門も大きくなりましたが、それに伴い私は、日々の業務になんとなく手ごたえのなさを感じていました。特に新型コロナウイルスで全社的に在宅勤務が導入されてから、日に日にそういう気持ちは強まり、自分がこの組織でやれること・貢献できることはもうないのでは、と考えるようになりました。そしてPFNのことも西川さんや副社長の岡野原さんのこともメンバーのことも大好きだったが故に、そういう気持ちで会社に居続けることが不義理にも思えてしまい、最終的に辞める決断をしました。

ご縁があって入社したMNTSQは今、正社員が32名。私が入社した2016年のPFNとほぼ同じ人数です。今後の会社の大きな成長が見込まれる一方で、メンバーには大きな裁量が与えられており、PFN入社当時の私の状況によく似ています。前世の記憶を持って現世が生きられる的な面白さがあり、毎日楽しいです。

ですが最近ふと、このままでいいのかな、という気持ちを覚えるようになりました。MNTSQの今後を思い描くと、30人の壁を超え、100人組織になり、150人、200人、300人…と、どうなるかはもちろんわかりませんが、イメージするのは私が在籍中にPFNがたどった道筋そのままです。であれば、PFNにいた時の自分のままでは、またどこかで行き詰ってしまう可能性が高いということになります。

そういう気持ちで振り返ると、PFNでの私は、働くことの楽しさにのみフォーカスして、スタートアップで働くことの本来の意味を忘れていたように思います。大きな企業で働くには、すでに与えられた枠や価値観の中で、自分の能力を上げていくことが求められますが、スタートアップで働くには、日々変化する組織の枠に合わせて、自分の枠や価値観を変え続けること、自分も組織の価値観を壊しては作りさらに成長するサイクルに参加し続けることの方が大切だと思います。次を見据えつつ、自分自身の形を変え、自分の限界にチャレンジし続けなければいけない。

正直に言うとすごく大変そう(笑)。でもMNTSQではこのチャレンジに真っ向から取り組んでみたいと思っています。だってPreferred Networksという最高のスタートアップから、MNTSQというもうひとつの最高のスタートアップにjoinできた私は、我ながらびっくりするほど運が強いと思うのです。

MNTSQという会社のどのあたりが最高なのかについては、新年にまた改めて書きたいと思います。この記事ですでにMNTSQにご興味を持っていただけた方、スタートアップの採用やバックオフィス業務にご興味を感じていただけた方、ぜひカジュアル面談からお話しましょう。


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