流浪の○○テックの果てのリーガルテック 〜あるエンジニアのMNTSQ入社エントリ〜
10月1日からMNTSQに入社して1ヶ月半が経ちました。
そういえば、このエントリが公開された翌日は、MNTSQの設立2周年の日だそうですよ。
○○テックを渡り歩いて
新卒で就職して今まで、「ITの力をIT以外の世界へ提供させること」と「自分たちが作っているその製品やサービスを、自分たちで直接顧客に届け続けること」の二つを両立できる仕事に就きたいなと考えて生きてきました。幸せなことに、おおかたそういった仕事に就いて仕事をしてきたことが多い人生のように思います。私が新卒の頃には、まだX-Techと言われる言葉はなかった(または浸透していなかった)と記憶していますが、振り返ればそういう世界観に近い感覚で生きてきたのかなと思います。
それぞれ濃淡はありますが、エンジニアとして、不動産テック、アグリテック、フィンテック、業務外のコミュニティ活動としてシビックテックに参画してきました。
そして今回、リーガルテックのMNTSQに入社したわけです。
今このときも爆発的に種類が増えていくX-Techですが、それぞれに求められる特性や要件の違いは顕著であり、とても面白いと思っています。私もその時々で様々な経験をすることができました。
たとえば、アグリテック。私が携わったシステムは、基本的にはオフィスワーカーのためのシステムではありませんでした。必ずしも空調の効いた部屋のなかで椅子に座って使うシステムではなく、炎天下でも雨の日でも、圃場でも作業所でもどこでも使えることが要求されるもので、朝採り作物(新潟だと午前2時とかに枝豆を収穫するんですよ)があれば、深夜のメンテナンスも避けざるを得ませんでした。また、データのライフサイクルも対象とする作物などによって大きく変わり、路地の野菜のように数日でできる作物から、果樹のように年をまたいで管理し続けなければならないもの、果ては植物工場まで多岐にわたります。地域性の違いや、食に関わることから農薬などの使用制限など法的な制限などもあったり、ほかの業務管理システムとは考えるべき範囲が格段に広かった思い出があります。
シビックテックは、市民の課題を解決することが命題です。単純に行政のデジタル化・システム化を推し進めればいいのではなく、高齢者に対してのケアやIT教育、市民協働や地域性といったキーワードも踏まえた活動が必要になります。近い領域のガブテック(GovTech)とともに、オープンデータ政策に代表されるように情報を開く多くの人に使ってもらえるようにしていくことも一つの観点ですし、同時に公務員の方々の働きやすさなどにも考慮が必要です。
一方で、リーガルテックの特徴としては、シビックテックとは正反対に、徹底して「クローズド」を追究しなければいけないということが挙げられます。これは、もともとの業務が非常に秘匿性の高いものですから当然のことなのですが、営業秘密書類のなかでもとりわけその傾向が強い契約書類を扱うということは、そのままシステムに対して高い機密性と完全性が担保されていなければいけないことを意味します。シビックテックとは逆に、データは公開されてしまっては困るものであり、こうした点の心がけはMNTSQの社員全員徹底されているものだなと痛感したものです。
社内の文化について思うこと
MNTSQの文化は、リーガルテックの「クローズド」な特性に反して、社内の文化は積極的に情報やノウハウをオープンに、明文化を推奨する文化でした。それも徹底して。
業務の特性上、社内には弁護士やパラリーガルと呼ばれる法務業務のプロの部隊が在籍しており、また営業部隊もいるわけですが、彼らもMarkdownを書き、GitHubを操り、プルリクを作って、時にコンフリクトを解消しながら業務を遂行する文化なのです。Issueのなかで議論を行い、取り決めにプルリクを出し、そのなかでまた細かい議論を行ってものごとを決めていく、これがきちんと回っていることにまず驚いた記憶があります。
また、1日1回行われる業務進捗の共有会は、どの職種の人間も等しく全員が参加し、それぞれの業務への疑問や確認事項を話します。エンジニアが法務の専門領域について、パラリーガルがシステムについてそれぞれ理解しようとする空気は、自分自身のほどよい緊張感にもつながっているように思います。
これらのことは、今はまだこの人数だからできることという部分もある気がしています。ここから先、人が増えていったときにこの文化は守られるのか。どういう風に変わっていくのか。
今の組織文化は、創業メンバーの意図があってこうなっているといいます。しかし、社内文化を体現し形にしていくのは役員ではなく社員です。今後の文化を決めていくのも、我々社員の一人一人ですし、その変化を、私は当事者として楽しみながら感じてみたいし、良い部分は積極的に守っていきたいと思っています。
非機能要件を担う
機械学習やIoTなど、技術の進歩によって、今まで踏み込めなかった分野にもITがその影響を広げられるようになり、前述のようにX-Techと呼ばれるようになりました。こうした流れは、少子高齢化が進み、就業人口の減少が確定的な日本においては重要なことのように思います。
多くの環境でITが使われるようになるということは、多くの人々の業務の一部、あるいは業務に限らない生活の一部にコンピューティングが融合されていくことを意味します。
コンピュータの上で扱われる内容はそれぞれの領域で異なるにしても、コンピュータそのものを動かす根幹の部分は基本的には変わりません。いわゆる非機能と言われる部分も、それぞれの分野で重視する観点は異なれど重要度が揺らぐことはありません。
むしろ、使われる領域が増えれば増えるほど、そして使う可能性のある人が増えれば増えるほど、この非機能な部分は重要度を増していきます。
たとえばセキュリティ。今までは限られた人だけしか触らないキャビネットの中にしまわれていた情報が、デジタル化されインターネットに曝されるようになってきているなかで、その傾向が止まることはないでしょう。
たとえばパフォーマンス。これくらいの情報量ならこれくらいデータ量が流れてる気がするから、これくらい処理に時間がかかると目算が立てられる人ならまだ頭でなんとか理解してくれるかもしれませんが、体感的に遅いなと思われてしまうシステムではよりよいUXは提供できないでしょう。
一般的には必ずしもSREがこの部分を管掌するものではないのですが、今のMNTSQの規模感のSREでは、非機能要件への取り組み方を一番考えなきゃいけない役割なのだなあという実感を持っています。
リーガルテックのエンタープライズSaaSを提供していく企業の中でこの部分を担うことは大きなプレッシャーもかかりますが、同時に、いかにしてシステムと組織に携わっていくかと言う点には長期的にやりがいを感じられそうな気がしています。
最後に
そういえば、冒頭にも書いたとおり、このエントリが公開された翌日は、MNTSQの設立2周年の日だそうです。
2年前を振り返ると、たしか私は地獄の中にいました(ちょっと思い出したくない)。そこからいろんな人の協力を得ながら、今ここにいられるというのはなんとなく思うところです。
2年と言わず世の中や人々や情勢はあっという間に変わっていきます。少なくとも2年前は誰もコロナのここまでの影響は予測できませんでした。
変わっていくのは世の中ですが、自分の状況は変えようと思えば変えることができるわけです。
現在、MNTSQでは各職種について絶賛募集を行っています。Wantedlyや採用情報スライドにいろいろ記載しています。ぜひご興味があれば、見ていただけるとうれしいです。
そんなわけで、もしよかったら、自分を変えてみつつ、この若い会社を変えていってみませんか。