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台湾茶藝とインタビューとMICIN

こんにちは。MICIN で”人を理解する”を担当しております中村と申します。唐突なのですが、先日、本格的な台湾茶をいただく機会があったのですが、何煎でも美味しいうえに、煎れるたびに味が変わる奥深さに感動しました。台湾茶(中国茶)の半発酵という製法と丸まった茶葉が徐々にほどけていく過程が味の変化と持続性をもっているようです。濃厚な味(たぶん全部の味)→きゅっとした密度のある渋み(なにか抜けて渋みが強調?)→香りとすっきりとした甘み(渋みが消えて?)→さわやかな甘み→ほのかな香りみたいな感じで最後の方は薄まっていくイメージですが1〜3煎目までのドラスティックな変化とその後の緩やかな印象の変化は、ユーザー体験的にはお茶そのものへのマインドシェアが徐々に同行者への会話にシフトしていく上では自然な味の変化で、その時過ごした時間に深みを与えていると思うのです。最初は雰囲気をリードするけどユーザーが慣れてきたらこっそり裏方に回る、みたいなイケメンな体験設計、ぜひ真似したいところです。

話は急に戻りますが、タイトルにありますインタビューです。MICINはオンライン診療をはじめとして、医療と患者の方(及び関係者の方)の間にあるサービスを模索しておりますので、双方に対してユーザーとしての理解が必要なのです。本来利用される現場に観察に行ったりして人が動いている様や周囲にあるものから状況を見に行きたいのですが、コロナ禍以降もっぱらリモートでのインタビューばっかりになっています。ただインタビューは一回やると同じデータから色々な方法で情報を得られるいうなれば、それこそ何度でも味わえる台湾茶藝のような存在ではないかと思いますので、インタビューの比重が増えている今こそインタビューについて話してみたいと思いました。


1煎目 出来事や考え方を知る

インタビューでお話を聞きます。リモートでもお顔が見える方が断然いいですね。ご本人の認識している出来事や考え方、大きな文脈を掴むことができます。その場で話をアレンジしてどんどん深堀して詳細を明らかにしていけます。たまに職場で受けてくださる方がいらっしゃってそういう時は本音の部分とても聞き出しにくいのですが、声のトーンでその話題が職場でどのように扱われているかが分かったりするので、環境面での情報量もすごく多かったりします。案件や目的によって微妙にお話を聞く構成は変わりますが、その人がそのサービスを使うシーンが発生する文脈をなんとか発見したいと考えて色々なお話をします。だからUIの調査に行ったのに時代劇の話を聞いてたり、疾病のヒアリングに行ってオンラインで合奏する話を聞いていたりしているのは、大事なことなんです、多分。この辺の文脈探しは広告やプロモーションの時でも同じような印象です。

2煎目 ストーリーを立体的に知る

インタビュー後にチームメンバーでラップアップを行うことで、多面的に見直します。ここではそのチームメンバーである自分たちがそれぞれの言葉で語ることで立体的に形を確認し、“見たもの”を“目指すもの”に作り替えていく工程でもあります。MICINはバックボーンが様々なので論点が本当に幅広くとれます。余談ですが、メモの取り方が人それぞれで面白いです。大体他の人がみてもよくわからないのですが、省略したところと書き残したところにその人なりの文脈があるのはずなのでいつか探ってみたいと思いました。先日の自分のメモに「冷蔵庫」って書いたのがなんだったのか思い出せなくて思っただけですが。

3煎目 背景や価値観を探る

さらに記録されたテキストを使って分析を行うこともあります。これは本当に地味で地道な作業で、エクセルでワンセンテンスずつ分解して構造化して行きます。前半の分解は時間をかけても進んでる気がしないのでとても辛い作業ですが、後半の構造化は逆に頭の中をジャンプしているような感じでとても刺激的です。これは必ずしも自分で行ったインタビューである必要もなく、誰のどんな文脈でやったインタビューでもある程度の文字量があれば可能ですので、過去のインタビューなども使い倒します。やればほぼ必ず(役立つかどうか別として)新たな視点を得ることができるものですが、前半の辛さと後半の楽しさで愛憎入り混じっている感覚が極まっており、個人的には大変複雑な感情を向けている作業です。

4煎目  語られなかった言葉を聞く

さすがにここまでくるとだいぶ情報的に抜け殻だろうと思いますが、聞き直していると意外と発見がある場合もあります。リアルタイムでは、話の内容を考えていたり、周囲や動作の観察をしていたりと案外細かい言葉の使い方や話し方まで目が行ってないことも多いです。書き起こしのドキュメントも一言一句書き起こされているわけでははいですし、「間」みたいなものも書きづらいです。「えーっと」「というか」など文章としては本来不要な接続詞のようなものから、その発言の意味合い評価を行う補助材料になります。基本的にインタビューでは、微妙に本心は隠されていると考えた時に真意の評価が難しい発言を音声で聞きなおしてみると、最初とは聞こえ方が違う場合もあります。みなさんも「土日ですか?ジムに行ったりカフェで読書したり、友人とホームパーティしたりしてます」とか言う時ありませんか?

5煎目 メンタルモデル的な構造化を行う

日々の行動→ペインorニーズ→価値観というように構造化していきます。消費材商品の時に比べて色々拾うことがあるように思えて、毎回大作になってしまいます。個別の部分について改めてこれまでの考察を読み直して検証したりするので3~5煎の工程をぐるぐるしています。結果的にここで何度もインタビューを読むことになるのですが、だんだんと対象者の人に親近感が湧いてきて、他人とは思えなくなってきて、一方的に思う心の友がどんどん増えていきます。だからこの仕事していると寂しくないですよ。ええ友達いっぱいなんです、僕。

甜點 治療文脈との組み合わせ

医療の場合、元々治療文脈でもナラティブ・セラピーやコンコーダンスなど、人と人の関係性の中にある概念があってこれらと前述の考察を組み合わせていくと、とても奥行きが深くて、深みにハマると楽しくなってきてかなりの沼です。認知行動療法とかリハビリのADOCとか、行動変容そのものみたいなものもあります。MICINには医師の方や製薬・医療機器メーカー出身の方も多く在籍しますので、色々お話が伺えますが、朝すごく早く出社して夕方にはいないので、会うのが大変です。

MICINでのインタビュー

MICINですと対象は医師か患者の方であることが多いですが、患者の方からは重症・軽症に関わらず病のある生活について元気付けられる話を聞くことができます。最近だとむしろ、サービスのために話を聞きに行くのではなく、聞いたお話でいただいた元気?をお返しするためにサービスを作るのか?と思ったりするぐらい順番はよくわからなくなっています。もしかしたら、これが共創という概念の実感なのかも!よくわからないですけど。そういうわけで、台湾茶藝とインタビューとMICIN、おすすめです!

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