Wantedlyストーリー第一弾は創業者石渡さんに、英語学習アプリ「Langaku」を開発したきっかけや原体験、これから求める人材についてお話を伺いました。
プロフィール:石渡 祥之佑 代表取締役
東京大学情報理工学系研究科修了。
博士(情報理工学)。
日本学術振興会特別研究員(DC2)、東京大学生産技術研究所特任研究員等を経て、2020年 Mantra株式会社を設立。
機械翻訳や未知語処理等、自然言語処理分野の研究開発に従事。
▼Langakuについて、サービス内容を教えてください。
石渡:本サービスは英語の多読学習を漫画で行うためのアプリです。
現在の日本の外国語教育の課題の一つとして「インプットが不足している」ことが挙げられます。
多くの学習者は、そもそも英語の文章を読む量が不足していると言われています。
そうした人たちには「多読学習」、すなわちたくさん英文を読む学習方法がとても有効です。
しかし、これもなかなか普及していない。
その理由の一つとして、面白い教材を探すのが非常に難しい、という問題があります。
多読学習では易しい教材からはじめることが推奨されているので、大人が幼児向けの絵本を読んだりする。
ところが、これは多くの場合正直あまり楽しくない。
一方で、興味がある内容を読もうと思って英語話者向けの雑誌に手をつけると、今度は英語が難しすぎて理解できない。
この課題を解決するためのアプローチとして「漫画をたくさん読んでもらう」ことが有効なのでは?と当社は考えています。
漫画は文章が100%理解できなくても絵で文脈を推測できますし、会話文が多いので実際に身につけたい表現もふんだんに含まれています。
さらに、Langakuでは初心者でも難しめの英語漫画を楽しめるよう、機械学習の技術を活用して、作品の難易度をユーザが調整できるようにしています。
編集:楽しく学習できるのはワクワクしますね!
ちなみにプロダクト利用者の対象年齢は設定しているのですか?
石渡:今のところ、高校生から大人を主な対象としています。
▼英語教育のビジネスを始めた原体験などはあるのでしょうか。
石渡:母が中国出身ですので、私も小さい頃から日本と中国を行き来することが多くありました。
日本でも中国でも子供たちの話題の中心は漫画やアニメやゲーム。
つたなくとも中国語が話せることで、多くの友達と好きなものについて盛り上がりました。
それが後の言語学習や言語教育に対する強いモチベーションとなっていきました。
多くの日本人は英語教育に関して違和感を持っていますよね。
10年くらい学校で学んでいるのに、自分たちが英語を全然使えないのはおかしいのではないか?と。
私自身も英語には苦手意識があって、思うように話せないことにストレスを感じていました。大学院生時代、学会参加のため海外に出張した際も、海外の研究者と流暢に議論できないことにもどかしい思いを何度もしました。
編集:英語はプライベートで学んでいらっしゃるのですか?
石渡:今はLangakuだけですね。
最近は外国人の同僚も増えて来て、少しずつ英語への苦手意識も減ってきたような気がします。
▼新しいプロダクトに過去の英語学習経験は反映していますか?
石渡:「多読学習」自体は昔からあるコンセプトですが、自身の経験からもこれが有効である、というのは腹に落ちています。
たとえば、中学生の頃に英語の教科書についていたCDを聴きながら教科書を丸暗記していました。
これをやるとたしかに成績がぐんぐん上がったのを覚えています。
大学院生になってからは英語の論文を読むようになりました。
当初は論文を読むのもとても時間がかかり、1週間かけても1本も読み終わらない、という状態でした。
ところが日々たくさん読んでいるうちに、英語にも自然に慣れてきて、ざっと内容を把握するだけであれば1日に4〜5本は読めるようになりました。
「たくさん読む」というシンプルすぎる(?)学習方法を信じられるのは、自分自身のこうした体験があるからだと思っています。
▼Langakuを開発する上で苦戦していることはありますか。
石渡:たくさんありますよ!たとえば継続率。
学習は継続が何より大事です。
英会話学校などは入学時に高額のお金を払っているし、教室で先生が待っているので「行かねばならない」という意識が働きますよね。
継続率も高いでしょう。
そうした強制力が働かないアプリの場合、毎日の習慣としてサービスを使い続けるのは難しいですよね。
皆さんも、スマホで何百個もアプリを試した結果、毎日使い続けているアプリはほんの数個しか無いのではないでしょうか。
その数個に入らないと、学習者の成長に貢献することはできません。
使い続けていただくための工夫のしがいがある一方、簡単なチャレンジでは無いな、といつも思っています。
▼Langakuのサービスで他のサービスにない取り組みを紹介いただけますか。
石渡:あまり馴染みのない「多読学習」のコンセプトを正しくユーザに伝える方法を工夫しています。
学習アプリって、「本当にこれを続けていって意味あるのかな?」と不安になることがありますよね。
多読のキモはとにかく楽しみながら続けること。
なので、そうした不安を解消するような豆知識が至る所で表示されるようになっています。
それから、ユーザによっては全部英語で読み続けるのは大変すぎる、という方もいます。
そういった方にも少しずつ多読学習に慣れていただきたい。
そこで、コマごとに英語と日本語を切り替えられる仕組みを取り入れています。
基本は英語で読んでいく。
ただ、どうしても自信がなければ部分的に日本語で読んでみる。
そうして少しずつ体を英語に慣らしていくんです。
せっかく好きなコンテンツで学習できているのに、難しすぎて挫折したらあまりにももったいない。
どんな作品でも自分のレベルに合わせて楽しみながら読み進められるよう、英語の割合を調整できる仕組みも取り入れています。
編集:自分で学習チャレンジの範囲を調整できるのはいいですね!
石渡:たとえば、最初はちょっとだけ英語で読んでみる。
物語にハマっていくにつれ、英語の割合を増やしていく。
筋トレで少しずつ負荷を上げていくような感覚で、物語を楽しめるギリギリの範囲で英語をたくさん読んでいく、というイメージです。
編集:同じ漫画を何度も見て楽しめますね。
▼お客様が望むコンテンツを教材にする苦労はありますか。
石渡:Langakuは最初から集英社さんとタッグを組んでやっています。
ですのでコンテンツ集めは驚くほどスムーズに進んでおり、本当に素晴らしい作品でサービスを開始できています。
一方で、娯楽として作られた漫画を英語学習の教材として活用する方法については試行錯誤が必要です。
ここはベータテストを通じて、ユーザさんの声も聞きながら改善に改善を重ねてきました。
編集:集英社さんとタッグを組めたきっかけを教えてください。
石渡:2020年に集英社のアクセラレータープログラム(マンガテック)に参加したことがきっかけです。
当時はまだ社内で企画しかなくて、マンガで言語の壁を越えていくプロダクトを作れたらいいのに...と考えていました。
▼サービス開発でここに苦戦している・・・ということは今ございますか。
石渡:ユーザーエクスペリエンスは、いつも課題として存在していますね。
気づいたらアプリを開いている、というような、夢中になるゲームやSNSが世の中にはたくさんありますよね。
こうしたエンタメアプリが持つ強力なUXの力を「楽しく続ける」学習アプリにも取り入れたいと思っています。
そのためのUXやUIを設計し、改善をリードしていく専任のデザイナーが社内にいないのが組織的な課題です。
我こそは!というUI/UXデザイナーさんがいらっしゃれば、ぜひお話ししたいです。
▼こんな人と働きたい!というイメージを教えてください。
石渡:言語の壁をエンタメや先端技術を組み合わせて越えていく、そんなチャレンジにテンションが上がる人に来ていただきたいです。
まだ組織ができたばかりなので、ご自身の役割やチームの方向性がどんどん変化していくことを楽しめる方が向いている気がします。
それから外国籍のメンバーもいますので、(上手でなくても構わないので)英語でコミュニケーションをすることに抵抗がない人が望ましいです。
一同:本日はありがとうございました!