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【キュレーターマネージャー 成毛千賀】まだ注目されていない商品に光を当てるのが強いやりがい。隠れた価値を見出したいから。

いいものを作るだけでなく、伝える大切さを学びたかった

こんなにも人から「ありがとう」を言ってもらえる仕事はない

実行者さんと二人三脚で仕立てたプロジェクトが伸びたとき、最高にやりがいを感じる

――キュレーター本部 マネージャー 成毛千賀

漫画とファッション。ものづくりへの情熱は幼少期から

両親が共働きだったので、子どものころは祖父母の家でよく過ごしていました。祖父は絵の先生で、私の遊び場はもっぱら絵の具の匂いのするアトリエ。祖父は油絵で風景画を描いていましたが、私の興味は漫画でした。

小さなころから漫画が大好きで、少女漫画の真似をしてたくさんの絵を描いていました。最初は鉛筆、その後少しずつGペンやトーン、カラー絵に使うコピックなど、漫画家さんが使う道具を買い集めていました。近くに画材店があったので、誕生日のたびに漫画を描く道具を買うのが小学生の頃の恒例でしたね。

ストーリー漫画を描きたい気持ちはあるものの、絵を描く練習ばかりしていました。ストーリーを作れないと漫画家にはなれないと思い、漫画家になる夢は見切りを付け、絵を描くことに楽しみを見出していたんです。

もうひとつ、小さなころから好きなのがファッションです。小学生で身長が162cmもあり、一度はコンプレックスに。でも、「洋服をかっこよく着こなせる」と考えると背の高さを受け入れられ、自分に自信が持てるようになりました。

絵は引き続き好きで、高校で美術の同好会を作り、美大を目指す同級生と一緒に絵を描いていたこともあります。絵を使って服のことを勉強できたら楽しそうと思い、大学は被服学科に入学しました。

大学時代は洋服づくりだけでなく、ファッションマーケティングの勉強も。また、ファッションショーの運営をする学生団体に入り、年に1回のファッションショー開催にも関わっていました。

魅力的な服を作るデザイナーを集め、スポンサーを集めて、みんなで作り上げるイベントはとてもやりがいのあるものでしたが、上手くいかないこともありました。大きな会場を借りたはいいものの、宣伝不足で集客できず、赤字をメンバーで補填することに……。辞めてしまうメンバーもいて、苦しい時期でした。

でも、「いいものを作るだけでなく、伝える大切さを学ばなくてはいけない」という気持ちを強く持つきっかけになりました。伝えるための勉強ができそう、という理由で、サイバーエージェントへの入社につながったんです。

「一生懸命頑張ることはかっこいい」という価値観

当時、サイバーエージェントでインターンとして働いていたとき、メンターをしてくれたのがマクアケの代表である中山でした。まだマクアケが1期目のころで、事業について目をキラキラさせながら話してくれた様子をよく覚えています。

大学の一部の友人からは、学生団体に入って精力的に活動している様子を「またなんかやってるね」と揶揄されたりしていましたが、私は頑張ることはかっこいいと思っていました。サイバーエージェントのインターンを経験し、社会に出ている大人が情熱を傾けて頑張っている様子を見て、こういう会社に入りたい、と思ったんです。

サイバーエージェントに入ってからは、アプリのプランナーやディレクターを経験しました。

最初に担当したのが学生のころから好きだった古着のアプリで、好きなことがこうしてつながるのは驚きでした。また、次に配属されたのは漫画の電子書籍。ここでも、不思議な縁を感じました。

でも、仕事ではうまくいかないことばかり。スケジュール管理や細かい作業など、ミスが多くてよく怒られました。同期に優秀な人がいる中で、上手くできない自分に涙を流したことも何度もありました。

でも、ものづくりの基礎を学ぶという気持ちで、がむしゃらに頑張りました。3年ほど担当させてもらい、プランナーとしてまだまだ未熟でしたが、自分の中では「やり切った」と思えるくらいには頑張ったと思います。

自分が好きなもの、本当に良いものを、きちんと消費者に伝える仕事をしたいなと思っていた時に、ちょうどテレビ番組の「ガイアの夜明け」でマクアケが紹介されていたんです。犬の洋服を販売するプロジェクトで、マクアケのスタッフが事業者の方の話を聞きながら、その技術の価値に光を当てて商品化に伴走し、最終的に「Makuake」で販売していくプロセスを映し出していました。

「売れるものを売る」ではなく、作り手の思いを聞いた上で売れる方法を考えていく。その様子が、自分の求めていたものとマッチすると思い、転職しました。

ヒアリングをしながら見せ方を考えていく――こんなに楽しいなんて!

マクアケに入社してからは、プロジェクト実行者(「Makuake」でプロジェクトを実施する事業者)さんと一緒に伴走するキュレーターという仕事をしています。実行者さんのプロジェクトを成功させるために、商品の内容や課題をヒアリングしながら、サポーターの方が「欲しい」と思える内容を一緒に考えていきます。

入社して1年程でマネージャーになり、今は4年目ですが、最初からとにかくすごくやりがいがありました。こんなに人から「ありがとう」を言ってもらえる仕事はないんじゃないか、と毎日思っています。

実行者さんからはもちろん、サポーターの方からの応援コメントでも、たくさんのありがたい言葉を日々受け取っていると感じます。プロジェクトが成功して実行者さんに「本当にやってよかったです」と言ってもらえる瞬間は、本当にうれしいですね。

もちろん、プロジェクトが成功に結び付かないこともあります。上手くいくと思っていたプロジェクトが伸びなかった時には、もう立ち直れないんじゃないか、というくらい落ち込むことも少なくありません。

でも、プロジェクトが成功することがゴールではないと思っています。プロジェクトを1回行うことは、事業を成長させるためのひとつの段階でしかないんです。改善して再チャレンジしたり、実行者さんの事業に生かしたりできるように模索しています。実際に、2回目、3回目で大成功するプロジェクトもたくさんあります。

薬機法に関わる難易度の高いプロジェクトにチャレンジ

2020年の初頭からのコロナ禍により、マスクや除菌グッズなど、衛生や健康にかかわるプロジェクトが急増しました。言葉の使い方ひとつで薬機法に抵触する可能性があるため、難易度が高くキュレーターの工数がかかります。

そこで、私ともう一人のメンバーでチームを組み、薬機法に関わるプロジェクトをまとめて引き受ける体制をつくりました。他のキュレーターの工数が減らせるうえ、プロフェッショナルとして知識を身につければプロジェクトページの精度や効率が上がるからです。コロナ禍で衛生関連の商品ニーズが高まっている中、きちんと商品が先行予約販売することができ、応援購入できるプラットフォームとしての「Makuake」であり続けるために、私がやらなきゃ誰がやる!という気持ちで立ち上げました。

スタートしたはいいものの、はじめは前途多難でした。プロジェクトページは審査チームがチェックするフローが入りますが、その際に「こういう表現をすると薬機法に抵触する」と指摘が入ります。例えば「殺菌できます」という表現は、医薬品や医薬部外品などにしか許可されていません。

最初は、審査のチェックから戻ってきたものを、実行者の方にそのままお伝えすることしかできませんでした。今なら「『除菌』という表現に変えれば問題ない」とわかっていますが、当時は言い換えの言葉がわからず、とてももどかしく感じていたのです。

せっかくサポーターの方に響きそうな商品なのに、言葉を変えることで可能性をつぶしているんじゃないか……。そんな思いにとらわれることもありました。

表現を改善するために、審査チームと定例ミーティングを組んだり、ミーティングや勉強会を重ねたりして、部署を超えてメンバーを巻き込みながら専門性を高めていく日々でした。

薬機法について「やっとわかってきた」と感じたのは、1年ほど経った頃だったと思います。今では、一緒に走ってきたもう一人のメンバーが美容チームを引っ張ってくれており、新しいメンバーが増えて、誰でも薬機法プロジェクトを担当できるように言い換え表現を提案してくれたり、より強いチームが出来上がっていると思います。

実行者の方にも重要性を正しく伝えられるようになり、「ここまで見てもらえてありがたい」「そういうリスクがあると知ることができてよかったです」と言っていただけることもあります。

ジャンルごとのプロフェッショナルが育つようなチーム作りを

現在は、チームごとに担当するジャンルを決め、専門性を高めていくチャレンジをしています。キュレーター自身の興味と関連があり、その領域に変化を起こしたい、と本人が心から思えるようなジャンルを担当する組織設計をしています。

私のチームは、薬機法の知識を生かした美容と、ファッション、宿泊を主に担当します。私自身も大好きだったファッションにまた携われていて嬉しいですね。

私自身は、期待感や注目度が高いプロジェクトよりも、まだ注目されていない隠れた魅力があるようなプロジェクトを担当することにやりがいを感じています。ニッチだけど面白いアイデアをいろいろな側面から見て、魅力的に見える部分や可能性を探し出したいと思っています。

簡単ではないですが、可能性の芽を探し出してスポットを当て、それがサポーターの方にも伝われば、実行者さんにもサポーターさんにも、ものすごく喜んでいただける。それが本当にうれしいんです。


取材・執筆:栃尾江美 Website

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