今回は2021年に新卒入社し、LITALICOジュニアの教室長として活躍する五十嵐(いがらし)さんにお話を聞きました。五十嵐さんは法学部で女性や子どもの人権について学んできましたが、学生時代は子どもに関わる経験がほとんどなかったとのこと。どのような想いをもってLITALICOジュニア(パーソナルコース)で働いているのか紐解いていきます。
LITALICOジュニア 教室長 五十嵐(いがらし)さん
プロフィール:法学部卒業後、2021年4月にLITALICOへ入社。LITALICOジュニアの個別支援かつオーダーメイドの支援を中心に提供するパーソナルコースで約2年間指導員を経験した後、2023年6月に教室長に着任。
「弟が生きやすい社会をつくりたい」理想を現実にする仕事
ー LITALICOへ入社した決め手は何でしょうか。
就職活動では、教育福祉の分野に絞っていたわけではなく、化粧品メーカーやIT企業など幅広い業界を見ていました。その中でも、LITALICOに興味をもったのは弟の存在が大きいと思います。
自閉症スペクトラム症と知的障害の診断を受けていた弟は特別支援学級で学んでいました。就職活動の時期になり、苦戦する弟を見て感じたのは、進路の選択肢が少な過ぎること。弟は素直に一生懸命生きているのに、社会の側が障害のある方に合った環境を準備できていないことに課題意識をもっていました。
その一方で、自分自身に対しても今まで弟のために何も具体的な行動ができていなかったという気持ちがあったんです。だから、弟のような人たちが生きやすい社会のためにインパクトのある仕事をしていこうと考え、それが実現できると思ったLITALICOに入社を決めました。
ー 様々な事業部がある中で、LITALICOジュニア(パーソナルコース)を選んだ決め手は何でしょうか。
最初は具体的にLITALICOのどの事業部で働きたいか、決めきれていませんでした。面接の中で「小さい頃、弟にこうしてあげたかった。関わり方を変えていたら何か変わったのかな。母はしんどくなかったかな」と面接官に伝えたところ、LITALICOジュニアを薦めてくださったんです。お子さまも保護者さまにも、ご家族全体に向けて支援ができるLITALICOジュニアでなら、私の実現したい社会のために出来ることが多いのではないかと思いました。
また、顧客に近い距離で働ける指導員職を経験した後に、その先で自分にできることを幅広く考えていきたいという気持ちもありましたね。
ー お子さまと関わるお仕事は未経験だったと思うのですが、不安はなかったでしょうか。
社員の方から「あなたのペースでやっていけばよいですよ」という言葉をかけていただいていたので、安心してこの仕事に取り組んでみようと思っていました。
ただ、実際に働き始めてみると分からないことが多く、指導も自分の思うようにいきませんでした。最初はこの仕事は向いていないのではないか…とすごく落ち込んだこともありました。でも、上長の方が定期的に面談を設定してくださって、授業の組み立て方について教えてくれたり、「五十嵐さんはここが強みだね」とたくさん褒めてくれたおかげで、徐々に仕事に対して自信をつけることができるようになりました。
お子さまもご家族も、どちらも密に関われることがやりがい
ー この仕事のどんな部分をやりがいに感じますか。
LITALICOジュニアで働く決め手にもなった、ご家族に対する支援に携わることができていること、自分が大切だと思うことを守りながら働けているということが一番のやりがいです。パーソナルコースでは、授業後のフィードバックに加えて、2か月に1回必ず保護者さまと面談をします。ご家族と一緒に現状を整理し、もしご不安があれば詳しくヒアリングして、お子さまの今後の支援方針を一緒に立てていきます。保護者さまと密接に関わりながら、お子さまのことを本気で一緒に考え抜いていく。ご家族をまるっと支援できることにやりがいを感じます。
ー 具体的なご家族支援について、エピソードを教えてください。
年少から約4年間担当していたお子さまとお母さまのことが印象に残っています。LITALICOジュニアに通い始めた頃、お母さまは「子どもとずっと一緒に居るのが辛い。関わることにストレスを感じてしまう」という状態で、親子でのコミュニケーションがうまくとれていませんでした。
そこでABA(応用行動分析学)に基づいたお子さまへの声かけや関わり方についてアドバイスをしました。例えば、ゆっくり一語文で話す練習から始め、声が大きくなってしまう時は声のグラフを作成し、声のボリュームを数字で可視化できるような、お子さまが自分の気持ちを伝えやすい環境設定の工夫についても一緒に取り組んでいきました。
お家の中でもコミュニケーションの練習を進めていくうちに、教室だけでなく、お子さまとお母さまの間で二人の成功体験が増えていき、見違えるように親子でうまくコミュニケーションが取れるようになっていきました。
ある日、お母さまから「先生、最近子どもと喋ることが楽しいです。以前はテーマパークに一緒に行っても、嫌なことを言葉で表現できず、外で叫んだり逃げ回ってしまい、私自身も子どもも疲弊していました。でも先日は『キャラクターが怖いから、この乗り物に乗りたくない』と理由を添えて自分の気持ちを伝えてくれたんです。」と笑顔で話してくれたことが忘れられません。
教室の中だけで完結しない、包括的な支援を目指して
ー 入社してから約2年後に教室長に着任されていますが、どんな経緯だったのでしょうか?
働き始めて2年目になると、後輩の成長を見守ることが楽しいと思うようになりました。指導についてアドバイスを伝えた後輩から「できました!」と報告をもらうと、私まで嬉しい気持ちになったりと「育成」に目をむける機会が増えていたんです。そのタイミングで上長から教室長をやってみないかとお声がけがあり、指導員の次のステップとして挑戦してみようと教室長への着任を決めました。
ー 教室長としてどんな教室や支援を目指していますか?
教室の先生全員がご家族全員にとっての「伴走者」として、LITALICOジュニアに出会ってよかったと利用しているご家族全員に思ってもらえるような教室を目指しています。
私自身が保護者さまと接する際に特に気をつけていることは、表情をよく見てお声がけやフィードバックをすることです。いつもより目が合わないな。いつもより話がでてこないな。などの変化を見逃さず、「最近眠れていますか」「何かありましたか」などお声がけし、保護者さまにも安心していただけるような意識を心がけています。
お子さまのことをフィードバックする際には、お子さまが「できたこと」により注目してもらう機会や、お子さまが保護者さまに直接褒めてもらう機会をつくるような授業づくりにもこだわっています。
ー 五十嵐さんが将来実現していきたいことがありましたら教えてください。
今携わっているのはLITALICOジュニア内での授業やプログラムが中心ですが、ゆくゆくは教室に通わずとも、支援を必要としている全国の保護者さまにプログラムを届けられるような活動に携わっていきたいです。保育園や学校の先生ともより連携をしていくことで、発達に困りのあるお子さまがどんな支援を必要としているのか、どんな環境を用意してあげたらいいのか、などの情報を広めていけたらいいなと思います。
私は、子育てしている大人や教育に関わる人だけではなく、すべての大人が子どもたちとよりよい関わり方を少しでも心得ていたら、社会全体で大きな変化があるんだろうなと思うんです。そう思うと、実現したいことがまだまだたくさんありますね。
ー 最後に、就職活動中の方へのメッセージをお願いします!
学生時代、私のように子どもと関わった経験がない方でも、療育や発達障害に関する知識がなくても、しっかりと学んでいただける研修制度があります。新しく入社した社員の成長を周囲の先輩社員が応援してくれる環境があり、それらに私も助けられてここまでやってこれました。人を思う気持ちさえあれば、できるようになる仕事だと思うので、安心してチャレンジしてほしいです。