みなさん、こんにちは。
株式会社キカガク代表の吉崎です。
キカガクのメンバーがいつも会社の文化について書いてくれているため、今回はキカガクのメンバーにどのようなことを日々伝えているかを紹介していきたいと思います。
ご存知の方がいらっしゃれば嬉しいのですが、キカガクではAI・機械学習領域の教育事業を行っています。
社会人の方向けがメインで、オフラインの講義を中心に事業展開しています。
私が東京大学で、副社長の今西が東北大学で非常勤講師として、大学生向けにも講義を行うこともあります。
この記事を書こうと思ったきっかけ
教育事業を行うときに大切な能力として伝える能力があります。
キカガクのメンバーには専門知識だけでなく、この伝える力も徹底的に鍛えてもらっています。
プレゼンテーションは練習により劇的にその力を伸ばすことができます。
私が学生時代に在籍していた京都大学の加納研究室では「本番前までに50回練習する」ことが当たり前となっており、たしかに50回も練習すると、日本語であろうが英語であろうが、スラスラと話すことが出来ます。
スラスラと伝えるでけでなく、20-30回目あたりからは、余裕が出てくるため、自分の振る舞いなども気にするようになり、より良いプレゼンテーションを行うことができました。
プレゼンテーションがうまくなりたいのであれば、練習あるのみです。
さて、プレゼンテーションの伝え方はこんな根性論の結論になってしまいますが、伝え方の前に、どのような内容を伝えるかも当然大切です。
どれだけ伝え方がうまくても、内容が良くなければ、伝わるものも伝わりません。
これらは掛け算であり、どちらが一方が欠けてもうまく伝わりません。
学会では素晴らしい研究成果が得られているにも関わらず、プレゼンテーションが下手で伝わっていないケースを幾度となく見てきました。
先週末に、Startup Weekendという起業家を目指す人達を支援するプログラムに審査員として招待されたため、参加してきました。
Wantedlyをご覧の意欲のある方であれば、このプログラムをご存知の方も多いのではとおもいます。
金曜日の夜にアイディア出しとチーム構成を行い、土日でそのビジネスモデル立案や仮説の検証を行い、日曜日の夕方に5分間でプレゼンテーションを行うという急ピッチで準備しないといけないイベントです。
今回は八王子にある東京工科大学で行われたこともあり、基本的には学生の方が参加されていたのですが、みなさん意欲的で、まだ今は完璧でなかったとしてもこういったイベントが成長のきっかけになるのだろうなと感じました。
ただ一点、これだけは教えてもらわないと、これから先もグダグタと続けてしまうと感じたことがプレゼンテーション内容のつくり方でした。
どのチームも何をしているのかをクリアに伝えることができておらず、これは社会人になってからも多くの人に当てはまる事象だなと感じます。
大学ではプレゼンテーションの作り方を教えてもらえるような授業はほとんどありません。
その割に、社会人になってミーティングなどでプレゼンテーションを作る機会はかなり多く、人によっては業務の8割近くスライド資料作成をしているようなケースもあるのではないでしょうか。
そのぐらい重要にも関わらず、意外とみんなうまくできないものです。
そこで、キカガクのメンバーには教えているプレゼンテーション資料作成の方法を今回はお伝えしようと決めました。
より深いテクニックは色々な本が出ていますが、まずは劇的に思考が変わり、しかも10分ほどで理解できる入門編としてこの記事を読んでいただければと思います。
勉強になった!という方はぜひシェアしていただけると嬉しいです。
誰でもできるプレゼンテーション資料作成の4つのポイント
1. 最初からスライド作成ツールを立ち上げない
これは鉄則中の鉄則ですが、おそらく多くの方が出来ていないポイントだと思います。
プレゼンテーション資料を作るときには、まずパワーポイントやkeynoteのようなスライド作成ツールを立ち上げるのではなく、メモ帳を立ち上げましょう。
私はMarkdownで書くことになれているため、Typoraを愛用しています。
この鉄則が守れていない人の資料の特徴としては、各スライドで言っていることの粒度が異なることや、話す順番がおかしいことが挙げられます。
思いついたまま、資料として作っていき、気づいたら何を伝えたいのかなどがわかりにくくなっているのです。
2. ペルソナをきめる
まず文章を書くためのツールを立ち上げて最初に行うことが、ペルソナ決めです。
ペルソナとは、ターゲットとしている人ことであり、どのような人が聞きにきていただけるかをまとめていきます。
同じ内容を話すときに同じスライドを使い回す人も多くいらっしゃいますが、聴衆が全く同じでなければ聞きたい内容も異なっているため、考え直すべきではないでしょうか。
サービス開発などでよく登場するペルソナですが、プレゼンテーションスライドのときは、こと細かに決めていく必要はありません。
ここでは、ペルソナとして設定した人が何を聞きたいかだけ決めておけば大丈夫です。
このペルソナを決めておかないと、プレゼンテーション側が話したいことを話すことになってしまい、そういったプレゼンテーションによく遭遇します。
良いものを作れば売れるだろうといったProduct-outの考え方ではいけません。
売れるものを作る、聴衆が聞きたいことを話すという考え方のMarket-inを心がけましょう。
3. ゴール・現状・ギャップの洗い出し
ペルソナが決まると、次にどのような内容を話していくかを決めていきます。
このときに、最も簡単な考え方は、ゴール・現状・ギャップでそれぞれをまとめていくことです。
どのような情報を伝え、どのような情報を伝えないかは、その聴衆のゴールや現状の知識によって大きく変化します。
この分析に役立つものが、すでに行っていたペルソナ像です。
この人にこの情報を伝えても難しすぎるので、今回はやめておこうなど、情報の取捨選択を行うことができます。
以下の洗い出しは一例ですが、実際に資料を作るときにはさらに多くの項目を洗い出していきます。
4. 段階的に作り込んでいく
ここまでの段階で、プレゼンテーション自体の方針が決まっています。
最後にはどのような内容を話すのかといった具体的な内容を作り込んでいく必要があります。
そして、このときに方針は良くてもよくわからない内容になるか、うまく伝わる内容になるかの分岐点があります。
私は粒度と流れの2点を意識しています。
プレゼンテーション資料として作り込む前に、この2点を整理しておくことで、位置づけを意識したプレゼンテーションを行うことができます。
段階的に作り込んでいくときには、書き出す→構造化→並べ替えの3ステップを少なくとも踏みます。
これは具体例を見るほうがわかりやすいため、学生のビジネスモデルの課題というテーマでプレゼンテーションの内容を考えていくときの事例を見ていきます。
まずは思いつくことをひたすら書き出していきます。
下の画像の左側が「書き出す」に相当するところです。
内容の被りがあったりしても気にすることなく、まずは手を止めずに書き続けることが大事です。
その次に、右側にあるように構造化を行っていきます。
ロジカルシンキングでいうボトムアップのアプローチです。
それぞれの項目をどういう単位でまとめると良いだろうと考えます。
この工程を行うことで粒度をある程度揃えることができます。
今回の例よりも階層はもっと深くても構いません。
最後に、並び替えを行います。
聴衆が話を聞く際に、どういう順番であればわかりやすいかを考えます。
いきなりヒトに関する組織の作り方から入っても分かりづらいため、まずはサービスに関する指摘から入る方がわかりやすいなとモノの説明から始めるように並べ替えます。
この工程を行うことで流れを整理することができます。
さらに資料にしていく際には、起承転結で考えたり、Why/What/Howに分解して、さらにストーリーの構成を考えていきます。
各ページごとのメッセージと話す内容まで文章ベースのときにまとめておけると、あとはスライドのデザインに専念することができ、設計と作業の分離ができます。
スライドから作り始めると、この設計と作業を同時に行うことになり、よほど器用な人でない限りは、設計ができていない作業ベースのスライドとなり、うまく伝わらない内容の構成となってしまうのです。
さらに発展的な学びに
私が資料作成で参考にしている本です。
1.プロの資料作成力(清水久美子さん)
圧倒的にわかりやすい一冊です。
資料を作るための設計のノウハウからレビュワー側のノウハウまで幅広く網羅された一冊です。
キカガクのメンバーにも必読書として読んでもらっています。
2.一生使える見やすいデザイン入門(森重湧太さん)
資料のデザインに関する本です。
デザインというとアーティスティックな一面を持っているように感じますが、この本ではセンスによらない再現可能なデザインを実現するためのノウハウが綺麗にまとめられています。
おわりに
今回はキカガクのメンバーにもよく伝えているプレゼンテーション設計のポイントについて簡単にまとめました。
あとは実践あるのみで、骨組みがしっかりした中で肉付けを行っていくとどんどん成長していくことができます。
逆に、骨組みをちゃんと教えてくれない文化の中でひたすら肉付けの作業をしても、肉団子ができ上がるだけです。
キカガクでは、今回のテーマのような骨組み(教育)と肉付け(実践)の両方の機会があり、この文化が作られているからこそ、他のWantedlyのブログにあるメンバーのように急速な成長を実現できています。
キカガクで一緒に成長しながら、教育をより良い方向へ導きたい!と強い思いを持った方、ぜひお待ちしています。