新型コロナウイルス感染症の拡大が日本で広がり始めてから、およそ4ヶ月がたちました。今なお最前線でウイルスと戦う医療従事者の皆様には、感謝の言葉しかありません。当たり前のようにマスクをして外出したり、手洗いうがいの頻度が増えたり‥大人にとっての日常は、割と自然に変わってきているようにも感じます。
しかし、青春真っ只中を過ごす思春期世代にとって、新しい生活様式を実践するというのは、どういうことなのでしょうか。
例えば一生に一度の卒業式。友だちと顔を寄せ合ってたくさんの写真を撮り、最後は抱き合い泣きながら別れを惜しんだ、あの日。
3年間毎日コツコツ努力し、集大成として挑んだ最後の部活の大会。
毎日放課後は大勢で友だちの家に集まって、ゲームをしたり漫画を読んで過ごした日常。
私たち大人が思い出す青春の1ページは、いつだって密なシーンの積み重ねです。同じ空間や経験を共有しながら、語り合い、圧倒的な一体感の中で過ごした思い出。
「青春は、密である」。
これは、中高生の年間利用者のべ2万6,000人を超えるユースセンター「文京区青少年プラザb-lab」新館長米田の言葉です。密を奪われた青春。当事者たちはどんな想いでいるのでしょうか。また中高生の挑戦を支えるユースセンターはコロナ禍での開館に、どう取り組んでいけばいいのでしょうか。
withコロナ時代のユースセンター像を取材しました。
一生に一度の
思い出が奪われた
NPOカタリバが2015年から運営を受託する、文京区青少年プラザb-lab。開館以来ずっと、密な青春空間を届けながら、中高生の小さな変化も見逃さず、いつでもそこにあるナナメの関係を届けてきました。
しかし、コロナによって、2020年3月2日(月)からb-labは臨時休館に。休館中は、オンラインで語り合ったり、自習したり、音楽イベントを開いたり、b-labオンラインを届けようと奮闘してきました。
文京区青少年プラザb-lab 館長 米田 瑠美 大学卒業後、人材系企業にて6年半勤務。同社内CSRの一環で「キャリア教育プロジェクト」のメンバーに選ばれたことから、教育への道を考えるようになり、カタリバに転職。
例えばb-labでは、春の卒業イベントをオンラインで開催することに。当日までの間に、何度も気持ちの整理やリフレクションにスタッフが伴走し、迎えたオンライン卒業式では「オンラインだけどできた」という感動がうまれ、高校生の気持ちに一区切りをつけることができました。
そして休館が続くと、中高生たちもたくましく、次第にオンラインを使って自分たちのやりたい企画を開催するなど、休校期間を有効活用し始めるようになっていきます。
臨時休館から開館に向けて
米田:「学校の文化祭で表現しようと考えていた企画を発信するWebサイトを立ち上げる高校生が出てきたり。YouTubeにダンス動画をあげて発信したり。この状況で何ができるかを考えて、アクションを起こす子たちもたくさん出てきました。
一方で多くの中高生は、あまりにも変わってしまった自分たちの日常に戸惑っている印象でした。そういう気持ちを吐き出す場として、b-labオンラインは機能していたと思います」
そんな中、緊急事態宣言解除をうけて、6月1日(月)から開館に。
感染防止対策は、文京区と打合せを何度も行う中で設計されていきました。
米田:「悩んだのは、感染防止策をとりながらも、ユースセンターの果たすべき役割を毀損しない運営をどうしていくのか、ということでした。例えば、受付の簡略化はしませんでした。検温があるからというのもありますが、受付で見せる挨拶の声色とか雰囲気で、どういう状態かなんとなく分かるんです。これはオンラインではできなかったことなので、久々に会うからこそ、優先度高く取り組もうと考えました。
今後はリアルとオンラインの
ハイブリッド運営へ
米田:「思春期って、繊細なので、心にちょっとだけ蓋がある気がするんです。心の声に素直になれない時期というか。初対面でオンライン上に集まって、そこが安心安全な場になるかというと、少し難しさを感じています。
リアルだといつも本を読んでいる子に、『そんなに本が好きなら図書委員になってみない?』と声をかけるとか。“本人がまだ無自覚な部分に踏み込んだおせっかいな関わり”をすることができる。
一方で、やりたいことや興味関心が見つかっている子は、オンラインでクイズ部とか弦楽器部とか部活を作り、学校の枠を越えて、同じ『好き』を持った中高生同士活動しています。
リアルとオンラインを融合させて、安心して自分を表現できる場所と、もっと『好き』を極めていけるつながりをつくっていきたいと思っています」
b-labオンライン部活「ウクレレ部」の様子
大切なことは、
コロナがあっても
なくても変わらない
米田:「コロナで失われてしまうであろう思い出を、別の形で思いっきりやりきる経験をさせてあげることだ大事だと思っています。
6月から開館したb-lab
米田:「私たちとしては、どんな形であっても、青春を謳歌してほしいという想いがあります。青春といっても、キラキラした楽しい思い出だけではなくて、本気で取り組むからこそ大変なことも苦労することも挫折もある。でも涙が出るほど笑えたり感動することもある。そういう喜怒哀楽を、例え制限された中であっても、最大限叶えるサポートをしていきたいと思っていますし、できる方法があると思っています。
コロナ対応でバタバタしていた時は、正直状況に振り回されていたところもあったんですけど、今はぶれていません。大切なことは、コロナがあってもなくても変わっていないんですから」
掲載元:カタリバマガジン https://www.katariba.or.jp/magazine/article/report200702/
より抜選。
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