写真左から日本オラクル株式会社 サンタガタ 麻美子氏、カラクリ株式会社 小田 志門、株式会社ZOZOテクノロジーズ 金山 裕樹氏、パーソルホールディングス株式会社 友澤 大輔氏、多摩大学 福田 峰之氏
こんにちは!Corporate and People Groupの堀之内です。
1月22日に開催された『Customer Engagement Conference TOKYO』で、CEOの小田が登壇し、「カスタマーエンゲージメントを高めるためのDX推進とは」について、登壇者の皆さまと議論を交わしました。その様子を、カラクリDaysで特別にお届けしますので、ぜひご覧ください。
Agenda
1.DXの日本の現在の対応状況
2.ZOZOテクノロジーズが仕掛けるDX改革
3.カスタマーエンゲージメントを高めるためのDX推進はどう進めるか?
「2025年の崖」をどう捉えているか?
福田氏:「DX」と政府も謳っているが、流行りみたいなところがあります。以前からデジタルで社会構造を変えていく取り組みはありますが、うまくいかないから、ここぞと「DX」と言い始めたんですよね。企業は生産性、政府は行政効率を上げていくためのDX。ただ間違えてはいけないのは、これは目的ではなくて方法論。はき違えると結果がおかしくなってしまいます。
サンタガタ氏:なるほど、目的ではなくて手段ですね。イベント全体のテーマのカスタマーエンゲージメント(以下、CE)は、デジタル抜きに語れません。CEが目的で、DXが手段。企業のDX熱ということで、友澤さんどのように見ていますか。
友澤氏:福田さんがおっしゃったように、こういうテーマは、ビッグデータとか前々から本質は変わりません。日本の課題は、手段を目的化してしまうところです。まず手段を変えていくために、意識を変えていかないといけません。「意識なのか」「変革なのか」は、パーソルの中でも大きな議論になっています。組織をどう変えていくのか、働き方をどう変えていくのか、テクノロジーをどう取り込んでいくのか、コアに話をしています。
「便利な道具を使うか否か。もっとシンプルに考えていい」
金山氏:僕からすると、「便利な道具があるから使おう」というだけ。自動化ツールとかAIとか、企業理念に沿ってちゃんと価値を届けましょうというだけなのに、なぜ苦労しているのかわからないです。なぜ、キレる包丁があるのに、キレない包丁使っているの?という感じ。
ZOZOはソフトウェア企業なので、人間がしないような判断をテクノロジーが実施することもあります。そういう環境なのでDXに苦しむ気持ちがわからない、だからどんなストレスがあるのか聞きたいですね。
友澤氏:人と技術が敵対関係になるというような捉え方をしてしまっている風潮はあるかもしれません。あと「説得する」というコストも、ひとつの弊害だと考えています。合理的に正しいものであれば、合理的に予算がつき、合理的に進められます。でも、説得するためのコストがかかるのが、足枷になっているところは多いのではないでしょうか。
海外では、たとえばICTをつかって顧客体験をどこまで抜本的に変えていくのかが論点になります。一方で、日本では、業務プロセスの一部をデジタルにしたら、DXと言われるようなことがある。ユーザーファーストで考えていく視点が、まだ足りていないように思います。
移行期だからこそ、AIが馴染むまでの「配慮」が必要
サンタガタ氏:よくキレる包丁(AIチャットボット)をお持ちの小田さんは、どのような見解をお持ちですか?
小田氏:DX推進に抵抗があるのは、「よくキレる包丁」ほど、デジタルやAIがわかりやすいものではないからだろうと思っています。AIって、ふわっとしていませんか?便利だと思いながらも、業務上で何が変わるのかわからない。僕らの会社は、自動化できる範囲をどんどん増やそうとしていますが、使う側の反発があると、その改革は進んでいきません。
金山氏:でも、仕事を奪いますよね?僕は、奪われてラッキーと思うのですが(笑)。19世紀の産業革命で人間が重労働から開放されて、知識労働が増えた。いまは、その知識版がでてきた時代だと捉えています。人間はより知的な業務や、余暇に時間を使えるようになったと喜べばいいだけです。
小田氏:仰る通りです。ただ、急激な変化によって抵抗を感じる人も一定数います。言葉は悪いですが、少しずつ奪うことで「人がやるべき仕事」も見えてくると考えています。道具を使いこなすのは人間なので。それを実感してもらうまでは、「AIは一緒に働く仲間だよ」と、わかってもらう施策が重要です。
たとえばカラクリのお客様には、AIチャットボット導入と同時にぬいぐるみを贈っています。AIを見える化することで、わからない敵対感情をなくして協力してもらうという狙いです。
福田氏:見える化してあげることが、移行期には必要なのかもしれませんね。
手足を動かしてないと仕事をしている感覚がないという人は多い。仕事がなくなるといわれた瞬間に揺さぶられてしまうので、緩やかな変化が必要となってくる。
金山氏:カラクリさんを導入した企業の中で、「デジタル化に成功したが、CEは落ちた」という事例はありますか?
小田氏:いまのところはないですね。極端な導入のされ方だと、あり得る話ですが、使い方を間違えないようにしたら、そういうことは起こらないと考えています。
CEを高めるためには、「結果」だけを追求する企業体質が必要
友澤氏:先ほども話題になりましたが、企業人がやるパターンは、「すごい企画だす→頑張って説得→時間をかけて周りを巻き込む」という進め方が、王道でした。
DXは技術を使って変革することだから、小さく生んで大きく育てる、つまりクイックインで進めていくことが重要です。わかりやすい成果をデジタルに限らず出していくことが、物事を変えていくためには大事。変えられるという実感があって初めて変えられるんです。
金山氏:仰る通りです。いろんな企業のコンディションがあるから、順応性の違いはあります。でも、今回のテーマでいうと、やることは「CEを高める」という結果がすべて。最小の労力で最大の効果を出せるように進めていかなくてはなりません。
デジタルは手段でしかないので、極端な話使わなくてもいいんです。機械が人間よりも優れていて、コストがかからない場面が増えてきている。それを混乱させているだけです。
サンタガタ氏:混乱を招いているひとつの理由として、どれだけ良いツールがあっても、仕事の回り方を変えないと、結局ツールが生きてこない。ビジネス変革をリードしていく人がいないと最終的に浸透しないのかもしれません。デジタルの変革を引っ張っていくには、どのような資質が必要でしょうか?
福田氏:包容力がある人がデジタルの本部長になって、若者にやっとけよといって、結果だけ報告させるくらいが良いかもしれません。中途半端に知っていると失敗しちゃう気がする。全部任せる、何も知らないくらいでちょうどいいんです。
DX推進できなければ、終わりを迎えるだけ。だからこそ、失敗をおそれず!
友澤氏:DXを推進する人材は、意外とチャランポランのほうが良いと思っています(笑)。経営会議に企画を出してボコボコにされても、「まあいいか!」となってやっちゃうくらいのほうが良い。海外でも、こういったソフトスキルが大切であるといわれています。創造性とか変化に対しての対応とか、覚悟する力とかは、意外と、気持ちの持ちようなのかなと。
サンタガタ氏:へこたれない心とか、覚悟とか。(笑)
金山氏:CRITが大事、と。精神論になっちゃいましたね。(笑)
福田氏:まずやってみるというのが大切なんですよね。CEって自分がサービス利用者になった時に、いいと思えるかです。使う側になった時に、「何があったらいいんだろうな」と試してやってみること。
友澤氏:偉そうに言ってますが、僕もまだ道半ば。DXって、どこの会社も、まだ上手くいっていることは少ないので、悩みを共感したりできる機会を作れるとよいですね。
金山氏:日本企業のDXできない問題って、英語しゃべりたいけどしゃべれない問題と同じだと思っています。日々英語をしゃべれるようになるための「行動」をとっていないだけ。うまくいかないことを前提に行動しないと、一生変わらないです。
小田氏:皆さんがおっしゃるように、まずはやってみることかなと。「ゆるい一歩から」という持論があるのですが、縮こまってしまうより、小さくやってみることが大事だと思います。世の中には無料で、簡単に使えるツールが溢れているので、そこから試すでも良いです。少しずつ変革していってもらえたら嬉しいですね。