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顔写真が並ぶ、クラウド人材管理ツール「カオナビ」。2012年のリリース以来、私たちはこのプロダクトを多くの企業さまにご提供してきました。しかし、株式会社カオナビの創業は2008年。実はこの4年の間に、「カオナビ」というプロダクトが生まれるまでのさまざまなストーリーがあったのです。
今回は、「カオナビ」が誕生するまでのストーリーをご紹介します。
プロダクトビジネスのおもしろさ、社会的意義にひかれて起業を決意
(クラウド人材管理ツール「カオナビ」)
「この世の中に、優れたプロダクトを送り出したい」――当社が提供するクラウド人材管理ツール「カオナビ」は、創業者である柳橋仁機のそんな想いから生まれました。柳橋はなぜ、「プロダクトビジネス」にこだわるようになったのか。その直接的なきっかけとなったのは、彼が創業以前に抱いていた、ある“違和感”にありました。
もともと、企業コンサルタントとしてのキャリアを積んでいた柳橋。理系の大学を卒業した後、大手コンサルティング会社に勤務していました。しかしコンサル業は、個人の能力によって如実な差がついてしまうシビアな世界です。それはたとえ会社組織に属していたとしても、同じことでした。
「優秀な人間はどんどん評価されて、能力が低ければ脱落するしかない。それは当然のことなのかもしれません。でもそれなら“企業の役割”とは一体何なのかと、ふと疑問に思ったんです」(柳橋)
個人事業主として仕事をしている場合は、人によって大きな差が出てしまうのも仕方ないかもしれません。でも同じ企業の名刺をもって仕事しているにも関わらず、それと同じことが起きてしまう。それなら企業として存在する意味がないのではないか――? その違和感を解決する手段として、柳橋がたどりついたひとつの答えが「プロダクトビジネス」だったのです。
「企業として、なにかひとつの商品やサービスが軸にあれば、一人ひとりの能力に合わせてさまざまな役割を担ってもらうことができます。個人の能力によって極端な差がつくことなく、社員全員が相応の給料をもらい、安定した生活を送れること。それを実現することこそが企業としての役割であり、社会的意義も高いのではないかと思っていたんです」(柳橋)
さらに柳橋は、優れたプロダクトを生み出すことができれば、自分の身の回りだけではなく、より多くの人たちに喜んでもらえるのではないかと考えるようになります。当時、日本で発売されたゲーム機が、世界中の子どもたちを楽しませていたように。
次第にプロダクトビジネスのおもしろさに強く惹かれていった柳橋は、自らの想いを実現するために、起業への道を選んだのです。
「2社目に勤めた会社は経営者との距離が近く、自社サービスをゼロからはじめることの楽しさややりがいを、目の前で体感できたのも大きかったですね。それを間近で見ているうち、勝手に“自分はゼロからはじめたことがないコンプレックス”を抱くようになってしまって(笑)自分もドラマチックな体験をしたい、起業してプロダクトビジネスをやりたい、と考えるようになりました」(柳橋)
こうして柳橋は2008年に独立し、意気揚々と会社を立ち上げました。しかしこの会社に「カオナビ」という名前がつくまでには、実に4年の月日を要することになるのです。
受託業務を通して知った、多くの企業が悩む人材マネジメントの課題
( ようやくプロダクトの種を見つけた頃の事業企画書。50ページにも及んだ )
創業した当時、柳橋はまだ具体的な事業内容を決めていませんでした。意気込んで起業したものの、なかなか「これだ!」というプロダクトのアイデアに出会えない時期が続きます。
でも会社を離れてしまったからには、生活の糧を稼がなければなりません。柳橋は結局、個人でコンサルタント業を請け負ったり、システムの受託業務などを行いながら、しばらく悶々とした日々を過ごすことになりました。
「小学生の頃からプログラミングをやっていたので、システムをつくること自体はできましたし、それなりに自信がありました。だからプロダクトも、すぐにできると思っていたんです。
ただ、どんなに複雑なシステムを作ることができても、それを“商品”にできるかどうかはまた別の話なんですよね。起業して、それを嫌というほど痛感しました」(柳橋)
そうしてプロダクトの種を探す毎日が3年ほど続いた、2011年のある日のこと。柳橋のもとへ、いつものようにシステムの制作依頼が舞い込みます。「社員の顔を表示できて、その写真を自由に並べ替えられるシステムを作れないか」――。
「その依頼を受けたときは、正直なところ、その目的も用途もよくわかりませんでした。システムを作るのは簡単そうだな、という程度の認識で引き受けたにすぎなくて。でもできあがったそのシステムを見て、ふと『少し詳しく話を聞いてみようかな』と思ったんですよね」(柳橋)
結果的にその小さな一歩が、柳橋自身を長い苦境から救い出すきっかけになりました。その「人の顔が並ぶシステム」を発注してくれたクライアントのもとへ赴いた柳橋は、思いがけないニーズに触れることになったのです。
「社員の顔と名前が一致しない。人事情報の一元管理ができていない……。そうしたクライアントの悩みを聞きながら、多くの会社が同様の課題を抱えて困っていることを知ったんです。
そこで直感的に、これは人材マネジメントシステムとして商品化できるのではないかと感じました」(柳橋)
それは柳橋がようやく掴んだ、プロダクトビジネスの“原石”にほかなりませんでした。
クラウド人材管理ツール「カオナビ」誕生、そのウラ側にあった苦悩
( 「カオナビ」リリース時のオフィス。マンションの一室からスタート )
「カオナビ」リリース時のオフィス。マンションの一室からスタートアイデアの手ごたえをつかんだ柳橋は、本格的な商品開発のため、はじめて資金調達を行うことを決意します。しかし当時の柳橋にはまだ頼れる人脈がなく、とにかくVC(ベンチャーキャピタル)に片っ端から直接電話をかけ、すげなく出資を断られる日が続きました。
しかしある出会いをきっかけに、事態は急速に動きはじめます。はじめて顔を合わせたひとりのVCの担当者が、柳橋が考案したシステムを見るなり「これは売れる」といきなり断言。驚く柳橋に対し、5,000万円の出資をその場で即決してくれたのです。
「何十社回ってもダメだったのに……最初はからかわれているんじゃないか、と思うくらい一瞬のことでした。運よく、自分たちのプロダクトを理解してくれる担当者に出会えたことに感謝しましたね」(柳橋)
資金調達に成功し、柳橋はついにクラウド人材管理ツール「カオナビ」の正式リリースにこぎつけます。念願だったプロダクトビジネスのスタート。それは創業から4年の月日が過ぎた、2012年のことでした。
ところが、そんな喜びのもつかの間。本気でプロダクト開発と向き合いはじめると同時に、調達した開発費は月に数百万単位で減るようになりました。しかもまだ、売上は思うように伸びていきません。柳橋は焦りを感じていました。
「このままキャッシュが底を打ったらどうする」――ジェットコースターに乗っているかのような日々が続き、柳橋は幾日もの眠れぬ夜を過ごすことになります。
彼がそんな毎日から一歩抜け出すためのヒントを得たのは、「カオナビ」の営業のために訪れた、とあるクライアント先でのことでした。どんなに言葉を尽くしてプロダクトのよさを説明しても、理解してくれない。興味を持ってもらえない――当時の柳橋は、その理由がわからず忸怩たる想いを抱えていました。そんな気持ちがつい、お客様の前で口をついてとび出してしまったのです。「これ(システム)をパッとやったら、(顔写真が)ピッと見えるんです!」お客様はその言葉を聞き、身を乗り出してくれました。「それ、面白いね」――それまでさんざん、データベースやサーバー構成について語り、整然と論理立てて説明しても全然相手に響かなかったプロダクトの良さ。それが、その感覚的なひとことで伝わったのです。
「そのときはじめて、今まで“自分”を主語に商品を語っていたことに気づきました。考えてみれば当たり前のことなのですが、相手がどう使うものなのか、その人にとってどんな利便性があるかを伝えないといけないんですよね」(柳橋)
「商品を定義する言葉の重要性」を痛感した柳橋は、コピーライティングについて書かれた書籍などを読み漁り、「言葉」の勉強と模索を重ねました。そしてようやく、柳橋は長い迷路の終わりにたどりつくことになります。
同じ“バス”に乗った社員たちとともに、どこへでも進んでいける
(2016年の社員忘年会にて。「株式会社カオナビ」というバスに乗る社員たちとともに )
2016年の社員忘年会にて。「株式会社カオナビ」というバスに乗る社員たちとともに「顔写真が並ぶ、クラウド人材管理ツール」「『顔と名前が一致しない』を解決!」「顔写真から配置・抜擢が加速する!」――柳橋が悩み、こだわり抜いた“相手が主語”の言葉たち。それらによって、「カオナビ」の特徴や強み、メリットを理解してくれるクライアントが一気に増えはじめました。
柳橋はある日、思ったより会社のキャッシュが減っていないことに気づきます。2014年、まだわずか4人で業務に取り組んでいた頃のことでした。
「冷静に売上や利益を分析してみたところ、いつの間にか黒字転換していたことがわかったんです。そのときは本当にうれしかったですね。そしてこのプロダクトなら大丈夫、自分たちがやってきたことは間違っていなかったんだと確信することができました」(柳橋)
それからの3年間、柳橋は社員の採用に取り組み、事業の拡大に努めてきました。2016年時点で、当社の社員数は50人にまで増加しています。「カオナビ」の導入企業も年々増えており、今では業種・規模に関係なく、多数のお客さまにご利用いただいています。
ゼロから起業して、プロダクトビジネスをやる。その意志を徹底して貫き、苦境を乗り越えて「カオナビ」を生み出した柳橋ですが、社員が10名を超えた頃から、現場の業務から手を放しはじめました。現在は、より俯瞰した目線から会社の今を見つめています。
「事業の成長が見えはじめた今、何より大切なのは、社長が自分の価値観を押しつけようと躍起にならないこと。現場の細かいことは首を突っ込むところと社員に任せることの見極めが必要だと思っています。
会社というのは、いわば行き先が自由なバスと同じ。目的地を明確に決める必要はないんです。乗客である社員たちに任せていれば、遊園地でも海岸でも、きっとどこへでもたどりつけます。私にとって重要なのは目的地より、みんなが楽しく働きやすいバスにすることですから」(柳橋)
「本当はものすごく執着するタイプだし、思った通りになっていないことも実はたくさんある」と笑う柳橋。しかし彼が苦労して作り上げてきた「株式会社カオナビ」というこのバスには今、次々に新たな乗客が加わり、そのメンバーの力によって、前へと進む速度も加速しはじめています。これからも当社では、さまざまな想いが込められた私たちのプロダクト――クラウド人材管理ツール「カオナビ」を通じ、ここで働く仲間たちとともに、お客さまへより良いサービスを提供し続けていきます。
Text by PR Table