2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」。
2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標として、17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。
この持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)への取り組みが全世界に広がる中、常光も各事業部門で「2030年までに達成すべき持続可能な開発目標」を設定。取り組みを開始しました。
今回は、事業部長としてナノテク事業を牽引する田川に「ナノテク事業が目指すSDGs」について話を聞きました。
▼略歴
ナノマテリオ・エンジニアリング事業部 部長 田川 和弘
大学卒業以降、大手企業にて写真材料、デジカメ、磁気テープ、メディカルシステム等の部門で、主にマーケティングや事業企画に携わる。
同社でのキャリアを築き上げた後、常光からのオファーを受け、ナノマテリオ・エンジニアリング事業部の事業部長に就任。事業拡大のため、前線で走り続けている。
※本記事に記載の所属・内容については公開時点のものです。
SDGsは特別なことではなく「当たり前」のこと
ーーあらためて、ナノテク事業について教えてください。
ナノテク事業は、長く医療機器製品の製造・販売を生業としてきた常光が2007年に開始した事業です。
「難しいナノ分散への挑戦」をモットーに掲げ、ナノ微粒化装置(高性能超高圧ホモジナイザー)を自社で開発・製造、さらに新材料開発に関わる特許取得まで行っています。
電池、電子部品、各種塗料から、医療品・化粧品や食品まで、幅広い分野で、材料のナノ化に貢献している事業です。
ーー田川さんは常光で取り組みを始める前からSDGsに対する意識は持っていらっしゃったのでしょうか?
そうですね。特別意識していたというよりは「持続可能性を考えて仕事をする」ことに当たり前の感覚は持っていました。
私が以前働いていた企業では、常に「サステナブル」の重要性が説かれていたんです。
たとえば、1980年代のバブル真っ盛りの時代は「使い捨てブーム」。私が担当していたレンズ付フィルムも「使い捨てカメラ」と称されていました。
そんな時代から「使い捨てのものづくりは絶対に続かない」という考えを持って「リユース・リサイクル」をして無駄なものが一つも出ないように事業を推進していたんです。
現像所に出されたレンズ付きフィルムはすべて製造工場に回収して、部品を再利用して新しい製品を生み出していました。「使い捨て」と言われていても、実態は「捨てるものは一つもない」状態を保っていたんです。そうでなければ生き残れないという文化は、当時から染み付いていますね。
今回、常光でもSDGsの取り組みをすることになりますが、前職時代に得た「当たり前」の感覚をメンバーに浸透させていくことが私の使命でもあると思っています。
EV化の推進と材料開発を武器にSDGsを進めていく
ーー「SDGs17の目標」のうち、ナノテク事業として注力していく目標を教えてください。
ナノテク事業としては「7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに(以下、目標7)」「9.産業と技術革新の基盤をつくろう(以下、目標9)」、そして「13.気候変動に具体的な対策を(以下、目標13)」に力を入れていく予定です。
私たちが持つ最先端の技術力を活かし、さまざまな技術革新への貢献を目指しています。
ーー具体的にはどのような取り組みになるのでしょうか?
目標7と目標13については「EV(Electric Vehicle)化を推進し、脱炭素に貢献する」ことで実現していきたいと考えています。
EV化の推進には、現在のリチウムイオン電池よりもさらに性能の良い新型電池が必要です。
世界中の電池メーカーが電池性能の向上に挑戦する中で、注目されているのが新素材のカーボンナノチューブ(CNT)。CNTはその名の通り、炭素で構成されたチューブ型の素材です。
直径数ナノという細かい素材ですが、導電性が高く、リチウムイオン電池の性能を飛躍的に向上させます。
しかし、CNTは細かい綿毛のような構造になっており、繊維を切らずに綺麗に解さないと十分な効果を発揮しません。優れた素材である一方で、適切に処理するのが難しいわけですね。
その中で、CNTを適切に処理できる技術として、私たちの製品である「高性能超高圧ホモジナイザー」が採用され始めています。
私たちナノテク事業は営業部門と開発部門が一丸となって、CNTを処理する技術を世の中に普及させていければ、SDGs目標の達成に大きく寄与するになるでしょう。
また、「高性能超高圧ホモジナイザー」を用いた受託試験サービスを提供し、さまざまな領域の材料開発のお手伝いをすることで、SDGs目標9の実現を目指しています。
電池、電子部品、各種塗料から、医療品・化粧品や食品まで業界各社の「持続可能な製品づくり」のための材料開発に携わることも私たちにできるSDGs活動の一つです。
ーー材料開発に関しては画期的な取り組みも考えられているんですよね。
AIを研究している大学と共同で「分散コンサルAI」の取り組みを進めたいと思っています。
当然のことですが、材料開発は各社が「新しいものを生み出す」ことを目指しています。そのため、型通りの教科書はないわけですね。
私たちが行っている受託試験でも「この条件だと、こういうサンプルができるだろう」と、あらゆる条件を何度も試して、少しずつ正解に近づいていくんです。そのため、納得のいく成果を得るには半年〜1年の時間が必要になる場合があります。
仮に「この材料をこうしたい」とインプットすることで、AIが答えを出してくれるようになれば、受託試験の効率が大幅に上がって材料開発の加速が期待できます。
そのため、分散コンサルAIの開発を目指して、日々の業務の傍ら、AIに学習させるためのデータ整備もメンバーが一生懸命進めているところです。
少しずつ意識を高めていくことが目標達成につながる
ーー今後いっそう、SDGsの活動をメンバーに浸透させるために大切なことを教えてください。
「SDGsを進めていく」と言っても、人の意識というのはすぐに変わるものではありません。
地道な活動になりますが、なにごとも「伝え続ける」ことが大切になると思います。
私たちが開発に携わった材料の中には「生活になくてはならないもの」として、世界中に普及している製品に使われているものも多くあるんです。
「常光がいないと困るよね」と言ってくださる企業が増え、広く社会に貢献できていることが実感できれば、自然と「世界レベルの仕事に携われているんだ」という誇りが生まれるだろうと思います。
事業部一丸となってSDGsに取り組むためにも「なぜ今これをやるべきなのか」と一つひとつの仕事に対する意識を高めてもらえるように、常光の存在意義を伝えていきたいですね。