ERP業界NO.1のSAPジャパンで実に17年間という年月を過ごし、コンサルタントとして幾多のSAP導入プロジェクトを成功に導いてきた金栗一憲(かなぐりかずのり)。そんな金栗がINTLOOPで見つけた成し遂げたいビジョンとは。
安定志向の殻を破ることができたファーストキャリア
学生時代は土木を学んでいた金栗。就職活動のとき、明確にやりたいことも決まっていないなか、最初に入社した会社はNTTデータという超大手企業。土木とはまったく関係のないIT業界でした。
金栗 「私が NTTデータを選んだ理由はふたつで、 ITが何となく盛り上がってきていて楽しそうなのと、大手企業だったから。要は安定志向だったんですよね。そんな動機で入社しました」
就職するまでの人生のなかで触れたことのないITの世界に踏み入れた金栗が最初に任された仕事は、顧客へのIT導入プロジェクトの開発ベンダーの管理。研修やOJTもありませんでした。
金栗 「何の経験もない 1年目のペーペーが開発ベンダーの管理をやるのですから、それはうまくいかないですよね。お客様の要望を自分なりに何となく解釈して、開発ベンダーに何となく伝える。そんな感覚で開発プロジェクトを回していました」
まったく未経験の仕事を戸惑いながらも、なんとかこなしていた金栗。しかし、このままではいけないと金栗は会社にひとつの要望を出します。
金栗 「自分がうまくプロジェクトを進行できないのは、シンプルに ITがわかっていないからだと思い、 SE(システムエンジニア)をやりたいと手を上げました。会社としてもそのポジションが不足しているのもあって、運よく就くことができました」
ベンダー管理だけやっていては何も身につかないと考え、選択したSEに就くというチャレンジ。安定志向の金栗が成長志向に変わった瞬間でした。ただ金栗にとってSEの仕事は容易ではなく、大きな失敗も経験します。
金栗 「お客様のシステム環境構築を私がやっていたプロジェクトで、リリースに向けてアプリケーションをいざ動かそうとなったとき、お客様のPCがまったく動かなくなるという問題が発生しました。誰も解決策を見いだせず、総リプレイスとなり、結果的に 2000万円の損害を出してしまったんです。お客様と会社に申し訳ない気持ちでいっぱいで。当時 25歳だった私にとって、大きなショックでした」
大きな挫折でしたが、SEをやると決めたのは自分。ここで逃げ出すという選択はありませんでした。金栗はSEとして知識、経験を積み上げていきます。そしてNTTデータに入社して6年が経とうとしたころ、アーキテクチャ、要件定義、設計など一通りの業務を経験し、SE職をやり切ったと感じた金栗は転職を決意します。
金栗が興味を示した業界は、90年代後半から世の中のシステムがメインフレームからオープンシステムへ変化していくとともに、急速に拡大していくERP業界。そのERP業界の中でも、金栗が入社を決めた会社は、世界トップシェアを誇るSAP社。今まさに、日本のマーケットを急速に開拓していこうという時期でした。
SAPジャパンでSAPを極めた17年間
金栗が入社したSAPジャパンは、99年ごろからアクセンチュアやアビームコンサルティングなどとパートナー提携を進めており、日本企業へのSAP導入を急速に拡大していきました。入社してから金栗が最初に任された業務は導入企業へのSAPのインストール作業。
金栗 「入社してからは、ひたすら SAPのインストール作業をしていました。ひとりでやると 3日間かかる作業。今も当時もそうですが、 SAPの技術者は不足していて、ほとんどひとりでお客様先へ行っていました。
一番大変だったのは、インストールだけでなく、その後のバグやトラブルシューティングも対応していた際、その解決策がまだ日本に提示されておらず、常に SAPドイツ本社からの回答を待たなければいけなかったことです。英語を習得するきっかけとなったことはプラスでしたが、回答待ちの際とにかくお客様から怒られました(笑)」
慣れない英語対応やSAPの機能理解などに苦戦しながらも必死にキャッチアップしていく金栗。決して楽な道ではありませんでした。ですが、当時は基幹業務をパッケージソフトで担っていくという考え方自体画期的で、SAPの導入によってクライアントの業務効率化がなされていく過程は金栗にとってやりがいのあるものでした。
壁を乗り越えた金栗はSAPのスペシャリストとして積極的にスキルアップしていきます。
金栗 「 2年目以降はあらゆることに取り組みました。 SAPにニーズのある企業の営業開拓から導入コンサルティング、 PMO、パートナー企業へのトレーニング講師まで。 SAPに関する業務は何でも手を上げてやりました。 SAPジャパンでは何でも屋さんでしたね(笑)」
SAPジャパンで金栗は業務の制限を決めることなく、幾多の企業のSAP導入支援プロジェクトを成功に導きました。実に17年間という年月をSAPジャパンで過ごし、日本マーケット拡大に大きく貢献するのでした。
17年間過ごして完全燃焼した金栗は、SAP以外の他の領域での経験値を求めて、SAPジャパンを離れることを決めます。知人の紹介で大手コンサルティングファームのKPMGへ行くことになります。
思い通りにならない現状と向き合ったKPMG
SAP以外の仕事を求めてKPMGへの入社を決めた金栗でしたが、任された仕事はSAPのコンサルティング。新たな経験を求めて転職したはずが、想定していたものと異なるミッションに戸惑っていました。
金栗 「正直 KPMGへの転職は熟慮せずに決めました。 SAPジャパンで完全燃焼して、何か新しいことができないかを模索していたなか、運よくコンサルティングファームへ移ることができたという感じですね......。
当時はコンサルティングファームに対して、ひとつのプロダクトの制限を決めずにいろんなことができる場所だっていうイメージを持っていて。でも、実際に入社後は SAPジャパン時代と同様、 SAPプロジェクトを担当することになりました」
やりたいことができていない状況で、普通なら環境のせいだと思うのが人間。しかし、金栗はSAP以外のチャレンジを任せてもらえなかった原因は自分にあったと振り返ります。
金栗 「 SAPジャパンから転職する直前から感じていたのですが、学習への投資をあまりしていないなと。 SAPジャパンのなかでベテラン層になってきていたころ、持っている知識とスキルを切り売りしているだけだと思うようになったんです。
それではだめだと思い転職したはずなのに、 KPMGに転職してからもそのスタンスが抜けなかった。それが周囲に伝わって、 SAP以外の職を獲得できなかったんだと思います」
新しいチャレンジをさせてもらえない現状に対して自責だと捉えた金栗。とにかく自分ができることを精一杯やろうと、 KPMGでも SAPのスペシャリストとしてプロジェクトリードに奔走します。
そして、 KPMGに転職して 2年が経ったころ、金栗はある決断をします。
金栗 「いったんビジネスから離れてみようかと決めました。 20年近く走ってきて、休みつつ自分は結局何がしたいのかを見つめなおす時間を作ることにしました。 40歳を超えたいい大人の自分探しですね。そんな目的でぷー太郎を半年間やりました(笑)」
インタバールを経て、 SAPジャパン、 KPMGで培った SAP以外の経験値が得られる環境を求めて金栗は転職活動を開始。特に制限を決めず、さまざまな会社を見て回りました。
先が見えないわくわく感を求めてたどり着いた INTLOOP
新たな挑戦を求めてINTLOOPに入社した金栗。現在のミッションは会社の成長に貢献することだと考えています。
金栗 「業務をしていくなかで、 INTLOOP全体のナレッジ蓄積、マインドを改善したい気持ちが大きくなっていきました。スキルアップできていない若手から中堅に対して、何かができないかを考えています。
ゆくゆくは SAPのようなハードスキルと、プロジェクトマネジメントなどのヒューマンスキルも体系化して、組織になじませたいなと」
これまでの大手で20年間培ってきたメソッドを、今度はINTLOOPに落とし込む。それは実直にキャリアを積み重ねてきた金栗にしかできないミッションでしょう。
その一環として、INTLOOPでは「知灯り活動」が行われています。知灯り活動をひとことでいえば社員向けの無料教育のこと。
金栗 「知灯りという言葉の中の “知 ”という一文字には、知恵と知識のふたつの意味が込められており、そのふたつともに灯りをともすことが、この活動の目的なのです」
そのほかにも組織・人事コンサルタントの導入や、ラーニングピラミッドを意識した学習プログラムの設定など、金栗はさまざまな施策を行っています。
そんななかで金栗はあることを考え続けています。
金栗 「先が見える方がいいのか、それとも見えない方がいいのかを考えるべきだと思っています。たどり着きたいゴールがないと、そもそもどう一歩を踏み出していいかがわからない場合もありますし、反対に自分でゴールにたどり着かないと身につかないこともあるので」
その一方で、金栗はこれまでのキャリアを、こう振り返りました。
金栗 「先を知って安心できるという環境より、先が見えないわくわく感を求めていたように思います。以前までの職場では、やりがいはあったし、乗り越えなくてはいけない壁とかはあったんですけど、わくわくできたかって聞かれたら微妙で。
だからそういった意味で INTLOOPは自分にとってすごくいい環境だなって感じています。 SAPばかりをやってきた自分が、それ以外のチャレンジをさせてもらえている──自由度の高さは INTLOOPの大きな魅力ですね」
新たな活躍の場を見つけた金栗。 INTLOOPをよりよい会社にするための挑戦は、これからも続きます。