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吉中 慎
執行役員
Xard事業部長
神戸大学経済学部卒業後、ユーシーカードを経て2006年クレディセゾン入社。マイレージ・電子マネー・NFC・CSRなどの新規事業開発を担当。2011年、国内カード会社初の資金移動業登録を実現。大手小売、通信、航空事業者との提携ブランドプリペイド事業立ち上げなど、決済分野における実績多数。2019年9月よりインフキュリオンに参画。BaaS(Banking as a Service)プラットフォームの事業部長を経て、2022年1月より新規事業としてスタートしたXard事業を統括。
2023年10月、当社の国際ブランドカード発行プラットフォーム「Xard(エクサード)」が「2023年グッドデザイン賞」を受賞しました。オープンAPIのみで提供する無形のプロダクトでどのような「デザイン」が評価されたのか?Xardのプロダクトやビジネスモデルの特長と合わせて、Xard事業部長の吉中さんに聞きました。
XardはSaaSにカード決済機能を組み込むBtoBtoBモデル
─ Xardが「2023年度グッドデザイン賞」を受賞したことについて、ご感想をお聞かせください。
Xardのような金融のプロセシングシステム、しかも法人向けのカード発行プラットフォームに対して、その先進性、利便性、Xardを導入するパートナー企業にとっての自由度の高さを評価いただいたことを大変嬉しく思っています。継続的に機能の充実を図り、さらに良いものにしていきたいという決意がより一層強くなりました。
―以下3つの点が評価のポイントとして挙げられていました。Xardをよく知らない方に対して、Xardはどのようなプロダクトかご説明いただけますか。
デザインのポイント
1. カードの発行・管理、明細照会などの機能をオープンAPI化。自社サービスにカードを簡単に組み込める
2. 利用法人がUI/UXを自由に作りこめるサンドボックス環境を提供、新規機能構築なども自由に開発可能
3. 各種処理などユーザーアクションに対しリアルタイムでレスポンス(WebHookなど)
Xardは、企業が自社のサービスにカードによる決済機能を組み込めるようにするための「国際ブランドカード発行プラットフォーム」です。ここでいう「カード」とは、皆さんが買い物の際にお使いのクレジットカードやデビットカードなどのようなカードのことですね。Xardを使っていただくと、VISAとJCBブランドのカードを発行できるようになります。
ただ、Xardは「法人カードを持ちたい」という個々の企業が自社オリジナルの法人カードを持てるようにするわけではありません。Xardを利用しているのは、BtoB(法人向け)のWebサービスを提供するSaaS企業や金融機関などです。そうした企業が、Xard提供のオープンAPIを使うことで、自社のサービスのユーザー企業に対してカードを発行できるようになります。
そのため、BtoBtoBが我々のビジネスモデルだといえます。
―Xardで「自社サービスに決済機能を組み込む」ことでどのようなメリットがあるのでしょうか。
例えば、法人に対して経費精算システムをWebサービスとして提供しているSaaS企業があるとします。そうした経費精算や会計システムは多くの場合、一般的なカード会社が発行する法人カードと連携して利用履歴データを取り込めるようになっています。
ただ、カード会社のシステムは月1回ないし1日などのバッチ処理で動いていることも多く、利用履歴データの連携にタイムラグが発生します。また、連携されるデータの項目が限られていることもあります。
それに対して、SaaS企業側がXardを使って自社のカードを発行し、経費精算システムに組み込めば、データ連携等あらゆる処理がリアルタイムで行われるようになります。また、連携するデータの項目を含め仕様を自分たちで決めることができるので、自社の経費精算システムにフィットする形で決済機能をシームレスに組み込むことができます。
すると、その経費精算システムのユーザー企業にとっても利便性が上がったり、ユーザー企業の経理担当者の業務プロセスが改善されたりといったメリットが生まれます。そしてそれは顧客満足度の向上や顧客エンゲージメントを高めることにもつながります。
Xardが革新的だといえる3つのポイント
―カード業界で豊富な経験をお持ちの吉中さんから見て、Xardはどのような点が革新的だと思われますか。
まず、フルオープンAPIであること。リアルタイム処理であること。そして、機能が良い意味で絞り込まれていること。この3つです。1つずつ説明しますね。
1つ目のフルオープンAPIについてお話しすると、APIを提供するカードシステムはXard以外にもあります。ですが、すべての機能をAPI化しているのは、今の国内のカードシステムでは他にないと思います。カードの発行・管理、利用明細の照会、決済時のリアルタイムスイッチングまで、すべてをAPI化して導入企業に提供しており、組み込みやすいことが特長です。
この点は、Xardを導入する企業のエンジニアの方々から非常に高く評価いただいています。エンジニアの方がXardのAPI仕様書を見ると、「わくわくする」「自分たちの手でカードシステムを作っていけるという点が他にはない」と言っていただけます。CTOやエンジニアの方が支持してくださったおかげでXardの採用が決まったケースも少なくありません。コスト面よりも技術的に自由度が高い点がエンジニアの方に評価いただいているという意味で、フルオープンAPIであることの価値は高く、Xardの革新的な点だと思います。
―なるほど。「リアルタイム処理」についてはいかがでしょうか。
一般的なクレジットカードは、いわゆるバッチ処理で動いてることが多いです。バッチ処理というのは、一定期間に発生したデータトランザクションを、ある時点でまとめて一括で処理することをいいます。例えば請求額の確定や口座引き落とし、利用明細の発行、ポイントの付与などは月1回のバッチ処理ですし、カード発行も申請は常時受け付けていますがカード番号発行処理は1日1回ということが多いです。
それに対してXardは、基本的にすべての処理がリアルタイムで動いています。Xardを通じて発行されたカードが使われるとその度にリアルタイムで利用通知が来ますし、ポイントをその都度付与することも可能です。カードの発行も、API経由で発行要求に応じて即時にカード番号を発行して、バーチャルカードとしてすぐにお使いいただけます。
このようなリアルタイム処理を行うカードプロセシングシステムも、国内では他にほとんどありません。常時、ネット環境でリアルタイムにコミュニケーションを取り合う現代の企業に対するソリューションにぴったり合っているのだと思います。
―3つ目の「機能が絞り込まれている」とはどういうことなのでしょうか。
既存のカード会社のシステムは、いわゆる垂直統合型ですべての機能が揃っています。入会申し込みの受付、審査、カードの郵送。それを受け取ったユーザーが買い物をし、請求を確定して口座から引き落とす──。そうしたカード利用にまつわる一連の機能をパッケージにしているのが、これまでのカードシステムでした。
対してXardは、カード発行と取引処理に特化したシステムであり、しかもそれがすべてAPI化されている。つまり、入会申し込み受付のような機能や、本人確認や顧客管理の機能はXardにはありません。
Xardはあくまで、カードの一番コアになる部分に特化した仕組みです。ですから、導入企業の方でUI/UXも含めてシステムを作っていただく必要があります。そういう意味での「自由度の高さ」が、評価いただけているところでもあるかと思います。
―なるほど、今ご説明いただいた3つの点が、グッドデザイン賞で評価されたポイントになっているわけですね。
業界の課題に挑むSaaS企業のパートナーに
―キャッシュレス決済市場の最近の流れと、その中でXardが果たす役割について教えていただけますか。
まずBtoC領域、個人の決済市場は約300兆円という規模の中で、キャッシュレス化については現在40%近くにまで達しています。一方、約1,500兆円規模のBtoB決済市場(企業間取引)は、まだまだ銀行振り込みや紙の請求書発行などアナログによる決済関連業務が多く、キャッシュレス化による業務効率化を進める必要があります。
2023年10月にインボイス制度が開始され、また2024年1月に電子帳簿保存法の施行を控えた現段階では、Xardを導入するパートナー企業はホリゾンタル領域、つまりどの業種の企業にも共通してある、経理・会計や経費精算といった業務のデジタル化を図るSaaS企業が中心です。この領域も市場拡大の余地はまだ大きく、さらに開拓していきたいと考えています。
加えて今我々が着目しているのは、バーティカル領域です。特定の「業界」をターゲットにデジタル化を図るサービスを提供するSaaS企業ですね。例えば、建設、医療、介護、保育などの業界でいくつかのSaaS企業が急成長しています。
そうした業界にはそれぞれ特有の商習慣があり、決済だけでなくさまざまな面でデジタル化を阻んでいます。その状況を打破すべく果敢に取り組まれているSaaS企業が増えつつあり、また今後もいろいろな業界を変えるためのサービスが誕生すると思います。
そうした企業のサービスは金融とは関係ありません。例えば、受発注業務や、専門人材のソーシング、資材管理などさまざまな業務をデジタル化するものです。ただ、そうした業務プロセスの中に必ずお金の流れが入るはずです。そこに、Xardを使った法人カードの仕組みを組み込むことができれば、業界全体のキャッシュレス化が自ずと進むと考えています。
各業界で台頭しつつある企業にXardを採用していただくことで、BtoB決済市場のキャッシュレス化を進めていけたらと考えています。
新しいサービス、新しい市場を生み出す仕事
―Xardチームで働くことの魅力について教えてください。
BtoB決済市場の規模はBtoCの5倍近く大きいものと推定されていますが、現状ではまだキャッシュレス化が進んでおらず、我々からすると広大なフロンティアが目前に広がっています。
その一方、企業のDXの流れは不可逆的です。デジタル化によって業務課題や業界ごとの課題解決を支援する企業もまた、次々と現れています。そのような流れの中、我々は「イネーブラー」として決済を機能面から進化させていくことで、パートナー企業の新しいサービス、新しい市場の創造に関与していきたいと思いますし、それができる仕事だと思っています。
そうした企業のサービスがさまざまな業界でスタンダードになる時、Xardに携わる我々も、社会をより良い方向に変えられるという大きな手応えを感じています。Xardはこの分野では他に類を見ないソリューションですから、その最先端で社会の変化を体感できることは魅力だと思います。
また、技術的にも非常に高いレベルのアーキテクトを採用しているので、エンジニアにとっても貴重な経験が得られると思います。Xardを導入いただくパートナー企業は、SaaS企業が中心になりますが、社会の変革を目指している企業ばかりです。そうした企業と一緒に仕事をすることで、パートナー企業とのコミュニケーションも刺激になると思います。
―どのような方と一緒に仕事をしたいですか。応募を検討している方にメッセージをお願いします。
Xardチームでは、さまざまな「業務」や「業界」ごとの課題を解決しようとする企業に対して、「御社のサービスにこのような形でXardを組み込むと、このようなメリットがあるのでは」という提案を常日頃行っています。Xardは他にない仕組みですから、企画し、提案するソリューションそのものも自ずと社会に新しい価値をもたらすものになります。
ですから、まずは好奇心が強い方。そして「決済」に興味を持っている方と働きたいですね。業界の古い商習慣を変えて行く必要があるので、そこに興味を持ち、課題を見つけて、どう変えていくか。そして、決済そのものを変えていこうという思いを持っている方と、社会をより良くするための仕事ができたらと楽しみにしています。グッドデザイン賞を受賞した今年以上に、これからのXardを一緒に盛り上げてくださる方をお待ちしています!