こんにちは。映画を語るサロンのKKです。
最近は毎日のように猛暑で外出するのも面倒な日々ですがいかがでしょうか?
今月は『パーフェクト・ケア』の感想について投稿したいと思います。
マーラは法定後見人という裁判所に委任されて高齢者の後見人となり、判断能力が低いとされた高齢者をケアしたり、資産を管理する仕事をしていますが、実際は彼らを老人ホームに閉じ込めて財産を奪うという詐欺を合法的に行なっていました。ある日、裕福で身寄りのない老女をターゲットにしてまんまと嵌めますが、彼女を自由にしようとするマフィアにマーラが狙われることになります。
この映画の主人公は紛れもなく悪人です。
そのようなことをしないといけない正当な理由もなく、ただ自分の欲望のままに高齢者を騙して全てを奪えるだけ奪っていきます。
しかも合法で詐欺をするため法では裁けないというただの犯罪者よりよっぽど悪人です。
その方法が「成年後見人制度」というものを利用しています。
彼女は法的に判断能力が低下した高齢者の後見人に委任されて、その人の資産を管理するのですが、様々な人間と手を組み後見人が必要がない高齢者の後見人に無理やりなって財産を奪っていきます。
まず高齢者たちのかかりつけ医がマーラにターゲットを教えて、裁判所で本人がいないにもかかわらず勝手に判事から後見人に選ばれるというのが常套手段ですが、自分がいない間に勝手に自分の後見人が決められてその相手によって老人ホームに入れられるというのがあっという間に行われて、思わず自分に置き換えて考えてゾッとしました。
その老人ホームもマーラと手を組んでおり、入居者が外部と連絡が取らないように携帯を没収し、使用するには後見人であるマーラの許可が必要となります。もちろん彼女は使用の許可など与えないし、施設側に抗議をすると無理やり鎮静剤を打たれて日常的に意識が混濁とするようになってしまいます。
全てが合法的なため彼女を捕まえることはできません。その完璧な手法での詐欺はいっそ清々しいです。
同じようなクライム映画として以前「オーシャンズ8」とは全く違ったもので、こちらは多くの被害者を出していますが厳密には犯罪ではありません。
明らかに悪人であるマーラですが、ある女性をカモにすると彼女が危機に陥りますが、そこからが彼女本来の貪欲さが一層現れて面白くなります。
この映画で気になった点はストーリーの中で主人公と対決するのがほとんど男性ということろです。物語の冒頭で自分の母親が後見人によって勝手に老人ホームに入れられて母親と会うことすらできないと判事に訴える男性がいますが、マーラは理論的にその男性に母親の面倒を見る能力はないと反論して判事は男性の訴えを却下します。その後、男性はマーラに対して暴言を吐きますが、彼女は逆に脅し返しました。他にも彼女を狙うマフィアのボスやその手下の弁護士など男性と対峙することが多いです。
背景は全く明かされていないですが、主人公のマーラは明らかに男性という存在そのものに対して敵意を持っており、その男性に対して屈しないという不屈な意志が描かれます。
女性という性別は「優しい」というパブリックイメージを持たれがちというものを利用して、あえて女性である主人公が悪人となり余計に強い嫌悪感を観客に与えるのでないかと考えました。
この映画の面白いところは悪人である主人公が裁かれる話なのではなく、また別の悪人との対決を描いているところだと思いました。倫理観がない主人公が倫理観がないマフィアと対決するのをハラハラしながら見ていて、どちらが勝っても清々しさはないなと同時に思いました。ここまで振り切った悪役が主人公の映画を見たことがないので、ある意味新鮮な作品でした。