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ユーザー視点と事業視点での伴走を。日本初の夫婦向け家計簿・貯金アプリ「OsidOri」ができるまで

「プロダクト作りだけでなく、グロースの土台まで整えてくださったことが印象に残っています」

ミレニアル世代の夫婦向け家計簿管理アプリ「OsidOri」を提供する、株式会社OsidOriの代表宮本敬史さんは、プロジェクトをこう振り返ります。rootはOsidOriのリリースに向け、コア機能の整理からユーザー体験の設計、デザインに至るまでを一貫して伴走してきました。

今回は、OsidOri代表の宮本敬史さん、取締役の中山知則さん、rootの古里、手塚の4名で、そのプロセスを振り返りました。

依頼の決め手は、ふわっとしたアイデアの「くみとり力」

宮本さん:OsidOriは夫婦と個人の支出管理を一緒に管理できる、家計簿・貯金アプリです。共働きでお金の会話がなかなかできない、夫婦で財布を分けているために家庭全体の支出が見えないなど、夫婦の家計に関する困りごとを解決するために生まれました。

夫婦の家計口座や子供の口座、生命保険の支払額などは共通の画面で、個人の貯金やクレジットカードの使用額などは個人の画面で一元管理できる機能を有しています。

中山さん:会社自体、2018年に立ち上げたばかりのスタートアップで、まだ社内にデザイナーを抱えていませんでした。プロダクト開発にあたり、アイデアの整理からプロダクトへの落とし込みまで、一貫して担っていただけるデザイン会社を探していたんです。そこで、前職の知り合いに紹介いただいたのがrootさんでした。

古里:当時はまだ、プロトタイプも粗々でほぼアイデアの状態でしたね。アイデアの検証は入念にされていましたが、形にするのはこれからというフェーズ。まずは、我々がこれまで手がけた案件をご紹介しつつ、rootならどういったプロセスで進めていくかをお伝えさせていただきました。

宮本さん:課題と市場規模とサービスの概要だけをお伝えしたのに、サービスがPMFする上では何がコア機能になるかなどをご提案くださいましたね。

あの対話の中で、rootさんであればゼロからでもともにプロダクトの成長まで伴走いただけそうだと感じ、依頼を決めました。

ユーザーの利用シーンが曖昧な状態からのスタート

古里:プロジェクトが始まったのはそこから数カ月後。対象ユーザーとプロダクトのコンセプトまでが固まり、精度の上がったプロトタイプまでできた状態でしたね。

宮本さん:まずは途中まで進めていた、コアの価値検証を済ませようと思ったんです。ここで、rootさんにはかなり助けていただきました。

古里:プロトタイプを使っても、ユーザーがどのようなシチュエーションやモチベーションで使っているのか想像できなかったんです。つまり、どんな体験を提供したいのかがわからなかった。そこで、プロトタイプを一旦横に置き、ユーザーの目線で一度見直してはどうかと提案させていただきました。

宮本さん:プロトタイプを作るまでには50名近くにインタビューを行なっていたため、『こんな体験を提供したい』というアイデアはたくさんありました。ただ、各機能の重要度の整理ができていなかったんです。ユーザーはどのような文脈で、どのようにアプリを使うのか——それを、いちから考え直すことにしました。

古里:体験を再整理する上では、ユーザーストーリーマッピングをおこないました。ユーザーがアプリを通じて解決したい課題を考え、解決するまでに生じるタスクを時系列で整理。解決に必要な機能を配置し、各機能の優先度を決めていきましたね。

中山さん:ストーリーマッピングのおかげで、各体験の重要度が整理されたのはもちろん、開発における優先順位も決められたのは助かりました。

また、この作業を関係者全員でおこなったことで、各々が考える“OsidOriらしさ”や“提供すべきユーザー体験”などの共通認識が生まれ、開発での手戻りもほとんどなくローンチまで進められました。

資金調達に向けた、コンセプトモック作成にも伴走を

手塚:ユーザストーリーが決まった後は、ちょうど以前から参加を予定されていたビジネスコンテストのタイミングでした。そこで、コンセプトモックの作成もサポートしましたね。

宮本さん:あのコンテストは資金調達に向けて重要なマイルストーンで、絶対に大賞を取る必要がありました。前回出場時に、提供したいサービスのイメージの訴求が弱く最終選考で落選したこともあり、その訴求は喫緊の課題でした。

そもそもOsidOriは、日本では前例のないサービス。ビジョンとビジネスモデルだけを伝えても、アウトプットや利用されるイメージがわきづらいのだと思います。そこで、rootさんにコンセプトモックの作成を依頼しました。

古里:コンテストで訴求する上で、最もわかりやすくその価値を伝えられる方法は何か。モックアップを作るにもさまざまなアプローチがあるので、そこからともに考え、アウトプットしていきましたね。

宮本さん:プロダクトづくりとは直接関係ない依頼だったにも関わらず、サポートいただけたおかげで、無事に大賞を受賞。その後の資金調達までこぎつけました。

古里:rootは、単に依頼されたロールをこなすのではなく、事業成長に貢献するには何ができるかを担うパートナーとして何ができるかを考えています。今回のモックアップ作成は、事業成長という観点では、間違いなく必要なもの。私たちが価値を発揮すべき仕事の一つですから。

難航した、新しい概念を落とし込む設計

古里:コンテスト後は、実際の開発に着手。まずは、ユーザーストーリーマッピングに沿い、あらためてプロトタイプの作成に入りました。

OsidOriは「夫婦の支出」と「個人の支出」、「個人の支出だけど夫婦のために使うお金」の3つの要素があります。プロトタイプを設計するうえでは、これらを3画面と2画面どちらで構成するかが迷いどころでした。

手塚:3画面の場合、それぞれの情報は分けられますが、情報量一つの画面に表示する情報量とユーザーの手間は増える。一方、2画面の場合、「個人の支出だけど夫婦のために使うお金」の見せ方が難しい。協議の結果、ユーザーの負荷を考慮し、2画面にしつつデザインで三つの要素をわかりやすくする形を選びました。

中山さん:当初は苦労しましたね。作ったプロトタイプをユーザーに使ってもらうと「ボタンの意味がわからない」、「ワンタップで切り替えられると自分の支出が見られている気がして不安」など、さまざまな課題が見えてきました。そうした課題一つひとつと向き合いながら、なんとか形にしていきましたね。

「信頼感」とは何か。言葉の定義から始めたビジュアルデザイン

古里:プロトタイプで設計が固まった後は、ビジュアルデザインに着手。ここではチームメンバー全員の中で『OsidOriらしさ』のすりあわせが肝になりましたね。

手塚:まず、rootでは参考にしたいアプリのビジュアルテイストマッピングした表を作成。どの方向性のテイストがOsidOriにマッチしそうかを提案させていただきました。ただ、この表で配置したビジュアルイメージの印象がOsidOriのお二人とはずれていたんです

例えば、rootは『ぼんやり』寄りの例として配置したあるサービスを、OsidOriさんは『スカッと』としていると考えていらっしゃった。そこで、他社アプリを基準とするのではなく、どのようなイメージを想起させたいかの言語化と、言葉に対するイメージのすり合わせに切り替えたんです。

中山さん:OsidOriに抱いて欲しいイメージをキーワードとして挙げましたね。

古里:そこで上がったのが、お金を扱うサービスに欠かせない『信頼感』、夫婦で使うサービスだからこその『親近感』、トレンドを取り入れ時流を反映した『エッジ』の3つでした。ただ、各々の言葉に対するイメージをすり合わせなければ、デザインはつくれません。そこで、これらのキーワードに対するイメージを全員が分解。それぞれの言葉から連想される形容詞や類語を付箋に書き出して、グルーピングし、共通認識を作っていきました。

中山さん:いざ、別の言葉で表してみると、各メンバーが考える言葉のイメージがわりと違うんですよね。ビジュアルに落とし込む前にOsidOriの肝となるキーワードを定義できたのは、デザイン以外の意味でもよい体験になりました。

古里:最終的には、『信頼感』がユーザーにもっとも与えたいイメージとお伺いしたので、それをベースに3パターンのデザインを制作。『信頼感』だけを表したもの、『信頼感』に『親近感』を加えたもの、さらに『エッジ』を加えたものを出し、ビジュアルに落とした状態で議論を重ねました。

宮本さん:各要素が、なぜその色やデザインなのか、一度言語化していたことで納得感もあり、摺り合わせもしやすかったです。「夫婦の貯金額の画面は目標を達成できるようポジティブさが欲しいからエッジを足しましょう」といったオーダーができるので、コミュニケーションコストも低く進められましたね。結果的には、『信頼感』をベースにしたデザインで仕上げていただき、開発を経て、無事8月にローンチを迎えられました。

印象的だった「事業成長」と「ユーザー」に向き合う姿勢

宮本さん:プロジェクトを振り返ると、プロダクトを作りきることをゴールにせず、今後の成長も見越して進めていただいたことが印象に残っています。

ユーザーストーリーを整理したおかげで、開発の優先順位をつけられましたし、ビジュアルイメージを言語化したことで、アプリ以外のアウトプットのトンマナにも反映できますし、今後社内にデザイナーを置いた際も、スムーズにコミュニケーションできそうです。

中山さん:それでいうと、ユーザー視点を常に担保できたことは、rootさんとご一緒できたことによる大きな成果だと思っています。ユーザーストーリーがないとサービスは提供側の自分本位になってしまいますので。

クライアントの要望をそのまま形にするのではなく、エンドユーザーに届けたい価値を踏まえて、議論すべき時は議論してくださった姿勢にはとても感謝しています。

古里:rootとしても、立ち上げの段階から関わるサービスのため、事業的な視点はかなり意識しました。まずはPMFできるよう、プロダクトのコアバリューとユーザーストーリーを詰め切ることは大切にしましたね。そこさえズレなければ、おそらく大幅な修正はなく、事業を伸ばしていけるだろうと信じています。

手塚:今回、無事ローンチまでたどり着きましたが、今後はどのような展開を考えているのでしょうか。

宮本さん:僕らは、ユーザーの未来の金融にもアプローチできる事業を作りたいと考えています。今の家計簿管理だけではなく、投資や年金管理などもふくめ、総合的なアプローチをしていきたい。

ただ、そこにはユーザー視点が欠かせません。多様な要素を含むからこそ、ユーザーが使う上で戸惑わないシンプルな設計は、今後も継続的に追い続けなければいけないでしょう。その際にも、rootさんと一緒に見直しながらOsidOriを成長させられたら嬉しいですね。

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