こんにちは、HiOLIの代表 西尾です。
クラフトバタースイーツの『Butters』のユニフォーム「デニムエプロン」。このエプロンを作っていらっしゃる料理家・栗原心平さんに「食」をキーワードに、共同創業者の玉井とお話を伺ってきました。
前半では「料理家が作るカッコ良いエプロン」について伺いました。
後半では、「新しいレシピが生まれるまで」をテーマにお話を伺います。
目次
- シンプルな材料で、最大限においしさを引き出すレシピ作り
- 完成した料理の味から紐解く。
- おしまいに
- ■2020年8月10日オープンのButters 新宿
シンプルな材料で、最大限においしさを引き出すレシピ作り
玉井:Buttersでは、今ある伝統的なお菓子を組み合わせて新しいおいしさを作り出す『NEW TRADITIONAL CRAFT』をコンセプトに掲げているのですが、心平さんの料理からもこの言葉と通じるものを感じていまして、心平さんのレシピが生まれるまでについてお伺いさせてください。
Buttersの最初の商品である「Craft Butter Cake」は、ガレット・ブルトンヌ、ミルクジャム、フィナンシェとパティスリーに行くとそれぞれが主役として成立したおいしいお菓子で組み合わせてできています。
*写真:ButtersのCraft Butter Cakeの断面。
玉井:心平さんのレシピも、シンプルな作り方で自分でも出来そう!と思うのに、ハーブやスパイスだけでなく、材料の組み合わせが新しくて面白い、といつもハッとさせられます。お母さまのはるみさんのレシピは、母親が作ってくれたような日本のお母さんの味だなと感じています。それに対して心平さんの料理は、シンプルな料理がベースですが香辛料やハーブや、アレンジを加えて新しい料理が生み出されていると感じます。
毎週心平さんらしい、ハッとするレシピを作ってらっしゃいますが、心平さんらしいレシピはどのように作ってらっしゃるのですか?
心平さん:実は昔と比べて料理の工程が減り、レシピ作りの考え方が変わってきています。昔はおいしいものを足していく「足し算」だったのが、今は減らしていく「引き算」になっているんです。
僕の頭には、「最低限の工程と、調味料や材料で、最大限のうまさを作る」ということがいつもあります。レシピを再現するご家庭で、たくさんの買い物が必要なく、スーパーで売っているもので作ることができる。いつもの材料なのに「こんな味になるんだ!」という驚きを作るのです。だからもし玉井さんがそう感じたのであれば、大成功!
足していけばうまいのは当たり前。だからなるべく引き算でレシピを考えています。
西尾:僕も作ってみて、思ったより必要な材料が少ないと感じました。
心平さん:よかったです。まぁこれでも多いって言われちゃう事があります。もちろんメニューによっては多くなってしまいますが、キャベツ1玉500-600gほどありますが、100gしか使わないレシピとかあると、このために1玉買う?ってなりますからね。
玉井:確かに、レシピ本を買っても、どこに売っているか分からない材料や、買っても他の料理で使わない材料もあり、1冊の中で自分で試せるレシピは限られちゃうことがあります。でも心平さんのレシピは作りやすいので、お気に入りは何度も何度も作っています。心平さんが数年前に紹介されていた「鶏のごまみぞれ鍋」は何度も何度も作りました。
心平さん:あはは、そうですね、僕のレシピで使う材料も調味料もそこらへんにあるものなので。笑 鶏肉を煮る時間などの料理のベースに気を付けると、使う材料も減っていくのです。
だから「鶏肉の鍋」はレシピがたくさんあります。鶏肉が入っているから鶏の味ですが、ベースから作るわけではないので色々な食材を組み合わせて作ることができます。だから皆さんがどんな味か分かるように、味が1番強く出る食材をレシピ名に入れています。
西尾:僕たちも、アイスクリームは極力素材を増やさぬようシンプルレシピづくりを心がけています。一般的にアイスクリームのレシピは卵を加えることでコクを高めリッチな味わいに仕立てますが、僕たちは素材の良さを引き立てるためにあえて卵を入れないんです。
*写真:一般的に卵を入れてコクを出すチョコレートアイスクリームも、HiO ICE CREAMでは卵なしで作っています。
心平さん:職人さんは怒るかもしれませんが、料理って正解はないですからね。特に家庭料理は正解がない。家庭によって、事情も違うし好みも違う。だからみそ味が強かったり、醤油が強かったり‥‥。自分の好みにあわせて味を変えていくのが、家庭料理の正解なんじゃないかなって思います。
完成した料理の味から紐解く。
西尾:僕らは新しいお菓子を1~2年にひとつ作るペースですが、心平さんの場合は毎週レシピを生み出さなければならず、とても大変な事なんじゃないかなって想像しています。
心平さん:正直、あんまり苦労することはないです。今日の撮影は「母の日にお母さんに作ってあげたい料理」がテーマだったんですが、すぐ母に電話して「母の日は何が食べたい?」と聞きました。(*取材時は冬でした。)
母がカルパッチョが食べたいということだったので、撮影でも3種類カルパッチョを作りました。どの食材を使ったカルパッチョかは事前に決めていましたが、レシピは朝スーパーに行って決めました。
西尾:そんなパパっと出来てしまうなんて驚きです!材料の組み合わせはどうやって考えるんですか?ちなみに僕は、エクセルで素材×素材みたいなのを100個くらい羅列してアイディアを膨らませていることが多いです。
心平さん:量を出していくんですね。僕は全く逆です。「こういう味がいいな」という料理の完成形をイメージして紐解いていきます。例えばマグロのカルパッチョだったら、「ワサビ醤油」は普通過ぎるし、「塩とオリーブオイル」だとおいしいけど誰でも思いつく。だったら少し甘いタレにして、ちょっとだけ花椒を効かせてみたらワサビにあう。そしたら今度は土気が欲しい。
最初に「甘いマグロのカルパッチョ」にしようと決めて、そこから逆算して薬味は何をいれる?土の匂いを入れたらどうなる?と後ろに下がっていくイメージです。
玉井:最近出された心平さんのレシピ本「たまごはん」をみたら、「クスクス」を使ったレシピがありましたが、卵にクスクスって使ったことがなく、これもまたハッとしました。レシピを見ただけで、「これはおいしい!」と思うのに、自分ではなかなか思いつかないものが多いです。「たまごはん」など料理本でも、「料理の完成形」から作るアプローチで作ってらっしゃるんですか?
心平さん:そうですね、完成形をイメージしてレシピを作ります。「栗原心平のたまごはん」(山と溪谷社)では、最低でも40はレシピが必要だったので、全部レシピを書き出し、撮影当日に初めて作ってみるんです。
西尾:それはすごい!完成形から作っているからこそ出来る技ですね!ちなみに、心平さんの中で、マイブームのようなレシピのトレンドはありますか?それともだいぶテイストは定まってますか?
心平さん:ちょうど今悩んでいるんです。笑 僕はイタリアンも中華も作っているのでなんでもできると思われているので、僕のテイストとして和洋中関係ないレシピを作っていく時期が来たと思ってます。
西尾:なるほど、自分のテイストやプレースタイルを考える時期ってありますよね。でも心平さんのレシピからは、すでに心平さんらしいスタイルを感じています。古き良き伝統的なレシピに、香辛料やハーブで風味と驚きがプラスされていて、僕たちの「Butters」のお菓子と同じ、新しいおいしさを追求しているように思います。
おしまいに
栗原さん、素敵なお話をありがとうございました。
同じ「食」を追求する栗原さんの作ったデニムエプロンは、お菓子を作り上げてきたパティシエや製造現場の想いと重なります。古くから伝わる良いレシピを使い、新しい「おいしさ」を生み出していく。
Buttersではデニムエプロンを着て、皆さんにお菓子を届けてまいります。店頭へお越しの際は、ぜひエプロンにもご注目ください。
■2020年8月10日オープンのButters 新宿
JR新宿駅南口改札内にオープンする『Butters 新宿』では、「Craft Butter Cake」に加えて、一部の店舗で先行して販売していた岡山県蒜山(ひるぜん)高原のシングルオリジンジャージーバターを使った「Butter Candy 京飴バター」も正式に販売いたします。
Butter Candy 京飴バターは、日本一のジャージー牛の産地である岡山県蒜山の濃厚なジャージーバターを使い、京都・宇治にある岩井製菓の熟練した職人達が、昔ながらの地釜で少量ずつ時間をかけ直火で丹念に煮詰め、ひと粒ひと粒丁寧に手をかけて作りました。ジャージーバターを作る過程で生まれる脱脂粉乳も一緒に練りこむことでバターの濃厚さにミルクの甘さをほのかに感じるすっきりとした味わいに仕立てました。
新宿駅をご利用の方は、ぜひお立ち寄りください。
場所:東京都新宿区新宿3-38-1
JR新宿駅南口改札内
オープン日:2020年8月10日(月・祝)
営業時間:平日・土10時~22時 / 日・祝10時~21時
販売商品:Craft Butter Cake、Butter Candy 京飴バター