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【キャスティングディレクターズ FILE】橋本翼、20年キャスティング一筋。そのキャリアから得たもの

橋本 翼(はしもと つばさ)
高校卒業後に独立系のキャスティング会社に入社。その後2020年に株式会社エイスリー(以下エイスリー)に入社。キャスティング一筋のキャリアで、得意なキャスティングジャンルは、タレント(俳優や女優といった芸能人)全般。


2~3年続けばいいかと思い飛び込んだ業界。約20年のキャリアから感じたキャスティングのやりがい

ー キャスティングディレクターになったきっかけは何ですか。

元々、高校卒業後すぐに働きたいという思いが強くありました。たまたま父の知り合いがキャスティング会社の取締役の方で、その方が取締役を務める会社をご紹介いただいたことがきっかけです。

正直最初は「タレントに会える!」というちょっとした好奇心で、2~3年続けばいいかという気持ちで飛び込んだ業界ですが、気づけば20年、キャスティング一筋のキャリアを築いています。

ー 20年間ものめり込んでいるキャスティング。仕事にやりがいを感じる瞬間はどんな時でしたか。

入社当時は、企業のプロモーション手段といえばテレビCMが主流で、私も多くのテレビCM案件のキャスティングを担当してきました。私がキャスティングを担当したテレビCMが放映されて多くの人に見てもらえること、さらには皆さんが思わず口ずさむほど担当のテレビCMが有名になった時に、頑張ってよかったと、とてもやりがいを感じます。

中でも特に、通販系化粧品の広告イメージキャラクターに主演クラスの俳優さんをブッキングしたことは思い出深い案件です。現在もご契約を続けていただいており、仕事を通じて信頼関係を構築することができた実感があります。

キャスティングの仕事は、プロモーションを行いたい企業様とタレントさんの出会いのきっかけを作り出し、両者をつなぐ事です。プロモーション施策に合致したキャスティングを行うと、その企業様やタレントさんのブランディングイメージがいいものになります。そのようなお手伝いができるところがすごく楽しいです。


ー なるほど。目がキラキラしていますね(笑)一方で大変だった経験もあると思いますが...いかがですか。

もちろん!(笑)

タレントさんも人間であるため、ハプニングはつきものです。週刊誌やネット上でのゴシップ記事でいち早くハプニングをキャッチし、多々乗り越えてきました。

また、新人の頃には、大手飲料メーカー様の夏のテレビCMに、大量の人数の老若男女を起用する案件があり、約1000人の応募者を、1ヶ月間毎日オーディションしたことがありました。

撮影まで無事に終了し、ロケバスでキャストの方を見送った時は少し泣きましたね。

ただ、それほどまでにこだわって、たくさんのプロの方々と一つのクリエイティブ(制作物)を作り上げていくことは本当に毎日刺激を受けますし、飽きません。常に気の引き締まる思いです。



幾多のテレビCM案件実績を積み上げた先で、備えた“強み”

ー これまでの経験を経て、どういったスキルが身についてきたと感じますか。

キャスティングの仕事の基本ですが、いかなる要望でも落とし所を見つけるスキルですかね。あとは、テレビCM案件に慣れていることでしょうか。

どの業界にもその業界ならではの慣習というものがありますが、この業界にも独特の慣習があります。

事前の段取りや脚本通りの案件進行だけでなく、“肌感・温度感”のようないわゆる“ノリ”を理解していることは、お仕事をご一緒する方と円滑なコミュニケーションを行う上で、必要なスキルだと感じます。このスキルは時として出演可否にも関わってくることもあり、クライアントさんやクリエイティブディレクター・監督の要望に最大限応えるために、“ノリ”は重要です。


ー 弊社エイスリーに転職された今、特にご自身の強みと感じていることは何ですか。

キャリアを振り返ってみたときに、私の強みというのは20年という業界歴の長さ、すなわちテレビCMが主流だったころから著しい変化が起きた現代までを知っていることだと感じます。

ここ数年で、プロモーションの手法は著しく変化しています。デジタル領域において、日々新しいメディアが生まれ、そのメディアの中で発言に影響力を持つインフルエンサーと呼ばれる方が出てきています。

エイスリーはこういったデジタル領域に強いキャスティング会社であるため、テレビCMといったマスメディア案件だけでなく、最先端のプロモーションにも触れることができています。

このような環境変化の中、前職で培った古き良き業界の嗅覚を活かし、歴史ある芸能事務所様に在籍されている、テレビといったマスメディア媒体での認知度の高いタレントさんをいかに口説いて、新しいメディアとつないでいくかが、私の腕の見せ所かなと思っています。



“コミュ力おじさん”でいること、そして探究心を持つ訳

ー 普段業務を行うにあたって、大切にされていることはありますか。

何もカッコつけないで言うのであれば、誰とでも仲良くなることです。テレビCM案件は関係者の人数がとても多く、皆さんの意見をまとめて同じ方向を向くのにとても苦労します。誰とでも仲良くなることで、皆さんとの交渉や調整がとてもスムーズになるのを実感しているので、大切にしています。

職場の仲間からはコミュ力おじさんと呼ばれたり、人間力があると言ってもらえたりします。周囲に言われて気が付きましたが、とにかく人に興味があるのだと思います。例えば相手がゲーム好きで、おすすめのスマホゲームアプリを教えてくれた時は、すぐにアプリをダウンロードしてプレイし、相手との会話のきっかけにします。普段の会話の中で、相手が興味、関心がある領域を知るように心がけていますね。

また私は、代理店や芸能事務所の方とやりとりをする際、メールより電話を使うようにしていますが、これも距離を縮めたいのが理由です。電話でお互いの声を聞くと、コミュニケーションの温度感が伝わります。ただでさえ、コロナ禍で直接会う機会が減っているため、普段のひとつひとつのやりとりも距離を縮める機会になるように心がけています。

ー 橋本さんは仕事のインプットがすごいとタレコミをもらっていますが、いかがでしょうか(笑)

街中の広告、テレビCM、Web広告等、くまなくチェックしますね。YouTubeですとWebCMが見たいため、あえてプレミアム会員にはなりません。テレビではキー局はもちろん、BSまでチェックします。

それから連続ドラマ。どのクールも、第1話は全て視聴します。

ドラマであればどのようなタレントさんが出演しているのか、そして広告であればどういったタレントさんの組み合わせなのか、担当案件の競合の広告にはどのタレントさんが起用されているのかを把握するようにしています。キャスティングディレクターとして当たり前に知っておかないといけないことだと思っていますが、単純にエンタメが好き、というのもあります(笑)

ー 探究心が素晴らしいですね。橋本さんの思う“売れているキャスティングディレクター”と“そうでない人”の違いなどがあれば教えてください。

自分だけの強みを持っているかどうか、ですかね。

得意なジャンルや、信頼関係を構築した事務所があるキャスティングディレクターはやはり強いです。エイスリーは専門ジャンルに分けたチーム体制であるため、そのような方が多いです。

他の人が事務所に出演依頼をしてもNGであるのに、その方だったらOKが出るケースもしばしばあります。



ー 今後挑戦したいことはありますか。

宣伝会議、ブレーンやコマフォトといった業界誌に名前を掲載されるような、世にインパクトを与えるテレビCMキャスティングを行いたいです。

また、映画のキャスティングをしてみたいと思っています。

映画のキャスティングは経験したことがないため一度やってみたいという純粋な理由もありますが、様々な立場の方と一緒に一つのクリエイティブを生み出すチームの連帯感や達成感が好きなので、テレビCM案件よりも多くの人が関与する映画となると、今まで経験したことがないような連帯感や達成感を味わえるのではと想像します。いつ叶うかはわかりませんが、キャスティングディレクターとしての夢ですね。

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