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レコード会社の宣伝プロモーターから、ホリプロのマネージャー、デジタルガレージを経て、エイスリーを立ち上げた弊社の代表取締役 山本 直樹(やまもと なおき)。
今回は、これまでとこれからのエイスリーについて、根掘り葉掘り伺っていきます!
山本 直樹(やまもと なおき)
株式会社エイスリー 代表取締役
神戸出身。高校卒業後、ベーシストを目指して上京。音大を卒業後、パイオニアLDC(現NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン合同会社)で宣伝プロモーター、ホリプロでアーティストマネージャーを担当。その後デジタル領域に可能性を見出し、DGメディアマーケティングへ。2008年にエイスリーを設立。
メイン事業は、11の専門キャスティングユニット体制で『多ジャンル×多展開』が強みのキャスティング事業。さらに日本企業の海外でのプロモーション・海外企業の日本でのプロモーション支援、エンタメ専門総合人材事業、エンタメ専門M&A仲介事業も展開。
日本一便利なキャスティング会社であることへの追求
― 「世界の才能をつなぐ」をミッションとした経緯を伺わせてください。
10年前の第一次インフルエンサーマーケティングブーム時に、ブロガーに衝撃を受けたことがきっかけでした。今では当たり前かもしれませんが、企業プロモーションの一環として、読者モデルのような方々が、女性ファッション誌ではなくブログで発信していったのです。元アーティストマネージャーとしては、芸能事務所に所属していない主婦やOLが、企業プロモーションで価値が高まっていくのを見て、「なんだ、この現象は?」と思いました。それは非常に面白かったですね。
ただ、他社でステマ問題が起きて、ブームが一度壊滅したんです。ルール整備が一気に進んだことにより、プレーヤーは減ってしまいました。
インフルエンサーマーケティングのリスクを感じましたが、今後も、企業プロモーションにおいて、一般的には知られていない方の価値が高くなるだろうと思ったんです。
エイスリーが仲介役としてお客さまへあらゆる才能を提供できれば、便利な存在になるだろうと思い、「世界の才能をつなぐ」をミッションに掲げました。
―根本として、お客さまにとって便利な存在であることを追求していますよね。
そうです。総合キャスティング事業を始めた当時から、日本一便利なキャスティング会社になろうと思い、イメージしていました。そのために、組織をユニット制、要するに専門ごとのチームにすることと、経験者を採用しないことを決めました。
エイスリーでは、オールジャンル、さまざまな起用に対応できるよう、広告、デジタル、イベント等、11の専門ユニット体制をとっています。各ユニットは、特定のジャンルに詳しいキャスティングディレクターで構成されています。特定のジャンルを好きな人が、専門ユニットに入ってより詳しくなり、他社よりも知識のレベルを高くすることが狙いです。
キャスティング事業で専門ユニット体制を取り入れている企業は、おそらくエイスリーだけではないでしょうか。インフルエンサーやYouTuberが代表的な例ですが、新たな才能を持つ人が現れ続けると、企業側はどのような人がいるのか、どの人を起用したらいいかが、益々分からなくなると思うんです。そんな中でエイスリーが多くの知識を持っていれば、お客さまから相談したいと思ってもらえるのではと考えました。
また、経験者を採用しないことについては、一般的な価値観を持つ人を求めていたからでした。それでもって若くて、エンタメ業界に強い興味があって、コミュニケーション能力が高い人。そのような人を採用して、顧客視点に立ってもらうことを大事にしました。最初は知識もない素人集団でしたが、お客さまが大事であることや、挨拶、情報共有などを徹底していきましたね。
考えの源は、エンタメ業界とWEB業界での経験
―キャスティング会社の理想像があったとのことですが、当時キャスティング会社をどう捉えていましたか。
キャスティング会社について詳しく知っているかと言われれば、実はそんなに詳しくありません。ただエンタメ業界でいうと、すごく特殊な面白い世界だと思う一方で、業界内で完結していて、一般企業の方と接することが少なく、距離があるなと思っていました。業界を離れてから、そう感じましたね。
―山本さんがエンタメ業界から、デジタルガレージに移られたからこそ、そう思われたのでしょうか。
そうです。
そのことに限らず、デジタルガレージに移ったことは衝撃的でしたね。
― どういうところが衝撃的でしたか。
エンタメ会社と比べると、普通であることです(笑)
ミーティング時に、パソコンを置いて数値目標を見ながら話す、またホワイトボードに書くといった光景を、初めて目の当たりにした気がします(笑)エンタメ業界にいた時には、あまりそのような機会はありませんでしたから。そもそもWEB広告の知識もありませんでしたが、それ以前に働き方においてもこれほど異なるのかと驚きました。
デジタルガレージへは、WEBの勉強をしたいと思って入社したものの、最初はカカクコムの中古車買取の営業として、たった一人で全国を回りました。WEBサービスというとデジタルで事業が回っている印象を抱いていましたが、泥臭い営業があることも知りましたね。デジタルとアナログを融合させることはもともと好きでしたが、事業を回す上でそれらの融合が大切であると実感しました。
―WEBを勉強したいというのは、どのような理由であったのでしょうか。
ホリプロにいた後半からデジタルの波が来たことを受けて、同じことをそのまま継続しても駄目で、新しいことを知っているところで学ばないと生き残れないと感じたためです。
多分、エンタメ業界の中でも、音楽業界の方々が先にデジタルの波に直面したと思います。配信や着うたが始まって、CDパッケージだけでは売れない時に、mixiが出てきて…。売れ方が根本的に変わる流れの中で、デジタルの世界に突入するしかありませんでした。当時はアーティストマネージャーだったので、どうあるべきなのか、WEBメディアはどうなっていくのか、など考えざるを得なかったのです。
ホリプロにいた当時、結構チャレンジしました。社長宛にブログポータルを持つべきじゃないか、事務所側がSNSプラットフォームを持つべきじゃないかと提案をしたこともあります。今から17年前ですね。その提案が通ったとしても、結果的にどうなったかは分かりませんが、SNSは必ず活発化すると思っていました。その後、ホリプロを出て、デジタルガレージで勉強できたことは良かったと思います。
儲けよりも、面白さと便利さ重視
― キャスティング事業立ち上げ当初と今とでは、山本さんの想いに変化はありますか。
以前は会社の規模も小さく、とりあえず面白いと思うことにトライしていました。今は社員が70数名となり、経営者として会社を成長させねばならないというプレッシャーがあります。以前は自分の思いつきで動いていましたが、企業としてどうしていくのかの視点で物事を考えるようになったことが、最も変わったところです。
また、総合キャスティング事業の便利さは、ひたすら追求すべきことだと思っているので、時代の変化に合わせながら継続しつつ、さらに別の切り口での支援も始めています。
一つは人材です。
たまたま私はアルバイトからエンタメ業界に潜り込めたのですが、入りたくても入れない、入りづらくて躊躇している方がいるだろうと思います。私自身、エンタメ業界での経験は大変面白かったので、体験していただきたいという想いが強く、エンタメ業界への就職、転職を支援できればと思います。
加えて、ホリプロからデジタルガレージに移って学べたことが多かったことから、逆にデジタル領域の人材がエンタメ企業に移るのも面白いと思いますし、エンタメ業界のDXも加速していきますので重宝されると思います。
業界の入口を広げることは、エンタメ業界を志望する人の夢を叶えることにつながり、業界活性化にもつながるので、前々からトライしたいと思っていました。
もう一つはM&Aです。
私もそうでしたが、悩みを抱えたエンタメの経営者がいらっしゃると思うんです。その方々を支援するため、一つの選択肢をつくれないかと思い、エンタメ業界専門のM&A仲介を始めました。
一般社会に向けて新しい需要をつくることでエンタメ業界に貢献するのが総合キャスティングであり、それに加えて、いい人材を送り込むことやM&Aで業界の支援をしていきたいと思っています。業界に恩義を感じているので、エイスリーにしかできない支援をする、当社がつなぐという気持ちに変わってきたと思います。
―エイスリーにしかできないとの話がありましたが、それはどういう点だと感じていますか?
自画自賛で言うと、自分個人としても会社としても、根本的に私利私欲がない点だと思います。
実際、商売だけを考えると今のキャスティングサービスは提供できないと思います。数万円の案件も扱うのですが、商売で考えるとカットすると思うんです。人材紹介も商売だけを考えるとできません。手間はかかるものの儲からないことは分かっていましたから。
商売より、これは面白いんじゃないか、これは便利じゃないかという想いのもとで動くことは、他社ではなかなかできないだろうと思います。
―面白さ、便利さを追求する想いが、エイスリーの強みになっているのですね。
そうです。実際、商売を重視するとどうしてもカットすることが多くなります。「この単価以下は受けません」「このチームは儲からないからつくりません」というように。
面白さ重視・便利さ重視という根本の想いは、ずっと変わっていません。
できないと思われることを、できるようになる面白さ
―今後、会社をこうしていきたいなど、描いていることはありますか。
重複しますが、キャスティング事業の追求でいうと、変化に合わせ続けていける体制をつくらないといけないと思っています。そうでなければ、お客さまと才能ある方々をつなげないので、やり続けないといけません。
人材事業もM&A事業も、もっとお役に立てるように拡大していかないといけませんし、キャスティング・人材・M&A事業のすべてをグローバル展開したいとも考えています。タレントやクリエイターの行き来もそうですし、人材やM&Aも国をまたぐ、そういうことをできたらかっこいいなと。
国内ではできることが、海をまたいで国が変わるとやりづらいというのが面白いと思うんです。それらが当たり前にできるようになれば、また面白い。国によってハードルが異なることを習得する、できる会社になっていくことは、ワクワクしますね。
あとは、それを実行するために上場しようとしているので、上場も面白いなと思っています。
― どう面白いのでしょうか。
未知の世界だからですね。上場、ベンチャーキャピタルなどは、自分とは全く別の世界のことでした。自分のやりたいことを会社で行ってきただけなのに、突然そちらの世界に線路が乗った人生の面白さですかね。登山家でもないのに突然ヒマラヤを登りだした、そういうことが面白い。みなさんもできるんじゃないですかと言いたくてしょうがないです。
なぜなら私は学歴もなく好きなことをやってきただけ。サラリーマン時代にマネジメントの経験はありませんし、一人で会社を始めて、特段、誰かに何かを教わったこともありません。結果はどうなるか分かりませんが、私だけでなく誰であっても新たな選択ができることを言いたいと思っています。
―トライし続ければ誰であってなんだってできるということですね。
基本的に思ったことは7割叶うと思っています。思ったことを明確にして行動すれば大体実現します。
僕はフリーランスで会社を始めました。でも一人だと、思いついても会社や事業を大きくできませんし、体を壊す不安もあって、できることに限界があります。起業して6年ほど経った頃、よし!社員を採用してちゃんと会社にしよう!と思い、舵を切りました。
やってみるのがいいということですよね。やってみて、こうしたいと思えば、また次に新しいことをやる。それがいいですよね。
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*本記事に記載された内容は、2021年7月2日公開当時の情報です。その後予告なしに変更されることがあります。