今回は、HENNGEのMessaging Business Division(以下、MBD)で事業部長を務める大久保さんにお話を伺います。
MBDは、「クラウドからのメール送信を簡単に。確実に。」をコンセプトとしたクラウド型メール配信サービス「Customers Mail Cloud」を開発・販売する事業部です。
HENNGEといえば、クラウドセキュリティサービス「HENNGE One」を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実は他にもSaaSソリューションを提供しており、その一つである「Customers Mail Cloud」は 2022年から売上高2.5倍の成長を続けています。
そんな「Customers Mail Cloud」は、具体的にどのようなサービスで、お客様のどんな課題を解決しているのか? そして、今その事業に関わる面白さとは? 今回の記事では、大久保さんのお話を通じて「Customers Mail Cloud(以下、CMC)」の事業内容を徹底解剖します。
大久保 正博(おおくぼ まさひろ)
Messaging Business Division / Division Manager SIerでプログラマー、ネットワークエンジニア、ウェブアプリケーション開発など、約15年にわたる幅広い技術経験を積んだ後、2009年にHENNGE(当時HDE)に入社。クラウド型メール配信サービス「Customers Mail Cloud」の基盤開発に携わり、プロダクトオーナーとしてクラウド移行をリード。現在は事業部長として組織づくりや採用に注力する。
CMCは、中央官庁や大手企業のミッションクリティカルなメール配信を支える基盤
──CMCとはどんなプロダクトなのか、説明をお願いします。
大久保:ひと言で言えば、クラウドから簡単かつ確実にメールを送信できる、フルマネージド型のメール配信基盤を提供するSaaSです。中央官庁や数百万人規模の顧客を抱えるBtoC企業に導入いただいており、ワンタイムパスワードの送信や取引確定通知など、企業の基幹業務においてシステムが自動送信する通知メールの配信に活用されています。
近年、オンライン消費の増加や企業のDX推進に伴い、電子メールは重要なコミュニケーション手段として利用が拡大し続けています。一方で、なりすましメールを入口としたフィッシング詐欺などのリスクも高まっており、各携帯キャリアやMicrosoft、Googleなどのプロバイダーは厳しいメールセキュリティ対策を講じています。そのため利用者に確実にメールを届けるには、メールセキュリティに関する深い知識が求められます。
CMCは、そうしたセキュリティ対策を考慮し、高い到達率・高い可用性・高いセキュリティでメールを届けられるよう設計された配信基盤です。中央官庁が運営するポータルサイトやインターネットバンキングなどで利用されており、この記事を読んでいる皆さんも、知らず知らずのうちにCMCを通じて送信されたメールを日々受け取っていると思います。
──メール配信サービスとしての、CMCのポジショニングについても教えてください。
大久保:メール配信サービスには様々な用途のものがあり、整理すると次のような図になります。縦軸は「手動送信か自動送信か」、横軸は「プロモーション目的のマーケティングメールか、業務に関連するメールか」を示しています。
業務に関連する、言い換えればミッションクリティカルなメールを手動送信するサービスとしては、皆さんが日常的に利用しているMicrosoft 365やGoogle Workspaceなどのメールサービスが挙げられます。マーケティング用途で手動送信するサービスには、配配メールなどのメルマガ配信サービスが、マーケティング用途で自動送信を行うサービスには、Marketoなどのマーケティングオートメーションツールが挙げられます。
メール配信サービスと聞いて多くの人が想像するのはマーケティング用途のサービスだと思いますが、CMCの特徴は、ミッションクリティカルなメールを自動送信するためのサービスである点です。
──具体的には、どのような企業で利用されているのでしょうか?
大久保:デジタル庁や厚生労働省、文部科学省などの中央官庁をはじめ、金融、保険、教育、人材、IT、電力、ガス、運輸など幅広い業界の大手企業で導入いただいています。
DX推進により、近年は郵送からメールへの切り替えが進んでいます。例えば保険業界では、年次の契約更新通知を郵送からメールに切り替えたことで、大幅な効率化とコスト削減が実現されました。そうした背景から、CMCの導入ニーズは年々高まっています。
──メールが企業活動において重要な役割を担うようになったのですね。
大久保:そうですね。メールの到達性が、事業に大きな影響を与えるようになってきていると思います。
また企業活動だけでなく、受験の出願や結果通知などもメールで行われることが増えました。以前、高校入試のオンライン出願時に案内メールが届かなかったトラブルが大きなニュースになりましたが、メールの到達性が人生をも左右する時代になっていると言えるかもしれません。
国家レベルで警鐘が鳴らされ、ニーズが高まるメールセキュリティ領域
──今、メール事業に取り組む面白さについても教えてください。
大久保:先ほどメールの重要性の高まりについて触れましたが、特にメールセキュリティの分野では、近年ニーズが急速に高まっています。
2023年2月には、経済産業省・警察庁・総務省が連名で、クレジットカード会社などに対してフィッシング対策の強化を要請しました。その一環として、メール送信者のドメインが正当であるかを検証する「DMARC」という認証技術の導入が推奨され、多くの企業がDMARCをはじめとしたメールセキュリティ技術の導入を進めています。
──国家レベルで警鐘が鳴らされるほど、メールの安全性確保が急務となってなっているのですね。
大久保:そうなんです。こうしたセキュリティリスクに対抗し、企業や個人が安心してメールを利用できる環境を提供することには大きな社会的意義があると言え、それが今メール事業に取り組む面白さにつながると思います。
現在、受信側(生活者側)はMicrosoftやGoogleといったプラットフォーマーにシェアが集中しており、セキュリティ対応が進みやすい状況にあります。一方、送信側(企業側)には多様なシステムが存在するので、各企業がそれぞれセキュリティを強化する必要があります。CMCでは、企業向けにDMARCをはじめとした安全なメール送信の仕組みを包括的に提供することで、セキュリティ対策の強化に貢献しています。
──一方で、LINEなどの新たなコミュニケーション手段が増えるなか、「メール=古い」というイメージを持つ人もいるかもしれません。メールの将来性について、大久保さんはどうお考えですか?
大久保:CtoCの領域では確かにメールの利用は減っているかもしれませんが、標準的でオープンなコミュニケーションツールとしてのメールは、今後も他のものに代替されることはないと思います。
メールの特徴は、世界中で使われる標準的な仕組みであり、技術的にもネットワーク的にもオープンで、異なるサービス間での相互接続が容易であることです。例えばLINEとFacebook Messengerではメッセージを送り合うことはできませんが、メールは異なるサービス間でもやり取りが可能ですよね。
このオープンな性質により、ビジネス上のやり取りやサービスのアカウント認証(ID)として、メールは広く活用されています。こうした普遍的な役割を果たせるツールとして、メール以上に優れたものが今後登場する可能性はかなり低いのではないでしょうか。
次なるステージは、多チャネルに対応した次世代のメッセージング基盤への進化
──MBDでは事業拡大に伴い、採用を強化しているそうですが、どんな方にチームの仲間に加わってほしいとお考えですか?
大久保:私たちは中央官庁や大手企業のメール配信基盤を扱っており、いわば社会インフラを支える重要な役割を担っています。そのため、「ミッションクリティカルな領域で高品質なプロダクトを提供する」という使命に共感し、システム障害を絶対に起こさないという高いプロ意識を持って仕事に取り組める方に仲間に加わっていただけたら嬉しいです。
また、チームは少数精鋭で、幅広い業務に取り組める環境が整っています。事業拡大に伴いマネジメントを担っていただくポストも募集しているので、「新しい業務にチャレンジしたい」「さらなるキャリアアップを目指したい」という野心を持った方にとっては、面白い環境だと思います。
──チームのカルチャーや雰囲気についても教えてください。
大久保:CMCはパッケージソフトからSaaSへと形は変えつつも、創業以来続いている事業なので、私をはじめ開発メンバーにはシニアが多く在籍しており、HENNGE One事業部とは一味違った落ち着いた雰囲気が特徴的だと思います。
また、これはチームに限らず全社共通の文化ですが、社歴や年齢に関わらずフラットに話せる雰囲気があり、オープンなコミュニケーションが取られているのも特徴です。
──チームの今後の展望についても教えていただけますか?
大久保:今後はお客様の様々なニーズに応えるため、メールというスコープを超え、SMSやモバイル通知などのチャネルを包含した次世代のメッセージング基盤の開発にも挑戦していきたいと考えています。
そうした開発に必要な資金や人材の獲得のためにも、足元ではCMCのさらなる売上拡大を目指し、メール到達率・可用性・セキュリティの分野でより一層の品質向上に取り組んでいきます。
──最後に、HENNGEおよびMBDで働くことを検討している方々へのメッセージをお願いします。
大久保:私たちのチームには、コミュニケーションを通じて相互理解を深め、共通の目的意識を持ちながら「どうすれば事業をより良くし、成長させていけるか?」を主体的に考え、行動しているメンバーがたくさんいます。
私自身も、当事者意識を持って真剣に取り組むことで、仕事は何倍も面白くなると考えています。そのようなスタンスに共感してくださる方にはとてもフィットする環境だと思うので、少しでも興味を持ってくださった方は、ぜひ一度お話を聞きにきてもらえたら嬉しいです。
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Edit by 高野 優海
Photo by 宮本 和明