うちれぴ-おうちのレシピ帳で"がんばらない"ごはん作り
食品メーカー約30社から集めた良質なレシピが約20,000件!あなたにぴったりなレシピ・かぞくとのコミュニケーション機能で献立決めラクラク! 「うちれぴ」は、おうちのレシピ帳で"がんばらない"ごはん作りをサポートします。
https://uchirepi.app/
(表紙写真は左からサッポロホールディングス(株)濱田、河内、保坂、フラー(株)坂井、伊藤)
サッポロホールディングスが2022年7月に正式版を公開した、家族とのコミュニケーションで家事負担軽減と「食」の楽しさや喜び創出を目指すスマートフォンアプリ「うちれぴ」。さまざまな協力会社様とともにフラーはデジタルの戦略作りや実際のアプリ開発に伴走し支援を展開しています。
戦略作りやアプリ開発の裏側で、サッポロホールディングスとフラーの担当者はそれぞれどのような思いで取り組み、これまでにないものをつくるという営みを進めていったのでしょうか。両社のうちれぴ担当者が取り組みの広がりや思いとともに語りました。(敬称略、撮影時はマスクを外しました)
うちれぴの詳細はこちらから:
サッポロホールディングス株式会社
経営企画部 新規事業準備室・マネージャー
保坂 将志
2010年にサッポロビール株式会社へ、技術系新卒として入社。
静岡工場・本社での生産技術部門業務を経て、現職。2019年にサッポロビジネスコンテストに応募、
河内と組んだチームで事業化挑戦権獲得。2020年4月より現部署にて、
新規事業検討専任としてサービス・ビジネスの検討に従事。プライベートでは、3人のこどもをもつパパ。
サッポロホールディングス株式会社
経営企画部 新規事業準備室 アシスタントマネージャー
河内 隼太郎
国内電機メーカーの知財部を経て、サッポロビール株式会社に入社。
同社知財部を経て、現職。サッポログループ内で2019年に開催されたビジネスコンテストに応募し、
保坂と組んだチームで事業化挑戦権獲得。2020年4月より現部署にて、
新規事業検討専任としてサービス・ビジネスの検討に従事。プライベートでは二児の子育て奮闘中のパパ。
サッポロホールディングス株式会社
経営企画部 新規事業準備室・リーダー
濱田 結花
2011年、サッポロビール株式会社に入社。同社首都圏、東海地方での飲食店や流通チェーン向け営業部署や、
本社広報部を経て現職。現在4歳と2歳の2人の男児を持つ働くママ。
フラー株式会社
セールスグループコンサルティングユニット長シニアプロデューサー
坂井 忠之
大手福利厚生代行会社にて商品企画、通販事業の統括責任者を経て、コンサルティング会社を起業。
その後、出版会社取締役、音楽事業会社副社長、広告代理店COOを経て2019年フラーに参加。
フラーではデジタルパートナー事業のコンサルタント、プロデューサーとして従事。好きなビールは黒ラベル。
フラー株式会社
デジタルパートナーグループシニアディレクター
伊藤 裕一
ITサービス開発会社にてプロジェクトマネージャー・エンジニアとして大手通信会社アプリ開発などを担当。
ジモティー入社後にディレクターに転向し、ディレクターグループの責任者としてサービスのグロースを担当した後、
2019年にフラーに参加。現在は複数クライアントのデジタル戦略推進をサポートしつつ、
サービスの開発やグロースに従事。好きなビールは新潟限定の風味爽快ニシテ。
ーーうちれぴはどのようにして誕生したのですか?
保坂:うちれぴは2019年にサッポロホールディングスが開催したビジネスコンテストをきっかけに産声を上げました。
サッポロホールディングスの経営理念「潤いを創造し 豊かさに貢献する」を体現する、既存の事業にとらわれない新たな看板ビジネスを生み出そうと開催されたビジコンで河内と私はチームを組んで取り組み、事業化への挑戦権を獲得しました。
河内:うちれぴは「家族の食を通じて、よりあたたかい世界に」をビジョンに掲げ、「『食事に込められた思い』をつなぎ、家族ごはんに笑顔を増やす」をミッションに定めています。
日本の家族における料理の家事分担は世界的に見ても特に女性側に偏っており、結果として当初は料理が好きだった女性も嫌になってしまうといった状況があります。
本来的に食事は楽しいもののはずで、家族みんなで食卓を囲むことで、日々の生活の潤いや楽しみになるはずです。
そんな課題に対して、うちれぴをきっかけに家族みんなで料理を楽しくすることで解決しようとベータ版のウェブアプリでの実証実験を経て、2022年7月に正式版アプリをスマートフォンアプリとしてリリースしました。
参考:2022年6月22日付サッポロホールディングスニュースリリース
濱田:おかげさまでローンチから半年が経過した2022年12月時点で、ベータ版のピークに比べすでに5倍を超えるユーザー数となり、うちれぴがKPIとしていた月間利用者数(MAU)を達成することができました。
長期的にはアプリローンチから3年で100万ダウンロードを目標に掲げています。
河内:参画企業様30社、掲載レシピ2万件と、ともに増えており、コンテンツも充実してきています。今後も随時拡充していく見込みです。
保坂:現在のチームは3人体制で、私が主にアプリのサービス設計を、河内がさまざまな企業様との連携やビジネス周りを、濱田が社内コミュニケーションや広報周りを見ています。ただ、少数チームのためそれぞれの分担はゆるやかにあるものの、それぞれの業務に壁を作ることはせずに連携して取り組んでいます。
ーー今日はフラーのメンバー2人もインタビューに参加しています。それぞれどんな役割ですか?
坂井:私はアプリのビジネスサイドの伴走支援を担当しています。うちれぴのグロースをどうするのか、ビジネスとしてどう構築していくかをサポートさせていただいています。
伊藤:私はサービス設計のフラー側の全体統括としてサッポロさんに伴走しています。今年1月からはビジネスサイドの施策や取り組みに注力しつつあります。アプリの運営面も一緒に見ながら開発とビジネスの橋渡しをしている形ですね。
フラーは私たち2人に加えてディレクター、エンジニア、デザイナーによる総勢11人のチームで構成しています。
ーーフラーとはどんな経緯で出会いましたか?
河内:フラーさんに相談することになったきっかけは、フラーが手がけるアプリ分析メディア「App Ape Lab」の記事でした。
サッポロビールはモノ造りにこだわって、約140年の会社でした。それだけにデジタルプロダクトをゼロからイチにするノウハウは当然のことながら社内に蓄積はなく、手探りの試行錯誤が続いていました。
そんな矢先、ウェブでアプリに関する調査や情報を調べる中でApp Ape Labのアプリに関する記事を読み、興味を持ったことがきっかけでフラーさんに2021年1月に相談を持ちかけました。
ーー当時はどんな課題がありましたか?
河内:フラーさんに相談を持ちかけたタイミングでの一番の悩みの種は、事業可能性を実証するためにベータ版のウェブアプリを立ち上げたものの、なかなか利用者が伸びないということでした。
2020年の終わりにローンチした最初のベータ版ウェブアプリは、数カ月経ってもユーザーが集まらない・定着しない・プロモーションもうまくいかないという、今だからお話しできますがまさに惨憺たる状況でした。
サービスをどうやったら成長軌道に乗せられるか分からない一方で、会社としてのビジネスの可能性や見通しを2021年内には必ず示さなければいけないーー。そんな状態でフラーさんに相談しました。
結果として、デジタルプロダクトのいろはをフラーから学びながら、ベータ版が抱える課題を解決することができました。フラーさんと一緒に伴走する中でアプリ自体も成長軌道に乗り、うちれぴの事業化にも漕ぎ着けることができました。
ーーフラーと取り組みを一緒にやっていこうと決めた理由は何だったのでしょうか?
保坂:アプリ・デジタル領域に精通するプロフェッショナルであることに加えて、「人間としての魅力」を感じたのが大きな理由です。
合理的なデジタルのモノ創りの中でアナログで泥臭い「人間としての魅力」が重要という、嘘みたいな本当の話なのですが、ワンチームで熱意を持って取り組めるかどうかの最後の一押しとなりました。
私たちにとって、今回のアプリのようなDXを基軸としたビジネスモデルの構築や実際の開発は未知の領域です。
従って、アプリ開発というある種独特のエンジニアリングが求められる世界に詳しいこと、そしてアプリを作るだけではなくてアプリ・デジタル領域におけるサッポロにとって初めての取り組みをフォローアップして成長させる原動力になり得ることが、取り組みをご一緒できる企業の大前提となります。もちろん、フラーさんはその前提をクリアしていました。
ただ、現場でより良いモノ創りを実現し、なおかつ事業の成功につなげるためには、それに加えて「人間としての魅力」を企業や組織として持っていることが重要です。
手がけていることはデジタルの最先端ですが、その中で実際に考えて手を動かして一緒に取り組むのは他ならぬ人間だからです。
「うちれぴ」の開発・運営を担うサッポロホールディングスとフラーのメンバー
(東京・銀座のサッポロ生ビール黒ラベル THE BAR視察時に許可をいただき撮影した)
フラーさんとはベータ版ウェブアプリの改善とその先の開発を見据えたディスカッションを最初の2カ月、本当に集中して実施しました。その時に、ご一緒していたフラーさんのメンバーが魅力的な人ばかりで、人間的な魅力が非常に大きい会社なんだなと初期の取り組み段階から強く感じました。
真摯に目の前の課題に向きあい、単なる仕事としての取り組み以上に思いやりと熱意を持って取り組んでいただくフラーの皆さんの姿が、ここに至るまで一緒にやっていこうという背中を押してくれました。
坂井:保坂さんにおっしゃっていただいたように、フラーはアプリやデジタル領域における技術やデザインは当然のことながら一定水準以上の高いレベルを誇っています。
それに加えてやはり「ヒトに寄り添うデジタルを、みんなの手元に。」というミッションを掲げるフラーが、クライアント様に優しくないわけにいかないんです。
フラーが手がけるデジタルパートナー事業は、まずクライアントがお悩みになってるところを自分ごととして捉え、どう解決していくかをまず何よりも追求します。アプリを作ってお渡しして終わり、コンサルティングだけして終わりではないと常々考えながら取り組んでいたので、保坂さんのお言葉がすごく嬉しいですね。
ーーうちれぴ事業化への手応えはどんなタイミングで掴んだのですか?
河内:大きな手応えを掴んだのは2021年8月にベータ版のウェブアプリに「家族コミュニケーション機能」を実装した時でした。これは現在のアプリでも中核となっている機能で、家族みんなでその日の献立を考えたり、食べた家族が感謝を伝えたり、といった家族内での食に関するコミュニケーションを支援する機能となっています。
この機能を実装した直後から、ユーザー数が目に見えて増加して定着しました。うちれぴが市場に認められたこの事実は、会社として事業化に踏み切るにあたっての大きな判断要因となりました。
2022年7月の正式版アプリのリリースでも、ベータ版の時点でユーザーのニーズが顕在化した家族コミュニケーション機能を軸にしました。
並行して、ビジコン当初からサービスの主軸に位置付けていた在庫管理とレコメンドについてもフラーさんと一緒にユーザー体験に寄り添ったアプリの設計や手法の検討を進め、2022年12月、ついに「スマートレシート®」との連携という形にアップデートして実現できました。
参考:2022年12月21日付サッポロホールディングスニュースリリース:
参考ホームページ:
河内:そういう意味でもフラーさんと伴走してユーザーに刺さる機能として家族コミュニケーションを従来のコンセプトに加える形で実装し、当初から掲げるレシピ提案も時間軸をうまくずらしてユーザーに次々と機能を提供することで、当初から思い描いていたうちれぴのアプリとしての形に限りなく近づき、スタートラインに立てたという思いがあります。
ーーアプリ開発を実際に手掛けて見る中で気づいたことや感じたことはありますか?
保坂:アプリの作り手の意図した通りに使ってもらえるかどうかは、ローンチしてみないと分からない世界でもあり、当初の狙いとユーザーの使い方のギャップが激しい時も往々にしてあるのだなと感じています。
例えば、ビール工場の製造設備やシステムはハードの設備ということもあり、発注段階で完全に仕様が固められます。これは良質な商品を大量に生産する工場というハードを構築するというゴールを成し遂げるために必要な営みです。
一方、アプリは開発してリリースしたところがスタートであり、いわばトライアル・アンド・エラーの典型です。
一定の厳しい品質水準を満たすことを前提としながらも、ローンチした後で実際にユーザーにどう使ってもらえるのかを見てさらに改善やアップデートを柔軟かつ迅速に展開します。
これは個人としてはもちろんもそうですし、サッポロがこれまでやってきたビジネスにはない世界であり、体現して取り組んだことがある社員もいないだろうなと思います。
河内:私も同じ思いです。お客様であるアプリのユーザーは思った以上に「我々の想定通りにアプリを使ってくれるものではない」ということを実感しています。
アプリのサービスを作り、ビジネスとして成功させるためには根本的な発想を転換していかなければいけないと強く思いました。
濱田:アプリというデジタルプロダクトを作る仕事の特徴かもしれませんが、思っていたよりもオフィスに行かずにテレワーク主体で仕事が進められるのだなというのは素朴な実感としてあります。
一方で、デジタルに関わる仕事だけに生身の人との関わりが少なくなるのかなと当初は予想していましたが、オンラインを中心に社内外とのコミュニケーションが多くなっているのを感じています。コミュニケーションのハードルがデジタルによって低くなったことも大きいかもしれませんが、これは新鮮でしたね。
ーースマホ版アプリの開発で山場となるエピソードがあればぜひ教えてください。
伊藤:今振り返ると、実は大きな山場は一番最初にあったなと感じています。
うちれぴの正式版アプリの事業化が決まった2021年9月から12月にかけて、うちれぴのビジョンやミッション、ブランディング、戦略など時間をかけてあらためて言語化し直しました。
そのタイミングでリリース時期はすでに2022年7月に決まっており、本当であればすぐにでも実際のアプリ開発に着手したいと思う中、あえて時間をかけて取り組んだ形です。とにかく大変だったなと思う反面、やっぱりやってよかったなと思う大きな山場でしたね。
保坂:そうですね。徹底した言語化があるからこそ今がありますし、コンセプトなどをさまざまな講演やインタビューなど外部の発信でもぶれない軸を持ってお話をすることができるようにもなりました。
坂井:アプリを作るとなると、本当にたくさんのやりたいことが出てくるものです。アプリで解決したい課題もあるでしょうし、ユーザーに提供したい機能もたくさんあるでしょう。
でも、その中でも本当にやりたいこと、そして、アプリを通じて自分達が成し遂げたいことが何であるのかを真剣に考え、突き詰めて認識を合わせることがすごく重要なんです。実際、うちれぴの言語化にあたっても何度も合宿をするなどコミュニケーションを密にして詰めていきました。
ーーアプリの広がりとともに、レシピに止まらない価値を世の中に提供する試みも始まっていますね。
保坂:はい、1月から経済産業省の補助事業を活用し、うちれぴによる食生活改善と食品ロス削減をテーマとした大規模なPoC実証実験を開始しました。
食生活改善や食品ロスといった社会課題に対し、うちれぴがアプリで目指しているミッションとは別の観点でどんな貢献の可能性があるのか、アプローチとしてどういうことができるか検証できるのは、非常に貴重な機会だと思います。
その中で得られた知見を逆に正式版アプリに生かすことも十分できると思います。こうしてうちれぴが目指す世界に対して、さまざまな企業様や国の組織・団体が共感して、興味を持っていただいてるところはすごいことだなと思います。
伊藤:こうしたSDGsにもつながる社会課題と人々の日常との間には通常、ちょっと距離があると思います。
一方、うちれぴは毎日の料理について日常的に使うアプリであり、アプリを通じて社会課題とユーザーさんの日常をつなぎ、デジタルでいまある社会をより良くするきっかけになるんじゃないかと考えています。そういう意味でうちれぴがこの取り組みに参画する意義が大きいと感じています。
濱田:社会課題と日常をつなぐうちれぴ、まさにその通りだなと思います。
うちれぴにはさまざまなテーマにちなんだレシピをまとめて紹介する特集機能を22年9月から展開してます。その中で余りがちな野菜や食材を活用したレシピを集めた「あまらせがち野菜活用レシピ」という特集を作って配信しました。
2022年9月22日付サッポロホールディングスニュースリリース・家族と「食」の楽しさや喜びを分かち合う価値を提案「うちれぴ」の特集ページがスタートより引用
その特集のキャッチコピーとして「おうちの冷蔵庫からフードロスを考える」というワードを考案してトップに据えた時、社会課題とアプリがリンクしているとつくづく実感しました。
ーー今後どういった展開を見据えているのでしょうか?
保坂:アプリとしては当初の世界観の実現を目指しつつ、しっかりユーザーに使っていただけるサービスを作っていくというところが大事だと考えています。
一方で、当然のことながら、サッポログループとして新規事業を成功させたいという強い思いを持って取り組んでいます。サービスとしてはゼロからイチとなる部分を創出し、ここからさらに作り上げていくところだと考えています。新規事業に成功したといえる成果をフラーさんと一緒にしっかり残し、将来のサッポログループを支える事業にしたいです。
河内:フラーさんからは受発注者の枠組みを超えて、うちれぴという事業を一緒に作り上げて成功させたいと心の底から思っていることが伝わってきます。
フラーさんと伴走してきたからこそ、今のうちれぴがあります。フラーさんと一緒にチャレンジして事業を成長させていきたいです。
坂井:そう言っていただけて本当に嬉しいですね。
伊藤:うちれぴはモノ創りに止まらず、その先を行くものになるだろうなと一番最初にお話を伺った時から感じていました。
その先とはアプリだけではなく、“事業を創る”ということです。
これはものすごくチャレンジングなことです。単純に要件通りのモノを完成させるのではなく、そこからビジネスとして成功する道筋をつけ、実際にユーザーに価値を提供しながら成長に向けて取り組んでいくのですから。
それだけに、これまでと同じことをやっていては立ち行きません。これまでにない発想で事業に貢献するアプリにチャレンジするのだという思いを常に持ち、「ヒトに寄り添うデジタルをみんなの手元に。」をミッションに掲げるフラーの一員としてしっかり伴走していきたいです。
うちれぴ公式ウェブサイト:
フラー公式ウェブサイト事例紹介:
なお、この記事は、フラー公式note「フラーのデジタルノート」に掲載中の記事を転載したものです。