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点の出会いが面に。成長産業の発展のために、真摯に向き合い続けることで広がった世界

(※この記事は2021年12月に公開したのものです。)

シスコシステムズからデロイトトーマツコンサルティング、楽天をわたり歩いてきた1人の女性がいる。眩しいくらいの素晴らしいキャリアを持ってフォースタートアップス(以下、フォースタ)に2018年に入社し、シニアヒューマンキャピタリスト、チューターとして活躍した後、シニアヒューマンキャピタリスト兼マネージャーを務める清水美保(Shimizu Miho)だ。自分が信じたことをコツコツとやり続ける実直さに、社内外から絶大な信頼を得る存在であり、「50年後の日本の経済を今予測されているよりも良い状態にしたい」と切に願う人物である。

ヒューマンキャピタリストは育てられる。オンボーディングをきっかけにマネージャーへ

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清水は近頃、マネージャーになった。この1年間、新たに入社したメンバー向けのオンボーディングプロジェクトでチューターを務め、育てたメンバーが早々にシニアヒューマンキャピタリストに昇格したり、成果を評価されたりと活躍してきた。今回、本人のなかでやっと機が熟し、それを会社も背中を押した形だ。以前の清水はメンバーを取りまとめる立場にはいたが、タイトルや役職ではなくビジョン共感でフォースタに参画した意識が強く、役職は望んでいなかった。

清水自身の覚醒のきっかけは、オンボーディング中だったメンバー2人が、思った以上の活躍をしてくれたことだった。清水は言う。「ヒューマンキャピタリストとは単に人を紹介するのではなく、会社の成長に何年にもわたって伴走し、支援する本当に難しい仕事です。なかなか容易になれるものではありません。でもオンボーディングを卒業して活躍するメンバーを見てきたことで、ヒューマンキャピタリストを育てることができると実感しました」。

中でもオンボーディングのメンバーの1人に、清水が2年間担当したシード期の企業を引き継いだ経験は、それまでプレイヤー思考だった清水に大きな影響を与えた。「引き継いだ企業は、起業家の方が素晴らしくて、どうにか支援したいと思っていた企業でした。しかし何人もお引き合わせしましたが、最終的に内定辞退があり、ご支援できていませんでした。ところが、引き継いだヒューマンキャピリストが、もう1名のオンボーディング中のメンバーと連携して、その企業にとって初となる支援をしてくれたのです。そのとき、1人で頑張っていたらできなかった範囲の企業支援を、ヒューマンキャピタリストが育てばできるのだと実感しました」。

ベンチャー投資が年々増加し、素晴らしいスタートアップが増える中で、組織強化のために、ヒューマンキャピタリストを育成していくしかない。清水はようやく、自分がマネージャーという立場になり、若手ヒューマンキャピタリストを育成していく意思を固めたのだ。

それまでは自分はヒューマンキャピタリストとして価値発揮すべきであり、マネジメントで価値発揮すべきと思っていなかった。しかし2人の活躍が清水の背中を押した。

マネージャーになった清水は言う。「フォースタのマネージャーはメンバー一人ひとりに対して背負っているものが大きいです。まだ仕組みやオペレーションが未完成でつくりこんでいる途中だからこそ、マネージャー次第でメンバーの未来が良くも悪くも変わるものだからです」。型がなく、自由な側面がある一方で、ゼロベースから考える必要がある難しさ。その分、やりがいも感じていることだろう。

「清水の信じた会社は強い」と社内で評判に。何年でも信じて真っ直ぐ取り組む

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▲社内のメンバーの入社歓迎会をした時の様子

清水はひとたび信じたものに対してなら、決して引かない。その美点が最大限に発揮されているのが、対企業の取り組みだ。

事例の1つは、関係値のなかったスタートアップ経営陣にアプローチし、信頼関係を築いた話。社会貢献性の高い事業を展開し、注目を集めているスタートアップA社。清水は入社直後に、A社の担当を引き継いだ。当時の窓口は人事チームで、CEOや経営陣とのリレーションはなかった。しかし、あるとき、A社にフォースタ以外の紹介から幹部人材が加入した事実を知る。

「その企業を想い続けていた中で、非常に悔しかったです。弊社には経営幹部の募集情報はありませんでした。それは社長とつながっていなかったからに他なりません。なぜなら経営幹部のポジションを出すのは経営の判断だからです。私は、社内でその企業の幹部と繋がりを持っていた人物に頼み、その経営幹部の方にご多忙のなか何とか30分だけ時間を割いていただきました」。

何とか状況を打開しようと考えた清水。当日、清水は盛りも飾りもせず、ただ愚直に「なぜ私たちは成長産業支援をするか」、「なぜ自分がヒューマンキャピタリストをやっているか」を話した。「A社を素晴らしいと思っていて、ずっと支援をしたかった」とも。その話は届いた。

「“ただのエージェントと思っていたけど、全然違う”と言っていただき、30分のお時間も後の予定を調整して1時間にしていただいたのです。その場で、フォースタのオフィス勉強会にもお越しいただけることになりました」。勉強会をきっかけに社内でA社のファンが急増し、今は経営課題を解決できるハイキャリアな方々のご支援が進んでいる状況だ。

もう1社は、近頃、包括的な採用支援契約を結んだB社。確かなプロダクトと市場シェアを持つ会社だが、当時はまだ社内での理解度が低く、共感を集められずにいた。そんな中で、清水1人がB社を信じ、約3年間コンタクトを取り続けた。

そのうちに、B社の着実な成長と大きな飛躍がニュースになり、社内で注目が集まった。そのタイミングで再度注力し、複数名のご支援も叶ったことで、B社の社長による直々の社内勉強会も実施に漕ぎ着けたのだった。

「その後、社内で支援の機運が高まりました。実際、ご推薦した方々が素晴しい活躍をしているとお言葉をいただき、ご活躍されていること、その方々が事業成長に寄与されていることが純粋に嬉しかったです」。期待をかけてもらい、過去には叶わなかった経営陣同士を巻き込んでのパートナーシップも、今は強固にしている。

何年も信じて活動し続けることは、口で言うほど簡単ではない。それをできるのが清水であり、「清水が信じる会社は強い」と社内で評される由縁である。

一朝一夕にはなれないヒューマンキャピタリスト。続けることで点の出会いが面になる

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▲「ICC FUKUOKA 2020」にて登壇者通訳を務める清水(写真左)

このように入社から約4年、清水はひたむきに、着実に歩んできた。年々、見える景色が変わる。清水は言う。「振り返ると、最低でも1年はやらないと、ヒューマンキャピタリストという仕事の価値、意義、楽しさ、深さは理解できないと思います。もちろん入社したばかりの頃も楽しかったのですが、今は、人と人とのつながり、情報と情報のつながりが、線になり、面になっていく感覚があります」。

たとえば、まだマーケットが今ほど大きくなく、ヒューマンキャピタリスト歴も浅い頃、そうそうたるキャリアの方々にお会いしたが、ニーズを満たすスタートアップにお引き合わせができないこともあった。そこから“成長産業支援していない”という危機感と悔しさから猛勉強し、引き出しを増やしていったのだとか。

「当時はただただ力不足でした。その時は精一杯で、情報提供・ご紹介してきましたが、良縁を結べなかった。それでも“おもしろい”と思ってくださった方とのご縁は後になっても切れないもので、過去にお会いした方がVC(ベンチャーキャピタル)に行き、『おもしろい起業家さんに会ったから紹介しますね』とご紹介いただいたことが複数ありました。最近、ある起業家の方とVCの方が、私のことを他の起業家の方にお話しくださり、その方からご指名をいただくなど、ご紹介の輪が広がってきたことも有難いです。最初は点での出会いが今や面になり、各方面から情報が入るので、業界全体、個社、個人への解像度も上がっています」。

そのネットワークはいつのまにか広く深いものになり、清水の、そしてフォースタの宝物になっている。清水は心から起業家を尊敬し、この会社に必要な人材はどんな人かと常に考え、その目線で個人に会う。片や個人に対しては、「この方があの会社に行ったら、きっと成長やより豊かな経験につながる」と確信を持って接し、知りうる限りのその会社の魅力を話す。その真っ直ぐな熱意が皆に響くのだろう。

「嬉しいことに、社内外で何かあると私を呼んでくれる人が少しずつですが増えました。前職は大企業で、企業の看板で仕事ができていたので、このようなつながりを意識したことはありませんでした。今は違います。本当にこの人のためになりたいという気持ちが、信頼の輪をつくる。それは数珠繋ぎになってどんどん広がり、将来にわたる財産になる。この仕事を通して得るものは計り知れません」。

50年後の日本経済を予想されているよりも良い状態にしたい。成長産業の発展に邁進するのみ

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直面している課題は、スタートアップの成長にヒューマンキャピタリストの育成が追いついていないこと。清水は言う。「素晴らしいスタートアップが増え、年々ベンチャー投資も増え、結果、有望なスタートアップも加速度的に増えています。となると、圧倒的にヒューマンキャピタリストが足りません。おこがましいけれども、ヒューマンキャピタリストが増えなければ成長産業の発展が遅れる危機感があります。ヒューマンキャピタリストをもっと増やさなければいけないと思っています」。

そのためにマネージャーにもなったが、道のりは長い。「少なくとも3年、5年とやらないと、自分が信じた企業が育つのを目の当たりにできません。その風景を見てはじめて、ヒューマンキャピタリストという仕事が理解でき、取り組み方も多様になるのではないかと思います。何しろ起業家の方が人生を賭けて取り組み、10年近くかけてやっと上場に至るのですから、そう簡単にヒューマンキャピタリストになれないのは当然です」。

またヒューマンキャピタリストを志す方については「仕事そのものが難しく、困難に多く当たるのが当たり前です。その中でも1つ1つの課題にクリアできる水準のハードルを設定して乗り越えながら、自分の成長を楽しんでほしいと考えています。そのためのチャンスボールを渡していきます。できなくてもいい、できなかったことは、次に成功するためのヒントを得たと思ってほしい。できた時には、自慢半分、還元半分で、その事例を共有して他の人のために活かしてほしい。そんなサイクルを回しながら、組織としてどんどん成長したいと思っています」。とにかく意思を持ってやり続けるしかない。

清水が目指すのは、2050年の日本経済を、予測よりベターな状態にすること。さまざまな機関の予測によると、2050年の日本のGDP順位は世界8位や9位。「それに甘んじるのではなく、子ども、孫の世代に引き継ぐ経済が少しでも豊かさをキープできるように、最大限やるだけです」。そのために、もっともレバレッジがかかる成長産業を育てる。

担当している企業のさらなる成長を目指し、伴走を続けるが、同時に次につながるシード期の企業を、尊敬できる素晴らしい起業家を見つけることも重要だ。つながった輪からの出会いのほか、清水自身も積極的に交流を広げる活動に励む。

「私は自分の時間をフォースタに投じることは、圧倒的に価値があると思っています。こんなに視座の高い方々が集まる環境は他にありません。お繋がりいただく人たちは国内トップクラスの優秀な方々だと思っています。そのような方々と仕事をするにあたって自分が成長しなくて良いわけがない。失敗することもありますが、挑戦することを辞めずに、努力し続けていきたいと思います。今の経験が5年後や10年後に響くと思っています」。

素晴らしき起業家に出会い、未知の自分にも出会う仕事。だからこの仕事はおもしろい。今度はこの意義をマネージャーとしてメンバーにも伝播させていく。

■前回清水のインタビュー
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