株式会社Finatextホールディングス | Reinvent Finance as a Service
https://hd.finatext.com/
フォースタートアップス(以下、フォースタ)では、エンジニアに特化した専門チームであるエンジニアプロデュースチームを作り、スタートアップに対してキーマンとなりうるCTO・VPoE・エンジニアのご支援をしております。
Finatextグループは、「金融を“サービス”として再発明する」をミッションに、金融サービスを展開するためのクラウドインフラとデータ解析基盤を開発、提供するホールディングスカンパニーです。中核となる株式会社Finatextのほか、ビッグデータ解析の株式会社ナウキャスト、証券ビジネスプラットフォームの株式会社スマートプラスなど計7社のグループ会社で構成されています。
金融業界の複雑なビジネスモデルや独特のシステム・法規制など、従来の金融サービスが抱える様々な課題。これらと向き合い、既存の金融機関との協業を通じてもっと暮らしに寄り添う金融サービスを実現するために、グループの持つデジタル技術とデータ解析力を活用していきます。
今回は、2020年2月にFinatext入社し、エンジニアリングマネージャーとして、この壮大な事業を支える開発組織の強化に取り組む河本公志氏に話を聞きました。優秀なエンジニアたちが自走する組織はどのようにして作られているのでしょうか。
1997年にエンジニアとしてキャリアをスタート。2000年に黎明期のヤフーに転職。2010年まで在籍し、同社の拡大を支えるキーマンの一人として活躍した。その後、グリー、マーベラスなどで手腕を発揮。マーベラスでは執行役員として、100名を超えるエンジニアの適正配置、組織活性化、開発安定化などを担った。2020年2月にFinatextに入社。
河本:シンプルにいうと開発組織の強化です。当社は今、急成長していて、水面下で動いているプロジェクトもたくさんあります。まず、手が足りなくてやりたいことができないという事態は避けたいですし、また、コンペでの競合は大手になるので、スピード感で勝負しなければいけない部分もかなりあります。そのような状況を左右するのは我々エンジニアであり、絶対に開発がボトルネックになってはいけないと考えています。事業の成長ドライブを、開発面から後押しするために、今、組織を強化しているところです。
採用や外部リソースの調達に加えて、今いるメンバーの成長支援もひっくるめた組織の強化をしています。
Finatextに至るまでの経緯も教えてもらえますか。
河本:1997年に新卒で受託を請け負う小規模ソフトハウスに入りました。その頃、普及し始めたばかりのインターネットに関わりたくて、プロバイダの事業を希望しました。丸3年携わって、自分のプロダクトくらいのつもりでいたのですが、あくまでも受託という立場に変わりはなかったため、次は、自分のプロダクトを作る会社にいきたいと思いました。その後は一貫して、プロダクトを持つ事業会社を選んでいます。
最初の転職は2000年。まだ社員100人程度だったヤフー株式会社に行き、10年以上いました。実は私の場合、経歴だけ見るとそこそこ大きな会社が並んでいるのですが、どれもまだ小さい時に入っています。そんな会社が大きくなるフェーズがいちばんワクワクします。やりがいがありますし、すごく変化を感じられます。
ヤフーには長く在籍し、いろいろなことをやらせてもらいました。ただ、どうしても10年以上いると管理職的な仕事の割合が増えてきます。少し停滞感を感じていたときに、ヤフーの後輩が役員をやっていた縁でグリー株式会社へ。ここも当初は100人程度でしたが、毎月何十人と入社していた急拡大期。どんどん大きくなるフェーズが楽しそうだなと思いました。グリーでは3年間勤務し、その次はゲーム会社の株式会社マーベラスへ転職しました。ちょうど3社が合併したタイミングで、横連携が乏しかった開発部門を1つの組織にする組織運営を主に担当していました。
河本:そうなんです、そこが楽しいですね。ゼロイチはやったことがなくて、自分にできるかわかりません。ゼロイチを超えた頃のフェーズが、一番自分には合っているのではないかと思っています。
その後、1社をはさんでFinatextへ。転職のきっかけやFinatextを選んだ理由を教えてください。
河本:積極的に転職先を探していたわけではなく、いい会社があれば話を聞いてみようという温度感のときに、フォースタさんからご紹介いただきました。いくつかの会社から内定をいただいたのですが、その中で最も馴染みがなく、わからなかったのがFintech領域。でもよくよく話を聞くと、一番可能性があって、劇的変化がありそうで、楽しそうでもありました。
前職も名の知れた企業だったので、家族はスタートアップに移ることを不安がっていました。ただ、Finatextの経営陣の考え方は地に足がついていると感じましたし、金融の将来像を書いた『BANK4.0』という本を読んで、「これは日本でも起きるに違いない、おもしろそうだ」と思って、最終的に決めました。
河本:そうですね。もちろん、証券や保険など独自のロジックや業務知識をしっかりとキャッチアップした方が、よりよいものを作れるという部分はありますが、大部分は世の中でよく使われているWebの技術がベースになっています。今までやってきたものと変わらないし、逆にこれからは新しく出てくる技術もどんどん取り入れられるのが、今のFintech領域です。昔の銀行のシステムはメインフレームやCOBOLのイメージがあり、実際、私もそう思っていましたが、それとはまったく別物です。
また、従来型の金融システム、特に銀行などはすべてをオンプレミスで持っていて、セキュリティーが厳しくて開発が遅い・制約が多いと思われていますが、そこも今は違います。当社はAWSを使って先進的なシステムを構築しつつ、セキュリティー強度はオンプレと同じかそれ以上のレベルを担保できています。柔軟でスピード感があり、一昔前のイメージとは随分と違います。まったく尻込みする必要はありません。
河本:成長があまりに速かった分、会社としては実は失敗も多くしているんです。Finatextの規模では、同じように失敗すると会社が傾いてしまうので、さすがにそれはできません。
今、心がけているのは数で勝負しないこと。Finatextは、個々のクオリティーで勝負する会社です。オールマイティというよりは、部分的にすごく尖っている人が多いので、一人ひとりと向き合ってそれぞれの強いところをできるだけ伸ばすことを意識していますね。優秀なエンジニアの層の厚みを出すために、当社は尖った強いところにフォーカスしてアサインし、組織として強さを発揮していくことを心がけています。
河本:「まとめている」とは思っていません。ちゃんと強みが出る方向にだけ向いていればいい。無理に得意でないところにあてはめることはないと思っています。
採用の時は、必ず当社の「Principle」(大切にしている価値観)を説明し、そこへの共感とカルチャーマッチ度を大事にしています。それさえ合えば、タイプが違っていても大丈夫。それぞれの尖り具合から判断して、チーム構成だけ失敗しなければ、あとはそれぞれのチームが、それぞれのスピードを出していければいいかなと。相性が大事です。だから、開発への哲学や考え方もみんな違います。1つの「当社の開発はこうだから」といったものはないし、これからもないでしょう。
当社が志向しているのはティール組織。一人ひとりが独立していて、自分で考えて動いていく組織をイメージすると、適性が合った人同士でチーム分けして、それぞれがドライブしていけることが理想です。それぞれに尖った、いろいろな方向性を向いたいろいろな考え方の人たちです。いい意味でまとめようとは思っていなくて、その人の強みが活かされるチームに配置して、自然といい形にまとまることが理想です。
河本:テックリードを目指す人と、EMを目指す人では、方向性は変わってきます。テックリードは、自分自身が技術で結果を出すのに対し、EMは、自分で結果を出すことも大事ですが、それ以上に、「いかにメンバーに成果を出させることができるか」が問われます。ポイントは、人に対してどれだけ向き合えるかだと思います。
なので、チームをリードした経験がある人なら、今後のキャリアとしては、現場において技術でリードしてもいいですし、アウトプットを出せるように人を支援してもいい。2つの方向性があると思います。
河本:はい。月に1回は30分の1on1を必ずやっています。それで足りない人は希望に応じて追加で2回目、3回目も。
1on1で意識しているのは、テンプレにしたくないということ。実際、人によって話す内容は全く違います。基本的にこちらは聞くのが役割なので相手次第です。一人ひとり、カルテのように1on1の内容を記録しているシートを作っていて、それを見ながら話していると、「先月はこんな話をしていたけど、今月は随分違うな」とか、言葉だけでなく、言葉にならないメンタルの部分も感じ取れるところがあります。1年経つと、いい意味で言っていることが全く変わっていることもあり、成長を感じます。
エンジニア同士は、Slack上でオープンにやりとりしているのですが、とはいえ、猛者のようなエンジニアばかりの場で思うように発言できない人もいます。なので、私が聞き取って、例えば全体のミーティングの場で、「こんな意見の人もいるけどどうかな」と投げかけることもあります。
経営陣にも、1on1のフィードバックをしています。必要あれば「誰々がこんなことを言っていました」と伝えますし、名前は伏せて「こういうことを言っているエンジニアが何人かいました」と伝えることも。フラットな組織なので、直接、経営陣にものを言えるエンジニアは多いのですが、中には憚って言わない人もいます。全員の話を聞ける私の立場を活かして、チーム間や経営陣などと横つなぎをするようにも心がけています。一人ひとりを知ることに加えて横つなぎするという点でも、1on1はとても大事な時間になっています。
河本:いえ、それほど複雑ではありません。当社は役割で仕事をしていないので、プロジェクトに対して足りないものを、「じゃあ誰がやろうか」とタスクでアサインするだけ。チームでいくつかプロジェクトを持つ形にもなっているので、一人のタスクが多かったら、同じチームの人が他のタスクを引き受けるとか、チーム内のシェアを徹底しているので、属人化の排除も含めてチームでうまく回っていると思います。
そもそも、会社の文化として「自分のプロダクトはこれだから、これしかやらない」的な考え方が嫌いなんです。その状態を作らないためにどうすればいいかと考えて、プロダクトベースでチームを作らず、1人の人が複数のプロダクトを兼務している状態を作っています。そうするといろいろな情報を得られて、アイデアも自由に言いやすくなる。仕事のマネジメントも、一人ひとりが主体的にやっています。
私は、チームが独立して、自立的に動くことが理想だと思っています。上から指示を出すのではなく、この目的に対してチームでこう動こうと考える。まさにティール組織の考え方です。どこまでできるかはわかりませんが、そうなるためにどうチーム分けをするかに、いちばん気を使っています。
複数のプロダクトがあって、ゼロイチのフェーズも含めていろいろ携われる点もいいですね。
河本:そうですね。とてもそう思います。
河本:グループ会社で、ビッグデータ解析を手がけるナウキャストは本当に優れた技術を持ち、今、それがようやく形になってきたところです。とはいえ、まだ粗々ではあるので、ここをしっかり固めつつ、ナウキャストの強みとFinatextのWeb系の強みをうまく融合し、プロダクトも組織ももっと強い形で価値を出していきたいと、会社としては思っています。
EMとしては、先ほど、エンジニアがボトルネックになりたくないと言いましたが、もっと前向きに、エンジニアがいるから新しい事業を始められるというくらいに、開発組織を強くしたい。
先日リリースした、デジタル保険をスピーディかつ低コストで立ち上げるパッケージソリューション『Inspire Express』は、まさにエンジニアが主導したプロダクトです。エンジニアの手をほとんど使わずにリリースできるというすごいソリューションなのですが、担当エンジニアが「毎回ほぼ同じようなサービスを作ることに開発工数を割くべきではない」と考えたのが発端です。彼をはじめ、保険サービスを担当するエンジニアたちには保険事業の経験はありません。にもかかわらず、ゼロベースから始めて、あれだけ深く保険サービスを理解して作ってしまうとは、本当にすごいことだと思います。ほかにもすごいと思うエンジニアは多く、一緒に仕事をしていて楽しいです。
河本:何でも経験できること。というと大雑把すぎますが、組織や開発スタイルがきっちり固まっている会社だと、やはりやれることは限定的になってしまいます。スタートアップは何でもやれる。逆に言うと何でもやらなくてはいけないのですが、それがいい経験になると思います。
1つのシステムに携わる範囲も、「開発のここの部分だけ」というのではなく、高い視座で見て、時間軸的にも広く様々なものに関われます。開発工程も技術領域も、広い経験ができる点はスタートアップのいいところ。
スタートアップの開発のスピード感も経験しておくといいですね。怖いものなしになります。そのスピード感も、単に納期に追われているのではなく、プロダクトの仕上がりと全体像が見えるので、スピードは求められるけれども、やっている実感もすごくあります。壮大なプロダクトのほんの一機能の一部分の締め切りに追われているのでは、多分、やっていて辛いと思いますが、そうではない。「自分が動かしている手触り感」もスタートアップならの良さだと思います。
ありがとうございます。Finatextさんの素晴らしい組織運営の様子がよくわかりました。これからもどんどん素敵な組織になることを楽しみにしています。