政府は2021年12月21日、「こども家庭庁」の2023年度創設を含む「こども政策の新たな推進体制に関する基本方針」(以下「基本方針」という。)を閣議決定しました。私たちフローレンスは、常にこどもの最善の利益を考えてこども政策を一元的に担う「こども家庭庁」が創設されることは、 日本が「世界で最も子育てしやすい国」に転換するための大きな一歩になると期待しています。
「こども家庭庁」の創設にあたり、重要なのは「何を実施するか」です。フローレンスは、こども家庭庁において、子育て家庭へのアウトリーチ型支援や、保育・教育現場で働く際に性犯罪歴等についての証明を求める仕組み(日本版DBS)の導入等を実施すべきと訴えてきました。基本方針において、これらをこども家庭庁で担う旨が盛り込まれたことを、高く評価します。
基本方針では、今後のこども政策の基本理念として、「誰一人取り残さず、抜け落ちることのない支援」を行うこととされました。様々な事情で支援を受けられていないこどもや家庭に対し社会がセーフティネットとなることが非常に大切です。こども家庭庁が司令塔になって強力に進めていただきたいです。
フローレンスの「こども家庭庁八策」
フローレンスでは、こども家庭庁において、以下の8つの政策「こども家庭庁八策」を実施すべきと考えています。この八策の実現に向け、2022年より具体的に提言活動を実施してまいります。
第一策:ICTとアウトリーチで申請主義を打破第二策:政策ラストワンマイル問題の解決!政策セカンドトラック制の実現第三策:虐待を未然に防ぐ!虐待予防サービス制度の導入第四策:共働き家庭のためだけの保育園から「みんなの保育園」へ第五策:子どもたちをあらゆる暴力から守る仕組みを、全ての保育・教育現場に第六策:ひとり親世帯を貧困から守る!養育費の支払いの義務化、立替制度の創設第七策:未来を支える子どもたちのために財源と人員体制の確保を!こども基金の創設第八策:こども基本法など、子どもの権利を保障する法律の整備
現在、困難な環境にある家庭は自ら行政機関や地域の民間団体に助けを求めないと支援やサポートを受けることができません。この「申請主義」が主流であるため、支援につながらず取り残されている家庭が多くあります。この状況を打破するために、行政機関や民間団体の側から支援が必要である家庭を探し適切に関わっていくアウトリーチを行うことが重要です。
支援者が、対面だけではなく、メッセージアプリ等デジタルツールを活用して家庭とコミュニケーションをとり、定期的に家庭の状況を把握し、必要な相談や支援につなぐ取組み(デジタルソーシャルワーク)も広げていくべきです。
また、保育園を利用していない家庭は、社会との接点が限られて孤立しがちで、児童虐待等家庭内のリスクが高まっても外からは気づけないことが課題です。現在、フルタイムの共働き家庭以外の家庭は、保育園を殆ど利用できません。
今後の保育園は、どのような家庭でも、週1日~週6日まで、その家庭に合わせた頻度で利用できる「みんなの保育園」にシフトしていくべきです。待機児童問題が解消されつつある中、こども家庭庁は、保育園を地域のセーフティネットとして位置づけ、未就学児を子育て中のすべての家庭が保育園を利用でき、孤立しない社会を実現していただきたいです。
最後に、基本方針に盛り込まれている新たなこども政策を実施するためには、質・量共に十分な人員配置と十分な予算が必須です。人員については、民間団体等の人材や、子育て経験や保育園利用経験等がある職員(特に女性職員)を多く登用することを求めます。そして、こども家庭庁こそ、子育て中であっても働きやすい職場を自ら実現し、霞が関の新たな働き方のモデル官庁になることを期待します。
「こども家庭庁八策」提言書のダウンロードはこちらhttps://florence.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/01/2201_Proposal.pdf
「こども家庭庁創設に向けた基本方針に関する声明」(全文)PDFのダウンロードはこちらhttps://florence.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/01/2201_2_Proposal.pdf