「仕事と子育ては、両立できる?」
今回のテーマは、出産後の働き方について。
話し手は、FICCで初めて産休・育休を取得した黒田洋味です。
もともとはディレクターとして活躍していた彼女。
二度の産休・育休を経て、現在はふたりの子を育てながら、京都オフィスで広報として働いています。
産休・育休をとった先輩社員がいない中、彼女はどのように自分のキャリアと向き合い、築いてきたのでしょうか。
「最初は不安でいっぱいだった」と話す黒田に、子供を育てながらの働き方、価値観の変化、そしてこれから挑戦したいことについて話を聞きました。
(インタビュー・文:土門蘭、写真:岡安いつ美)
プロフィール:
黒田洋味
1980年京都生まれ。関西外国語大学短期大学部英米学科卒。アパレルショップ店長、Web制作会社のデザイナーを経験したのち、2014年FICCにディレクターとして入社。これまで に2度産休・育休をとっており、復帰後の現在は広報を担当。FICC初のワーキングマザーとして活躍している。
「あとに続く女性陣のために道を作ればいいんだよ」
FICCに入社したのは34歳のときです。当時は結婚もしていなかったし、出産の予定もありませんでした。だけど入社半年で結婚が決まって、その2か月後には妊娠がわかって、あれよあれよと入社から1年ほどで産休に入ることになったんです。
妊娠がわかったときの気持ちはもう、ただただびっくりで。まだ転職して間もなくて何の役にも立てていない状態なのにすぐ産休に入るなんて、正直なところうしろめたいというか申し訳ないというか……。
だけど上司の事業部長に相談したら、すぐに「おめでとう!」って祝ってくれたんです。申し訳なさを感じている私に対して、「洋味さんがあとに続く女性のために道を作ればいいんだよ」って言ってくれました。それを聞いて、「そうか、私次第で今後の女性スタッフの仕事の環境づくりが決まるんだな」って気づいたんです。「それならできるだけ働きやすい方向へ持っていけるようがんばろう」と、前向きに捉えることができました。
妊娠を伝えたときには、他のメンバーも祝ってくれて、体のことを気遣ってくれたり、一緒に名前を考えてくれたり(笑)、まるで家族みたいに喜んでくれました。引き継ぎのときも嫌な顔ひとつされずに協力してもらえて、本当にありがたかったですね。
不安を払拭してくれた、上司からの提案
とは言え、育休中はもう不安だらけでした。
ひとつは、仕事から離れることで、自分だけ時が止まって置いていかれるような気がしていたこと。一方で、会社は変化して成長していっています。その中に復帰したとき、自分のできることや居場所ってあるのかなって思っていました。
もうひとつは、限られた時間でどこまでできるんだろうっていうことです。残業はできないし、子供が熱を出したら休まなくてはいけない。シミュレーションをしてみるものの、「ちゃんと働いていけるのだろうか」と育休中もずっと不安でした。前例がないので、復帰後のキャリアを具体的に思い描けなかったのも大きいと思います。
だけど、休んでいる最中に事業部長がちょくちょく相談に乗ってくれて、働き方についても提案してくれたんです。「復帰したらこんな仕事に就いてもらおうと思っているんだけど、どうかな?」って、時間の融通がききにくい中でも働きやすい仕事を提案してくれました。
たとえば、スケジュールをこちらでハンドリングできる運用の案件や、制作物の進行管理だとか。それを聞いたときには、「私の働き方のことも一緒に考えてくれているんだな」っていう安心感があり、とてもありがたかったです。その後ディレクターとして復帰して、クライアントワークを担当しました。
復帰後はもちろん大変でしたが、子供が熱を出したときには自宅でのリモートワークができたり、突然お迎えに行かなくてはいけなくなったときには時間単位で有給がとれたりするので、柔軟な働き方ができて助かっています。
周囲のスタッフも休むことに対して理解があるので、無理をしすぎなくなりました。母が倒れたら家庭がまわらなくなってしまうので、そういう風土は本当にありがたいです。
それから2人目を妊娠して、2度目の産休・育休も取得しました。2度目の復帰以降は、広報を務めています。現在は採用のためのPRを行っていて、求職者に「FICCってこんな会社ですよ」ということをアピールする仕事をしています。
「私」と「お母さん」を行き来してバランスをとっている
復帰してからは、かなり働き方が変わりましたね。とにかく時間が限られているので、その中でどうやって最大限のパフォーマンスができるかを常に考えるようになりました。たとえば、いつもその日のタスクを文字に書き出して、todoリストにして管理したり。いかに無駄な時間を減らして有効に使うか、以前よりもずっと意識するようになりました。
それから、仕事に対する価値観もかなり変わりました。子供がいないときは、成果物を作り上げる達成感や、結果が出たときの喜びばかりに目が行っていたんです。でも子供ができてからは、もっと基本的な「働く意味」を感じるようになりました。
私は育休中、すごく孤独な気持ちだったんです。娘と過ごす毎日の中、なんだか社会から切り離されていくようで。日々動いている世の中で自分だけ取り残されるみたいな、完全に浦島太郎状態でした。
それで気づいたのは、私にとっての「働く意味」って「自分と社会のつながりを持つこと」だったんだなってことだったんです。結果を出したりお金を稼ぐことだけが目的ではなく、「私」個人として社会の中で成長したり貢献したり……そういうことが自分の人生にとってすごく大事なんだということがわかりました。
だから、復帰してからすごく大変ですけど、一度も仕事を辞めようって思ったことがないんです。「私」として社会とつながることができて、やっと「お母さん」でもいられる。「私」と「お母さん」の間を行ったり来たりすることで、自分のバランスをとっているんだと思います。
悩む中で見つけた、自分なりの「仕事と家庭の両立」
復帰後特に大変だったのは、やっぱり「仕事と家庭の両立」ですね。どっちも頑張りたいのは山々なんですが、仕事で手を抜くことは自分が許せないので、家庭のほうをおざなりにすることが多くなりがちで、それがかなり辛かったですね。
というのも、私の中に長い間「理想の母親像」があったんです。いつもニコニコしていて、子供と遊んであげて、掃除も料理もちゃんとできて……みたいな。だけど仕事をしていると、あれもこれも追求するのは無理。できないことを気にしていると、それだけで大きなストレスになってしまいます。
それでもう、「理想の母親像」は諦めて「自分らしさ」を大事にしようと思うようになりました。つまり無理しないっていうことですね(笑)。それからはかなり吹っ切れました。
今気をつけているのは、「私」と「お母さん」のスイッチの切り替えです。このスイッチが、自分にとってはすごく大事。仕事中は「私」で、帰ったら「お母さん」。そこが混ざってしまうとバランスがとれなくなってしまうので、家に帰ったら仕事に関わることはなるべくしないようにしています。その代わり職場では仕事に全力疾走。そうやって自分なりの「仕事と家庭の両立」を目指しています。
仕事で学んだことが、育児にも活かされている
昔アパレルの接客業をやっているときに、上司に言われた言葉があります。それは、「相手に心を開いてほしいなら、まずは自分から興味を持とう」ということ。お店にいらしたお客様の洋服、靴、髪型などを観察して、その人がどういう趣味嗜好を持ってどんなライフスタイルを送っているのかを想像する。その上でやっとスタイリングが提案できるんだと言われていました。
これは、職種が変わった今でも大事にしていることです。ユーザーのことを想像するときだけではなく、クライアントや外注業者さん、社内のスタッフに接するときにも、まずは相手に興味を持つ、という癖をつけるようにしています。そうすることで、チャットのやりとりひとつが質の良いコミュニケーションになると思っています。
そしてこれって、実は育児にも応用できることなんですよね。私は今、「コーチング」の勉強もしているのですが、これも「育児に使えるなー」と思うことばかりです。仕事で学んだことがプライベートにも活かされているなと感じることが、よくあります。
FICCは「学ぶ」ことに対してとても積極的です。初めは仕事のために学び始めたことでも、「ここで学んだことは、人生にとっても大事なことなんじゃないか」と思えることが多い。FICCの仕事の根幹が、「コミュニケーション」にあるからでしょうか。だから、FICCで学んだことは決して無駄にはならないし、人生を豊かにしてくれるなと実感しています。
届くべき人に届くべき情報が伝えられるように
今後チャレンジしていきたいのは、より多くの方に「FICCの中の人」のリアルを知ってもらうことですね。FICCのイメージって、横文字の専門用語を多用する、なんとなくカッコいい会社……みたいなことをよく言われるんですけど(笑)、雰囲気のみが先行して「実際どんな会社なのか」がうまく伝わっていないことがあるなと思っています。だけど中の人をひとりひとり見ていくと、個性豊かな人たちがいて、誠実な仕事をしている。そういう情報がちゃんと表に出ていないところが、現時点の課題です。
やっぱり仕事って、なんだかんだ言って最終的には「人」が大事ですから、その部分の魅力をどんどん発信していきたいです。「FICCってこういう会社なんだ」「こういう人がいるんだ」「自分も働いてみたい」って思ってもらえるような、面接の前段階での認知をより広げて、いろいろな人を繋げたい。「届くべき人のもとに、届くべき情報が伝えられるようになる」というのが今後の私の目標です。
もしFICCでの仕事に興味がある人は、ぜひ一度話を聞きに来てください。心から、お待ちしています!
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