ARの小さな冬の世界をのぞける ツリー型カード | フェンリル
組み⽴てる楽しさと⼿触りのやさしさ ツリーに使⽤した紙は、コーデュロイのような独特の⼿触り。 「ツリーを組み⽴てる」という動作を通じて、⼿に触れるやさしい素材を感じながら、イベ...
https://www.fenrir-inc.com/jp/about/card-tree/
こんにちは。デザイナーをしている新卒2年目の松井です。
梅雨の季節ということもあってジメジメした日が続きますが、この時期は意外と好きだったりします。雨音が心地よかったり、紫陽花の美しい姿を見ることができたり…そういえば、もうすぐ父の日もありますね。
普段から父とよく話すのですが、感謝の気持ちを伝える時は手紙を書くことが多く、手紙の方が素直な気持ちが書けるような気がするんですよね。
みなさんはどのように感謝の気持ちを伝えていますか?
フェンリルでは、お世話になっている方々へ日頃の感謝の気持ちを伝えるため、年末にホリデーカードをお贈りしています。
〈これまでに制作したホリデーカードはこちら〉
ホリデーカードのコンセプトは、社内のデザイナーでコンペをして決めるのですが、ありがたいことに私のアイディアが今回採用され、この企画のメインデザイナーを担当しました。
今回は「幻想的な冬の世界を届ける」というコンセプトのもと、光と音のコンテンツを企画。紙モノとしてカードをデザインするだけではなく、スマホを用いて癒しの体験を届けられるように考えました。
昨年の4月に新卒で入社して以来、メインで参加したはじめてのプロジェクトということもあり、すごく緊張していましたが、制作が進むにつれて楽しみながら取り組めました。
お贈りした方々から多くのリアクションが届き、AdverTimes.(アドタイ)にも取り上げていただくなど好評をいただいたホリデーカード制作の裏側についてお伝えしたいと思います!
企画を考えるときに特に意識したのは、「癒しの体験を届けたい」「自宅でもホリデー気分を味わってもらいたい」という2つ。
そこで冬の恒例イベントである「イルミネーション」を思いつきました。
コロナ禍であるため、屋外でのイベントが難しい今、自宅でその体験ができると喜んでいただけるのではと考えたのです。
街中の木々を彩るイルミネーションをイメージし、スマホ画面の光を活かすようなアイディアを展開。紙のやさしいぬくもりとデジタルを融合した、カードからはじまる体験をお届けしたいという想いもあり、それをかたちにできる方法を模索しました。
グラデーションの光を表示したスマホの上に組み立てたカードを置くことで、ツリーがイルミネーションで彩られるという構造を考え、制作を進めていきました。
まずは、カッティングマシンで黒と白のモックアップを作成し、ダミーの模様を切り抜いて検証。どんな光の色でもきれいに見える白の紙を採用しました。
次に、カードの形状を決めるため色んな形で試した結果、カードの内面にも光が反射し、より幻想的な雰囲気を演出することができる三角柱に。
形状が決まったので、次にカードのデザインに取り組みました。シンプルかつ凝っているものにしたいと考え、一部分にさりげなく装飾を施し、カードを折り込むと立体的なツリーがあらわれるようにしました。
カードの形状とデザインが完成するまでに作成したモックアップの数は68個...!モックアップを制作しているときは工作感覚で楽しく検証を進めていました。
完成後、すべてのモックアップを並べてみると、ものすごい数になったのでびっくりしましたが、「これだけ検証したから、きっと楽しんでもらえるはず!」と自信につながりました。
紙のベース色が白というところから、「雪景色にたたずむツリー」をイメージして雪の結晶のデザインを考案しました。また、冬のモチーフとして親しまれているノルディック柄をベースにしています。
ツリーの配色は深みがかった緑色を採用し、模様はパターン別に作成した2種類の結晶をジグザグに配置。サイズも少しずつ変えることで空間の広がりを演出しました。
模様は細かい方がきれいに見えるのですが、細かすぎてしまうとカードの強度を保てないという懸念点も。
これらを考慮しながら、ツリーの模様を実現するために印刷会社の方と何度も打ち合わせを重ねました。
その結果、量産がしやすく、模様部分の型を打ち抜くトムソン加工でカッティングできる限界の細かさを調整していき、グラフィックで表現したような雪の結晶に仕上げることができました。
ここからはWebコンテンツをご紹介します!
Webコンテンツの内容は「グラデーション動画」となっており、カードと一緒に封入している中敷のQRコード先にあるWebサイトから見ることができます。
(サイトのデザインとWebコンテンツ制作は先輩デザイナーがメインで担当)
グラデーション動画は「青年と雪の妖精との出会い」をテーマにストーリーを展開。ストーリーに合わせてグラデーションの雰囲気が変わり、ホリデーシーズンの特別感を体験してもらえるように仕上げています。
ツリーをライトアップするスマホ画面の光は、単に光を発するためのものではなく、ストーリー性を持たせ、グラデーションの動画にすることで光に息を吹き込みました。
また、部内の先輩(エンジニアながらもデザイン部門と兼務している)が光の色味を細かく調整できるアプリを開発してくれたので、これを用いてツリーと相性が良いものを検証。ベースの色には青系を選定し、シーンに合わせて黄色などの鮮やかな印象の色味も取り入れています。
このアプリがあったからこそ、理想的な光の色味を実現することができました。(ありがとうございます!)
(光の色味を調整できるアプリの画面)
その他、画面の中央から光をひろげたり、左右から徐々に光の色を変化させるなど、場面ごとに雰囲気を変えて楽しんでもらえるようにしました。
BGMは、音楽制作が趣味のデザイナーに協力を依頼。「雪景色の雰囲気を表現したい」とイメージを伝えたところ、静かながらも印象的なベルの音など、冬のインスタレーションにマッチするようなBGMに仕上げてもらいました。
どのように制作したのか、担当デザイナーに聞くと「Ableton Live」というソフトを使ったとのこと。
操作画面はプログラミングをみているようで難しそうです。
(Ableton Liveの操作画面)
完成したグラデーション動画は1分ほどの長さだったので、一度再生しただけで終わるのではなく、何度も繰り返し楽しめるものにしたいと思いました。
そのことを、プロジェクトメンバーのみなさんに相談したところ、動画のループを提案していただき、飽きないようなBGMの展開にしつつ、緩やかな流れになるように調整しました。
ホリデーカードの楽しみ方として使用方法は記載しましたが、受け取ったみなさまに自由に楽しんでいただきたいという想いがありました。
部屋の明るさやカードを置く位置など、環境によってグラデーションの雰囲気が変化するので、様々な表情を楽しんでもらいたいと思ったからです。
例えば、カードを逆さまにセットすると、光の漏れ方が変化してツリーの模様がくっきりとした雰囲気に。画面のサイド側にセットすると、光の色味や反射の強さが変わるなど、ツリーの色んな様子を楽しむことができます。
また、カードをお贈りしている方は、オフィスに勤めている方も多いことから、電気が消せない環境にも考慮し、明るい場所ではホリデー気分を高めるオブジェとしても楽しんでいただけるデザインをめざしました。
自分だけのポジション、オンリーワンの楽しみ方を見つけていただけていたら、うれしいです。
新卒1年目からこのような経験をさせてもらい、ものすごく貴重な時間を過ごすことができました。
学生時代は印刷物を本格的にやったことがなく、不安なこともありましたが、デザインに対するアドバイスや、オリジナルBGMの制作など、多くのメンバーにサポートしていただきました。
この場を借りて、社内メンバーにもお礼を言いたいです。
制作を通して、印刷会社の方と綿密に打ち合わせを重ねたり、膨大にある紙の中からこだわって選定するなど、紙のプロダクトの大変さやおもしろさをたくさん知りました。
そして、アイディアを生み出すことや、デザインすることの楽しさを改めて実感し、やっぱりデザインすることが好きだなと再認識しました。
完成したホリデーカードをはじめてみたときの感動とうれしさは、今でも鮮明に覚えています。
また、参加して得られたたくさんの経験は、デザイナーとしての自信にもつながり、私にとって大きな財産となりました。
ホリデーカードがお手元にない方にも体験いただけるような動画を制作しましたので、ご覧いただけたらうれしいです。
2年目もチャレンジする気持ちを大切に、多くの人にハピネスを届けられるように頑張りたいです!