時間外救急から医療プラットフォームとして急成長を続けているファストドクター。その成長の裏には、現在は部長職やシニアマネージャーとなった人たちの数々の挑戦と成果によって実現したといっても過言ではありません。
2022年12月に地域医療推進部部長に就任した服部直幸さんもそのひとりです。コロナ禍での対応を通して45以上の自治体との関係構築から協定を結び、ファストドクターにおける自治体支援事業の基盤を築き、平時連携へ繋げて拡大を続けています。服部さんはその自治体支援事業に携わる第一人者でもあります。
本記事では、大手企業とは異なり新しいサービスを提供する成長過程にあるスタートアップ企業で、どのように仕事と向き合い、どのように自分の役割を認識して壁を乗り越えてきたのかなどについて伺いました。
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大手企業からスタートアップに、自分のやりたいことの実現
ーー服部さんはファストドクターに入社されて約2年が経とうとしていますが、入社時に思い描いていたことを今現在、実現できていると思いますか。
服部:
この2年間では自治体支援事業の基盤作りや地域医療推進部の立ち上げなどいろいろありましたが、今はやりたいことをやらせてもらっていると思っています。私がファストドクターに入社した理由は、実は医療系企業であることはあまり大きな要素ではなかったんですね。実は、今までずっと続いてきた社会の決まり事のようなことを大きく変える、これを自分の手でやってみたかったんです。そのために、これまでずっと大手企業で働いてきた世間でいう「安定」を捨てて、当時10〜20人くらいしかいないようなスタートアップ企業に飛び込むというリスクを取る選択をしました。
社会の決まり事の例としては、たとえば日本の救急は100年近く大枠が変わっていません。急な体調不良に対して、救急車を呼んで病院に運んで手当するという部分です。これには年々増加する救急車搬送や安易な救急車利用などさまざまな問題があるにもかかわらず、ずっとこのようなシステムで運用されてきたわけです。そこを変えてみることに携われるのであれば…と思い、当時ファストドクターの役員の方々と面接しました。自分に裁量を持たせてもらえるのか、自由度があるのかというところを私は特に意識して質問をし、ファストドクターなら自分の意志を尊重してくれると思い、入社を決めました。もちろん、きちんと成果を出していく、行動していくというところは大前提にありますが、結果として今では裁量を持たせてもらえて、自由に仕事をさせてもらえていると実感しています。
ーー服部さんが思うファストドクターでの今のキャリアのターニングポイントは、どのようなところですか。
服部:
私が入社して1ヶ月後に開始した、自治体連携の事例でしょうか。何が印象的だったかというと、これまでファストドクターは夜間・休日の救急往診体制を構築してきたわけですが、私が提案したのは「24時間の救急往診・オンライン診療体制を構築する」という当時のファストドクターからは考えられないような発想から連携をスタートさせたからです。本当にやりきれるのかと、創業当時からのメンバーには気苦労をかけた部分もありましたが、「24時間やりきりますよ」と言ったときの驚きや動揺、あの目はいまだに忘れられませんね。それでも理解を得ることが難しかったため、自治体単位で推し進める意義を何度も説明して、協力してもらうに至りました。さらに、まだ世間的にもオンライン診療が出始めた時期だったかと思いますが、救急往診ありきだったファストドクターがオンライン診療を用いて地方自治体の医療体制の支援を行いました。このことから、オンライン診療でも自治体の医療体制構築におけるひとつの手段になると証明できたことで、他の自治体と連携する大きな契機になったのでとても思い出深い出来事でしたね。
ーーそれぞれの自治体のニーズはどのようにキャッチアップしていったのでしょうか。
服部:
基本的には会って話をするしかないですね、アナログな方法ですが。コロナ禍では1つの事例がきっかけで近隣の自治体からの問い合わせなどもあり、ある程度課題が顕在化していてわかりやすかったのですが、平時だとそうとは限らないです。また、医療はずっと同じことを続けている側面があるので、固定観念や先入観が強いことも稀にあり、医療体制の強化に難しさを感じていることや、そもそも医療に関して課題があると認識していないことも対話するなかで感じました。私自身でさえも、そんなニーズがあったのかと思ってもみないこともありましたから。
あとは新聞から世の中のトレンドやニーズをキャッチアップしていますね。5大紙だけではなく地方紙にも目を通して、その自治体が何を課題に感じていて、どんなことをすると住民が安心して医療を受けられる環境になるのかを俯瞰してチェックするようにしています。「ファストドクターで今できること」から物事を考えると、ときには問題や課題があることを見落としてしまうこともあるので、なるべく”どんなソリューションがあるといいか”ということから逆算して、ファストドクターではどうすることができるか、に着地させています。
スタートアップ企業での仕事のモチベーション
ーーちょっと切り込んだ質問になりますが、大手企業での安定志向を捨ててスタートアップ企業である「ファストドクターでやりたい」、この熱意やモチベーションはどこから来るのでしょうか。
服部:
私自身としては、今後の自分のキャリアや経験を優先したいという思いが強かったため、今の自分にないものを吸収したい、チャレンジしたいのであれば、それは年収が一度下がっても、スタートアップにいく価値はあるのではないかと思いました。そこから成果を出して行けば、年収は自ずと上がっていくと思うので、長い人生のひとときに誰にもできない経験を積んでいると思うと、年収はそこまで問題ではなかったです。
むしろ、これまでと違って仕事自体に”やらされている”感覚がゼロになったので、そもそも仕事を休みたいという考えが全く湧かなくなり、楽しんで働けていることが原動力になっています。週末が来ると、早く月曜日が来ないかなと思っている自分がいて、仕事の充実度がかなり大きく影響していることを実感します。
私がこれまでいた企業は、ありがたいことに発言自体はできる組織でした。それでも、何か新しいことをスタートさせるためには、上司を説得して、またその上の上司に説明して承認を受けるというプロセスが存在していたので。自分が何か思いついてから、実際に実行できるまでのタイムラグがとても長い状況でした。こうした場で私がこの先何年勤めていても、なかなかやりたいことは進んでいかず、社会の変化のほうが速く、世の中にインパクトを与えるということは難しいのではないかと危機感を感じていました。
そうした環境からファストドクターに来て、アイデアがあるんだったらどんどん実行して欲しいという環境に変わり、私としては本当にこれこそが自分の求めていた環境だと感じながら、仕事ができていると思います。
ーーそうなのですね。やりたいことが実現できているから、楽しくてしょうがない、待ち遠しい感覚なんですね。仕事の充実度が大きいと。スタートアップ企業への転職となると、ご家族の反応も気になりますがその辺りはいかがでしたか。
服部:
そうですね。私も家族がいるので、生活できないレベルでは困ってしまいますが…。有難いことに事後報告でも家族には反対されずに理解してもらえましたので。たとえば、年収が100万円違うとして、手取りならさらに少ない金額になるわけですが、そのためにこの先10年間人生を妥協していくのは、私には考えられないと思ったんです。これは、人生観や仕事の価値観など人によって異なるところでしょうね。
私はこれまで2回転職してきましたが、前職のときも年収は下がりました。しかし、入社時にたとえ年収が下がったとしても、頑張って成果を出していけば年収は追いついてくるという風に私は思っています。現状、ファストドクターでも成果を評価されて、年収は上げてもらっていますから。もちろん、目先の年収も大事です。そこも大事ですけど、人生の大部分を占める働く時間を、本当に自分がやりたいことをやれているかという観点で天秤にかけて、よく考えてみると答えが変わってくると思います。
結果にコミットすること、スタートアップ企業における自分の役割
ーーそもそも服部さんが考える仕事との向き合い方、大切にしているスタンスについて教えてください。
服部:
某プライベートジムではないですが、「結果にコミットすること」だと常々考えています。これは、自分がやりたいことをある程度自由にやっていくためには、必要不可欠だと思っています。何の成果も上がらないのに、やりたいことがやれていないというのは、違うのではないかと。自分の自由を守るためにも、そして所属する自分の会社を大きくするためにも必要なことだと思っています。
ーーファストドクターではさまざまなことが急速に動くなかで、服部さんはご自身の役割をどのように認識されていますか。
服部:
今は地域医療推進部という部を預かっていますので、まずは地域や地方自治体との接続の強化を考えています。私個人としては、ファストドクターのサービスを1番速くドライブさせる、成長させるための手助けをしたいと思っています。それは地道にファストドクターの認知度を上げていくことであったり、1つひとつのオペレーションの品質を上げていくことであったり、ユーザーの方々に喜んでいただけることなど、大切なことはたくさんあります。これらをスピード感を持ってさらに加速させていくにはどうしたらいいのかと、常々考えています。元々、ファストドクターを公共のインフラにしていくには、自治体と連携していくほうが速いのではないかという仮説に基づいて、自治体支援事業をスタートさせた経緯がありますし、結果的にすごくいい選択だったとも思っています。これまでの成果を総括すると、今は救急往診事業(toC)や在宅医療支援事業(toB)だけを愚直に推進していくだけでは到達できなかったところまで、来ているのではないかと思っています。
ーーそうですね。服部さんが入社されて自治体連携を推進していったおかげで、ファストドクターが目指すビジョンにも近づいていると思っていますが、ご自身としてはいかがでしょうか。
服部:
そうですね、ファストドクターの成長という意味では、今までやってきた各自治体の事業、どれもすごく大切なものだったという認識です。そのなかでも旭川市消防と連携し、コロナ陽性患者の救急搬送を約5割削減した事例では、同じファストドクターの社内の人たちよりも、国や自治体周りの人へのインパクトがとても大きかった事例だと思います。100年変わらなかった救急の在り方を、日本で初めて変えるきっかけとなりました。地域も時期も限定されたなかかつ、有事の状況ではありますが、119番したら救急車が来て運ばれるのが当たり前だったところに、本当に救急車で運ぶ必要があるのかどうかと切り込んだわけです。
この事例は私のなかでファストドクターに入って最もよかったと思った仕事です。これをきっかけにこれまでの119番の運用にどう変化を加えられるか、インパクトを加えられるかというのが、私が今後ファストドクターにおいて実現させていきたい中心軸になると思っています。
代表の菊池は創業者としてずっとファストドクターのなかにいたので、地域に対する価値をおそらく低く見積もっていたのではないかと思うこともありました。入社時の私のように、事業に入り切らずに客観視すると、実はこれってとても世の中に役立てられるものなのではないかと思うことがたくさんあったんですよね。客観的にファストドクターを見られたことがよかったと思います。現在は入社してから2年経ちますが、地域や自治体の方々から見て、ファストドクターはどう見られているのかという視点を常に考えて、意識しているところではあります。自分たちがやりたいことだけでは、なかなか相手は動きませんから。当たり前のことではありますけど、それを大事にする。そうした視点を忘れないようにしていますね。
ーーちなみにファストドクターが掲げている公共インフラになるという目標ですが、服部さんとしては今どのくらい近づいたとお考えですか。
服部:
今はまだ山のふもとでしょうね。山のふもとまで来たので、じゃあ次はどうやって登ろうかという段階だと思います。これは否定的な話ではなく、そもそもこのふもとに立っている事業者は、今どれだけいるでしょうかという話です。これはファストドクターの大きなアドバンテージだと思っています。もちろん先駆者としての苦労はつきもので、どの部署もそれを実感しているところだとは思いますが、1番チャンスがある位置につけているのも事実ですから。全社一丸となってこれから山に登っていければと思います。
自分の意思を持って行動することで、そのチャンスをもらえる会社
ーーこれから入社するメンバーに向けて、ひとことお願いできますか。
服部:
ファストドクターの代表2人はForbes JAPAN『日本の起業家ランキング2023』1位に選ばれた経緯などもあり、世の中にだいぶ認知されてきていると思います。そのため、いろいろと環境が整った会社というイメージを持たれてしまうかもしれませんが、まだまだそんな大きな会社ではありません。2年前まではビルの小さな一室で肩を寄せ合っていたところから、会社の成長に合わせて人が増えて組織が拡大している途中です。
チャレンジしやすい環境があるのは事実ですが、すぐにやりたいことをやらせてもらえるかといったら、それも少し違います。そうしたまだまだ足りない、整っていない部分もあるという事実に、最初は驚かれる方もいるかもしれません。それでも、だからこそ、自分の意思を持って行動することで、そのチャンスはどんどんもらえる会社だと思っていますし、自分自身はそうしてチャンスをもらえて今ここに立っていると思っています。自分の持っているアイデアをもっとダイレクトに世の中に当て込んでいきたいという想いを抱えている人は、是非チャレンジしていただきたいです。ファストドクターではその楽しみを味わえるのではないかと思います。一緒に頑張りましょう!
文:白石 弓夏
撮影場所:WeWork 東京ポートシティ竹芝
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